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18.火龍の神殿

05.村の魔獣退治。(その2)

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街の冒険者ギルドで大量に魔獣の部位が換金された話に尾ひれが付いて国中に広まっているらしい。

しかも、廃れたはずの火龍の神殿に新たな火龍様がおいでになったという話も伝わったことで、近隣の村から魔獣退治の依頼が火龍の神殿に来始めたのだ。
ベティは、神官達と相談して近隣の村の魔獣退治を承諾した。

ベティは食べるのは好きだが料理は作れなかった。掃除をすると余計に汚くなった。
ベティが最も得意なのは魔獣退治だ。いや、それしかできなかった。
やっと出来ることが見つかったベティは喜んで魔獣退治へと向かった。

とりあえず、ベティと神官がペアを組んで近隣の村々を回ることになったが、あっという間に魔獣退治の依頼を頼みに来た村の数が10を越えてしまった。
とりあえず1日にひとつの村を回って魔獣退治をすることになった。

風魔法"フライ"で依頼のあった村へ出向き、村の周囲の魔獣を根こそぎ狩っては、村人に魔獣の屍を回収してもらう。その後、村人が街まで魔獣の部位を売りに行き、お金に換金して報酬を神殿に届けてもらう。報酬は、村と神殿で半々とすることで神殿への信頼を得ようという作戦だ。

魔獣退治に出かけた村々では、ベティがあっという間に魔獣を退治して来るので皆驚いていた。
国や地方領主に魔獣退治を懇願しても引き受けてくれず困り果てていた国中の村々は、廃れたはずの火龍神殿があちこちの村で魔獣退治をやっているという噂を聞きつけた。
村々は、火龍神殿に次々と使者を送りだした。

ベティ達が魔獣退治に出かけて神殿に戻るとると、魔獣退治の依頼が倍々に増えていた。
さらに遠くの村々からも依頼が来るようになり、日帰りでの魔獣退治ができなくなっていた。

仕方なく、連泊で魔獣退治をすることになったが、あまりの依頼の多さに休日を設けて魔獣退治の依頼をこなす日を少なくすることにした。
いくら魔獣が雑魚だらけとは言え、依頼の数が多すぎて対応しきれなくなってしまったのだ。

ベティ達が魔獣退治を終えて神殿に戻ると、魔獣退治の依頼に来た人々と、魔獣退治が終って平穏になった村々からお礼に来る人々で神殿は賑わい始めていた。

しかし、喜んでばかりもいられなかった。
この神殿には、神官が3人しかいない。
そのうちのひとりはベティと一緒に村々を回っているので、実際に神殿にいる神官はたったのふたりだ。
そのふたりの神官も、あまりの来客者の多さに目を回すほどだった。
そのため、麓の村に頼んで手伝いに3人の若い娘を手伝いに来てもらった。

神殿に手伝いに来た村の娘達は、神官見習いということで働いてもらい、依頼内容、村の場所、報酬の支払方法等について来客者に説明を行ってもらった。

麓の村にも遠くから神殿を訪ねて来たという人々が多く泊まるようになり、村の集会所を臨時の宿泊所として解放するようになった。
もちろん宿泊もただではない。食事もふるまえば金になる。酒を出せば金になる。
いつのまにか麓の村が好景気に沸いていると村の娘から聞かされた。

そんな頃、兵士数人を引き連れた貴族が神殿を訪れた。
貴族は、城で農産業大臣をやっていると言っていたが、とても貴族には見えない地味な身なりだった。
大臣は、この国には主要な産業もなく特産品もないので、税収が見込めずいつも貧乏だと嘆いていた。

ところがだ。ある時期から街で噂が広まった。
廃れた火龍の神殿に新しい火龍様が来られたらしいと。しかも神殿の近隣の村々を回って魔獣退治を行っていると言うのだ。
魔獣退治を行った村々は、農産物の収穫量が劇的に増えたことで収入が増え、家畜や農具の売り買いが多くなり、それによって街の景気も徐々に良くなっていると言うのだ。

「火龍様が村々を回って魔獣退治を行ってくれたおかげで、村々のみならず国のいたるところの街々までも景気が良くなっております。それにより国の税収も徐々に上がり始めています。」

「これも全て火龍様のおかげです。」

大臣は、国王様からの親書と、いくばくかの報奨金を神殿に持参したので収めてほしいと言っていた。
大臣が帰った後、神官達が報奨金が入った箱を開けてびっくりしていた。
箱の中には、金貨100枚が入っていた。
金貨100枚を見た神官達の体が震えていたが、ベティは、榊のところで金貨など見飽きているので全く興味を持たなかった。

神殿はいつのまにか魔獣討伐で潤っていたがベティは考えていた。
このまま魔獣討伐だけで神殿がやっていけるはずはない。そのうちこの国の魔獣も少なくなる。

何か次の手を打たなければと。
考える事が苦手なはずのベティだが、以外と無い知恵を絞って神殿の行く先を考えているらしい。

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