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18.火龍の神殿
11.誕生。
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「クレア、デルナ、ステラ、わしは龍から龍神へと昇華したらしい。」
ベティが龍から龍神に昇華したことを3人の神官に告げた。
「えっ、えー。龍神様ですか。おっ、おめでとうございます。でもどうしたらよいのですか。とっ、とにかくお祝いですね。そうですお祝いをしましょう。」
クレア、デルナ、ステラが慌て始めた。
神官見習い達へは3人の神官からベティが龍神へと昇華したことが伝えられた。
誰も経験したことのない事態だったので、もう神殿内で神官達はただ右往左往するばかりだ。
そんな時、礼拝堂の奥に置いておいた卵に変化が現れた。
卵は、籠の中で毛布にくるまれ、湯を入れた壺をそばに置いて暖かくしていた。
「卵から音がするんです。もしかすると生まれるのかも。」
神官見習いが、卵から音がすると報告してきた。
「わかった。悪いがこの周りについたてを置いて、見えないようにしてくれ。」
「それとすまんが後はわしがやる。皆はついたての外で待っていてくれ。」
ベティがそういうと、卵に手をあてて中の様子を感じ取ろうとした。
たしかに、卵から出ようと龍の幼生達がもがいているのが分かった。
ベティは、手助けはできぬ。自分の力で出るのだと、卵の中の幼生達に向かって強い思いを送った。
卵の中の幼生達は、それに答えるようにさらに力強く卵から出ようとしていた。
神官達は、卵とベティの周りをついたてで囲い、周りからの視線を遮るようにした。
「ベティ様、大丈夫でしょうか。龍神に昇華されたばかりで体調がまだお戻りになっていないのに。」
「大丈夫ですよ。ベティ様は龍神なんだから。私達よりも何倍も体力があるわよ。」
神官達は、ついたての中に人が入らないように交代で見張りを立てて見守った。
それから数時間が経過した。
「おっ。卵が割れてきた。早く出てこい龍神の"おねーちゃん"が面倒を見てあげるぞ。」
ベティはワクワクしながら卵が孵るのを見守っていた。
「おおっ。卵が割れて何ぞ出てきた。やはり赤いか。火龍だな。」
「おっ、こっちも出てきたか。こっちも赤か。」
「よしよし、あと少しの辛抱じゃ。頑張るのじゃ。」
ベティが見守るなか、ふたつの卵から火龍の幼生が生まれた。
この火龍の神殿で初めて生まれた火龍だ。
ベティは、生まれたての火龍の幼生を布でくるんで抱きかかえた。
「生まれたばかりじゃから軽いな。」
「ははは。こんなに小さいのに背中に羽があるぞ。生意気なやつめ。」
「よいか、わしがおぬしらの"おねーちゃん"じゃ。忘れるでないぞ。」
ベティは、思わず涙ぐんでしまった。自分自身もこうやって生まれてきたのだろう。
その時のことなど覚えてはいない。でも、龍は皆そうやって生まれてくるのだ。
森の中なのか山の中なのか、どこかでひっそりと生まれた後は、全て自分の力だけで生きていかなければならないのだ。
生まれても殆どが魔獣に食べられてしまい大きくなれる龍など殆どいない。
そんな龍の幼生を抱いていると、とても愛おしくなってしまった。
ベティは、水神様に言われたように新鮮な肉を細かく刻んで小さく団子状にしたものを龍の幼生に与えてみた。
龍の幼生は、小さな肉団子をパクパク食べはじめた。
「さすが火龍じゃ。生まれて直ぐでも食欲旺盛じゃ。そうじゃ、たくさん食べるのじゃ。」
ベティは、いつのまにか言葉の語尾が水神様と同じになっていた。
そんなことに気付くはずもなく、ベティは涙を拭きながら龍の幼生に肉団子を食べさせていた。
「どうやら生まれたようですね。」
「まずは安心しました。でもこれからが大変ですよ。」
「龍の幼生なんて、私達は誰もお世話をしたことがないんですよ。」
「でもベティ様は、エルネス王国の水神様のところへ通っていると仰っていたので、いろいろ教えていただいたているはずです。ベティ様を信じましょう。」
神官達は、龍の幼生のお世話をどうするか皆で相談を始めたが、誰も経験がないので答えは出なかった。
ベティが龍から龍神に昇華したことを3人の神官に告げた。
「えっ、えー。龍神様ですか。おっ、おめでとうございます。でもどうしたらよいのですか。とっ、とにかくお祝いですね。そうですお祝いをしましょう。」
クレア、デルナ、ステラが慌て始めた。
神官見習い達へは3人の神官からベティが龍神へと昇華したことが伝えられた。
誰も経験したことのない事態だったので、もう神殿内で神官達はただ右往左往するばかりだ。
そんな時、礼拝堂の奥に置いておいた卵に変化が現れた。
卵は、籠の中で毛布にくるまれ、湯を入れた壺をそばに置いて暖かくしていた。
「卵から音がするんです。もしかすると生まれるのかも。」
神官見習いが、卵から音がすると報告してきた。
「わかった。悪いがこの周りについたてを置いて、見えないようにしてくれ。」
「それとすまんが後はわしがやる。皆はついたての外で待っていてくれ。」
ベティがそういうと、卵に手をあてて中の様子を感じ取ろうとした。
たしかに、卵から出ようと龍の幼生達がもがいているのが分かった。
ベティは、手助けはできぬ。自分の力で出るのだと、卵の中の幼生達に向かって強い思いを送った。
卵の中の幼生達は、それに答えるようにさらに力強く卵から出ようとしていた。
神官達は、卵とベティの周りをついたてで囲い、周りからの視線を遮るようにした。
「ベティ様、大丈夫でしょうか。龍神に昇華されたばかりで体調がまだお戻りになっていないのに。」
「大丈夫ですよ。ベティ様は龍神なんだから。私達よりも何倍も体力があるわよ。」
神官達は、ついたての中に人が入らないように交代で見張りを立てて見守った。
それから数時間が経過した。
「おっ。卵が割れてきた。早く出てこい龍神の"おねーちゃん"が面倒を見てあげるぞ。」
ベティはワクワクしながら卵が孵るのを見守っていた。
「おおっ。卵が割れて何ぞ出てきた。やはり赤いか。火龍だな。」
「おっ、こっちも出てきたか。こっちも赤か。」
「よしよし、あと少しの辛抱じゃ。頑張るのじゃ。」
ベティが見守るなか、ふたつの卵から火龍の幼生が生まれた。
この火龍の神殿で初めて生まれた火龍だ。
ベティは、生まれたての火龍の幼生を布でくるんで抱きかかえた。
「生まれたばかりじゃから軽いな。」
「ははは。こんなに小さいのに背中に羽があるぞ。生意気なやつめ。」
「よいか、わしがおぬしらの"おねーちゃん"じゃ。忘れるでないぞ。」
ベティは、思わず涙ぐんでしまった。自分自身もこうやって生まれてきたのだろう。
その時のことなど覚えてはいない。でも、龍は皆そうやって生まれてくるのだ。
森の中なのか山の中なのか、どこかでひっそりと生まれた後は、全て自分の力だけで生きていかなければならないのだ。
生まれても殆どが魔獣に食べられてしまい大きくなれる龍など殆どいない。
そんな龍の幼生を抱いていると、とても愛おしくなってしまった。
ベティは、水神様に言われたように新鮮な肉を細かく刻んで小さく団子状にしたものを龍の幼生に与えてみた。
龍の幼生は、小さな肉団子をパクパク食べはじめた。
「さすが火龍じゃ。生まれて直ぐでも食欲旺盛じゃ。そうじゃ、たくさん食べるのじゃ。」
ベティは、いつのまにか言葉の語尾が水神様と同じになっていた。
そんなことに気付くはずもなく、ベティは涙を拭きながら龍の幼生に肉団子を食べさせていた。
「どうやら生まれたようですね。」
「まずは安心しました。でもこれからが大変ですよ。」
「龍の幼生なんて、私達は誰もお世話をしたことがないんですよ。」
「でもベティ様は、エルネス王国の水神様のところへ通っていると仰っていたので、いろいろ教えていただいたているはずです。ベティ様を信じましょう。」
神官達は、龍の幼生のお世話をどうするか皆で相談を始めたが、誰も経験がないので答えは出なかった。
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