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知りたくなかった
第4話
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(謝罪されたことで、きっと心が緩んだだけよ。今更こんな不毛な恋はするわけにはいかない)
そう心に思っていたころで、ドリップコーヒーにお湯を注いでいた壮一が言葉を発した。
「いくら仕事とはいえ、崎本部長に悪いな」
「え?ち……」
壮一の言葉に、やはり自分と崎本がつきあっていると思っているのかもしれない。
日葵はそう思い、否定の言葉を言いかけたが、さっき思ったことを思い出す。
壮一にまた傷付けられるのも、壮一が自分を思うことなど絶対にない。
私みたいな普通の女。
今ならまだ戻れる。
そう思うと、日葵は否定するのをやめた。
「私こそ、柚希ちゃんに申し訳ないです」
「え? 柚希?」
その言葉に壮一が今度は聞き返した。
しかし、やはり否定の言葉はなく沈黙が二人を包んだ。
無言で置かれたコーヒーに、なぜか泣きたくなる気持ちを抑えながら、日葵は手を伸ばした。
(どうして、どうしてこんなに私の心を揺さぶるのよ……)
コーヒーの苦みと熱さが、更に追い打ちを掛けるように日葵の心に影を落として言った。
ふわふわとした気持ちの中、日葵は昔の夢を見ていた。
手を伸ばすといつも笑顔の壮一が優しく手を伸ばしてくれる。
それを何の迷いもなくギュッと握りしめる。
そんな毎日が永遠に続く夢を。
夢と現実が解らないまま、日葵はその心地の良い揺れと温もりを離したくなくて手を伸ばす。
しかしそれはあっけなく空を切ると、小さな衝撃と共に体がその温もりから離れていく。
日葵はそれをなんとか阻止したくて、もう一度手を伸ばした。
しかしあの暑い夏の日、何も言わず冷たい視線を向けて日葵に背を向ける壮一へと夢は変わる。
そのことが悲しくて、意味が解らなくて、日葵は伸ばしていた手をギュッと握りしめた。
「どうして……?」
言葉になったかわからないつぶやきをして、自嘲気味な笑みが漏れる。
夢の中まで結局結末は一緒。
あの夏は何も変わらない。
そんなことが頭を廻り、この夢から早く解放されたくて頬を涙がつたう。
「日葵……」
小さく呟かれたその声が聞こえたような気がした。
そしてそっともう一度さっきまでの温もりが、日葵の頬に触れそっと涙を拭うのが分かった。
どうして?
少しぎこちなく、昔のように触れてくれないその手がもどかしい。
夢と現実のはざまが解らないまま、日葵はゆっくりと深い眠りに落ちて行った。
そう心に思っていたころで、ドリップコーヒーにお湯を注いでいた壮一が言葉を発した。
「いくら仕事とはいえ、崎本部長に悪いな」
「え?ち……」
壮一の言葉に、やはり自分と崎本がつきあっていると思っているのかもしれない。
日葵はそう思い、否定の言葉を言いかけたが、さっき思ったことを思い出す。
壮一にまた傷付けられるのも、壮一が自分を思うことなど絶対にない。
私みたいな普通の女。
今ならまだ戻れる。
そう思うと、日葵は否定するのをやめた。
「私こそ、柚希ちゃんに申し訳ないです」
「え? 柚希?」
その言葉に壮一が今度は聞き返した。
しかし、やはり否定の言葉はなく沈黙が二人を包んだ。
無言で置かれたコーヒーに、なぜか泣きたくなる気持ちを抑えながら、日葵は手を伸ばした。
(どうして、どうしてこんなに私の心を揺さぶるのよ……)
コーヒーの苦みと熱さが、更に追い打ちを掛けるように日葵の心に影を落として言った。
ふわふわとした気持ちの中、日葵は昔の夢を見ていた。
手を伸ばすといつも笑顔の壮一が優しく手を伸ばしてくれる。
それを何の迷いもなくギュッと握りしめる。
そんな毎日が永遠に続く夢を。
夢と現実が解らないまま、日葵はその心地の良い揺れと温もりを離したくなくて手を伸ばす。
しかしそれはあっけなく空を切ると、小さな衝撃と共に体がその温もりから離れていく。
日葵はそれをなんとか阻止したくて、もう一度手を伸ばした。
しかしあの暑い夏の日、何も言わず冷たい視線を向けて日葵に背を向ける壮一へと夢は変わる。
そのことが悲しくて、意味が解らなくて、日葵は伸ばしていた手をギュッと握りしめた。
「どうして……?」
言葉になったかわからないつぶやきをして、自嘲気味な笑みが漏れる。
夢の中まで結局結末は一緒。
あの夏は何も変わらない。
そんなことが頭を廻り、この夢から早く解放されたくて頬を涙がつたう。
「日葵……」
小さく呟かれたその声が聞こえたような気がした。
そしてそっともう一度さっきまでの温もりが、日葵の頬に触れそっと涙を拭うのが分かった。
どうして?
少しぎこちなく、昔のように触れてくれないその手がもどかしい。
夢と現実のはざまが解らないまま、日葵はゆっくりと深い眠りに落ちて行った。
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