73 / 119
06.むっつめ
06.スキルの持ち主(その4)
しおりを挟むディオネの"炎の女神"の攻撃が通じず一進一退を繰り返していた。
"炎の女神"は、巨大な白い蛇の体内へと侵入すると、女神が纏う炎を一気に外向きに開放した。
巨大な白い蛇の体は、爆散した。
巨大な白い蛇の体のい日歩は、骨と皮を残して肉辺となって辺り一面に飛び散った。
しかし、相手が巨大な体を有した蛇のため、炎の女神"の爆散攻撃でも破壊できる体は部分的だった。
しかも、元ヒドラのラディを遥かに超える治癒力と回復力を有していた。
巨大な白い蛇"は、炎の女神"の爆散攻撃を受けるそばから再生を繰り返し、攻撃から数秒の後には、破壊された体の一部は全回復していた。
そんな闘いを繰り返している闘いの場に、巨大な白い蛇の尻尾で村外れの林へと飛ばされたラディが戻ってきた。
体は、血だらけであちこちに枝やら葉っぱを纏い土にまみれていた。
「よくもやったなー。」
ラディは、土と葉っぱにまみれた顔であったが、それでも顔は真っ赤になっているのが分かる程、頭に血が上っているのが分かった。
「あっ、ラディ待ちなさい。」
ディオネは、猪突猛進するラディに静止するよう呼びかけたが、ラディの耳にディオネの言葉など届いてはいなかった。
手のひらにためた猛毒の巨大な塊を持ち、巨大な白い蛇の前へと全速力で走り出ると、先ほどと同じ様に猛毒の塊を巨大な白い蛇へと投げつけた。
すると、巨大な白い蛇は、その猛毒の塊をいとも簡単に尻尾ではじき返した。
ラディは、猛毒の塊を投げた姿勢のまま、巨大な白い蛇の尻尾ではじき返された自身が投げた猛毒を頭から被る羽目になった。
緑色のドロドロの液体を全身にかぶり、ただのスライムと化したラディは、その場に立ち尽くしていた。
ラディの攻撃は、何をやっても攻撃が全く通じなかったのだ。
そして、巨大な白い蛇の尻尾により先ほどと同じ村外れの林へと飛ばされていった。
「もう、ラディは何をやっているの。私が"炎の女神"で蛇の体に穴を開けたら、そこに毒を流し込んでくれればいいのに、あれじゃ全く戦力になってないじゃない。」
ディオネは、連携攻撃ができないラディに苦言を呈していた。
「ディオネ様。ディオネ様の攻撃で蛇の体に穴があいたら、私の氷で固めてしまいましょう。」
「もしかしたら蛇の修復を妨害できるかもしれません。」
「わかったわ。」
ディオネは、アイスの申し出を素直に受け入れた。
アイスは、ラディやディオネの攻撃を後方から見て、対処方法を考えていたのだ。
ディオネが、"炎の女神"による爆散攻撃を行い、巨大な白い蛇の体に大穴を開けた。
すると、アイスは巨大な白い蛇の体の大穴に氷塊を次々と作り、蛇の体の穴の周囲の体も氷結させた。
アイスの氷による巨大な白い蛇への攻撃は、効果てきめんだった。
巨大な白い蛇の体の修復は思う様にいかず、体の修復よりも"炎の女神"の爆散によるダメージが徐々に広がっていった。
巨大な白い蛇の体は、体の半分を既に失っており、体は氷結により身動きできなくなっていた。
巨大な白い蛇は、動けなくなった自身の体を振り返ると、空を仰ぎ見て何かを考えるしぐさをした後、地面に体を横たえると静かに動きを止めた。
そしてディオネとアイスの目の前に横たわる巨大な蛇の体は、静かに消滅していった。
ラディは、村の林から戻ってきた。
相変わらず血だらけで、枝と葉っぱと土まみれだった。
「ラディ終わったわよ。あなたもう少し人の話を聞きなさい。」
「あれじゃ勝てる相手にも勝てないじゃない。」
ディオネは、言う事を聞かないラディに苦言を呈したが、ラディは返事もぜず、いままで巨大な白い蛇の亡骸があった場所を凝視していた。
「あれ、ちょっとおかしいわよ。」
「女神様からのご神託では、蛇との闘いに勝つと本体の蛇が現れるから、そいつに協力を要請しなさいって言ってたわよ。」
「でも、本体ってどこ。何もいないじゃない。」
「レア。目を皿の様にして探しなさい。見つけられないと私達もこの世界も終わるわよ。」
「姉さん。その女神様のご神託って本当にあてになるの。」
「それは言わない約束よ。毎晩人の頭の中に愚痴を言ってくる女神様のご神託が、ただの愚痴の延長だったら私がバカみたいじゃない。」
ディオネとレア、アイスとラディの4人は、消滅した大蛇の痕跡が残る地面を探して歩いた。
すると、ラディが石の影の合間をこそこそ動く小さな生き物を見つけた。
ラディは、小さな体に似合わない速さで走ると、石の陰の合間を動く小さな生き物を素手で掴んだ。
ラディが素手で掴んだのは、小さな白蛇だった。
小さな白蛇は、ラディの手のひらの中で逃げようとあばれだしたため、ラディも小さな白蛇が逃げないようにと握る力を強くした。
「ばっ、ばかもの。そんなに強く握る出ない。身が、身が出てしまうではないか。」
突然、ラディが握っている小さな白蛇が言葉を発した。
「えっ、しゃべった。」
「言葉、話すんだ。」
「そりゃ、女神様が強力を要請しなさいって言ったくらいだから、意思の疎通くらいはできると思っていたけど、話せるんだ。」
皆が、話ができる蛇だと関心しきりのためか、ラディも小さな白蛇を握る手の力を緩めた。
すると小さな白蛇は、体を握っているラディの手に己の牙を差し込んだ。
牙からは、白蛇の猛毒がラディの体内へと流し込まれた。
元ヒドラのラディは、体内に猛毒を持っている。そんな毒持ちのラディに白蛇の猛毒が効くものなのか。
白蛇から流し込まれた猛毒は、ラディの体内のあらゆる場所へと到達した。
ラディの顔は、上気していた。そうラディは、白蛇の猛毒に酔っていたのだ。
「気持ちいい。こっ、この毒、いい毒だよ。こんないい毒は初めてだよ。」
「こんな気持ちのいい毒をもらったなら、お返しをしないとね。」
ラディは手に握られた小さな白蛇へのお返しとばかりに、握った手から毒をじわりど染み出させていた。
毒は、じわじわとラディの手にひぎられた小さな白蛇の体内へと浸透していった。
「こら、やめんか、お前さんの毒は少々きついのじゃ。」
ラディは、慌てて手のひらから毒を出すのを止めた。
ラディの手のひらに握られた小さな白蛇は、ラディの手のひらからにじみ出た毒の影響でぐったりとしていた。
「ラディ、その白蛇を死なせてはダメよ。」
「この世界を救う大切な協力者なんだから。」
ディオネに言われてはっとしたラディは、慌てて白蛇を握った手のひらから解毒剤を滲みださせ、ぐったりしている白蛇の解毒を始めた。
しばらくすると、ラディの手のひらに握られていた小さな白蛇が意識を取り戻した。
「お前さんの毒には、コクがあるのにキレもある。なかなか良い毒じゃった。」
するとラディが突然泣き出した。
「どうしたのじゃ。何か悪い事でも言うたか。」
「ううん。誰も僕の毒を褒めてくれる人なんていないんだ。初めて褒められたから嬉しくて。」
毒持ちの元ヒドラのラディとラディの手に握られた白蛇は、お互いを見つめ合いながら、毒話に花を咲かせていた。
「おふたりさん。毒話に花が咲いていところ悪いけど、こちらにも話しておきたい事があるの、ちょっといいかしら。」
ふたりの弾む会話にディオネが割って入った。
「なんじゃ。無粋なやつじゃ。男同士の毒話に入ってきおって。」
ラディの手に握られた小さな白い蛇は、己の立場を話始めた。
「わしもいまや土地神じゃ。」
「じゃが、わしを神と崇めてくれた村人を守ってやれなかった。」
「村人のいない山奥にいては、いずれ土地神としての力が衰えて、この世界に存在することすらできなくなるじゃろう。」
「そこでじゃ、わしに新しい土地神として守る土地とわしを神として崇めてくれる住人が欲しいの
じゃ。」
「どうじゃ、これが出来るのならおまえさん達に協力してやらん事もないぞ。」
ラディの手に握られた小さな白蛇が、小さな体に似合わない大きな交換条件を出してきた。
ディオネは、少し考えてから話始めた。
「土地って、他の神と被っても大丈夫?」
「その土地の神と折り合いが付けば問題ない。」
ディオネは、さらに考えた後、こう言い出した。
「そうね。姉さんの神殿の前に開いている土地があったわ。」
「あそこなら、人が住む家くらいは建てられるわ。それに、神殿に来る信徒さんや観光客には、適当な事を言って崇めてもらえば全て解決じゃない。」
ディオネは、悪だくみを考えていた。
つまり、火龍神殿にやって来る信徒や観光客相手に、白蛇の社を作って適当なご利益をでっちあげて参拝してもらおうというのだ。
「白蛇さん。うちの姉が主を務める火龍神殿の参拝客は、年間数十万人もいるの。その参道に社を
作ってあげる。きっと参拝客の1割でも社に来てくれたら、年間で数万人もの人が来てくれるわ。」
その話を聞いた白蛇の目の色が急に変わった。
ラディの手のなかに握られた小さな白蛇は、酒にでも酔ったかのようにふらつくと、ディオネの顔をまじまじと見た。
「どう、私達に協力してくれる。」
ラディの手の中に握られた小さな白蛇の目は、既に潤んでいた。まだ見ぬ社にあまたの信徒が並ぶ様を夢見ていた。
「お願いします。ぜひ社と信徒を!」
さっきまでの勢いとは真逆の態度を取り始めた白蛇だった。
※お詫び
体調が思わしくないため、次回分を休載するかもしれません。
ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。
純粋どくだみ茶
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる