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第五章 正義の在処
脱出せよ!
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朦々と立ち上る土埃が、壁のようにそそり立ち、その奥にあるものを覆い隠していた。海風が土埃の壁を少しずつ陸側へと押し流していこうとしていた。
突然、土埃の一部が破裂するようになり、その中から何かが出てくるのが見えた。
「逃げなきゃ……! あの鳥が出て……」
ガンドがそう言いかけたとき、土埃の方から咽せる声が聞こえた。
「ぶぇっ! げぇぇっほげっほげほ! まともに吸ってしまった……」
それは苦しそうに咳き込みながら、草原を浮きながら三人の方へと向かってきた。
「バラルさんだ!!」
ガンドが声を上げた。
「アニキを背負ってる!!」
スネイルは大声を上げた。
「ジャッシュ!?」
マーシャが馬を進めようとしたその時、今度は土埃の中にいた巨大な鳥が動き始めた。
「バラルさん! 後ろ! 鳥が!!」
ガンドは慌てて叫ぶ。
「わ、わか……げほっげほっ……分かっておるわい! ゲートを開くからすぐに入れ!」
バラルはできる限りの大声を上げてから、速度を上げた。バラルの後ろからは、巨大な鳥が大きな羽をばたつかせながら、走って追いつこうとしている。もうバラルまで、二百メートルほどに近づいてきていた。
「ガンド、ジャシードを頼むぞ! ゲートが開いたらすぐ飛び込め!」
三人と合流したバラルは、ガンドにジャシードを託すと、地面を杖で叩いて振り上げた。
ゲートが開かれ、即座に全員が飛び込む。
「よし、いるな!」
バラルは全員がいることを確認すると、ゲートに杖を振って消滅させた。
岬の上のゲートは巨大な鳥が到達する直前で消滅し、巨大な鳥は、その場所に再び土埃の壁を作った。
「ふぁぁぁぁ……た、助かったぁぁぁ……」
ガンドは馬上でジャシードを抱えながら、大きな大きな溜息をついた。
「ジャッシュ!」
マーシャはとにかく、ジャシードの事が気になっていた。ガンドからジャシードを受け取ると、その重みで蹌踉《よろ》めきながら、ジャシードの下敷きになるように地面に倒れ込んだ。
「はうっ、あいたた……苦し……」
マーシャは泣き顔でそう言いながらも、満足げにしている。
「アニキ!」
馬を飛び降り、ジャシードの傍に駆け寄るスネイルは、ジャシードをマーシャの上からどかして寝かせた。
「とにかく治療しないと」
ガンドは早速、ジャシードに治癒魔法をかけ始めた。もうこれも何度目だろうか。ガンドも、生命力を失った人間の取り扱いに慣れてきた。
「荷を切り離してしまったから、アニキの下に敷くものもないや……ところでおっちゃん、ここどこ?」
「ここは、わしが拵えた洞穴《ほらあな》だ。崖の中腹にある。フォラーグルを避けるためだったが、早速見つかっているとは思わなかったわい……」
バラルは粉塵を吸ってしまったのがようやく落ち着いて、呼吸を整えている。
「さっきのでっかい鳥は、やっぱりフォラーグルなんだな」
「それで、下りて行っていたのね」
ようやく気持ちが落ち着いてきたマーシャが、溜息交じりに言った。
「騒がしいから上がってきてみれば、ジャシードが喰われそうになっていた。わしは咄嗟に風の魔法で、ジャシードを上空に吹っ飛ばして受け止めたのだ。危ないところだった。わしも土埃で咽せ死ぬかと思ったわい」
「ありがとう、バラルさん」
「なあに、仲間だろう? それに、ここで将来有望なジャシードを失うわけにはいかん。ヒートヘイズの冒険には、まだまだ、興味があるんでな」
バラルはニッと笑顔を見せた。
「そして今回のことで、一つ学んだことがある」
「おっちゃんでも、まだ学ぶことあんの?」
スネイルは意外だと言わんばかりだ。
「何を言う、当たり前だろうが!」
パイプに火を入れながら、バラルは不機嫌そうにしている。
「そうじゃなくてさ、何でも知ってると思ってたぞ」
「そうねぇ、スネイルが言いたいことも分かるわ」
「買い被るでない。人間は、日々学び、日々成長できる。そう言うものだ」
バラルは煙を吐きながら言う。比較的優しい海風が、パイプの煙を何処かへ運んでいく。
「で、何を学んだの」
スネイルは、その先を聞きたくて仕方が無い様子だ。
「うむ。ゲートを使った冒険は、ある安全な場所を見つけたら、そこを記録石に記録し、ゲートで連れて行く。そこからは、怪物たちを掃討しながら進んでいくしかないと思っていた。何故なら怪物たちは、知っているとおり、掃討したら一日ほどで元通りになるからだ。掃討しながら進んで記録して、一旦街に戻り、記録したところへ戻る……これでは翌日ゲートを開くと、出た先で怪物たちに囲まれたり、怪物たちをゲートで呼び寄せることになってしまう」
「それよりは、野営しながら前に進んだ方がいいわね」
「そうだ。だが今はどうだ。上にフォラーグルはいたが、ここは平和そのものだ」
バラルはパイプを吸いながら、腕を広げて自前の洞穴を見やる。
「そうか! ここに記録して、街に帰れる!」
「……かも知れん。まだ確定したわけではない、これは仮説に過ぎん。今後ここが本当に安全かは、丸一日以上経過して、ここに怪物がいなければ、の話だ。だが今はジャシードのために、一旦帰るべきだろう」
バラルはパイプを岩に打ち付け、灰を地面に落として踏みつけた。
「ここがダメでも、岬の上は怪物が居なかったから、そこからでもいいんじゃない?」
「岬の上はダメだ。あそこに何も居なかったのは、フォラーグルが喰ったからだ」
「あ……そう言うことだったのね……」
「だからこそ、この洞穴に価値がある、と言うことになる……。ガンド、ジャシードの具合はどうだ?」
「全力を出しても、何故かジャッシュはいつも落ち着いているよ。一日かそこらで目覚めるんじゃないかな」
「相変わらず、底知れぬ生命力だな……。よし、ならばここに記録して帰ろう。レムリスの方がいいか?」
「そうね……。買い物だけ、アーマナクルですればいいし!」
ジャシードが問題ないと分かり、マーシャは俄然元気を取り戻した。
「次は少し量を抑えようね……マーシャ」
ガンドは呆れた様子で、舌を出して笑みを見せるマーシャに溜息をついた。
◆◆
ガンドの見立て通り、ジャシードは翌日の朝には目覚めた。もちろん、治療術士たちが交代でジャシードを世話したからに他ならないが、それでも異常なまでの回復力と言わざるを得ない。
昼前まで、調整のために治癒魔法を受けたジャシードは、治療術士たちに礼を言って、色を付けて費用を支払った。
「毎回無茶して……もう今回こそはダメかと思ったわ」
「あはは……ごめん、マーシャ。でもおれ一人だったから、バラルさんも助けられたんだし、結果としては良かったよな」
「まっっったく、懲りないんだから! 心配する方の身にもなってもらいたいものだわ!」
「うん、ごめんよ」
そんなやりとりをしながら二人は家に帰り、家族と仲間の歓迎を受けた。
「アニキお帰り!」
「ジャッシュ、もういいのかい?」
「ああ、何も問題ないよ。心配かけたね。今回もありがとうガンド」
「僕は自分の役割を全うできて満足だよ」
そう言うガンドに、ジャシードは微笑み、頷いた。
「おう、ジャシード、聞いたぞ。まぁた無茶したんだってなぁ! ガキの頃から無茶していやがったが、一端《いっぱし》の大人になっても、まぁだ無茶しているなんてな!」
非番のセグムは既にフォリスと飲んでいたようで、息子の背中をバンバン叩きながら、とても楽しそうにしている。
「全く、どこのセグムよ……。ねぇマーシャ」
「親子揃ってこれだもの。ねぇソルンおばさん」
そんな事を言っている二人も、世話の焼けるパートナーに世話するのは、嫌いではない様子だった。
「これからも、マーシャを頼んだぞ。私がマーシャを冒険者にしたままなのは、君がいるからだ。身体を張って仲間を守る君にしか、娘は任せられないからな」
フォリスは既にほろ酔いだが、精一杯真面目に言った。本心は娘が冒険者なのは、気が気でないのだが、自分の言葉では娘を止められない。それが分かっているフォリスには、ジャシードの存在を言い訳にするのが最大限の譲歩だ。
「もちろん、分かっています、フォリスさん。いつでも、おれはマーシャを、仲間を守ります」
「かぁーっ! 言うねぇ! さっすが、今をときめく冒険者よ! わあっははは!」
セグムは息子の真面目な言葉を、自分の酒のつまみにしている。
「アァ!」
ピックがジャシードの肩に止まり、耳たぶを甘噛みしてひと鳴きした。
「なんだい、ピックまでおれを冷やかすのかい?」
「アアァ!」
ピックは頭をジャシードの側頭部にすり寄せた。
「なんて言ってるか分かんないけど、なんだかピックはおれの味方みたいだ」
ジャシードが言うと、ピックはまた耳たぶを甘噛みした。
「アニキ、ピックもヒートヘイズに入れたら?」
「何だよ、急に」
「だって暇そうだから」
「確かに最近、お使いに出してないけど……暇なのかな」
「こいつは食っちゃ寝してるから、連れ出してやったらどうだ。太って飛べなくなるかも知んねぇぞ。わはは!」
やりとりを聞いていたセグムは、冗談交じりにそう言った。
「連れて行くと、ピックも危険にさらすかも知れないし……」
「なんだ、お前カラス一羽守れないのか? 情けない! いやあ情けない!」
セグムがそう言ったところで、ジャシードはセグムの意図を読み込めた。要するにセグムは、厄介払いをしたいと言っているのだ。恐らく世話が面倒になったに違いない。
「ピックはお手紙を届けるのだって、怪物たちを避けて飛んでいるわけだし、連れて行ってあげても良いんじゃない?」
マーシャは、ピックの頭を撫でながら言う。
「せめて、偵察にでも使えると良いんだが、カラスにそんな事ができるわけも無いな」
バラルはパイプの煙を揺らめかせている。
「仕方ないなあ……」
この時、ヒートヘイズにピックが加わることが決まった。
セグム・フォリス家は、ヒートヘイズの面々と、ジャシードの家族たちで大いに盛り上がった。
――そして翌日ヒートヘイズたちは、サファールへの冒険を再開する事にした……ピックと共に。
突然、土埃の一部が破裂するようになり、その中から何かが出てくるのが見えた。
「逃げなきゃ……! あの鳥が出て……」
ガンドがそう言いかけたとき、土埃の方から咽せる声が聞こえた。
「ぶぇっ! げぇぇっほげっほげほ! まともに吸ってしまった……」
それは苦しそうに咳き込みながら、草原を浮きながら三人の方へと向かってきた。
「バラルさんだ!!」
ガンドが声を上げた。
「アニキを背負ってる!!」
スネイルは大声を上げた。
「ジャッシュ!?」
マーシャが馬を進めようとしたその時、今度は土埃の中にいた巨大な鳥が動き始めた。
「バラルさん! 後ろ! 鳥が!!」
ガンドは慌てて叫ぶ。
「わ、わか……げほっげほっ……分かっておるわい! ゲートを開くからすぐに入れ!」
バラルはできる限りの大声を上げてから、速度を上げた。バラルの後ろからは、巨大な鳥が大きな羽をばたつかせながら、走って追いつこうとしている。もうバラルまで、二百メートルほどに近づいてきていた。
「ガンド、ジャシードを頼むぞ! ゲートが開いたらすぐ飛び込め!」
三人と合流したバラルは、ガンドにジャシードを託すと、地面を杖で叩いて振り上げた。
ゲートが開かれ、即座に全員が飛び込む。
「よし、いるな!」
バラルは全員がいることを確認すると、ゲートに杖を振って消滅させた。
岬の上のゲートは巨大な鳥が到達する直前で消滅し、巨大な鳥は、その場所に再び土埃の壁を作った。
「ふぁぁぁぁ……た、助かったぁぁぁ……」
ガンドは馬上でジャシードを抱えながら、大きな大きな溜息をついた。
「ジャッシュ!」
マーシャはとにかく、ジャシードの事が気になっていた。ガンドからジャシードを受け取ると、その重みで蹌踉《よろ》めきながら、ジャシードの下敷きになるように地面に倒れ込んだ。
「はうっ、あいたた……苦し……」
マーシャは泣き顔でそう言いながらも、満足げにしている。
「アニキ!」
馬を飛び降り、ジャシードの傍に駆け寄るスネイルは、ジャシードをマーシャの上からどかして寝かせた。
「とにかく治療しないと」
ガンドは早速、ジャシードに治癒魔法をかけ始めた。もうこれも何度目だろうか。ガンドも、生命力を失った人間の取り扱いに慣れてきた。
「荷を切り離してしまったから、アニキの下に敷くものもないや……ところでおっちゃん、ここどこ?」
「ここは、わしが拵えた洞穴《ほらあな》だ。崖の中腹にある。フォラーグルを避けるためだったが、早速見つかっているとは思わなかったわい……」
バラルは粉塵を吸ってしまったのがようやく落ち着いて、呼吸を整えている。
「さっきのでっかい鳥は、やっぱりフォラーグルなんだな」
「それで、下りて行っていたのね」
ようやく気持ちが落ち着いてきたマーシャが、溜息交じりに言った。
「騒がしいから上がってきてみれば、ジャシードが喰われそうになっていた。わしは咄嗟に風の魔法で、ジャシードを上空に吹っ飛ばして受け止めたのだ。危ないところだった。わしも土埃で咽せ死ぬかと思ったわい」
「ありがとう、バラルさん」
「なあに、仲間だろう? それに、ここで将来有望なジャシードを失うわけにはいかん。ヒートヘイズの冒険には、まだまだ、興味があるんでな」
バラルはニッと笑顔を見せた。
「そして今回のことで、一つ学んだことがある」
「おっちゃんでも、まだ学ぶことあんの?」
スネイルは意外だと言わんばかりだ。
「何を言う、当たり前だろうが!」
パイプに火を入れながら、バラルは不機嫌そうにしている。
「そうじゃなくてさ、何でも知ってると思ってたぞ」
「そうねぇ、スネイルが言いたいことも分かるわ」
「買い被るでない。人間は、日々学び、日々成長できる。そう言うものだ」
バラルは煙を吐きながら言う。比較的優しい海風が、パイプの煙を何処かへ運んでいく。
「で、何を学んだの」
スネイルは、その先を聞きたくて仕方が無い様子だ。
「うむ。ゲートを使った冒険は、ある安全な場所を見つけたら、そこを記録石に記録し、ゲートで連れて行く。そこからは、怪物たちを掃討しながら進んでいくしかないと思っていた。何故なら怪物たちは、知っているとおり、掃討したら一日ほどで元通りになるからだ。掃討しながら進んで記録して、一旦街に戻り、記録したところへ戻る……これでは翌日ゲートを開くと、出た先で怪物たちに囲まれたり、怪物たちをゲートで呼び寄せることになってしまう」
「それよりは、野営しながら前に進んだ方がいいわね」
「そうだ。だが今はどうだ。上にフォラーグルはいたが、ここは平和そのものだ」
バラルはパイプを吸いながら、腕を広げて自前の洞穴を見やる。
「そうか! ここに記録して、街に帰れる!」
「……かも知れん。まだ確定したわけではない、これは仮説に過ぎん。今後ここが本当に安全かは、丸一日以上経過して、ここに怪物がいなければ、の話だ。だが今はジャシードのために、一旦帰るべきだろう」
バラルはパイプを岩に打ち付け、灰を地面に落として踏みつけた。
「ここがダメでも、岬の上は怪物が居なかったから、そこからでもいいんじゃない?」
「岬の上はダメだ。あそこに何も居なかったのは、フォラーグルが喰ったからだ」
「あ……そう言うことだったのね……」
「だからこそ、この洞穴に価値がある、と言うことになる……。ガンド、ジャシードの具合はどうだ?」
「全力を出しても、何故かジャッシュはいつも落ち着いているよ。一日かそこらで目覚めるんじゃないかな」
「相変わらず、底知れぬ生命力だな……。よし、ならばここに記録して帰ろう。レムリスの方がいいか?」
「そうね……。買い物だけ、アーマナクルですればいいし!」
ジャシードが問題ないと分かり、マーシャは俄然元気を取り戻した。
「次は少し量を抑えようね……マーシャ」
ガンドは呆れた様子で、舌を出して笑みを見せるマーシャに溜息をついた。
◆◆
ガンドの見立て通り、ジャシードは翌日の朝には目覚めた。もちろん、治療術士たちが交代でジャシードを世話したからに他ならないが、それでも異常なまでの回復力と言わざるを得ない。
昼前まで、調整のために治癒魔法を受けたジャシードは、治療術士たちに礼を言って、色を付けて費用を支払った。
「毎回無茶して……もう今回こそはダメかと思ったわ」
「あはは……ごめん、マーシャ。でもおれ一人だったから、バラルさんも助けられたんだし、結果としては良かったよな」
「まっっったく、懲りないんだから! 心配する方の身にもなってもらいたいものだわ!」
「うん、ごめんよ」
そんなやりとりをしながら二人は家に帰り、家族と仲間の歓迎を受けた。
「アニキお帰り!」
「ジャッシュ、もういいのかい?」
「ああ、何も問題ないよ。心配かけたね。今回もありがとうガンド」
「僕は自分の役割を全うできて満足だよ」
そう言うガンドに、ジャシードは微笑み、頷いた。
「おう、ジャシード、聞いたぞ。まぁた無茶したんだってなぁ! ガキの頃から無茶していやがったが、一端《いっぱし》の大人になっても、まぁだ無茶しているなんてな!」
非番のセグムは既にフォリスと飲んでいたようで、息子の背中をバンバン叩きながら、とても楽しそうにしている。
「全く、どこのセグムよ……。ねぇマーシャ」
「親子揃ってこれだもの。ねぇソルンおばさん」
そんな事を言っている二人も、世話の焼けるパートナーに世話するのは、嫌いではない様子だった。
「これからも、マーシャを頼んだぞ。私がマーシャを冒険者にしたままなのは、君がいるからだ。身体を張って仲間を守る君にしか、娘は任せられないからな」
フォリスは既にほろ酔いだが、精一杯真面目に言った。本心は娘が冒険者なのは、気が気でないのだが、自分の言葉では娘を止められない。それが分かっているフォリスには、ジャシードの存在を言い訳にするのが最大限の譲歩だ。
「もちろん、分かっています、フォリスさん。いつでも、おれはマーシャを、仲間を守ります」
「かぁーっ! 言うねぇ! さっすが、今をときめく冒険者よ! わあっははは!」
セグムは息子の真面目な言葉を、自分の酒のつまみにしている。
「アァ!」
ピックがジャシードの肩に止まり、耳たぶを甘噛みしてひと鳴きした。
「なんだい、ピックまでおれを冷やかすのかい?」
「アアァ!」
ピックは頭をジャシードの側頭部にすり寄せた。
「なんて言ってるか分かんないけど、なんだかピックはおれの味方みたいだ」
ジャシードが言うと、ピックはまた耳たぶを甘噛みした。
「アニキ、ピックもヒートヘイズに入れたら?」
「何だよ、急に」
「だって暇そうだから」
「確かに最近、お使いに出してないけど……暇なのかな」
「こいつは食っちゃ寝してるから、連れ出してやったらどうだ。太って飛べなくなるかも知んねぇぞ。わはは!」
やりとりを聞いていたセグムは、冗談交じりにそう言った。
「連れて行くと、ピックも危険にさらすかも知れないし……」
「なんだ、お前カラス一羽守れないのか? 情けない! いやあ情けない!」
セグムがそう言ったところで、ジャシードはセグムの意図を読み込めた。要するにセグムは、厄介払いをしたいと言っているのだ。恐らく世話が面倒になったに違いない。
「ピックはお手紙を届けるのだって、怪物たちを避けて飛んでいるわけだし、連れて行ってあげても良いんじゃない?」
マーシャは、ピックの頭を撫でながら言う。
「せめて、偵察にでも使えると良いんだが、カラスにそんな事ができるわけも無いな」
バラルはパイプの煙を揺らめかせている。
「仕方ないなあ……」
この時、ヒートヘイズにピックが加わることが決まった。
セグム・フォリス家は、ヒートヘイズの面々と、ジャシードの家族たちで大いに盛り上がった。
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