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06.むっつめ

06.スキルの持ち主(その4)

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ディオネの"炎の女神"の攻撃が通じず一進一退を繰り返していた。

"炎の女神"は、巨大な白い蛇の体内へと侵入すると、女神が纏う炎を一気に外向きに開放した。
巨大な白い蛇の体は、爆散した。

巨大な白い蛇の体のい日歩は、骨と皮を残して肉辺となって辺り一面に飛び散った。
しかし、相手が巨大な体を有した蛇のため、炎の女神"の爆散攻撃でも破壊できる体は部分的だった。

しかも、元ヒドラのラディを遥かに超える治癒力と回復力を有していた。
巨大な白い蛇"は、炎の女神"の爆散攻撃を受けるそばから再生を繰り返し、攻撃から数秒の後には、破壊された体の一部は全回復していた。

そんな闘いを繰り返している闘いの場に、巨大な白い蛇の尻尾で村外れの林へと飛ばされたラディが戻ってきた。
体は、血だらけであちこちに枝やら葉っぱを纏い土にまみれていた。

「よくもやったなー。」

ラディは、土と葉っぱにまみれた顔であったが、それでも顔は真っ赤になっているのが分かる程、頭に血が上っているのが分かった。

「あっ、ラディ待ちなさい。」

ディオネは、猪突猛進するラディに静止するよう呼びかけたが、ラディの耳にディオネの言葉など届いてはいなかった。

手のひらにためた猛毒の巨大な塊を持ち、巨大な白い蛇の前へと全速力で走り出ると、先ほどと同じ様に猛毒の塊を巨大な白い蛇へと投げつけた。

すると、巨大な白い蛇は、その猛毒の塊をいとも簡単に尻尾ではじき返した。
ラディは、猛毒の塊を投げた姿勢のまま、巨大な白い蛇の尻尾ではじき返された自身が投げた猛毒を頭から被る羽目になった。

緑色のドロドロの液体を全身にかぶり、ただのスライムと化したラディは、その場に立ち尽くしていた。
ラディの攻撃は、何をやっても攻撃が全く通じなかったのだ。
そして、巨大な白い蛇の尻尾により先ほどと同じ村外れの林へと飛ばされていった。

「もう、ラディは何をやっているの。私が"炎の女神"で蛇の体に穴を開けたら、そこに毒を流し込んでくれればいいのに、あれじゃ全く戦力になってないじゃない。」

ディオネは、連携攻撃ができないラディに苦言を呈していた。

「ディオネ様。ディオネ様の攻撃で蛇の体に穴があいたら、私の氷で固めてしまいましょう。」

「もしかしたら蛇の修復を妨害できるかもしれません。」

「わかったわ。」

ディオネは、アイスの申し出を素直に受け入れた。
アイスは、ラディやディオネの攻撃を後方から見て、対処方法を考えていたのだ。

ディオネが、"炎の女神"による爆散攻撃を行い、巨大な白い蛇の体に大穴を開けた。
すると、アイスは巨大な白い蛇の体の大穴に氷塊を次々と作り、蛇の体の穴の周囲の体も氷結させた。

アイスの氷による巨大な白い蛇への攻撃は、効果てきめんだった。
巨大な白い蛇の体の修復は思う様にいかず、体の修復よりも"炎の女神"の爆散によるダメージが徐々に広がっていった。

巨大な白い蛇の体は、体の半分を既に失っており、体は氷結により身動きできなくなっていた。
巨大な白い蛇は、動けなくなった自身の体を振り返ると、空を仰ぎ見て何かを考えるしぐさをした後、地面に体を横たえると静かに動きを止めた。

そしてディオネとアイスの目の前に横たわる巨大な蛇の体は、静かに消滅していった。


ラディは、村の林から戻ってきた。
相変わらず血だらけで、枝と葉っぱと土まみれだった。

「ラディ終わったわよ。あなたもう少し人の話を聞きなさい。」

「あれじゃ勝てる相手にも勝てないじゃない。」

ディオネは、言う事を聞かないラディに苦言を呈したが、ラディは返事もぜず、いままで巨大な白い蛇の亡骸があった場所を凝視していた。

「あれ、ちょっとおかしいわよ。」

「女神様からのご神託では、蛇との闘いに勝つと本体の蛇が現れるから、そいつに協力を要請しなさいって言ってたわよ。」

「でも、本体ってどこ。何もいないじゃない。」

「レア。目を皿の様にして探しなさい。見つけられないと私達もこの世界も終わるわよ。」

「姉さん。その女神様のご神託って本当にあてになるの。」

「それは言わない約束よ。毎晩人の頭の中に愚痴を言ってくる女神様のご神託が、ただの愚痴の延長だったら私がバカみたいじゃない。」

ディオネとレア、アイスとラディの4人は、消滅した大蛇の痕跡が残る地面を探して歩いた。
すると、ラディが石の影の合間をこそこそ動く小さな生き物を見つけた。

ラディは、小さな体に似合わない速さで走ると、石の陰の合間を動く小さな生き物を素手で掴んだ。
ラディが素手で掴んだのは、小さな白蛇だった。



小さな白蛇は、ラディの手のひらの中で逃げようとあばれだしたため、ラディも小さな白蛇が逃げないようにと握る力を強くした。

「ばっ、ばかもの。そんなに強く握る出ない。身が、身が出てしまうではないか。」

突然、ラディが握っている小さな白蛇が言葉を発した。

「えっ、しゃべった。」

「言葉、話すんだ。」

「そりゃ、女神様が強力を要請しなさいって言ったくらいだから、意思の疎通くらいはできると思っていたけど、話せるんだ。」

皆が、話ができる蛇だと関心しきりのためか、ラディも小さな白蛇を握る手の力を緩めた。
すると小さな白蛇は、体を握っているラディの手に己の牙を差し込んだ。

牙からは、白蛇の猛毒がラディの体内へと流し込まれた。
元ヒドラのラディは、体内に猛毒を持っている。そんな毒持ちのラディに白蛇の猛毒が効くものなのか。

白蛇から流し込まれた猛毒は、ラディの体内のあらゆる場所へと到達した。
ラディの顔は、上気していた。そうラディは、白蛇の猛毒に酔っていたのだ。

「気持ちいい。こっ、この毒、いい毒だよ。こんないい毒は初めてだよ。」

「こんな気持ちのいい毒をもらったなら、お返しをしないとね。」

ラディは手に握られた小さな白蛇へのお返しとばかりに、握った手から毒をじわりど染み出させていた。
毒は、じわじわとラディの手にひぎられた小さな白蛇の体内へと浸透していった。

「こら、やめんか、お前さんの毒は少々きついのじゃ。」

ラディは、慌てて手のひらから毒を出すのを止めた。
ラディの手のひらに握られた小さな白蛇は、ラディの手のひらからにじみ出た毒の影響でぐったりとしていた。

「ラディ、その白蛇を死なせてはダメよ。」

「この世界を救う大切な協力者なんだから。」

ディオネに言われてはっとしたラディは、慌てて白蛇を握った手のひらから解毒剤を滲みださせ、ぐったりしている白蛇の解毒を始めた。



しばらくすると、ラディの手のひらに握られていた小さな白蛇が意識を取り戻した。

「お前さんの毒には、コクがあるのにキレもある。なかなか良い毒じゃった。」

するとラディが突然泣き出した。

「どうしたのじゃ。何か悪い事でも言うたか。」

「ううん。誰も僕の毒を褒めてくれる人なんていないんだ。初めて褒められたから嬉しくて。」

毒持ちの元ヒドラのラディとラディの手に握られた白蛇は、お互いを見つめ合いながら、毒話に花を咲かせていた。

「おふたりさん。毒話に花が咲いていところ悪いけど、こちらにも話しておきたい事があるの、ちょっといいかしら。」

ふたりの弾む会話にディオネが割って入った。

「なんじゃ。無粋なやつじゃ。男同士の毒話に入ってきおって。」

ラディの手に握られた小さな白い蛇は、己の立場を話始めた。

「わしもいまや土地神じゃ。」

「じゃが、わしを神と崇めてくれた村人を守ってやれなかった。」

「村人のいない山奥にいては、いずれ土地神としての力が衰えて、この世界に存在することすらできなくなるじゃろう。」

「そこでじゃ、わしに新しい土地神として守る土地とわしを神として崇めてくれる住人が欲しいの
じゃ。」

「どうじゃ、これが出来るのならおまえさん達に協力してやらん事もないぞ。」

ラディの手に握られた小さな白蛇が、小さな体に似合わない大きな交換条件を出してきた。
ディオネは、少し考えてから話始めた。

「土地って、他の神と被っても大丈夫?」

「その土地の神と折り合いが付けば問題ない。」

ディオネは、さらに考えた後、こう言い出した。

「そうね。姉さんの神殿の前に開いている土地があったわ。」

「あそこなら、人が住む家くらいは建てられるわ。それに、神殿に来る信徒さんや観光客には、適当な事を言って崇めてもらえば全て解決じゃない。」

ディオネは、悪だくみを考えていた。
つまり、火龍神殿にやって来る信徒や観光客相手に、白蛇の社を作って適当なご利益をでっちあげて参拝してもらおうというのだ。

「白蛇さん。うちの姉が主を務める火龍神殿の参拝客は、年間数十万人もいるの。その参道に社を
作ってあげる。きっと参拝客の1割でも社に来てくれたら、年間で数万人もの人が来てくれるわ。」

その話を聞いた白蛇の目の色が急に変わった。

ラディの手のなかに握られた小さな白蛇は、酒にでも酔ったかのようにふらつくと、ディオネの顔をまじまじと見た。

「どう、私達に協力してくれる。」

ラディの手の中に握られた小さな白蛇の目は、既に潤んでいた。まだ見ぬ社にあまたの信徒が並ぶ様を夢見ていた。

「お願いします。ぜひ社と信徒を!」

さっきまでの勢いとは真逆の態度を取り始めた白蛇だった。



※お詫び
体調が思わしくないため、次回分を休載するかもしれません。
ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。

純粋どくだみ茶
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