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蒼穹色の薄いガーゼを軽やかに重ねた柔らかに肩が膨らむ儚げなドレスに、銀の羽の生えた小魚の群れるビーズとラメの刺繍の添えられたブルーグレーのレースグローブ。
白で子供の顔ほどに大輪のウィンターローズを王弟殿下に右耳の上に飾られて改めて膝の上からビズを交わすと庭師である元公爵は縦に細長いシャンパングラスを両手の指先で受け取った。
見開かれていた王弟殿下と鏡で写したような大きな水色の瞳は肌の色に近い淡い長いまつ毛に隠れたままになった。筆頭執事が日傘を二人に見せたが元公爵は断った。
「せっかくの春が来たんだ、芝と芝に混じるがままにさせたハナニラに日差しを与えたい、、」
執事達の背後に立っていた本日付で職位を返上した元神殿長がメイドに眼鏡を渡した。布巾を広げた手で受け取ったメイドは軽くレンズを拭くと王弟へと差し出した。
王弟は耳の上に飾った花を一度外し眼鏡をかけてやると再び花を飾り角度を整え服飾ギルド長へと目配せした。元神殿長の隣に立っていたフォルトは小さく頷いた。
若き国王陛下と王妃は大きなクッションの添えられた二人がけの藤製のベンチで顔色を変える事なく黙ったままその様子を見ていた。
そしてグラスを手に取った元公爵へと自ら腕を伸ばしシャンパンを注いだ。国王が差し出した拳へとかわいらしいレースグローブの拳で筆頭庭師は応えた。
そのグラスは口をつけられることは無かった。昼の日差しは焼けるほどでもまだ空気は冷えた三月にあって真夏の装いのような薄手のふんわりしたドレスの裾を軽く持ち上げると笑顔の元公爵は片隅のパーゴラから薔薇園の中へと軽やかに歩んで行った。
深く剪定されたまままだ新芽が吹き出したばかりの棘だらけの薔薇の中を裸足のままで。
そして薔薇園中央の“はまべみらい”と書かれた札の立てられた薔薇の苗の根本へとシャンパンは注がれた。
冬の間も数本だけ剪定されず残されたその花はサーモンピンクの花弁がふわりと幾重にも折り重なる薔薇らしい形の花だった。
「ハッピーエンドをおめでとうストルキオス、、大公の体調はいかがか?」
その様子に目を向けたまま王弟へとアルドリウス国王は口を開いた。
「自分から燃えやすい薄手の装いに袖を通し私の膝に乗ったのです。魔力の暴走の心配は無く延焼を起こさない自信があるようですね。
間近で確認しましたが顔色も血色豊かでいつもよりも晴々としてさえ見えます兄上。所見は?服飾ギルド長。」
「サンドイッチの表面だけ温めることができておりました」
「エラルド先生は。」
「動けるようになったからと無理に公務に出かけず大人しく薬湯に長湯してくれましたゆえ早い回復であったかと存じます殿下」
「、、、やはり表の顔は私が取り上げるべきなのだ。」
麗しい横顔に苦い影を浮かべた弟を兄の国王は顔を変えぬまま眺めていた。筆頭庭師は戻って来ると膝を軽く折り執事の引いた国王のそばの椅子へと着いた。
「、、庭仕事に終わりは無い、そうだろう、陛下。、、、アル、伝えてきたよ」
庭師は摘んだサーモンピンクの薔薇を国王へと差し出した。国王は革手袋を外し指先で棘が取り除かれているのを確認すると王妃のまとめ髪へと飾った。
「必要なら領地での休暇を許可する」
「この通り回復したよ、ストルのおかげでね。、、情報を元に魔石取引量の調整や規制をかければ死に物狂いの闇魔石取引業者が魔物の手を借りることだろう。
国民全員が救われることもなければ問題から解放されることも無い、それでも筆頭庭師をやめるつもりは無い。
ええっと、、組織図、、あの家も噛んでた魔石輸出の。他国と絡んでるあたりだとか、、」
「兄様、、庭仕事の情報管理はこれまで通り私に一任を、どうか、兄様は腕力を振るってください。私達の剣となって。
兄様が犯罪者達の来歴の調書全てに目を通しているのは知っています、そのために結局は王城の失策が人々を罪に向かわせると胃を痛めておられるのも。
どうかその痛みを私に分けてください、兄様。庭仕事の計画は私が立てます。どの枝を落とすかは私が決めます。
非情なるものに向き合うには非情に、腹黒くあるものに向き合うには腹黒くなければなりません。
魔物と向き合う者は魔物となるのです。ご存知でしょう、庭も、城も、同じですよ。
火魔法持ちの兄様には無理、そうでしょう?ね、私と兄上向きです。城を出て戦うことのできない私達の剣なのです。
渡せと言われても渡しませんよ、諜報における情報管理の剪定鋏は。兄様にだけは私の本心をお話していますよ。私の、大切な半身、美しい魔物。
これからは庭師に専念してくださいますか。命令させてください、、、」
「、、ストルの、初めての命令ならしょうがないな、、」
白で子供の顔ほどに大輪のウィンターローズを王弟殿下に右耳の上に飾られて改めて膝の上からビズを交わすと庭師である元公爵は縦に細長いシャンパングラスを両手の指先で受け取った。
見開かれていた王弟殿下と鏡で写したような大きな水色の瞳は肌の色に近い淡い長いまつ毛に隠れたままになった。筆頭執事が日傘を二人に見せたが元公爵は断った。
「せっかくの春が来たんだ、芝と芝に混じるがままにさせたハナニラに日差しを与えたい、、」
執事達の背後に立っていた本日付で職位を返上した元神殿長がメイドに眼鏡を渡した。布巾を広げた手で受け取ったメイドは軽くレンズを拭くと王弟へと差し出した。
王弟は耳の上に飾った花を一度外し眼鏡をかけてやると再び花を飾り角度を整え服飾ギルド長へと目配せした。元神殿長の隣に立っていたフォルトは小さく頷いた。
若き国王陛下と王妃は大きなクッションの添えられた二人がけの藤製のベンチで顔色を変える事なく黙ったままその様子を見ていた。
そしてグラスを手に取った元公爵へと自ら腕を伸ばしシャンパンを注いだ。国王が差し出した拳へとかわいらしいレースグローブの拳で筆頭庭師は応えた。
そのグラスは口をつけられることは無かった。昼の日差しは焼けるほどでもまだ空気は冷えた三月にあって真夏の装いのような薄手のふんわりしたドレスの裾を軽く持ち上げると笑顔の元公爵は片隅のパーゴラから薔薇園の中へと軽やかに歩んで行った。
深く剪定されたまままだ新芽が吹き出したばかりの棘だらけの薔薇の中を裸足のままで。
そして薔薇園中央の“はまべみらい”と書かれた札の立てられた薔薇の苗の根本へとシャンパンは注がれた。
冬の間も数本だけ剪定されず残されたその花はサーモンピンクの花弁がふわりと幾重にも折り重なる薔薇らしい形の花だった。
「ハッピーエンドをおめでとうストルキオス、、大公の体調はいかがか?」
その様子に目を向けたまま王弟へとアルドリウス国王は口を開いた。
「自分から燃えやすい薄手の装いに袖を通し私の膝に乗ったのです。魔力の暴走の心配は無く延焼を起こさない自信があるようですね。
間近で確認しましたが顔色も血色豊かでいつもよりも晴々としてさえ見えます兄上。所見は?服飾ギルド長。」
「サンドイッチの表面だけ温めることができておりました」
「エラルド先生は。」
「動けるようになったからと無理に公務に出かけず大人しく薬湯に長湯してくれましたゆえ早い回復であったかと存じます殿下」
「、、、やはり表の顔は私が取り上げるべきなのだ。」
麗しい横顔に苦い影を浮かべた弟を兄の国王は顔を変えぬまま眺めていた。筆頭庭師は戻って来ると膝を軽く折り執事の引いた国王のそばの椅子へと着いた。
「、、庭仕事に終わりは無い、そうだろう、陛下。、、、アル、伝えてきたよ」
庭師は摘んだサーモンピンクの薔薇を国王へと差し出した。国王は革手袋を外し指先で棘が取り除かれているのを確認すると王妃のまとめ髪へと飾った。
「必要なら領地での休暇を許可する」
「この通り回復したよ、ストルのおかげでね。、、情報を元に魔石取引量の調整や規制をかければ死に物狂いの闇魔石取引業者が魔物の手を借りることだろう。
国民全員が救われることもなければ問題から解放されることも無い、それでも筆頭庭師をやめるつもりは無い。
ええっと、、組織図、、あの家も噛んでた魔石輸出の。他国と絡んでるあたりだとか、、」
「兄様、、庭仕事の情報管理はこれまで通り私に一任を、どうか、兄様は腕力を振るってください。私達の剣となって。
兄様が犯罪者達の来歴の調書全てに目を通しているのは知っています、そのために結局は王城の失策が人々を罪に向かわせると胃を痛めておられるのも。
どうかその痛みを私に分けてください、兄様。庭仕事の計画は私が立てます。どの枝を落とすかは私が決めます。
非情なるものに向き合うには非情に、腹黒くあるものに向き合うには腹黒くなければなりません。
魔物と向き合う者は魔物となるのです。ご存知でしょう、庭も、城も、同じですよ。
火魔法持ちの兄様には無理、そうでしょう?ね、私と兄上向きです。城を出て戦うことのできない私達の剣なのです。
渡せと言われても渡しませんよ、諜報における情報管理の剪定鋏は。兄様にだけは私の本心をお話していますよ。私の、大切な半身、美しい魔物。
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「、、ストルの、初めての命令ならしょうがないな、、」
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