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02.ふたつめ
06.竜騎士見習い・対空編(その1)
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ティアナは、王国ではなく火龍神殿という"宗教団体"に所属する竜騎士見習いである。
通常の王国では、国を守るために騎士や軍隊を常設している。
他方教会は、教会を守るために神殿騎士や神官兵を常設している。
教会の場合、教会の所在地が複数の国をまたがる事が多いため神殿騎士は、ひとつの国の思想や思惑に縛られるないための対抗手段としての意味合いが強い。
また、物理的な意味で教会を守るという役目を担っているが、個々の教会の規模は王国と比べると微々たるものである。そのため王国程の神殿騎士や神官兵は常備していない。
さて火龍神殿はというと、神殿騎士、竜騎士、神官兵を常設していた。
ただし、神殿騎士の数も竜騎士の数も微々たるもので、神官兵に至っては神殿の警護と参拝者の安全確保を行う事が最大の目的としているため、30人程度の数しか常備していなかった。
ただ、この世界の"宗教団体"で竜騎士を常設しているところなど火龍神殿以外には存在しない。
だが、火龍神殿は"火龍"を祀るという特殊な場所であるため、龍や竜に関する事柄が他の王国や教会とはかなり異なっていた。
さらに火龍神殿は、生きている"火龍"を祀っているため、神殿の主たる"火龍"は、その存在そのものがこの世界の最大火力であり最大戦力であると言われていた。
火龍神殿の神殿騎士並びに竜騎士は、ふたつの使命を担っていた。
ひとつは、火龍神殿の主である"火龍"を守るという役目だ。
この世界の最大火力であり最大戦力を守るというのもいささかおかしな話だが、昔火龍暗殺を目論んだ王国があり、火龍神殿で暗殺者との闘いを繰り広げた事があったため、神殿の主の警護はとても重要な役目であった。
そしてもうひとつ、実はこちらの方が重要だった。
"火龍"を闘いの場にむやみに出さないというものだった。
火龍神殿の主は、はっきり言って"脳筋"だ。
そもそも闘いに秀でた"火龍"に頭を使わせるなど愚の骨頂以外の何物でもない。
火龍神殿の主である火龍は、闘いと聞くだけで護衛の騎士や神官を置いて闘いに飛んで行ってしまう困った性格をしていた。
闘いや話合いがこじれ、火龍が暴れて国が滅ぶことなど当たり前になってしまい、その後の戦後処理に莫大な金がかかるため、神殿の主である"火龍"の耳に"闘い"という言葉を入れない事が護衛の騎士や神官の最大の役目になっていた。
さて、火龍神殿の竜騎士は、特定の王国に属している訳ではないため、ある意味自由な存在であった。
他の王国内で発生した魔獣の大量発生に伴う討伐などにも神殿の主である"火龍"は、自らが進んで参加していた。この世界では、火龍神殿と懇意にしていない王国や教会など皆無だった。
だが、他国の竜騎士達の心境はいささか異なっていた。
火龍神殿の主である"火龍"は、この世界の空の絶対的覇者である。
それは、他の王国の竜騎士も認めていた。
だが、その意を狩る竜騎士は認めないというのが竜騎士界の理となっていた。
なので、火龍神殿の竜騎士と名乗っただけで、他の王国の竜騎士たちからは目の敵にされ、喧嘩の種にされていた。
だから他国の領空と飛ぶ時は、その王国の許可を得ていてもその国の竜騎士達から追いかけ回されることなど日常風景と化していた。
そんな背景の中、ティアナは今日もこの果てしなく広い空を縦横無尽に飛んでいた。
そう他国の空を気持ちよさそうに飛んでいた。
他国の竜騎士の目など全く気にもせずに。
他国の竜騎士に追いかけ回される事など全く気にせずに。
手紙で注文書を送ってきたエンデルの街の教会へ無事に注文の品物を届けたので、後はココの街へと戻るだけであった。
エンデルの街から飛び立ち少し離れた草原の小高い丘の上に降り立つと、アイテムバックからランチボックスとホーンラビットの肉を3つ程取り出す。
ホーンラビットの肉は、ティアナが駆る飛竜のキウイちゃんのお昼ご飯だ。
本来、飛竜は生きた魔獣を狩ってすぐに食べるので新鮮な魔獣の肉以外は食べないのだが、飛竜舎で生まれ育ったキウイには、そういったこだわりはないようで、与えた魔獣の肉はなんでも食べてくれた。
食事も終わり、見晴らしの良い草原の丘の上でティアナとキウイは、草原に寝転びのんびりとしていた。
草原の草の上を静かに流れる風が心地よくて思わずうとうとし始めた頃だった。
ティアナとキウイは、何かの気配を感じた。まだかなり遠いが明らかに敵意むき出しの気配だった。
"グアー。"
「キウイも気付いた?またあの人達かな。毎回毎回よくも面倒くさがらずに私達の事を探しに来てくれるね。関心しちょうぞ。」
「じゃあ、草原での休憩はこのあたりでおしまいにして、食後の運動は全力でいくよ。」
"カカカ。"
キウイは、両足で地面の土を掘り返すと、翼を何度もばたつかせて闘いの前のはやる気持ちを落ち着かせていた。
ティアナは、キウイの鞍に跨ると手綱を操り一気に空へと舞い上がった。
空へと舞い上がったティアナは、露骨な殺気が放たれている空の方角と高度を探った。
「キウイ、相手は飛竜が2体。多分いつもの人達。空の上をとって一気にけりをつけるよ。」
ティアナは、向かって来る相手よりさらに高度を上げ雲の切れ間から相手の飛竜を待ち構えた。
2体の飛竜は、エンデルの街へ向かって飛んでいた。
「いつものやつがエンデルの方向に飛んで行ったのは間違いなんだな。」
「はい、しかもライエスの街を襲った魔獣を全滅させたそうですが、守備隊の話では、火龍神殿の竜騎士と名乗ったそうです。小柄で女というか子供に見えたそうです。」
「ははは、他国の竜騎士で女は数える程しかいない。ましてそれが子供の竜騎士などありえん。」
「今まで何度もやつを追ってきたが、やつの飛竜を駆る腕前は相当なものだ。」
「若くても俺達とそんなに変わらない歳だろう。」
「そうであって欲しいですね。俺達より若くてあの腕前は勘弁願いたいです。」
飛竜で飛行中の2人は、マジックアイテムでお互いに話ができた。
無線がないこの世界では、貴重な通信手段なのだが、欠点は会話の届く範囲が極端に狭かった。
空の上という障害物が全くない場所ですら話せる範囲は、5km程度が限界だった。
だから竜騎士は、ハンドサインと日頃の訓練による連携動作の確認は絶やさなかった。
ふたりは、編隊飛行をしながら前方と地上付近を警戒していた。
2体の飛竜はの飛行高度は、雲の下を飛んではいるがそれでも普段飛ぶ高度からすればかなり上空を飛んでいた。
ただ、ティアナが好んで飛ぶ高度は、雲の遥か上の3000m付近だった。真冬だったら氷点下30度にもなる極寒の世界だ。さすがに真冬にそんな高度は飛べないので温暖な季節限定のお話。
温暖の季節でも気温は氷点下、空気も地上に比べるとかなり薄い。
そんな高度を飛ぶ飛竜は、いや龍も含めて殆どいない。
ティアナは誰もいない空を飛ぶことが好きでたまらなかった。
誰も飛ばない空なら誰にも邪魔されることもないからだ。
キウイの目にもティアナの目にも雲の下を飛行する2体の飛竜が確認できた。
ティアナは、飛竜の特徴とそれを操る竜騎士の癖からいつもちょっかいを出してくる竜騎士で間違いないと確信した。
ティアナは、キウイに指示を出すと雲の切れ間から一気に急降下を開始し、眼下を飛行する飛竜のすぐ後ろの位置へと滑り込んだ。
ティアナの前を飛行する2体の竜騎士も飛龍もティアナの存在には気が付かなかった。
それ程ティアナは音もなく静かに2体の飛竜の後ろに滑り込んだのだ。
ティアナの前を飛行する2体の竜騎士も飛龍もティアナの存在にいつまでも気が付かないため、キウイが我慢できずに口から威嚇音を発した。
するといきなり後方からの威嚇音で、初めて後ろにターゲットの飛竜がいることに気が付いた2体の飛竜は一瞬パニックに陥り編隊が乱れた。
威嚇音で後方を確認したふたりの竜騎士は、慌てたが一瞬で体勢を立て直した。
「敵襲!散開してやつの後方へ回り込め!」
「上から押さえつけてやつを地面に叩き落とせ。」
ティアナは、先行する竜騎士が後方を振り向いて確認した時に"手を振って挨拶"をした。
しかし、先行する竜騎士はティアナが友好の意思表示に手を振った事など見てはいなかった。
先行する2体の飛竜が左右に散開しながら旋回してティアナの操る飛竜の後方につけようと限界ギリギリの高速旋回を行いながら回り込む。
急激な加速度が竜騎士と飛竜の体を押し潰そうとするが、それを必死に堪える。
しかし、その時にはティアナとキウイは空を駆け上り遥か上空を飛んでいた。
「くそ、なんであんなに高く飛べるんだ。こっちはこの高度が限界なんだ。」
2体の飛竜と竜騎士は、自分達よりも遥か上空を飛ぶ飛竜を見て苦々しく思っていた。
ティアナは、自分に有利な高度での戦いに持ち込みたかったが、2体の飛竜は一向に上空へ上がってくる気配がなかった。
「ありゃ、この高度は嫌いなのかな。それとも高すぎた?しかたない高度を下げるかな。」
ティアナは、仕方なく相手に有利な高度で闘うことにした。
「くそ、俺達があの高さまで上がれない事に気付きやがったか。でもそんな高いところにはいつまでもいられんぞ。さあ、我慢比べだ。我慢できなくなって降りてきたところを落としてやる。」
しばらくすると、ティアナは徐々に高度を下げて2体の飛竜が飛ぶ高さへとやってきた。
しかも誘うかのように2体の飛竜の前方へと飛び出した。
「わざわざ俺達の前に飛んでくるとはバカなやつだ。」
2体の飛竜を操る竜騎士は、ティアナがわざと攻撃され易い前方に出たことに気づかない。
「よし、左右から囲って上から押さえつけるぞ。」
2体の飛竜は、ティアナの左右後方から一気に距離を縮めるとティアナの頭のすぐ後ろまで迫ってきていた。
「よし。いまだ一斉に飛竜を押し込んでやつを押さえつけろ。」
ティアナを目の敵にしていた竜騎士がティアナの体を飛竜の足で掴みかかろうとした。
通常の王国では、国を守るために騎士や軍隊を常設している。
他方教会は、教会を守るために神殿騎士や神官兵を常設している。
教会の場合、教会の所在地が複数の国をまたがる事が多いため神殿騎士は、ひとつの国の思想や思惑に縛られるないための対抗手段としての意味合いが強い。
また、物理的な意味で教会を守るという役目を担っているが、個々の教会の規模は王国と比べると微々たるものである。そのため王国程の神殿騎士や神官兵は常備していない。
さて火龍神殿はというと、神殿騎士、竜騎士、神官兵を常設していた。
ただし、神殿騎士の数も竜騎士の数も微々たるもので、神官兵に至っては神殿の警護と参拝者の安全確保を行う事が最大の目的としているため、30人程度の数しか常備していなかった。
ただ、この世界の"宗教団体"で竜騎士を常設しているところなど火龍神殿以外には存在しない。
だが、火龍神殿は"火龍"を祀るという特殊な場所であるため、龍や竜に関する事柄が他の王国や教会とはかなり異なっていた。
さらに火龍神殿は、生きている"火龍"を祀っているため、神殿の主たる"火龍"は、その存在そのものがこの世界の最大火力であり最大戦力であると言われていた。
火龍神殿の神殿騎士並びに竜騎士は、ふたつの使命を担っていた。
ひとつは、火龍神殿の主である"火龍"を守るという役目だ。
この世界の最大火力であり最大戦力を守るというのもいささかおかしな話だが、昔火龍暗殺を目論んだ王国があり、火龍神殿で暗殺者との闘いを繰り広げた事があったため、神殿の主の警護はとても重要な役目であった。
そしてもうひとつ、実はこちらの方が重要だった。
"火龍"を闘いの場にむやみに出さないというものだった。
火龍神殿の主は、はっきり言って"脳筋"だ。
そもそも闘いに秀でた"火龍"に頭を使わせるなど愚の骨頂以外の何物でもない。
火龍神殿の主である火龍は、闘いと聞くだけで護衛の騎士や神官を置いて闘いに飛んで行ってしまう困った性格をしていた。
闘いや話合いがこじれ、火龍が暴れて国が滅ぶことなど当たり前になってしまい、その後の戦後処理に莫大な金がかかるため、神殿の主である"火龍"の耳に"闘い"という言葉を入れない事が護衛の騎士や神官の最大の役目になっていた。
さて、火龍神殿の竜騎士は、特定の王国に属している訳ではないため、ある意味自由な存在であった。
他の王国内で発生した魔獣の大量発生に伴う討伐などにも神殿の主である"火龍"は、自らが進んで参加していた。この世界では、火龍神殿と懇意にしていない王国や教会など皆無だった。
だが、他国の竜騎士達の心境はいささか異なっていた。
火龍神殿の主である"火龍"は、この世界の空の絶対的覇者である。
それは、他の王国の竜騎士も認めていた。
だが、その意を狩る竜騎士は認めないというのが竜騎士界の理となっていた。
なので、火龍神殿の竜騎士と名乗っただけで、他の王国の竜騎士たちからは目の敵にされ、喧嘩の種にされていた。
だから他国の領空と飛ぶ時は、その王国の許可を得ていてもその国の竜騎士達から追いかけ回されることなど日常風景と化していた。
そんな背景の中、ティアナは今日もこの果てしなく広い空を縦横無尽に飛んでいた。
そう他国の空を気持ちよさそうに飛んでいた。
他国の竜騎士の目など全く気にもせずに。
他国の竜騎士に追いかけ回される事など全く気にせずに。
手紙で注文書を送ってきたエンデルの街の教会へ無事に注文の品物を届けたので、後はココの街へと戻るだけであった。
エンデルの街から飛び立ち少し離れた草原の小高い丘の上に降り立つと、アイテムバックからランチボックスとホーンラビットの肉を3つ程取り出す。
ホーンラビットの肉は、ティアナが駆る飛竜のキウイちゃんのお昼ご飯だ。
本来、飛竜は生きた魔獣を狩ってすぐに食べるので新鮮な魔獣の肉以外は食べないのだが、飛竜舎で生まれ育ったキウイには、そういったこだわりはないようで、与えた魔獣の肉はなんでも食べてくれた。
食事も終わり、見晴らしの良い草原の丘の上でティアナとキウイは、草原に寝転びのんびりとしていた。
草原の草の上を静かに流れる風が心地よくて思わずうとうとし始めた頃だった。
ティアナとキウイは、何かの気配を感じた。まだかなり遠いが明らかに敵意むき出しの気配だった。
"グアー。"
「キウイも気付いた?またあの人達かな。毎回毎回よくも面倒くさがらずに私達の事を探しに来てくれるね。関心しちょうぞ。」
「じゃあ、草原での休憩はこのあたりでおしまいにして、食後の運動は全力でいくよ。」
"カカカ。"
キウイは、両足で地面の土を掘り返すと、翼を何度もばたつかせて闘いの前のはやる気持ちを落ち着かせていた。
ティアナは、キウイの鞍に跨ると手綱を操り一気に空へと舞い上がった。
空へと舞い上がったティアナは、露骨な殺気が放たれている空の方角と高度を探った。
「キウイ、相手は飛竜が2体。多分いつもの人達。空の上をとって一気にけりをつけるよ。」
ティアナは、向かって来る相手よりさらに高度を上げ雲の切れ間から相手の飛竜を待ち構えた。
2体の飛竜は、エンデルの街へ向かって飛んでいた。
「いつものやつがエンデルの方向に飛んで行ったのは間違いなんだな。」
「はい、しかもライエスの街を襲った魔獣を全滅させたそうですが、守備隊の話では、火龍神殿の竜騎士と名乗ったそうです。小柄で女というか子供に見えたそうです。」
「ははは、他国の竜騎士で女は数える程しかいない。ましてそれが子供の竜騎士などありえん。」
「今まで何度もやつを追ってきたが、やつの飛竜を駆る腕前は相当なものだ。」
「若くても俺達とそんなに変わらない歳だろう。」
「そうであって欲しいですね。俺達より若くてあの腕前は勘弁願いたいです。」
飛竜で飛行中の2人は、マジックアイテムでお互いに話ができた。
無線がないこの世界では、貴重な通信手段なのだが、欠点は会話の届く範囲が極端に狭かった。
空の上という障害物が全くない場所ですら話せる範囲は、5km程度が限界だった。
だから竜騎士は、ハンドサインと日頃の訓練による連携動作の確認は絶やさなかった。
ふたりは、編隊飛行をしながら前方と地上付近を警戒していた。
2体の飛竜はの飛行高度は、雲の下を飛んではいるがそれでも普段飛ぶ高度からすればかなり上空を飛んでいた。
ただ、ティアナが好んで飛ぶ高度は、雲の遥か上の3000m付近だった。真冬だったら氷点下30度にもなる極寒の世界だ。さすがに真冬にそんな高度は飛べないので温暖な季節限定のお話。
温暖の季節でも気温は氷点下、空気も地上に比べるとかなり薄い。
そんな高度を飛ぶ飛竜は、いや龍も含めて殆どいない。
ティアナは誰もいない空を飛ぶことが好きでたまらなかった。
誰も飛ばない空なら誰にも邪魔されることもないからだ。
キウイの目にもティアナの目にも雲の下を飛行する2体の飛竜が確認できた。
ティアナは、飛竜の特徴とそれを操る竜騎士の癖からいつもちょっかいを出してくる竜騎士で間違いないと確信した。
ティアナは、キウイに指示を出すと雲の切れ間から一気に急降下を開始し、眼下を飛行する飛竜のすぐ後ろの位置へと滑り込んだ。
ティアナの前を飛行する2体の竜騎士も飛龍もティアナの存在には気が付かなかった。
それ程ティアナは音もなく静かに2体の飛竜の後ろに滑り込んだのだ。
ティアナの前を飛行する2体の竜騎士も飛龍もティアナの存在にいつまでも気が付かないため、キウイが我慢できずに口から威嚇音を発した。
するといきなり後方からの威嚇音で、初めて後ろにターゲットの飛竜がいることに気が付いた2体の飛竜は一瞬パニックに陥り編隊が乱れた。
威嚇音で後方を確認したふたりの竜騎士は、慌てたが一瞬で体勢を立て直した。
「敵襲!散開してやつの後方へ回り込め!」
「上から押さえつけてやつを地面に叩き落とせ。」
ティアナは、先行する竜騎士が後方を振り向いて確認した時に"手を振って挨拶"をした。
しかし、先行する竜騎士はティアナが友好の意思表示に手を振った事など見てはいなかった。
先行する2体の飛竜が左右に散開しながら旋回してティアナの操る飛竜の後方につけようと限界ギリギリの高速旋回を行いながら回り込む。
急激な加速度が竜騎士と飛竜の体を押し潰そうとするが、それを必死に堪える。
しかし、その時にはティアナとキウイは空を駆け上り遥か上空を飛んでいた。
「くそ、なんであんなに高く飛べるんだ。こっちはこの高度が限界なんだ。」
2体の飛竜と竜騎士は、自分達よりも遥か上空を飛ぶ飛竜を見て苦々しく思っていた。
ティアナは、自分に有利な高度での戦いに持ち込みたかったが、2体の飛竜は一向に上空へ上がってくる気配がなかった。
「ありゃ、この高度は嫌いなのかな。それとも高すぎた?しかたない高度を下げるかな。」
ティアナは、仕方なく相手に有利な高度で闘うことにした。
「くそ、俺達があの高さまで上がれない事に気付きやがったか。でもそんな高いところにはいつまでもいられんぞ。さあ、我慢比べだ。我慢できなくなって降りてきたところを落としてやる。」
しばらくすると、ティアナは徐々に高度を下げて2体の飛竜が飛ぶ高さへとやってきた。
しかも誘うかのように2体の飛竜の前方へと飛び出した。
「わざわざ俺達の前に飛んでくるとはバカなやつだ。」
2体の飛竜を操る竜騎士は、ティアナがわざと攻撃され易い前方に出たことに気づかない。
「よし、左右から囲って上から押さえつけるぞ。」
2体の飛竜は、ティアナの左右後方から一気に距離を縮めるとティアナの頭のすぐ後ろまで迫ってきていた。
「よし。いまだ一斉に飛竜を押し込んでやつを押さえつけろ。」
ティアナを目の敵にしていた竜騎士がティアナの体を飛竜の足で掴みかかろうとした。
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