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08.城塞都市を守ります
07.要塞に救援に向かいます。
しおりを挟む風魔法"フライ"でかなりの時間飛行していた。
"コナ"要塞から立ち上る煙が近くなってきた。
要塞の状況が遠くからでも分かった。城壁は既に破壊されていた。
城内には既に魔族軍が侵入しているようだった。
ん、眼下を見ると魔族軍の魔術師らが城塞に向かって遠距離火魔法攻撃を続けていた。
俺は、魔術師の一団に気づかれないように近くの草原に着地した。
サティとベティに目配せをしてあの魔法を使うと宣言した。
腕輪スキル"隕石Lv2"と唱えた。
俺達は直ぐに地面に伏せた。
しばらくすると上空から閃光が走り爆音が轟いた。その瞬間、地面からの衝撃波と砂塵の津波が吹き荒れた。
土まみれになりながら立ち上がり辺りを見回した。
立っているものは誰もいなかった。
巨大な穴がひとつ開いていた。そして黒焦げの死体らしきものが多数ころがっていた。
何度見てもつらい光景だ。
サティを背負い風魔法"フライ"で直ぐにこの場所から立ち去った。
"コナ"城塞近くに降り立ち、ベティにあの魔法を使うように頼んだ。
俺は、そろそろMPがやばくなってきたのだ。
もしかしたら最後の1発をどこかで使う必要があるかもしれないので、残りのMPは温存することにした。
「では、榊殿、わしの怒涛の1発を見舞うとするぞ。"龍神の業火"。」
コナ要塞の城壁近くの草原に犇めく2000人の魔族軍の魔獣達の足元から突然青い炎の火柱が立ち上がった。
青い炎は温度こそ高いが火の中心ほど温度が低い。かわりに炎と空気が触れる境界では1300度に達する。
魔獣達は、自分の体が青い炎で覆われたことが信じられず、自身の体をただ見るだけだった。
その直後、青い炎の柱が50mの高さの柱となって草原一帯を焼き尽くしはじめた。
魔族軍の魔獣たちは次々と黒い炭状になって砕けていった。
城壁の上で戦っていた兵士、騎士達は愕然とした。
新たな敵が現れたと。
しかし、城壁の外にいた魔族軍の魔獣が次々と炭と化して消えていく光景を見て、味方の魔法攻撃ではないかと思い始めた。
ただ、見たことのない魔法に本当に喜んでよいのか半信半疑だった。
草原から青い炎の柱が消えた。
草原にいた魔族軍の魔獣は殆どが消え去っていた。
俺は剣スキル"人化"と唱えクリスを人化させた。
サティは"覇者の弓"を構え、ベティは"覇者の槍"を構えた。
4人で"コナ要塞"へ向かって歩き出した。
隕石を落とさなかったので平らな草原は歩き易い。やっぱり"隕石の女王"は使いどころが難しい武具だ。
そしてこの戦いで初めて例のスキルを繰り出した。
「腕輪スキル"召喚v2"」
目の前に広がる霧の中から"阿行"と"吽行"が現れた。
「"阿行"さん"吽行"さん。城塞の中にいる魔族軍を全て葬ってください。お願いします。」
相変わらず怖い形相の"阿行"と"吽行"には"命令"ができず"お願い"にとどまった。
"阿行"と"吽行"が歩くたびに地面が揺れる。
僅かに残った魔族軍の魔獣達が"阿行"と"吽行"に気づき、一撃加えようと近づいてきた。
だが"阿行"と"吽行"が動くたびにに魔獣が空を舞っていた。本当に空高く舞っていたのだ。
"阿行"と"吽行"が壊れた城門から城内に入った。
4mを越える巨体に王国軍の騎士も兵士も身動きがとれず、ただただ"阿行"と"吽行"を眺めているだけだった。
城内に入っても"阿行"と"吽行"に空高く投げ飛ばされる魔獣は後を絶たなかった。
俺達も壊れた城門から城内に入った。
攻撃してくる魔獣は、サティの"覇者の弓"とベティの"覇者の槍"の餌食になっていた。
それでもサティとベティの攻撃の合間をくぐり抜けてくる魔獣は、クリスの瞬間移動の攻撃で瞬殺されていた。
俺は、この戦いでいちども剣を降っていない。俺は、ただ腕輪にHPとMPを吸われてスキルを放つだけの存在になっていた。
誰か悲しい俺を慰めてくれ。俺の心が泣いてる。
やがて魔族軍の魔獣がいなくなり、城内は静まりかえった。
城内の広場には魔獣の死体が無数に散らばっていた。
俺達4人と"阿行"と"吽行"は広場に立ち尽くしていた。
遠巻きに見ている騎士に叫んだ。
「俺達は"ココ"の街から来た冒険者だ。"ココ"の街の戦闘も終結した。"ココ"の街は守られた。"コナ"要塞の闘いも終結した。」
生き残った騎士と兵士から喝采が沸き上がった。
皆、ボロボロになり疲弊した体を起こして手に持った剣を高々と掲げた。
闘いは終わったのだ。
コナ要塞の指揮官に"ココ"の街から援軍が来ることを伝え、俺達は早々にコナ要塞を後にした。
4人でコナ要塞を出て草原を歩きだした。
風魔法"フライ"を使って飛び立つ素振りをした瞬間、クリスが俺の耳元でささやいた。
「今晩、私を抱いてください。もしアレスとレディを先に抱いたら主様のあそこをかみ切ります。」
クリスの冷めた表情を見ることができなかった。だが、クリスの手を力強く握った。クリスも力強く俺の手を握り返した。
「今夜は寝かさない。」
クリスの耳元でささやいた。
クリスの冷めた表情と耳が少し赤くなった気がした。
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