上 下
85 / 169
13.王都が陥落しました

04.王都が陥落しました。(その4)

しおりを挟む

転移門の裏手に到着した。
転移門からは、魔族軍が王都の街へと大量に侵入していた。
進む先は王城のようだ。
魔族軍は、王国軍が王都に殆どいないことを知っているようで、転移門の裏側には魔獣を配置していなかった。
進軍中の魔族軍に向かって上空から"風神"と"雷神"による竜巻と雷撃の攻撃で次々と撃退してい。
しかし今回は、戦場が街中なので"隕石の雨"を降らすことができない。
とにかく転移門から入ってくる魔族軍を止めることが最優先だ。

「ベティ、転移門の中に向かって"龍神の業火"を放てるか。」

「できるよ。キツイやつを一発放ってやる。」

転移門の前に到着した。
"龍神"と"雷神"の雲から降りる。
ベティが、転移門の正面に仁王立ちする。右手には"覇者の槍"を持っている。
ベティがまるで"勇者"に見える。

「榊殿、これが終わったらシュークリームと特製ミルクアイスを作ってくれよ。食べきれないくらいな。」

相変わらず食い意地は"ひと一倍"(火龍一倍) 立派なベティだ。
転移門の扉の直前で立ち止まった。

「いくよー"龍神の業火"。」

荒れ狂う青い炎が転移門の中へと消えていった。



国王は、執務室内で複数の大臣と側近に囲まれて国務を行っていた。
つまらない仕事だが、国王である以上怠けることはできなかった。
執務室内にひとりの従者がやってきた。
国王に一番近い側近に耳打ちをした。

「陛下、国王陛下。」

「王都城下に転移門が出現したという報告がありました。」

「おそらく、魔族軍による攻撃が近くあるかと思います。」

側近が国王の耳元でささやいた。

「王都を守る守備隊がいるだろう。近衛隊もいる。さして問題もなかろう。」

国王は何の心配もしていなかった。
自身がこの世界で一番強いと勘違いしてからどれくらいが立っただろう。
"バーラ"の城塞都市で"負けなかった"ことが"勝った"ことへとすり替わっていた。
この王都でも勝てると勝手な解釈が国王の頭の中ではまかり通っていた。

「お言葉ですが、王都の守備隊は例の冒険者への対処のため城壁外におります。」

「近衛隊は、反国王派の諸侯へのけん制のため、王都には不在です。」

側近は、事実のみを淡々と国王陛下へ伝えた。

「誰がそのような命令を下した。世はそのような命令を下してはおらぬぞ。」

「いえ、国王陛下自らがご命令を下されました。」

国王は、側近の顔を睨み付けた。

「まあ、よい早く城塞外の王国軍を呼び戻せ。」

「は。畏まりました。」

側近は、近くにいた別の従者に国王陛下の新たな命令を伝えた。
突然、執務室の扉が乱暴に開け放たれた。

「大変です。王都城下に現れた転移門から大量の魔獣が出現しました。」

「転移門前で防衛行動中だった部隊と魔術師は全滅しました。」

「多数の魔獣がこの城に向かって進行中です。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...