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優しくしないで
第4話
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また静寂が訪れ、気まずい空気に日葵は息が詰まりそうになる。
「ここで降ろして欲しい」そう言えればいいたいところだが、帰る場所は同じ。
この何年かの会わなかった時間を、簡単に埋められないのは、あまりにもそれ以前が濃い時間を過ごしたせいかもしれない。
あれだけ生まれた時から一緒にいたからこそ、日葵には大人になった今、壮一とどう接していいのかわからなかった。
それは壮一も同じなのかもしれない。
あんな別れ方をしていなければ、思い出話や、会わなかった日の話をできたのかもしれない。
でも、今の二人にはそんな簡単に話ができない。そんな空気が流れていた。
無音だった車内に耐え切れなくなったのか、壮一がオーディオのボリュームを上げた。
車内から流れたのは、聞き覚えのあるメロディーだった。
「あれ?この曲……」
どこかで聞いたっけ?
日葵は記憶を辿るも思い出せず首を傾げた。
切なくて甘い、オーケストラで奏でられるその音楽は、驚くほど美しかった。
「エンディングにしようと思ってる」
すぐに今開発中のゲームの事だとわかり、日葵は耳を傾けた。
「すごく素敵」
素直に零れ落ちた言葉に嘘はなく、なぜか泣きたくなる。
壮大なRPGゲームのラストを飾るにはふさわしい曲だと思った。
戦い、人間模様、それらを美しい映像と、音楽が彩る。
そう思うと、日葵が改めて壮一のすごさを感じた。
「やっぱり、天才だね」
自然と零れ落ちた言葉に返事があるとは思わなかったが、壮一から意外な言葉が降ってきた。
「それなら日葵のお陰だろ」
「え?私の?」
あまりにも意外な言葉に、日葵は自分の耳を疑った。
「俺がピアノを始めたのは日葵の為だよ」
初めて聞く壮一の話に、日葵は啞然として壮一をみた。
「どうして?」
その問いに、久しぶりに見る壮一の笑顔に日葵はドキッとした。
「小さいころ日葵がピアノを弾くと笑ったから」
その言葉に、日葵の心はギュッと潰されるような気がした。
それ以上会話することなく、すぐにマンションへのエントランスに着き、日葵は壮一をチラリとみた。
(どうしてエントランス?駐車場は地下だよね……)
そんな思いから日葵は、小さな声で問いかけた。
「チーフ……車は停めないんですか?」
「いいから、長谷川早く帰って寝ろ。顔色が悪い」
日葵を見ることなく言った壮一の言葉に、日葵は言葉を止めた。
長谷川と呼ばれたら、もうなにも言えず日葵は車を降りた。
「ありがとうございました」
呟くように言った日葵に、壮一は何か言いたそうな表情を見せたが、そのまま視線を逸らすと車はすぐに元来た道へと消えていった。
「まだ仕事残ってたんじゃない……」
とっくに見えなくなった車に、日葵は独り言ちた。
壮一の優しさに気づきたくなくて、日葵はキュッと踵を返すと急いで自分の部屋へと帰った。
「ここで降ろして欲しい」そう言えればいいたいところだが、帰る場所は同じ。
この何年かの会わなかった時間を、簡単に埋められないのは、あまりにもそれ以前が濃い時間を過ごしたせいかもしれない。
あれだけ生まれた時から一緒にいたからこそ、日葵には大人になった今、壮一とどう接していいのかわからなかった。
それは壮一も同じなのかもしれない。
あんな別れ方をしていなければ、思い出話や、会わなかった日の話をできたのかもしれない。
でも、今の二人にはそんな簡単に話ができない。そんな空気が流れていた。
無音だった車内に耐え切れなくなったのか、壮一がオーディオのボリュームを上げた。
車内から流れたのは、聞き覚えのあるメロディーだった。
「あれ?この曲……」
どこかで聞いたっけ?
日葵は記憶を辿るも思い出せず首を傾げた。
切なくて甘い、オーケストラで奏でられるその音楽は、驚くほど美しかった。
「エンディングにしようと思ってる」
すぐに今開発中のゲームの事だとわかり、日葵は耳を傾けた。
「すごく素敵」
素直に零れ落ちた言葉に嘘はなく、なぜか泣きたくなる。
壮大なRPGゲームのラストを飾るにはふさわしい曲だと思った。
戦い、人間模様、それらを美しい映像と、音楽が彩る。
そう思うと、日葵が改めて壮一のすごさを感じた。
「やっぱり、天才だね」
自然と零れ落ちた言葉に返事があるとは思わなかったが、壮一から意外な言葉が降ってきた。
「それなら日葵のお陰だろ」
「え?私の?」
あまりにも意外な言葉に、日葵は自分の耳を疑った。
「俺がピアノを始めたのは日葵の為だよ」
初めて聞く壮一の話に、日葵は啞然として壮一をみた。
「どうして?」
その問いに、久しぶりに見る壮一の笑顔に日葵はドキッとした。
「小さいころ日葵がピアノを弾くと笑ったから」
その言葉に、日葵の心はギュッと潰されるような気がした。
それ以上会話することなく、すぐにマンションへのエントランスに着き、日葵は壮一をチラリとみた。
(どうしてエントランス?駐車場は地下だよね……)
そんな思いから日葵は、小さな声で問いかけた。
「チーフ……車は停めないんですか?」
「いいから、長谷川早く帰って寝ろ。顔色が悪い」
日葵を見ることなく言った壮一の言葉に、日葵は言葉を止めた。
長谷川と呼ばれたら、もうなにも言えず日葵は車を降りた。
「ありがとうございました」
呟くように言った日葵に、壮一は何か言いたそうな表情を見せたが、そのまま視線を逸らすと車はすぐに元来た道へと消えていった。
「まだ仕事残ってたんじゃない……」
とっくに見えなくなった車に、日葵は独り言ちた。
壮一の優しさに気づきたくなくて、日葵はキュッと踵を返すと急いで自分の部屋へと帰った。
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