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18.火龍の神殿

36.王への罰。

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火龍(ベティ)は、城を崩壊させる前の体の色は茶色だった。
火龍(ベティ)の体の色は赤色をしているのだが、素性がばれるのを嫌って沼地で体に泥を塗りたくって茶色にしたのだ。
その後、倒壊した城の粉塵で体の白色に変わってしまった。

火龍(ベティ)は、神殿の神官から教えてもらったトロンヘイム王国の地図を思い出していた。

「この大きな川が見えたら川上を目指してください。しばらくすると大きな街が見えます。そこがトロンヘイム王国の王都です。大きなお城がありますからすぐにわかりますよ。」

「おっ、確かに大きな川があったぞ、あれを川上へ行くのじゃな。」

しばらく飛んでいると、大きな街が見えてきた。街の中央には巨大な城がそびえ立っていた。

「あれがトロンヘイム王国の王都か、あそこに忌々しい国王がおるのじゃな。」

火龍(ベティ)は、飛ぶ速度を落とさず城へ向かってどんどん高度を下げて飛んで行った。

もう城の城壁が目の前というところで龍の羽をばたつかせて飛ぶ速度を落としたが、飛ぶ速度が速すぎて城の城壁に激突した。
火龍(ベティ)は、城の城壁を次々と薙ぎ払いながらどうにか止まるころができた。
気が付くと城壁が瓦礫の山と化していた。



「王様、大変です、龍です、龍が城を攻めております。」

トロンヘイム王国の王様の側近が王に向かって城の外で起こっている大災害を報告した。

「城の城壁があっという間にに瓦礫の山と化しています。お逃げください。人の力でどうにかなるとは思えません。」

慌てふためく側近に対して王は、冷静に言った。

「その龍とやらは、赤い色をしているのか、それとも青い色をしているのか。」

「はい、龍は白い色をしております。」

「なんと、赤色なら火龍神殿の火龍、青色なら水神かと思ったが、白い色の龍か。」

「白い龍。以前、どこかで読んだ本に書いてあったはず。そうだ、昔読んだ神話の中に出てきた神龍がたしか白い色をしていると書いてあった。」

「白い龍。それは全ての神を統べる創造神が地上に降り立つ時に、変化して現れる時の姿だと書き記されていたはずしゃ。」

「まさか、わしが火龍と水龍を討てと命じたことに怒り、創造神様がわしを殺そうとしているのか。」

「逃げるぞ、わしは山奥の砦に逃げる。」

王は、慌てふためき側近が示す避難路を通って城を跡にした。
王が城から出てまもなく、後ろを振り向くと城が煙に飲み込まれながら倒壊していところだった。

「白い龍とは、あれほどの力を持っておるのか。あれでは王都が壊滅してしまう。」

王は、側近に手を引かれながらぶるぶると震える体に鞭を打って走った。

「わしは、創造神の怒りを買ってしまったのだ。もうこの世界では生きてゆけぬのか。」

崩れた城から巻き上がった粉塵が走る王のところまでやってきた。目の前が粉塵で白くなり目の前が何も見えなくなっていた。

「わしは死ぬのか、龍を殺せと命じた罰なのか。」

王は泣きながら走った。王の足は裸足だった。服も簡単なものだった。城から持ち出せた物は何もなかった。

白い龍は、王都の城で暴れたあと、何事もなかった様に空高く舞い上がり何処かへ飛んでいった。



俺達は、火龍神殿で待っているとベティが風魔法フライで飛んで戻ってきた。

「ベティ、お疲れ様。」

「榊殿、トロンヘイム王国の王に一泡拭かせてやったぞ。」

「国境近くの城を破壊していた所を見ていたけど、あれは凄かったぞ。」

俺は、笑って城が倒壊する様を見ていたことをそのまま話した。

「あれはな、塔の上で雄たけびを上げた後、逃げるつもりじゃったのじゃ。それがな、わしの
重さで塔が崩れてしまったのじゃ。さらにそのせいで他の城の建物の崩れてしまったのじゃ。」

「わしはあそこまでやるつもりはなかったのじゃ。」

俺は、ベティの頭を撫でた。こいつは、いつの間にか凄い事をひとりでやれるようになっていたんだ。体は子供に見えるが、いつまでも子供扱いしちゃだめか。
俺はそんな事を考えながらベティの頭を撫でていた。

「ときに榊殿、わしの頭の角に触ったな。それは求婚の合図か。なら、わしは今からでも結婚してもよいぞ。」

俺は、とっさにベティの頭から手をどけた。

「榊殿、なぜ手をどけたのじゃ。前々から言っておったのじゃ。求婚ならいつでも受けると。」

「わしの角に触った時点で、結婚してくれと言ったことと同義じゃぞ。」

「えー。ベティ様、榊さんと結婚するんですか。それはおめでとうございます。」

神官達は、ベティの結婚宣言と勘違いして喜び始めた。

「まってください。俺は結婚するなんて一言も言ってないですよ。」

おれがおろおろしていると、ベティが口から舌を出して笑っていた。

「くそ、騙しやがったな。」

ベティは笑っていたが、目は真剣だった。

「いつまでもこんな風に笑って過ごしたいもんじゃの。」



それからしばらくしてから火龍神殿にやって来る観光客の中に、トロンヘイム王国の民が多くなっていた。さらにその中から火龍神殿の信徒になる者が出始めた。

ふたつの国の間での往来が多くなり、商売や流通が盛んになり、両国とも以前に増して栄えていった。

トロンヘイム王国の国王は、山間の砦の地下に部屋を作り、そこから死ぬまで出てくることはなかった。

王は、白い龍の襲撃に怯えていた。さらに赤い龍(火龍)と青い龍(水龍)にも怯えていた。

王が勇者に複製させた"勇者の剣"と"龍殺しの剣"は、火龍(ベティ)が破壊した王都の城の瓦礫の奥深くに静かに埋もれていた。




あるとき、エルネス王国の国王が国境に出来た城塞の視察に来た。

「なんだこの城塞は。こんな堅牢な城を誰が作ったのだ。」

エルネス王国の王は、目の前に広がるあまりの巨大な城塞に度肝を抜かれていた。
さらに城塞の門の前には、10体の精工なゴーレムが立ち並んでいた。
王が城門の前に到着すると、10体の精工なゴーレム達が膝を付いて王に服従の礼を示した。

「誰が作ったのじゃ。こんな城を作ったら国の年間予算の何倍も必要ではないか。」

「はい、火龍神殿の火龍様の冒険者チームの榊殿です。」

王の側で話している者は、諜報部のあの人だった。

「この城塞は土魔法で瞬時に築城されたのです。私がこの目ではっきりと見ました。」

王は、城塞に入ると城壁の上にのぼった。諜報部の人は、国境の向こうにある瓦礫を指さした。

「王様、あれがトロンヘイム王国の城跡です。今は、城門が残るのみです。」

「榊殿は、言っていました。魔族国との闘いで使った魔法であれば、あの様な城は1分で破壊してみせると。さらに、10万や20万の軍勢も一瞬で全滅させられると。」

「王様、火龍神殿並びに火龍様のお仲間である榊殿の冒険者チームへは何があっても敵意を向けぬよう具申いたします。もし榊殿が御心を害された場合、この国が滅びます。この国が滅ばぬよう、あの者達へは、細心の注意を払っていただますよう伏してお願いいたします。」

トロンヘイム王国の城も堅牢な城のはずだが、その城を瞬時に破壊するなど神にも近い力を持っておると言うのか。

※トロンヘイム王国の城を破壊したの火龍(ベティ)です。
※"隕石の雨"の魔法が使えるのはレディです。
※主人公の榊は"剣技Lv3"以上のスキルは持っていないヘタレです。

「その榊という者といい、火龍神殿の新しい主になった火龍といい、神にも匹敵する力を持つ者が数多くいるのか。」

「はい、榊殿の冒険者チームには、神にも匹敵する力を持つ者が他にも何人もおります。くれぐれもお忘れなきように。」

王は、トロンヘイム王国の瓦礫の山を見て震えが止まらなくなっていた。

「わしは恐怖を感じる。そんな者が国の中におると思うだけでぞっとする。」

「王様、その恐怖心すら危のうございます。その者はこう申しておりました。もしお礼がしたいなら火龍神殿に届けてくれと。その者は、金には不自由しておりません。それは諜報部で確認しております。」

「何か神殿に相応しいものでもお送りすれば、王の体面も保たれるかと思われます。その者は、わが国に好意的です。それは救いでありましょう。」

「そうか、ならそうしてくれ。あまりの恐怖に夜も眠れなくなるところだった。」

皆、榊の力を勘違いしていた。榊は、何の特殊な力も持っていなかった。榊の周りに集まった人化した神器達やベティ(火龍)が強いだけなのだ。
この世界は、榊の事を別の方向に誤解していく者がどんどん増えていた。
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