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変化する関係
第8話
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朝から街中クリスマスソングがながれ、楽し気なカップルがたくさん溢れている12月24日。
「ようやくですね」
柚希の声に日葵は小さく頷いた。
「今回のこのfantasy worldは、最新の技術と映像を駆使して作られております」
壇上で完璧な姿で発表をする壮一を、日葵と柚希は会場の後ろで見守っていた。
マスコミ関係者からも感嘆の声が漏れ、問い合わせも多く各ゲーム雑誌などからも取材が殺到している。一日早く始まった予約もかなりの予想を上回る数字で、さらにこの発表で伸びるだろう。
そこには完璧に出来上がった「新しい始まりの世界」の映像が壮一の音楽と一緒に流れていた。
雄大な映像と、迫力の中にも繊細さの感じるオーケストラの音が壮大さを広げている。
(やっぱりすごい……)
壮一の才能をまざまざと確認して、日葵はただその映像を見ていた。
映像の最後に主人公の男の子と女の子がそっと手を取り合う。そしてあの、車の中で聞いた壮一の曲が切なく流れていた。
『さあ、新しい未来に……』
その言葉で映像は締めくくられていた。
「長谷川さん!」
驚いたような柚希の声に、日葵はハッとして自分の頬を抑えた。いつのまにか流れ落ちていた涙に気づかなかった。
「嫌だ、何度もみてるのに。大画面は迫力あるね」
言い訳のように言った日葵に、柚希は何か言いたげな表情を浮かべた。
「長谷川さんって」
「ん?」
聞き返した日葵に、柚希は小さく首を振り「なんでもありません」そう答えると切なげに微笑んだだけだった。
日葵も柚希に何か言葉をと思ったところで、その空気を壊すように大きなスピーカーからアナウンスが流れる。
「この後、完成パーティーに映らせて頂きます。飛翔の間にご移動をお願いいたします」
司会の言葉に、興奮したように話しながら出て行く人々を慌てて日葵と柚希も見送る。
その後、チームのみんなが待機していた部屋へと一度移動して、片づけをしてたところに、壮一が戻って来るのがわかった。
「みんなお疲れ様」
発表を終えネクタイを少し緩めながら小さく息を吐き、壮一はチームのみんなに声を掛ける。
「チーフ、お疲れ様でした!」
「感触よかったですね!」
苦労して作り上げてきたものが、好感触だったことにみんなが興奮気味だ。
「ああ、これもみんなのお陰だ。今日はこの後思う存分食べろよ」
「はい!」
数十人いる部屋は熱気と興奮で溢れ、それだけで今までの苦労が解る気がした。
「長谷川と柚希もお疲れ」
完璧な上司の笑みで言葉をかける壮一に、日葵はただ小さく頷いた。
「お疲れ様ですチーフ。顔色悪くないですか?」
それは日葵も思っていたが、到底口にすることなどできなかったが、柚希が心配そうに声を掛ける。
「このところ忙しかったからな。大丈夫だよ」
ポンと柚希の頭に触れると、壮一はクルリと踵を返し役員の元へと行ってしまった。
そんな二人をただ日葵は感情を殺すように見ていた。
私が選ぼうとしていることは、こうしてずっと壮一の隣に誰かがいるのを見ていくことなのだろうか。
「長谷川」
そんなことを日葵が思っていると、静かに日葵を呼ぶ声に部屋のドアに視線を向けた。
「もういける?」
いつも通りの柔らかな笑みを浮かべている崎本に、なぜか落ち着かない気持ちが襲う。
どれだけ待つと言ってくれている崎本でも、こんな気持ちで一緒になんていくことはできない。
そう告げようと思ったところで、崎本の手が強引に繋がれる。
「部長!?」
慌てて言葉を発した日葵に、崎本は真っすぐ前を見たまま答える。
「今日は俺に付き合ってくれるって約束だ」
「でも私……」
「聞きたくない」
痛いほどにつながれた手に、日葵の心は締め付けられるほど苦しくなる。どれほどこの優しい崎本を待たせ、自分勝手なことをしてきたのだろう。
どれだけ待つと言ってくれても、きっぱり距離を置くべきだった。
(私が一番最低だ……)
どうしてこんなことになってしまったのだろう。それだけがグルグルと頭の中を回る。
縺れてしまった糸はどこをどうほどけばいいのか、日葵にはもう分からなかった。
日葵はただ崎本に手を引かれながらパーティー会場へと向かった。
「ようやくですね」
柚希の声に日葵は小さく頷いた。
「今回のこのfantasy worldは、最新の技術と映像を駆使して作られております」
壇上で完璧な姿で発表をする壮一を、日葵と柚希は会場の後ろで見守っていた。
マスコミ関係者からも感嘆の声が漏れ、問い合わせも多く各ゲーム雑誌などからも取材が殺到している。一日早く始まった予約もかなりの予想を上回る数字で、さらにこの発表で伸びるだろう。
そこには完璧に出来上がった「新しい始まりの世界」の映像が壮一の音楽と一緒に流れていた。
雄大な映像と、迫力の中にも繊細さの感じるオーケストラの音が壮大さを広げている。
(やっぱりすごい……)
壮一の才能をまざまざと確認して、日葵はただその映像を見ていた。
映像の最後に主人公の男の子と女の子がそっと手を取り合う。そしてあの、車の中で聞いた壮一の曲が切なく流れていた。
『さあ、新しい未来に……』
その言葉で映像は締めくくられていた。
「長谷川さん!」
驚いたような柚希の声に、日葵はハッとして自分の頬を抑えた。いつのまにか流れ落ちていた涙に気づかなかった。
「嫌だ、何度もみてるのに。大画面は迫力あるね」
言い訳のように言った日葵に、柚希は何か言いたげな表情を浮かべた。
「長谷川さんって」
「ん?」
聞き返した日葵に、柚希は小さく首を振り「なんでもありません」そう答えると切なげに微笑んだだけだった。
日葵も柚希に何か言葉をと思ったところで、その空気を壊すように大きなスピーカーからアナウンスが流れる。
「この後、完成パーティーに映らせて頂きます。飛翔の間にご移動をお願いいたします」
司会の言葉に、興奮したように話しながら出て行く人々を慌てて日葵と柚希も見送る。
その後、チームのみんなが待機していた部屋へと一度移動して、片づけをしてたところに、壮一が戻って来るのがわかった。
「みんなお疲れ様」
発表を終えネクタイを少し緩めながら小さく息を吐き、壮一はチームのみんなに声を掛ける。
「チーフ、お疲れ様でした!」
「感触よかったですね!」
苦労して作り上げてきたものが、好感触だったことにみんなが興奮気味だ。
「ああ、これもみんなのお陰だ。今日はこの後思う存分食べろよ」
「はい!」
数十人いる部屋は熱気と興奮で溢れ、それだけで今までの苦労が解る気がした。
「長谷川と柚希もお疲れ」
完璧な上司の笑みで言葉をかける壮一に、日葵はただ小さく頷いた。
「お疲れ様ですチーフ。顔色悪くないですか?」
それは日葵も思っていたが、到底口にすることなどできなかったが、柚希が心配そうに声を掛ける。
「このところ忙しかったからな。大丈夫だよ」
ポンと柚希の頭に触れると、壮一はクルリと踵を返し役員の元へと行ってしまった。
そんな二人をただ日葵は感情を殺すように見ていた。
私が選ぼうとしていることは、こうしてずっと壮一の隣に誰かがいるのを見ていくことなのだろうか。
「長谷川」
そんなことを日葵が思っていると、静かに日葵を呼ぶ声に部屋のドアに視線を向けた。
「もういける?」
いつも通りの柔らかな笑みを浮かべている崎本に、なぜか落ち着かない気持ちが襲う。
どれだけ待つと言ってくれている崎本でも、こんな気持ちで一緒になんていくことはできない。
そう告げようと思ったところで、崎本の手が強引に繋がれる。
「部長!?」
慌てて言葉を発した日葵に、崎本は真っすぐ前を見たまま答える。
「今日は俺に付き合ってくれるって約束だ」
「でも私……」
「聞きたくない」
痛いほどにつながれた手に、日葵の心は締め付けられるほど苦しくなる。どれほどこの優しい崎本を待たせ、自分勝手なことをしてきたのだろう。
どれだけ待つと言ってくれても、きっぱり距離を置くべきだった。
(私が一番最低だ……)
どうしてこんなことになってしまったのだろう。それだけがグルグルと頭の中を回る。
縺れてしまった糸はどこをどうほどけばいいのか、日葵にはもう分からなかった。
日葵はただ崎本に手を引かれながらパーティー会場へと向かった。
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