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優しくしないで
第2話
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「そうか」
少しだけ考えるような表情をした崎本が、何か言いかけたところで、会社へと着いてこの話はここで終わりとなった。
「長谷川、無理をするなよ」
それだけを言うと、崎本は自分のフロアへと向かうべく歩いて行った。
ホッとしたのもつかの間、今から壮一と会わなければいけないという現実はなくならない。
なんとか気持ちを立て直すと、日葵はフロアの自動ドアにIDをかざす。
「おはようございます」
個々のブースになっているため、誰がいるのかわからなかったが、とりあえず言葉を発するとすぐに「おはよう」と声が返って来る。
「調子はどう?大丈夫?」
柔らかな笑みをたたえた、村瀬に日葵はすぐに頭を下げた。
「昨日は申し訳ありませんでした」
「いや、こっちこそあの後打ち合わせが長引いて会えなかったから、仕事させて悪かったな」
ヘッドフォンを外して日葵の方に向いた村瀬に、日葵は首を横に振った。
「いえ、本当にご迷惑をおかけしました」
「今日も無理するなよ。これからもっと忙しくなるから」
その言葉に、日葵もカレンダーへと目を向ける。
「はい、でも、声優さんたちの日程やとかイベントの手配とかも山住なので」
その言葉に、村瀬は申し訳なさそうに顔をゆがめた。
「悪い、そうだよな。長谷川さんに頼りきりだよな……あっ、おい壮一!」
そこへフロアの更に奥にある、仮眠や打ち合わせができる部屋から出てきた壮一に村瀬は声を掛ける。
冷静を装うも、日葵の心が大きく音を立てた。
「なんだ?」
そんな日葵を気にする様子もなく、完全に仕事モードに入った壮一は表情を変えず村瀬をみた。
「チーフとしての初仕事。もう一人アシスタント入れろよ。これじゃあ長谷川さんがいつ倒れるかわからない」
その言葉に、壮一の視線が日葵へと向く。
「長谷川。そうなのか?」
初めて見る上司の顔に、日葵はあ然としつつ壮一を見た。
「長谷川!どうなんだ?」
「いえ、あの……」
言い淀んだ日葵に、壮一は小さくため息をはくと言葉を投げる。
「自分の今の仕事を持って、俺の部屋へ」
有無を言わさない指示に日葵は小さく返事を返した。
日葵は壮一のデスクの前で、ジッと立っていた。
今の進行状況や、仕事の内容を説明した後、壮一は日葵の資料とスケジュールを確認していた。
「なんだこれは」
しばらくして発せられた言葉に、日葵はビクッとした。
「社長も急いだな……」
そう呟いた壮一に日葵は驚いて顔を上げた。
「悪かったな。これだけの負担をお前に。何分、初めての事業だからきちんと統率がとれてなかったな。元春も完全に技術畑だし。これも、あれも全部本部の管理部に回せ。長谷川は雑用はやらなくていい」
「え……?」
大きく息を吐いて、手を組んで日葵を見上げた壮一の言葉の意味が日葵にはわからなかった。
「誠さんの思いつきもあるだろ?このゲーム業界への参入」
「あっ……すみません」
(父の思い付きそう言えばそうかもしれない……)
もちろん魅力的な市場で、今後拡大したい分野だったことは確かだったが、いきなり参入すると言い出した時は確かに驚いたし、その後は急速に話が進んだような気がする。
妙に納得し、なぜか日葵は謝罪の言葉を述べていた。
「いや、違う。俺のせいだな」
呟くように言った壮一に日葵は戸惑いを隠せなかった。
「俺の帰国も遅くなったから。早急に業務の改善とスタッフの増員をするから、もう少し頑張ってくれ」
完璧な上司の姿の壮一に、日葵は「はい」と無意識に言葉が零れ落ちた。
少しだけ考えるような表情をした崎本が、何か言いかけたところで、会社へと着いてこの話はここで終わりとなった。
「長谷川、無理をするなよ」
それだけを言うと、崎本は自分のフロアへと向かうべく歩いて行った。
ホッとしたのもつかの間、今から壮一と会わなければいけないという現実はなくならない。
なんとか気持ちを立て直すと、日葵はフロアの自動ドアにIDをかざす。
「おはようございます」
個々のブースになっているため、誰がいるのかわからなかったが、とりあえず言葉を発するとすぐに「おはよう」と声が返って来る。
「調子はどう?大丈夫?」
柔らかな笑みをたたえた、村瀬に日葵はすぐに頭を下げた。
「昨日は申し訳ありませんでした」
「いや、こっちこそあの後打ち合わせが長引いて会えなかったから、仕事させて悪かったな」
ヘッドフォンを外して日葵の方に向いた村瀬に、日葵は首を横に振った。
「いえ、本当にご迷惑をおかけしました」
「今日も無理するなよ。これからもっと忙しくなるから」
その言葉に、日葵もカレンダーへと目を向ける。
「はい、でも、声優さんたちの日程やとかイベントの手配とかも山住なので」
その言葉に、村瀬は申し訳なさそうに顔をゆがめた。
「悪い、そうだよな。長谷川さんに頼りきりだよな……あっ、おい壮一!」
そこへフロアの更に奥にある、仮眠や打ち合わせができる部屋から出てきた壮一に村瀬は声を掛ける。
冷静を装うも、日葵の心が大きく音を立てた。
「なんだ?」
そんな日葵を気にする様子もなく、完全に仕事モードに入った壮一は表情を変えず村瀬をみた。
「チーフとしての初仕事。もう一人アシスタント入れろよ。これじゃあ長谷川さんがいつ倒れるかわからない」
その言葉に、壮一の視線が日葵へと向く。
「長谷川。そうなのか?」
初めて見る上司の顔に、日葵はあ然としつつ壮一を見た。
「長谷川!どうなんだ?」
「いえ、あの……」
言い淀んだ日葵に、壮一は小さくため息をはくと言葉を投げる。
「自分の今の仕事を持って、俺の部屋へ」
有無を言わさない指示に日葵は小さく返事を返した。
日葵は壮一のデスクの前で、ジッと立っていた。
今の進行状況や、仕事の内容を説明した後、壮一は日葵の資料とスケジュールを確認していた。
「なんだこれは」
しばらくして発せられた言葉に、日葵はビクッとした。
「社長も急いだな……」
そう呟いた壮一に日葵は驚いて顔を上げた。
「悪かったな。これだけの負担をお前に。何分、初めての事業だからきちんと統率がとれてなかったな。元春も完全に技術畑だし。これも、あれも全部本部の管理部に回せ。長谷川は雑用はやらなくていい」
「え……?」
大きく息を吐いて、手を組んで日葵を見上げた壮一の言葉の意味が日葵にはわからなかった。
「誠さんの思いつきもあるだろ?このゲーム業界への参入」
「あっ……すみません」
(父の思い付きそう言えばそうかもしれない……)
もちろん魅力的な市場で、今後拡大したい分野だったことは確かだったが、いきなり参入すると言い出した時は確かに驚いたし、その後は急速に話が進んだような気がする。
妙に納得し、なぜか日葵は謝罪の言葉を述べていた。
「いや、違う。俺のせいだな」
呟くように言った壮一に日葵は戸惑いを隠せなかった。
「俺の帰国も遅くなったから。早急に業務の改善とスタッフの増員をするから、もう少し頑張ってくれ」
完璧な上司の姿の壮一に、日葵は「はい」と無意識に言葉が零れ落ちた。
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