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18.火龍の神殿
01.火龍の神殿で武具の回収。
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俺達は、エルネス王国に来ている。
エルネス王国は、俺達が住んでいるセイランド王国の南隣りにある小国でこれといった特産も産業もない農業国だ。
エルネス王国へ来た目的は、いつもの武具の回収だ。観光で来た訳ではないことだけは断っておきたい。
前回、セール王国の水神様のところへ武具の回収に行った時は、殆ど観光旅行になってしまった。
いつものようにアレスが召喚した"風神"さんと"雷神"さんの雲に乗って皆で移動した。
右手人差し指の"赤い糸"が指し示す場所へ降り立ってみるとびっくりな景色が待ち構えていた。
"女神アルティナ様"は、火龍の神殿と言っていたのでセール王国の水神様の神殿のようににぎやかな場所かとおもいきや、誰もいない寂れた神殿だった。
あちこち壊れた神殿は、森の奥の廃墟にあった要塞とそん色ない感じだ。
これでは、人がいるのかも分からない。
「これはひどい有様だな。魔獣がいつ出てきてもおかしくない雰囲気だ。」
俺は"探査"を使いながら皆に指示を出す。
「ベティとサティは、魔獣が出てきたらいつでも攻撃できるようにしてくれ。」
「アレスは、いつでも"阿行"さんと"吽行"さんを召喚できるように。」
「クリスとガーネは、ベティとサティが撃ち漏らした魔獣への対処を頼む。」
皆で廃墟のような神殿に入ってみた。
すると、神殿の内部は以外と綺麗だった。誰かが手入れをしているようだ。
こんな廃墟のような神殿でも誰かが管理しているのか。
すると、探査に人の反応が現れた。3人いるのか。
用心しながら神殿の奥に進むと神官服を着た神官らしき3人の女性が現れた。
「火龍の神殿にようこそ。この神殿にお客様が来られるなんて何か月ぶりでしょう。」
「ここは、火龍の神殿でよろしかったでしょうか。」
「はい。とはいえ、火龍様は200年前にここから出て行かれてしまいました。」
「それ以来、私達神官は世代を超えて火龍様の帰りを待っているのですが、それも敵わず200年の年月が経ってしまいました。」
なんか複雑な事情がありそうだ。
「火龍様が不在となった神殿からは、徐々に人々の足が遠のいて今や殆ど人は来なくなりました。」
「私達は、麓の村の人達からの援助で細々と火龍様の帰りを待っているのです。」
あー。もう話を聞いているだけで涙が出てきそうで辛い。
「俺達は、ある方の依頼で使われなくなった神器の回収をしています。」
「この神殿で保管している宝物に目的の神器があれば回収させて欲しいのです。もちろんそれなりのお礼は致します。」
3人の神官達は、集まって何やら話合いを始めた。
そしてひとりの神官が返答した。
「この神殿には、お金になるような物はなにひとつありません。」
「見ての通りの有様ですから。」
確かにこの神殿にお金があるとは思えない。金目のものを残す余裕もあるとも思えない。
しかし、俺の人差し指に繋がれた"赤い糸"は神殿の奥へと続いていた。
神官は、俺を試しているのか、それとも本当に知らないのか判断に困った。
「神器の保管場所は分かっています。神器は、そちらの持ち物ですので俺達が勝手に持ち出す訳にはいきません。なので、場所を教えますからその後の判断はお任せします。」
3人の神官達は、また集まって何やら話合いを始めた。
「分かりました。では神器とやらがある場所へ案内してください。」
皆でぞろぞろ神殿の奥へと続く通路を歩いていくと、倉庫のような場所があった。
しかし、"赤い糸"はその倉庫ではなく、倉庫の隣りにある小さな部屋へと繋がっていた。
その小さな部屋に入ると、そこは掃除道具が置いてある部屋だった。
赤い糸をたどって部屋に入ると、掃除道具のなかに古びた剣がひとふり混ざっていた。
「この剣がそうです。」
俺は、古びた剣を手に取って神官に手渡した。
「えっ、この剣が神器なのですか。」
「鈍で使えそうになかったので、こびりついた汚れを取る時にいつも使っていたのですが、まさかこれが神器だなんて。」
神官達は、この鈍な剣が本当に神器のはずがないと疑っているようだ。
「とりあえずこの部屋から出ませんか。掃除部屋に大人数でいるのも変ですから。」
「そっ、そうですね。失礼しました。こちらへどうぞ。」
そう言われて、神殿の礼拝堂にやってきた。
「しかし、この神殿には本当に信徒さんがいないんですね。」
「俺達もいくつかの神殿に行った事がありますが、こんなに人がいない神殿なんて初めてみました。」
俺がそう言うと3人の神官は急に涙ぐみ、しまいには泣きだしてしまった。
あっ。地雷を踏んでしまったか。まずったな。
俺は、おろおろするばかりだった。仕方なく神官達が泣き止むまで待つことにした。
「はい。その通りです。この火龍の神殿には、麓の村の方々がご厚意で信徒になっていただいているだけで本当の意味での信徒さんは誰一人いません。それが分かっているので余計悲しいのです。」
なんか火龍神殿の神官達の愚痴を聞きにきたみたいだ。
エルネス王国は、俺達が住んでいるセイランド王国の南隣りにある小国でこれといった特産も産業もない農業国だ。
エルネス王国へ来た目的は、いつもの武具の回収だ。観光で来た訳ではないことだけは断っておきたい。
前回、セール王国の水神様のところへ武具の回収に行った時は、殆ど観光旅行になってしまった。
いつものようにアレスが召喚した"風神"さんと"雷神"さんの雲に乗って皆で移動した。
右手人差し指の"赤い糸"が指し示す場所へ降り立ってみるとびっくりな景色が待ち構えていた。
"女神アルティナ様"は、火龍の神殿と言っていたのでセール王国の水神様の神殿のようににぎやかな場所かとおもいきや、誰もいない寂れた神殿だった。
あちこち壊れた神殿は、森の奥の廃墟にあった要塞とそん色ない感じだ。
これでは、人がいるのかも分からない。
「これはひどい有様だな。魔獣がいつ出てきてもおかしくない雰囲気だ。」
俺は"探査"を使いながら皆に指示を出す。
「ベティとサティは、魔獣が出てきたらいつでも攻撃できるようにしてくれ。」
「アレスは、いつでも"阿行"さんと"吽行"さんを召喚できるように。」
「クリスとガーネは、ベティとサティが撃ち漏らした魔獣への対処を頼む。」
皆で廃墟のような神殿に入ってみた。
すると、神殿の内部は以外と綺麗だった。誰かが手入れをしているようだ。
こんな廃墟のような神殿でも誰かが管理しているのか。
すると、探査に人の反応が現れた。3人いるのか。
用心しながら神殿の奥に進むと神官服を着た神官らしき3人の女性が現れた。
「火龍の神殿にようこそ。この神殿にお客様が来られるなんて何か月ぶりでしょう。」
「ここは、火龍の神殿でよろしかったでしょうか。」
「はい。とはいえ、火龍様は200年前にここから出て行かれてしまいました。」
「それ以来、私達神官は世代を超えて火龍様の帰りを待っているのですが、それも敵わず200年の年月が経ってしまいました。」
なんか複雑な事情がありそうだ。
「火龍様が不在となった神殿からは、徐々に人々の足が遠のいて今や殆ど人は来なくなりました。」
「私達は、麓の村の人達からの援助で細々と火龍様の帰りを待っているのです。」
あー。もう話を聞いているだけで涙が出てきそうで辛い。
「俺達は、ある方の依頼で使われなくなった神器の回収をしています。」
「この神殿で保管している宝物に目的の神器があれば回収させて欲しいのです。もちろんそれなりのお礼は致します。」
3人の神官達は、集まって何やら話合いを始めた。
そしてひとりの神官が返答した。
「この神殿には、お金になるような物はなにひとつありません。」
「見ての通りの有様ですから。」
確かにこの神殿にお金があるとは思えない。金目のものを残す余裕もあるとも思えない。
しかし、俺の人差し指に繋がれた"赤い糸"は神殿の奥へと続いていた。
神官は、俺を試しているのか、それとも本当に知らないのか判断に困った。
「神器の保管場所は分かっています。神器は、そちらの持ち物ですので俺達が勝手に持ち出す訳にはいきません。なので、場所を教えますからその後の判断はお任せします。」
3人の神官達は、また集まって何やら話合いを始めた。
「分かりました。では神器とやらがある場所へ案内してください。」
皆でぞろぞろ神殿の奥へと続く通路を歩いていくと、倉庫のような場所があった。
しかし、"赤い糸"はその倉庫ではなく、倉庫の隣りにある小さな部屋へと繋がっていた。
その小さな部屋に入ると、そこは掃除道具が置いてある部屋だった。
赤い糸をたどって部屋に入ると、掃除道具のなかに古びた剣がひとふり混ざっていた。
「この剣がそうです。」
俺は、古びた剣を手に取って神官に手渡した。
「えっ、この剣が神器なのですか。」
「鈍で使えそうになかったので、こびりついた汚れを取る時にいつも使っていたのですが、まさかこれが神器だなんて。」
神官達は、この鈍な剣が本当に神器のはずがないと疑っているようだ。
「とりあえずこの部屋から出ませんか。掃除部屋に大人数でいるのも変ですから。」
「そっ、そうですね。失礼しました。こちらへどうぞ。」
そう言われて、神殿の礼拝堂にやってきた。
「しかし、この神殿には本当に信徒さんがいないんですね。」
「俺達もいくつかの神殿に行った事がありますが、こんなに人がいない神殿なんて初めてみました。」
俺がそう言うと3人の神官は急に涙ぐみ、しまいには泣きだしてしまった。
あっ。地雷を踏んでしまったか。まずったな。
俺は、おろおろするばかりだった。仕方なく神官達が泣き止むまで待つことにした。
「はい。その通りです。この火龍の神殿には、麓の村の方々がご厚意で信徒になっていただいているだけで本当の意味での信徒さんは誰一人いません。それが分かっているので余計悲しいのです。」
なんか火龍神殿の神官達の愚痴を聞きにきたみたいだ。
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