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何も言ってこないことから、仁には俺の声やベッドがきしむ音は聞こえていないのだろう。
とりあえず安心した俺はほっと息を吐くと「綾人くん、余裕そうだね」と背後から声を投げかけられるのだ。
「仁くんのこと考えてたでしょ。·····今は、俺の事だけ考えてよ」
ーー翠は、俺の事を都合のいい玩具だと思っているはずだ。なのにその声は細く、いつもの余裕がある翠ではないように思えた。
「··········翠?」
腰に回されている翠の手に手のひらを重ねると、ぴくっと翠の指先が揺れた。そのままするっと指を絡められ、にぎにぎと手を弄ばれると、なんだか少しくすぐったかった。
「綾人くん。ちゃんと、俺で感じてね」
耳元で低く囁かれる翠の声に下腹部が甘く痺れると、またも背後でふっと笑う翠に緩く腰を打ち付けられてしまう。
控えめに響く粘膜の音が扉の外にまで漏れてしまうのではないかもと最初はハラハラしていた。
だが、内壁の粘膜を絡め取られながらゆるゆると擦れる熱に次第に腹の中が疼いていくと、扉の外のことなど考える余裕などなくなってしまうのだ。
「こうやってゆっくりやるとさ、腹の中じわじわ気持ちーね」
「や·····、ぁッ··········、す·····、ぃ··········っ」
「もしかして、もうイきそうなの?」
こくこくと頷くと、顎に手を添えられ、顔を横に向かされてしまう。
「一緒に気持ちよくなろうね」
背筋がぞくぞくと震えるような甘い言葉とは反対に荒々しく重ねられた唇は熱く、閉じている唇をこじ開けられると、簡単に舌の侵入を許してしまう。
熱い舌先が口内を滑り、薄い粘膜をなぞられると、自分の意志とは関係なく腰がびくびくと浮いてしまうのだ。
「·····ん、綾人くん、もっと近くにおいでよ」
「ーーっん、ん··········っ」
腹に腕を回されると、抜けそうになっていた性器があっという間に奥まで飲み込まれてしまう。密着している腰を押し付けられ、凝りをぐちゃぐちゃと突かれると、もう限界だった。
「気持ちいね、一緒にイこっか」
「っん·······っ、~~··········ッッ」
熱い息ごと唇で塞がれながら、張り詰めた性器からは白濁の液が勢いよく弾けた。
思い切り打ち付けられた先から吐き出される熱が腹を満たしていくと、途端に体からは力が抜けていった。
瞼が落ちかけている俺を見る翠は、目を細めると優しく微笑み、ふっと笑った。
「時間になったら起こしてあげるから、少し目閉じてていいよ」
労るかのような柔らかい声が落とされ、暖かい手のひらで頬を撫でられると、あまりの心地良さに俺の意識はまどろみの中へと落ちていった。
寝息を立て始める綾人の頬を、翠は愛おしそうに撫で上げた。
起きなければならない時間までまだ時間はある。綾人の寝顔を眺めながら可愛いなあ、とぽつりと呟いた時だった。
ーーカタッ
音がする扉を睨み、まだいたのか、と思わずちっと舌を鳴らしてしまう。
寝ている綾人を起こさないように、なるべく足音を立てずに入口へ向かい、静かに扉を開けた。
するといきなり開いた扉に驚いたのか、扉の脇の壁に寄りかかっていた仁の肩がびくっと揺れた。
「ーーあや、」
まさか、綾人の部屋に俺がいると思っていなかったのだろう。
こちらへ振り向くと同時に綾人だと思って伸ばしかけていた仁の手は、俺と目が合ったことにより空中でぴたっと止まった。
「·············翠、何で、ここに··········、」
「あは、なんでだと思う?」
挑発するように目を細めた瞬間、胸ぐらを捕まれ、ドンッと壁に押し付けられてしまう。痛みで顔をしかめるが、仁の手が緩められることはなく、その額にはうっすらと青筋が浮かんでいた。
「··········ね、例えさ、俺と綾人くんが何してようと仁くんには関係ないよね?だって、別に君たち付き合ってるわけじゃないでしょ?」
翠の正論に対して仁は眉を寄せた。すると、部屋は少しの間静寂に包まれた。
何も言い返してこない仁に、翠は話にならないと言わんばかりため息をついた。そんな翠を見る仁は何かを考えた後に、鋭い目付きで翠を見やるのだ。
「俺が綾と付き合えば、お前は綾になにもしないんだな?」
「······は、仁くんさ、別に綾人くんのこと好きじゃないって言ったじゃん。好きでもない子のためにさ、フツーそこまでやる?」
「····お前には、関係ないだろ」
仁の射るような視線に思わず目を逸らしてしまう。まるで俺の心の奥を見透かしているような、力強い眼差しだった。
「翠·······、お前こそ、綾のこと好きなんじゃないのか」
ーーこういう時、俺たちは本当に双子なんだと思う。
仁は普段鈍感なのに、どうしてこういう時だけ気付くのか。双子ならではの勘のようなものがあるのだろうか。
ーーでも、俺は··········、
「········は、なに言ってんの?好きなわけないじゃん」
「今綾人くんの部屋にいたのもただの気まぐれだし、そもそも綾人くんなんて全然好みじゃーー」
ーーガチャ
その時、タイミングよく綾人の部屋の扉が空いた。綾人の赤く染まった瞳は確かに俺を捉えていて、その小さな肩は震えていた。
「··········あ、やと·····、く··········」
ーー本当、なぜこんなことになってしまったんだろう。綾人くんを、傷付けたかったわけじゃないのに。
とりあえず安心した俺はほっと息を吐くと「綾人くん、余裕そうだね」と背後から声を投げかけられるのだ。
「仁くんのこと考えてたでしょ。·····今は、俺の事だけ考えてよ」
ーー翠は、俺の事を都合のいい玩具だと思っているはずだ。なのにその声は細く、いつもの余裕がある翠ではないように思えた。
「··········翠?」
腰に回されている翠の手に手のひらを重ねると、ぴくっと翠の指先が揺れた。そのままするっと指を絡められ、にぎにぎと手を弄ばれると、なんだか少しくすぐったかった。
「綾人くん。ちゃんと、俺で感じてね」
耳元で低く囁かれる翠の声に下腹部が甘く痺れると、またも背後でふっと笑う翠に緩く腰を打ち付けられてしまう。
控えめに響く粘膜の音が扉の外にまで漏れてしまうのではないかもと最初はハラハラしていた。
だが、内壁の粘膜を絡め取られながらゆるゆると擦れる熱に次第に腹の中が疼いていくと、扉の外のことなど考える余裕などなくなってしまうのだ。
「こうやってゆっくりやるとさ、腹の中じわじわ気持ちーね」
「や·····、ぁッ··········、す·····、ぃ··········っ」
「もしかして、もうイきそうなの?」
こくこくと頷くと、顎に手を添えられ、顔を横に向かされてしまう。
「一緒に気持ちよくなろうね」
背筋がぞくぞくと震えるような甘い言葉とは反対に荒々しく重ねられた唇は熱く、閉じている唇をこじ開けられると、簡単に舌の侵入を許してしまう。
熱い舌先が口内を滑り、薄い粘膜をなぞられると、自分の意志とは関係なく腰がびくびくと浮いてしまうのだ。
「·····ん、綾人くん、もっと近くにおいでよ」
「ーーっん、ん··········っ」
腹に腕を回されると、抜けそうになっていた性器があっという間に奥まで飲み込まれてしまう。密着している腰を押し付けられ、凝りをぐちゃぐちゃと突かれると、もう限界だった。
「気持ちいね、一緒にイこっか」
「っん·······っ、~~··········ッッ」
熱い息ごと唇で塞がれながら、張り詰めた性器からは白濁の液が勢いよく弾けた。
思い切り打ち付けられた先から吐き出される熱が腹を満たしていくと、途端に体からは力が抜けていった。
瞼が落ちかけている俺を見る翠は、目を細めると優しく微笑み、ふっと笑った。
「時間になったら起こしてあげるから、少し目閉じてていいよ」
労るかのような柔らかい声が落とされ、暖かい手のひらで頬を撫でられると、あまりの心地良さに俺の意識はまどろみの中へと落ちていった。
寝息を立て始める綾人の頬を、翠は愛おしそうに撫で上げた。
起きなければならない時間までまだ時間はある。綾人の寝顔を眺めながら可愛いなあ、とぽつりと呟いた時だった。
ーーカタッ
音がする扉を睨み、まだいたのか、と思わずちっと舌を鳴らしてしまう。
寝ている綾人を起こさないように、なるべく足音を立てずに入口へ向かい、静かに扉を開けた。
するといきなり開いた扉に驚いたのか、扉の脇の壁に寄りかかっていた仁の肩がびくっと揺れた。
「ーーあや、」
まさか、綾人の部屋に俺がいると思っていなかったのだろう。
こちらへ振り向くと同時に綾人だと思って伸ばしかけていた仁の手は、俺と目が合ったことにより空中でぴたっと止まった。
「·············翠、何で、ここに··········、」
「あは、なんでだと思う?」
挑発するように目を細めた瞬間、胸ぐらを捕まれ、ドンッと壁に押し付けられてしまう。痛みで顔をしかめるが、仁の手が緩められることはなく、その額にはうっすらと青筋が浮かんでいた。
「··········ね、例えさ、俺と綾人くんが何してようと仁くんには関係ないよね?だって、別に君たち付き合ってるわけじゃないでしょ?」
翠の正論に対して仁は眉を寄せた。すると、部屋は少しの間静寂に包まれた。
何も言い返してこない仁に、翠は話にならないと言わんばかりため息をついた。そんな翠を見る仁は何かを考えた後に、鋭い目付きで翠を見やるのだ。
「俺が綾と付き合えば、お前は綾になにもしないんだな?」
「······は、仁くんさ、別に綾人くんのこと好きじゃないって言ったじゃん。好きでもない子のためにさ、フツーそこまでやる?」
「····お前には、関係ないだろ」
仁の射るような視線に思わず目を逸らしてしまう。まるで俺の心の奥を見透かしているような、力強い眼差しだった。
「翠·······、お前こそ、綾のこと好きなんじゃないのか」
ーーこういう時、俺たちは本当に双子なんだと思う。
仁は普段鈍感なのに、どうしてこういう時だけ気付くのか。双子ならではの勘のようなものがあるのだろうか。
ーーでも、俺は··········、
「········は、なに言ってんの?好きなわけないじゃん」
「今綾人くんの部屋にいたのもただの気まぐれだし、そもそも綾人くんなんて全然好みじゃーー」
ーーガチャ
その時、タイミングよく綾人の部屋の扉が空いた。綾人の赤く染まった瞳は確かに俺を捉えていて、その小さな肩は震えていた。
「··········あ、やと·····、く··········」
ーー本当、なぜこんなことになってしまったんだろう。綾人くんを、傷付けたかったわけじゃないのに。
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