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09.魔族戦争です

08.街へ戻ります。(その1)

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皆で帰る算段をしていたところに"ココ"の街からの部隊を乗せた馬車がやってきた。
一部の部隊は"ココ"の街に戻るというので、護衛を兼ねて同行することになった。
"ココ"の街まで風魔法フライで飛ぶのはきついからな。
"ココ"の街から来た王国軍の部隊長に"バーラ"の城塞都市であったこと、魔族軍の状況等を説明した。
最初、部隊長は緊張した表情を見せていたが、当面は魔族軍との戦闘はないことを知ると安堵した表情へと変わった。
まあ、そうだろな。40万の敵軍に2000の増援では、風避けにもならないもんな。

先頭の馬車には、俺とクリス、サティ、最後尾の馬車にはベティ、アレス、レディが乗り込んだ。
先頭の馬車にサティと最後尾の馬車にベティがいれば、"覇者の弓"と"覇者の槍"で遠距離攻撃もできる。
アレスとレディの戦ったとところは見たことがないが、スキルに"剣術Lv4"を持っているので俺より頼りになることは確かだ。
来た時は、風魔法"フライ"で飛んできたが帰りはのんびり馬車だ。

さっきまで戦場だったなんてまるで嘘のようだが、死体はあちこちに転がっていて兵士が死体の回収に大忙しだった。
王国のために戦ったのに司令官(公爵)があれじゃあ死んだ兵士も浮かばれないよな。
いつものことだが"南無阿弥陀仏"と念仏を唱えた。

馬車に揺られたのと、さっきまでの戦闘でHPとMPを"召喚の女王"と"隕石の女王"に吸いつくされたので、疲れきった俺はいつのまにか眠っていた。
そんな俺にクリスが膝枕をしてくれていたが、寝ている俺は気が付かなかった。
ちくしょう。

馬車が峠にさしかかった頃に目が覚めた。
クリスの顔が目の前に見えた。まるで子供の顔を覗き込む親のような和やかな顔だった。
いつもの冷めた表情は片鱗もなかった。

「いま、どのあたり。」

「もうすぐ峠です。」

「サティとベティが近くにいる魔獣に向けて矢と槍で攻撃を行っているので、魔獣は近づいてきません。」

サティが矢を射ると、突然矢は進路を変えて峠道の脇の森に入っていく。すると遠くから魔獣のうめき声が聞こえてくる。
しかし、いつみてもサティとベティの弓と槍は凄いよな。
敵の気配のある方向に向かって矢と槍が飛んでいっては命中率100%で魔獣を射抜くからな。
俺は、いまだにスキルが"剣術Lv3"で剣の練習をサボっているからちっとも上手くならない。
だから実際のスキルレベルは"剣術Lv3"ではなく"剣術Lv2"相当だ。
"探査"で峠道の魔獣を探すが"赤"や"青"の点の表示が次々と消えていく。
たまに視界の脇を矢と槍が物凄い速さで飛んで行くのが見える。

空がだいぶ暗くなってきた。
来る時に野営した村外れの野営用の広場で野宿する。
ここは野営地なので少人数が寝泊まりできる小屋や竈は常備されている。
肉と野菜のスープを鍋いっぱいに作った。それとパンにベーコンとチーズを焼いて挟んで出した。

スープの味付けは、シンプルに塩と胡椒、少しバターを入れた。
それとこっちの世界で見つけた小魚を干したものがったので隠し味のダシに使った。
みんな美味そうに食べている。
馬車を操る兵士の分も作ったのでみんな喜んで食べてくれた。
スキル"料理Lv3"がいい仕事をしてくれているようだ。

皆でたき火を囲みながら食事を取る。
他愛のない話で盛り上がる。
昼の戦争がまるで嘘のようだ。そう思いながらスープを口に運ぶ。
すると、隣りに座っているクリスとの間にアレスが、反対側にはレディが割り込んできた。

「主様。あーん。どうしたんですか。アレスがスープを飲ませて差し上げます。お口を開けてください。あーん。」

「おねーさま。レディも主様にスープを飲ませてさしあげたいのです。さあ、あーん。」

んん。こういった場合は、どうするべきなのか。黙って口を開いてス―プを飲ませてもらった方がいいのか。
俺は、されるがままに2人か出されたスプーンを口に運ぶ。
なんか俺の周りに"ハート"マークが飛んでいるように見える。
割り込まれたクリスが突然立ち上がった。
うわあ、クリスの顔が凍り付いたような表情になっている。今にもアレスを殴り倒しそうに両手の拳を握りしめている。

「あら、クリス、そんな怖い顔をしてどうしたのかしら。」

「この前の夜、主様と寝屋を共にしていっぱい注いでもらったのでしょう。」

「"ココ"の街に戻ったら私達が主様の相手をします。あなたが言ったように主様と"大事な話があるので邪魔をしないでください"ね。」
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