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07.ななつめ
08.漆黒の龍(その3)
しおりを挟むふと、レアがある事に気が付いた。
「あれ、いつも僕の頭の上で寝ている白蛇さんがいない。」
「まさか、漆黒の龍に見られて体ごと消えてしまったのかな。」
レアは、慌てて白蛇を探した。
「これ、レア殿、わしはここにおる。」
その言葉を聞いたレアが振り向くと、小さな体の白蛇が、レアの足元からするすると頭の上へと上っていった。
「白蛇さん。どこに行っていたの、探したんだよ。」
「すまんな。皆の攻撃が始まる前からあの龍の近くで観察しておったのだ。」
「それでな、少し面白い事がわかったのだが、聞きたくはないか。」
白蛇は、いつもは、レアの頭上で寝てばかりいるのだが、今回に限っては、自ら動いて"漆黒の龍"を観察していたらしい。
皆は、"炎の女神(免停中)"の"炎の竜巻"により廃墟と化した家屋の地下室で、レアの頭の上でとぐろを巻く白蛇の言葉を待った。
「皆が"漆黒の龍"へ放った攻撃は、どれも効いておった。ただ、与えたダメージを回復する能力が尋常ではない。」
「あやつの回復能力があれば、何度攻撃を繰り返しても、何度でも復活するであろう。」
「ただしじゃ、攻撃の回数が増える度に、与えたダメージから回復に要する時間が増えておった。」
「あやつは、この街の住民や街を守る兵士の魂を喰らっておった。じゃが、最近はどうじゃ。既にこの街の住民は殆どおらん。」
「この街を守っておった兵士もじゃ。」
「もしかすると、あやつは、皆の攻撃による回復に今まで吸い尽くした魂を使っておるのではないか。」
「もし、そうならこの街の住民は、あの龍の魂を食われて殆どおらん。このまま住民の魂を喰らわずにおれば、いずれは我々の攻撃によるダメージの回復が間に合わなくなるのではないか。」
ディオネ、レア、アイスは、お互いの顔を見て"それが正解だ"と理解した。ただ、ラディは、興味がないのでそっぽを向いていた。
「じゃが、あの龍が回復できなくなるまで疲弊する迄に要する期間が見当もつかん。」
「気が付いたら、あの龍に逃げられて他の街を襲われでもしたらもう、それこ同じ事の繰り返しじゃ。」
つまり、"漆黒の龍"をこの街から出さない様に足止めをしつつ、先ほどの様な攻撃を続ける必要があるということだ。
これもいささか現実的では無かった。
ディオネ、レア、アイス、ラディも生きているのだ。あの様な攻撃を繰り返していれば、そう遠くない時に力を使い果たすのは
明らかであった。
「ただな、もうひとつやつを観察して分かった事がある。あやつの額には"宝珠"が埋め込まれておる。」
「龍の額に宝珠などあるなど聞いた事がない。」
「誰かに額に"宝珠"を埋め込まれたのであれば、何か理由があるのであろうな。」
「それとな、"炎の女神(免停中)"による攻撃で、その"宝珠"にヒビが入ったようじゃ。」
「小さなヒビだが、あの額の"宝珠"が、あやつの力の源であったなら、あの"宝珠"を破壊すれば何か先が見えるかも知れんのう。」
すると、アイスが面白い事を言い出した。
「お伽噺とかでありがちなんですが、ああいった"宝珠"を破壊すると、死んでしまうとかよくあるじゃないですか。」
「あくまでお伽噺の中のお話ですよ。」
「アイス、あなたよくそんなお伽噺を知っているわね。」
「ええ、ダンジョンマスターをしている時に、ダンジョンの最奥でする事もないので、女神様に書物を持ってきてもらいました。」
「その書物の中に、そんなお話があったと思いました。」
アイスの話は、所詮お伽噺の中のは出来事だ。
ディオネは、一旦はそう考えた。だが、他に打つ手はないのだ。
ならば、やってみる価値はありだと考えた。
「そうね。いい発想かも。どうせ手詰まりで先が見えない以上、やってみる価値はあるかもね。」
まずは本当に、額の宝珠にダメージを与える事ができるのか、もう一度確認をする事にした。
それには、"炎の女神(免停中)"による最強最大の攻撃が必要であった。ただし、それは1日1回限定だった。
ディオネ達は、"炎の女神(免停中)"が1日1回の攻撃ができる様になるまで、断続的に"漆黒の龍"への攻撃を続けた。
"漆黒の龍"が他の街へ移動しないための足止めと"回復力"を消耗させるためだ。
次の日。
炎の女神は、最強最大の攻撃"破滅の楽園"を"漆黒の龍"へと放った。
「1日1回限定だからね。全力で行くからね。」
"炎の女神(免停中)"は、ありったけの力を溜めると目の前の極小さな白い光を放つ火球を出現させた。
"炎の女神(免停中)"は、それを"漆黒の龍"の面前にめがけて、勢いよく飛ばした。
"炎の女神(免停中)"が飛ばした、極小さな白い光を放つ火球は、ふよふよと力なく"漆黒の龍"の面前に到達した。
"漆黒の龍"は、面前に突然現れた極小さな白い光を放つ火球に一瞬動揺したが、すぐに目からあの赤い光を放った。
しかし、"炎の女神(免停中)"が飛ばした、極小さな白い光を放つ火球には何の影響を及ぼす事はなかった。
極小さな白い光を放つ火球は、さらに光の強さを増すと、火珠はどんどん大きくなっていった。
「みんな地下室に逃げて、熱と衝撃波が来るわよ。」
"炎の女神(免停中)"が突然大声を発した。
みんなは、いそいで宿屋の地下室へと走り込んだ。
最後に地下室に逃げ込んだディオネがドアを閉めると、アイスが氷でドアを氷の分厚い壁で凍結させた。その瞬間。
ドアの隙間からまばゆい光が差し込み、アイスが作り出した分厚い氷の壁が眩く光り出した。
ディオネ、レア、アイス、ラディも、地下室のすみに体をかがませると、頭の上に毛布を被った。
その瞬間、今迄に聞いた事もないような、爆音が響き渡った。
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