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変化する関係
第5話
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「お疲れさま」
あの日以来、もちろん社内で姿をみることはあったが、会話らしい会話を日葵はしていない。
もちろん仕事が忙しかったこともあるが、なんとなく気まずかったのも事実だ。
「お疲れ様です」
複雑な気持ちのまま日葵は小さく微笑んだ。
「少しだけいい?」
「はい」
この状況で嫌ですと言えるわけもなく、日葵は小さく頷くと駅には入らず崎本と歩き出した。
「疲れた顔をしているね。体調は大丈夫?」
「はい。仕事も大詰めですし」
当たり障りのない答えを返しながら、崎本の表情を見ればいつも通りの崎本で、日葵はホッとする。
「完成パーティー、結構派手にやるみたいだね」
よほど社長である誠は、壮一が手掛けた仕事を労いたい様で、大規模なパーティーを企画していた。
「そうですね」
日葵は少し苦笑しつつ、崎本に答える。
街中がクリスマスムード一色で、きらきらとイルミネーションが輝いている。そんな景色をぼんやりと見つめていた日葵の耳に驚く言葉が降って来る。
「一緒に行かないか?」
「え?」
家族なども連れてくパーティーの為、もちろん妻や恋人を連れてくるだろうし、パートナー同伴という人は珍しくはない。
つい聞きかえした日葵の目に、崎本の真剣な瞳があった。
もちろん父である社長はもちろん、母や弟も来る場で崎本と一緒にいるということは、そういうことだと理解されるだろう。
それがいけないことなのか?
日葵はグッと唇をかみしめて自分の気持ちを考える。
ずっと自分のことを甘やかし、見つめてくれた崎本。頑な自分をずっと見守ってくれた。
しかし、日葵の頭に不意に『もう昔には戻れない』そう言った壮一の表情が思い浮かぶ。
ぐちゃぐちゃな自分の気持ちがわからず、日葵は俯いて自分の手をギュッと握りしめた。
きっと崎本はそんな日葵の気持ちなどお見通しなのだろう。
「迷っているという事は肯定と受け取るよ」
珍しく日葵の気持ちを聞くことなく、言い切った崎本に日葵は驚いて顔を上げた。
「当日は一緒にいってもらうから。時間を取らせてごめん。気を付けて」
それだけを言うと、崎本は静かに歩いて行ってしまった。
(どうすればいいの?)
ただ自分の気持ちがわからず、日葵は当てもなく街を歩いていた。
さっきまで綺麗だと思っていたイルミネーションも目には入らない。
崎本のことはもちろん尊敬してるし、好きか嫌いかと聞かれればもちろん好きだ。
崎本といれば温かな気持ちになるし、穏やかな時間を過ごすことができる。
一緒にいれば楽しいし、もし結婚するならば温かい家庭を想像することが出来る。
(チーフは……)
昔は大好きな完璧な兄であり、あこがれの人であった。今は頼れる上司、そしていつもイライラさせられ心が乱される。
負けず嫌いで、完ぺき主義で、弱い所を見せず冷たい人間。
でも……。
そこまで思ったところで、日葵は小さくため息をつく。
どう考えても崎本との未来の方が幸せだろう。そんなことは日葵が一番わかっていた。
でも、一つ返事で崎本にいつも答えることができない。
色々なことを考えていて、どれぐらい時間がたったのかわからなかった。
そんなとき、バッグからスマホが音をたてるがわかり、日葵は無意識にそれをとる。
「はい」
誰からか確認しなかったと気づくも、今更遅く日葵は相手の言葉を待つ。
『長谷川? 今いい』
相手は今一番聞きたくなかったかもしれない壮一だった。今更電話をでてしまったことを後悔しても遅いし、〝長谷川”と呼ばれたことから、すぐに仕事だと理解する。
「はい」
いつの間にか寒さから口が回らず、日葵の声が震えていたのだろう。
『お前どこにいる?』
「え?」
仕事モードの壮一ではなく、静かに少し低くなった声に日葵はドキッとした。
あの日以来、もちろん社内で姿をみることはあったが、会話らしい会話を日葵はしていない。
もちろん仕事が忙しかったこともあるが、なんとなく気まずかったのも事実だ。
「お疲れ様です」
複雑な気持ちのまま日葵は小さく微笑んだ。
「少しだけいい?」
「はい」
この状況で嫌ですと言えるわけもなく、日葵は小さく頷くと駅には入らず崎本と歩き出した。
「疲れた顔をしているね。体調は大丈夫?」
「はい。仕事も大詰めですし」
当たり障りのない答えを返しながら、崎本の表情を見ればいつも通りの崎本で、日葵はホッとする。
「完成パーティー、結構派手にやるみたいだね」
よほど社長である誠は、壮一が手掛けた仕事を労いたい様で、大規模なパーティーを企画していた。
「そうですね」
日葵は少し苦笑しつつ、崎本に答える。
街中がクリスマスムード一色で、きらきらとイルミネーションが輝いている。そんな景色をぼんやりと見つめていた日葵の耳に驚く言葉が降って来る。
「一緒に行かないか?」
「え?」
家族なども連れてくパーティーの為、もちろん妻や恋人を連れてくるだろうし、パートナー同伴という人は珍しくはない。
つい聞きかえした日葵の目に、崎本の真剣な瞳があった。
もちろん父である社長はもちろん、母や弟も来る場で崎本と一緒にいるということは、そういうことだと理解されるだろう。
それがいけないことなのか?
日葵はグッと唇をかみしめて自分の気持ちを考える。
ずっと自分のことを甘やかし、見つめてくれた崎本。頑な自分をずっと見守ってくれた。
しかし、日葵の頭に不意に『もう昔には戻れない』そう言った壮一の表情が思い浮かぶ。
ぐちゃぐちゃな自分の気持ちがわからず、日葵は俯いて自分の手をギュッと握りしめた。
きっと崎本はそんな日葵の気持ちなどお見通しなのだろう。
「迷っているという事は肯定と受け取るよ」
珍しく日葵の気持ちを聞くことなく、言い切った崎本に日葵は驚いて顔を上げた。
「当日は一緒にいってもらうから。時間を取らせてごめん。気を付けて」
それだけを言うと、崎本は静かに歩いて行ってしまった。
(どうすればいいの?)
ただ自分の気持ちがわからず、日葵は当てもなく街を歩いていた。
さっきまで綺麗だと思っていたイルミネーションも目には入らない。
崎本のことはもちろん尊敬してるし、好きか嫌いかと聞かれればもちろん好きだ。
崎本といれば温かな気持ちになるし、穏やかな時間を過ごすことができる。
一緒にいれば楽しいし、もし結婚するならば温かい家庭を想像することが出来る。
(チーフは……)
昔は大好きな完璧な兄であり、あこがれの人であった。今は頼れる上司、そしていつもイライラさせられ心が乱される。
負けず嫌いで、完ぺき主義で、弱い所を見せず冷たい人間。
でも……。
そこまで思ったところで、日葵は小さくため息をつく。
どう考えても崎本との未来の方が幸せだろう。そんなことは日葵が一番わかっていた。
でも、一つ返事で崎本にいつも答えることができない。
色々なことを考えていて、どれぐらい時間がたったのかわからなかった。
そんなとき、バッグからスマホが音をたてるがわかり、日葵は無意識にそれをとる。
「はい」
誰からか確認しなかったと気づくも、今更遅く日葵は相手の言葉を待つ。
『長谷川? 今いい』
相手は今一番聞きたくなかったかもしれない壮一だった。今更電話をでてしまったことを後悔しても遅いし、〝長谷川”と呼ばれたことから、すぐに仕事だと理解する。
「はい」
いつの間にか寒さから口が回らず、日葵の声が震えていたのだろう。
『お前どこにいる?』
「え?」
仕事モードの壮一ではなく、静かに少し低くなった声に日葵はドキッとした。
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