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01.誰にでもできる簡単なお仕事です
02.契約成立。
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「君にお願いしたいのは、その書類に書いてある武具の回収というやつなんだ。」
「もし引き受けてくれれば、元の世界になるべく早く帰れるように手配するから。」
女性のにこやかな顔から出た言葉がにわかに信じられないが、これが"異世界へのお誘い"というやつですか。
そういえば、仕事が忙しくて1か月前に買ったラノベも読んでいなかったが、あれの帯の宣伝文句にももこんなことが書いてあったな。
「もしかして"異世界に行ってお仕事をしてきてね。断ったらどうなるか分かってるよね。てへ。"的なお話でしょうか。」
「そうそれ!飲み込みが早ね。ぼくは君のような物分かりのよい人は大好きだよ。」
これは、文句を言ってもなんの得にもならないか。
目の前に出された書類に目を通した。
「えーと、この書類には、仕事に必要な武具の貸与とありますね。それと依頼達成時には、ボーナスを支給とありますが、具体的なお話しをいただけますか。」
目の前に座る女性にいくつか質問を投げてみた。
異世界で回収してほしいものは、以下のふたつ。
・異世界へ転生した人へ貸与した武具。
・異世界へ転生した人へ貸与したスキル。
「武具は、異世界への転生者へ貸与した、武器とか腕輪とかだね。」
「スキルも異世界への転生者へ貸与した"能力"のことなんだけどこれが厄介でね、武具と違って回収が難しいんだ。」
女性の顔が先ほどと違って険しくなった。
「回収予定のスキルは、どれも厄介なものばかりだから、最悪、全てのステータスが回収できなくてもOKとするよ。」
ということは、かなりの高難度の仕事なんだ。
書類にあった"誰にでもできる簡単なお仕事です"は、まゆつばだな。
俺は、何も言わなかったが表情が険しくなっていた。
女性は、俺の険しい表情を見て慌てて話を進めた。
「お願いしたい仕事がスムーズに進められるように"これで安心、回収お役立ちセット"を貸与します。」
「"これで安心、回収お役立ちセット"の内容は、こんな感じですよ。なかなかいいアイテムが揃っています。」
女性は、別の書類を差し出した。
俺は、その書類を受け取り内容を確認する。
"これで安心、回収お役立ちセット"
・武具やスキルの回収を容易にする武具一式。
・回収した武具を転送するアイテムボックス一式。
・武具の捜索を容易にするスキル貸与。
・初期経費、作業服の貸与。
・女神の加護付与。
ん、"女神の加護付与"と書いてある。
「あの、書類に"女神様の加護"とありますが、あなたは女神様なんですか。」
「あ、説明していませんでしたね。ごめんなさい。私は、女神アルティナといいます。今後、榊君をサポートすることになります。」
そうか、神様なら何もないところに椅子も茶も出せるか。
ん、神様?ということは、俺は死んだのか。
「あの、根本的な疑問なんですが、俺は死んだからここに居るのでしょうか。」
不安になり女神様に聞いてみた。
「いえ、榊君は死んでいません。元の世界からは一時的に体は存在しなくなりますが、この仕事が終わったら元の世界に戻れます。」
女神様の言葉に安堵した俺は、最初にもらった書類を引き続き読む。
女神様は、書類を読んでいる俺に補足の説明を始めた。
「成功報酬につては、今は言えませんが相応の金品を用意します。そこは信用してください。」
「どうですか、問題がないようならここにサインをしてね。」
俺は、女神様が指さすサイン欄の下に小さな文字で何かが書いてあることに気が付き、目を凝らして読み始めた。
おっ、生命保険の約款と同じた。大事なことが書いてある。
「おや、最後の特記事項欄に、異世界での事故、病気等については一切の責任を負いませんと記載してありますね。これは異世界でケガ、病気等での死亡については、女神様は責任を負わないと言うことですね。」
女神様の顔は、笑顔だがひきつっていた。
「別に、契約しないと言っているわけではありません。但しです。せめて賠償保険くらい付けて
もらえませんか。突然、仕事の出張先で死亡しましたでは俺の親も悲しみます。」
女神様の顔をのぞきこみ、言うことは言いいますという態度を見せる。
「書類の最後に書いてあるそんなところまで読まなくてもいいのに…」
女神様は、ぼそぼそと小声で言った。
「わ、分かりました。賠償保険についてはこちらで用意します。後ほど書類を送ります。」
サイン欄に名前を書き、女神様に書類を渡す。
書類のサイン欄の名前を確認した女神様は、喜び顔で俺に近づき、握手を求めてきた。
女神様の手を前に、もう一言付け加えた。
「もうひとつだけお願いしたいことがあります。俺を勇者として異世界に召喚しないでください。」
「そのことは、サイン欄に記載しました。"勇者として異世界に召喚する場合は、契約違反として
本契約は、不履行とする。”と。」
女神様が書類のサイン欄を見直した途端、女神様の顔から笑顔が消えた。
ものすごく凄い怖い顔をしている。
いくら怖い顔をしても言うことは言わないといけない。俺が人生経験から学んだ最重要事項だ。
「それは、最優先事項です。」
女神様の口から次の言葉が出てこない。
しばしの沈黙のあとで、女神様の顔付きが最初のにこやかな顔に戻った。
「わかりました。勇者として異世界に召喚しません。約束します。」
しかし、女神様が差し出した手は震えていた。
「了解しました。では、本契約は成立しました。今後ともよろしくお願いします。"女神アルティナ様"。」
震える女神様の手を強く握り、握手を返した。
その後、召喚される異世界について簡単なレクチャーを受けた。
「もし引き受けてくれれば、元の世界になるべく早く帰れるように手配するから。」
女性のにこやかな顔から出た言葉がにわかに信じられないが、これが"異世界へのお誘い"というやつですか。
そういえば、仕事が忙しくて1か月前に買ったラノベも読んでいなかったが、あれの帯の宣伝文句にももこんなことが書いてあったな。
「もしかして"異世界に行ってお仕事をしてきてね。断ったらどうなるか分かってるよね。てへ。"的なお話でしょうか。」
「そうそれ!飲み込みが早ね。ぼくは君のような物分かりのよい人は大好きだよ。」
これは、文句を言ってもなんの得にもならないか。
目の前に出された書類に目を通した。
「えーと、この書類には、仕事に必要な武具の貸与とありますね。それと依頼達成時には、ボーナスを支給とありますが、具体的なお話しをいただけますか。」
目の前に座る女性にいくつか質問を投げてみた。
異世界で回収してほしいものは、以下のふたつ。
・異世界へ転生した人へ貸与した武具。
・異世界へ転生した人へ貸与したスキル。
「武具は、異世界への転生者へ貸与した、武器とか腕輪とかだね。」
「スキルも異世界への転生者へ貸与した"能力"のことなんだけどこれが厄介でね、武具と違って回収が難しいんだ。」
女性の顔が先ほどと違って険しくなった。
「回収予定のスキルは、どれも厄介なものばかりだから、最悪、全てのステータスが回収できなくてもOKとするよ。」
ということは、かなりの高難度の仕事なんだ。
書類にあった"誰にでもできる簡単なお仕事です"は、まゆつばだな。
俺は、何も言わなかったが表情が険しくなっていた。
女性は、俺の険しい表情を見て慌てて話を進めた。
「お願いしたい仕事がスムーズに進められるように"これで安心、回収お役立ちセット"を貸与します。」
「"これで安心、回収お役立ちセット"の内容は、こんな感じですよ。なかなかいいアイテムが揃っています。」
女性は、別の書類を差し出した。
俺は、その書類を受け取り内容を確認する。
"これで安心、回収お役立ちセット"
・武具やスキルの回収を容易にする武具一式。
・回収した武具を転送するアイテムボックス一式。
・武具の捜索を容易にするスキル貸与。
・初期経費、作業服の貸与。
・女神の加護付与。
ん、"女神の加護付与"と書いてある。
「あの、書類に"女神様の加護"とありますが、あなたは女神様なんですか。」
「あ、説明していませんでしたね。ごめんなさい。私は、女神アルティナといいます。今後、榊君をサポートすることになります。」
そうか、神様なら何もないところに椅子も茶も出せるか。
ん、神様?ということは、俺は死んだのか。
「あの、根本的な疑問なんですが、俺は死んだからここに居るのでしょうか。」
不安になり女神様に聞いてみた。
「いえ、榊君は死んでいません。元の世界からは一時的に体は存在しなくなりますが、この仕事が終わったら元の世界に戻れます。」
女神様の言葉に安堵した俺は、最初にもらった書類を引き続き読む。
女神様は、書類を読んでいる俺に補足の説明を始めた。
「成功報酬につては、今は言えませんが相応の金品を用意します。そこは信用してください。」
「どうですか、問題がないようならここにサインをしてね。」
俺は、女神様が指さすサイン欄の下に小さな文字で何かが書いてあることに気が付き、目を凝らして読み始めた。
おっ、生命保険の約款と同じた。大事なことが書いてある。
「おや、最後の特記事項欄に、異世界での事故、病気等については一切の責任を負いませんと記載してありますね。これは異世界でケガ、病気等での死亡については、女神様は責任を負わないと言うことですね。」
女神様の顔は、笑顔だがひきつっていた。
「別に、契約しないと言っているわけではありません。但しです。せめて賠償保険くらい付けて
もらえませんか。突然、仕事の出張先で死亡しましたでは俺の親も悲しみます。」
女神様の顔をのぞきこみ、言うことは言いいますという態度を見せる。
「書類の最後に書いてあるそんなところまで読まなくてもいいのに…」
女神様は、ぼそぼそと小声で言った。
「わ、分かりました。賠償保険についてはこちらで用意します。後ほど書類を送ります。」
サイン欄に名前を書き、女神様に書類を渡す。
書類のサイン欄の名前を確認した女神様は、喜び顔で俺に近づき、握手を求めてきた。
女神様の手を前に、もう一言付け加えた。
「もうひとつだけお願いしたいことがあります。俺を勇者として異世界に召喚しないでください。」
「そのことは、サイン欄に記載しました。"勇者として異世界に召喚する場合は、契約違反として
本契約は、不履行とする。”と。」
女神様が書類のサイン欄を見直した途端、女神様の顔から笑顔が消えた。
ものすごく凄い怖い顔をしている。
いくら怖い顔をしても言うことは言わないといけない。俺が人生経験から学んだ最重要事項だ。
「それは、最優先事項です。」
女神様の口から次の言葉が出てこない。
しばしの沈黙のあとで、女神様の顔付きが最初のにこやかな顔に戻った。
「わかりました。勇者として異世界に召喚しません。約束します。」
しかし、女神様が差し出した手は震えていた。
「了解しました。では、本契約は成立しました。今後ともよろしくお願いします。"女神アルティナ様"。」
震える女神様の手を強く握り、握手を返した。
その後、召喚される異世界について簡単なレクチャーを受けた。
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