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フェアリーミルクのスタジオでは三月が日向から歌のレッスンを受けていて、湊が日向の知り合いのダンス講師からレッスンを受けている。大変活気的だ。普段の数倍は有意義な時間がレッスンスタジオには流れている。そんな中、一人だけその空間にぽつねんと置いてけぼりにされたように俺だけレッスン室の隅に体操座りでぼうっと皆の動きを見ている。やがて、歌のレッスンに区切りがついたのか日向は三月に何やら指示を出すと俺の方に向かってきた。
「海斗くん。昨日出した宿題の件だけれど、さっそく今日の分を聞かせてもらえるかしら?」
小首を傾げながら日向が聞いてくる。
「あー、その」
「まさか、思い浮かばなかったから何もないとかじゃないでしょうね?」
鋭い表情で日向が聞いてくる。
「そういうわけじゃないんですけど、なんていうか、ここじゃ言いにくいというか。…何なら日向さんにも言いづらいというか。そもそも、これが自分を愛していることになっているかも怪しいというか」
「なによ。歯切れが随分悪いじゃない。良い悪いは私が判断することで貴方が判断することじゃないわ。取り敢えず言ってみなさいな。あと、ここじゃ言いにくいなら少し外に出ましょう。私の行きつけの喫茶店に連れてってあげる」
「え?でも、そうしたら三月のレッスンは?」
「今は休憩中よ。それに、私の担当は三月くんだけじゃなくて海斗くんもなの。そんな、海斗くんだけ、ついでみたいな感じでレッスンをしたりしないわよ」
「ありがとうございます。」
少し感動した。てっきり俺はアイドル失格の烙印を押された上に三月のついでみたいにレッスンをされる――レッスンと言えるかも分からないけれども――と思っていたので。当初の印象よりも日向は良い人なのかもしれない。ついでに言うなら、かなり面倒見が良い。面倒見が良くないとプロデューサーなんてやってられないのかも知れないけれど。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
そのまま、レッスン室から外に出て、しばらく並木道を歩く。すると現代的な風景に明らかに浮いている西洋のお屋敷みたいな建物尾が見えてきた。日向について西洋のお屋敷のような扉をくぐる。ここが日向のお気に入りの喫茶店なのだろうか?
「おかえりなさいませ。…あら、日向さん。今日も来てくださったんですね。嬉しいです」
黒のクラシカルなロングメイド服を身に包んだ黒髪ロングストレートの女性に迎え入れられる。
「りつちゃん、こんにちは。今日は、いつもの席空いてる?」
「空いていますよ。ご案内しますね。…そちらのご主人様は初めてでしょうか?」
「私の連れなの。説明は私からするから大丈夫よ」
「そうですか。かしこまりました」
りつと呼ばれた女性に案内されて奥の角にある二人掛け席に座る。その二人掛け席もまるで西洋のお城の応接室にあるような感じだった。なんか、色々すごい。
「あの、ここは?」
圧倒されすぎて全然聞けなかったことを、日向が紅茶二人分を頼んで、りつが立ち去った後に聞く。
「メイド喫茶よ」
「えっと、なんでメイド喫茶なんですか?俺、話しづらいことがあるって言った気がするんですけど」
「だからじゃない」
至極当たり前なことを聞くなとでも言うように尊大に日向が言う。何たる理不尽。
「意味が分かりませんが」
「ここは、お客さんみんなメイドと話すために来てるから他人のことなんて興味ないのよ。密会するにはもってこいでしょ?」
「そういうもんですか?…というか、それなら俺たちもメイドさんとお話しする必要があるんじゃ…」
「それは、大丈夫よ。ここのメイド喫茶はメイドと話したい人用の席とメイドと話すのではなくて自分の作業をしたい人用の席で分かれているから。因みに、ここはメイドと話すのではなくて自分の作業をしたい人用の席よ。しかも、平日はここを利用する人は少ないの。今日なんて私達だけ。ね、ピッタリでしょ?」
「はぁ」
まあ、確かにそう言われるとそうなのかもしれないなんて思う。
「紅茶をお持ちいたしました。こちらの砂時計が全て落ちましたらお召し上がりくださいませ」
りつはそう言うと来た時と同様に楚々とした仕草で去っていった。
何というか、俺が想像していたメイド喫茶と大分違う。よくある萌え萌えキュンとか、目の前に居る、りつは絶対に言わなさそうだし。
「ここの紅茶は美味しいのよ」
「そうなんですね。…なんていうか俺の想像していたメイド喫茶と大分違いました」
「萌え萌えキュンとかする感じだと思ってた?」
自分の偏見さを克明にするようで居心地の悪さを感じるが、飲み込んで正直に答える。
「はい」
「うふふ、そうね。知らない人からしたらそうかもしれないわね。最近は一言にメイド喫茶と言っても色々とあるのよ。何も、知らないのにまるですべてを知っているかのように語る人は多いわ」
「そうかもしれませんね」
砂時計が丁度すべて落ち切る。日向はそれを確認すると紅茶を一口飲んだ。俺もそれに倣うかのように紅茶を一口飲む。美味しい。
「それで、宿題の件だけど話してもらえるかしら?」
「はい」
俺は、昨日あったことを全て話した。推しである璃桜にセフレを求められたこと。セフレとはいえ推しと繋がる機会と思って承諾したこと――日向にボロクソ言われてやけっぱちだったことは面倒くさいことになりそうなので口にしなかった――。キスするときの璃桜の目が過去の自分と同じで寂しくて悲しい目をしていたこと。璃桜を救うことで自分を救うことになるから救ってあげたいと思ったこと。…だから、璃桜から夜の営みが初めてと知られて断られても縋りついたこと。
長々と話してしまったけれども、日向は口を挟むことなく静かに聞いてくれていた。
「以上です」
「素晴らしいじゃない!」
日向は拍手するように手をパチパチと叩いて俺を褒めた。
「セフレになることが?」
「セフレになる理由がよ。それにセックスを結局してないのだから、それはどちらかというとセフレというよりソフレね」
「ソフレ?」
「添い寝フレンドの略よ。ってそんなことはどうでも良いの。昨日からまさかそこまで成長するなんて思っていなかったわ。これならすぐに三月君や湊君と同じ技術のレッスンまで辿り着けるかもね」
一人で盛り上がる日向についていけない。一体何をそんなに俺は褒められているのだろうか?
「そんなに褒めるところありました?」
「もちろん。自分を救いたいってことは自分を愛している証拠でしょう?昨日まで自分を愛することが出来なかったのに急にできるようになっちゃって。恋って偉大ね」
俺は盛大に紅茶を吹きそうになってむせる。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないれふ」
「あらあら」
あらあら、ではない。恋って。俺は彼を推しているだけであって断じて恋しているわけじゃない。
「恋じゃないです」
「でも、好きなんでしょう?」
「推しなんです」
「リアコだったのね」
「そんなはず…」
「あるでしょう。セフレ誘われて、のこのことついて行っているのだから」
「そういうものですか?」
「そういうものよ」
「ま、まあ仮にそうだとしても、俺は自分を本当に愛しているのでしょうか?同情では無くて?」
昨日は、自分を救うために璃桜を救いたいと思ったことを自分への愛だと思った。けれども、改めて考えてみると、それはただの同情なんじゃないかと思い始めてきた。自分と同じ目をした彼が可哀想で哀れみから来た同情。
「違うわね」
「どうしてそう言えるんですか?」
「だって、同じ目をしていたのでしょう?同じ立場の人間が同じ立場の人間を救おうとすることを同情とは言わないわ。同情って言うのはね、上の立場の人間が下の立場の人間にすることなのよ」
「そう…かもしれませんね」
確かに言われてみればそうな気がする。だから同情されると人間は腹立たしく思うのだ。
「まぁ、でも良かったわ。後は、これをアイドル活動に活かせると良いわね」
「アイドル活動に活かす?どうやって?」
「いい?アイドルわね、愛される存在じゃなくて愛す存在なの」
「はぁ」
「海斗君は自分と同じで寂しくて悲しい目をしているのは璃桜君がはじめて、みたいなことを言っていたけれどそうじゃない。アイドルのファンの子はほとんどそうよ。皆、愛されたいからアイドルを推すの。それを、愛してあげるのが貴方たちアイドルの仕事なの」
「そう…ですか?そうは、見えなかったですけど」
「それは、海斗君がファンの子達をちゃんと見ていないからよ」
「確かに、そうかもしれません」
アイドルとして舞台に立って愛されることに必死でファンの子達を見てはいなかった。だってアイドルは見られるものであって見るものではないと思っていたから。
「悲しい目をしている人を救うことで自分を救いたいと思えたのなら、もう大丈夫。璃桜君だけじゃなくてファンの子達にもそう思えるはずよ。海斗君が寂しさや悲しみから救われるために、寂しい、悲しいと訴えるファンの子達を寂しさや悲しみから救ってあげて」
「俺に出来るかは、まだ分からないけど、ライブでちゃんとファンの子達を見るようにしたいと思います」
「うん。そうね。そうしてあげて」
「それは、それとして、セフレになったことに対して軽蔑とかしないんですね」
口に含んだ紅茶を吹きだす勢いで日向は笑う。
「そんなことを気にしていたの?愛のカタチなんて人それぞれじゃない。恋人もセフレもそこに愛があるのなら名前が違うだけの同じものよ。…それに、私と海斗君は出会って二日目よ?例え海斗君が愛のないセフレをしていようとも止める権利も義務も私には無いわ。まぁ、有り体に言えばご勝手にどうぞってところかしら?」
――雰囲気に似合わず寛容な人なんだな。
てっきり、そういうことに対して潔癖なタイプかと思っていたのに。というか、一般的に多くの人はセフレと聞くと反対するので特別潔癖とは言わないか。どちらかというと、日向が特別寛容なのだろう。
「随分と寛容ですね」
「そう?まぁ、経験値の差かしらね。…じゃ、話も終わったことだし、そろそろレッスン室に戻りましょうか。海斗君も今日からボイスレッスンの方に参加して。偶に、歌声に揺らぎがあるからそれを直していきましょう」
「え…。良いんですか?」
「もちろん。だって、愛についてはもう私が教えることなど何もないもの。次は技術の方を教えるわ」
「ありがとうございます」
「海斗くん。昨日出した宿題の件だけれど、さっそく今日の分を聞かせてもらえるかしら?」
小首を傾げながら日向が聞いてくる。
「あー、その」
「まさか、思い浮かばなかったから何もないとかじゃないでしょうね?」
鋭い表情で日向が聞いてくる。
「そういうわけじゃないんですけど、なんていうか、ここじゃ言いにくいというか。…何なら日向さんにも言いづらいというか。そもそも、これが自分を愛していることになっているかも怪しいというか」
「なによ。歯切れが随分悪いじゃない。良い悪いは私が判断することで貴方が判断することじゃないわ。取り敢えず言ってみなさいな。あと、ここじゃ言いにくいなら少し外に出ましょう。私の行きつけの喫茶店に連れてってあげる」
「え?でも、そうしたら三月のレッスンは?」
「今は休憩中よ。それに、私の担当は三月くんだけじゃなくて海斗くんもなの。そんな、海斗くんだけ、ついでみたいな感じでレッスンをしたりしないわよ」
「ありがとうございます。」
少し感動した。てっきり俺はアイドル失格の烙印を押された上に三月のついでみたいにレッスンをされる――レッスンと言えるかも分からないけれども――と思っていたので。当初の印象よりも日向は良い人なのかもしれない。ついでに言うなら、かなり面倒見が良い。面倒見が良くないとプロデューサーなんてやってられないのかも知れないけれど。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
そのまま、レッスン室から外に出て、しばらく並木道を歩く。すると現代的な風景に明らかに浮いている西洋のお屋敷みたいな建物尾が見えてきた。日向について西洋のお屋敷のような扉をくぐる。ここが日向のお気に入りの喫茶店なのだろうか?
「おかえりなさいませ。…あら、日向さん。今日も来てくださったんですね。嬉しいです」
黒のクラシカルなロングメイド服を身に包んだ黒髪ロングストレートの女性に迎え入れられる。
「りつちゃん、こんにちは。今日は、いつもの席空いてる?」
「空いていますよ。ご案内しますね。…そちらのご主人様は初めてでしょうか?」
「私の連れなの。説明は私からするから大丈夫よ」
「そうですか。かしこまりました」
りつと呼ばれた女性に案内されて奥の角にある二人掛け席に座る。その二人掛け席もまるで西洋のお城の応接室にあるような感じだった。なんか、色々すごい。
「あの、ここは?」
圧倒されすぎて全然聞けなかったことを、日向が紅茶二人分を頼んで、りつが立ち去った後に聞く。
「メイド喫茶よ」
「えっと、なんでメイド喫茶なんですか?俺、話しづらいことがあるって言った気がするんですけど」
「だからじゃない」
至極当たり前なことを聞くなとでも言うように尊大に日向が言う。何たる理不尽。
「意味が分かりませんが」
「ここは、お客さんみんなメイドと話すために来てるから他人のことなんて興味ないのよ。密会するにはもってこいでしょ?」
「そういうもんですか?…というか、それなら俺たちもメイドさんとお話しする必要があるんじゃ…」
「それは、大丈夫よ。ここのメイド喫茶はメイドと話したい人用の席とメイドと話すのではなくて自分の作業をしたい人用の席で分かれているから。因みに、ここはメイドと話すのではなくて自分の作業をしたい人用の席よ。しかも、平日はここを利用する人は少ないの。今日なんて私達だけ。ね、ピッタリでしょ?」
「はぁ」
まあ、確かにそう言われるとそうなのかもしれないなんて思う。
「紅茶をお持ちいたしました。こちらの砂時計が全て落ちましたらお召し上がりくださいませ」
りつはそう言うと来た時と同様に楚々とした仕草で去っていった。
何というか、俺が想像していたメイド喫茶と大分違う。よくある萌え萌えキュンとか、目の前に居る、りつは絶対に言わなさそうだし。
「ここの紅茶は美味しいのよ」
「そうなんですね。…なんていうか俺の想像していたメイド喫茶と大分違いました」
「萌え萌えキュンとかする感じだと思ってた?」
自分の偏見さを克明にするようで居心地の悪さを感じるが、飲み込んで正直に答える。
「はい」
「うふふ、そうね。知らない人からしたらそうかもしれないわね。最近は一言にメイド喫茶と言っても色々とあるのよ。何も、知らないのにまるですべてを知っているかのように語る人は多いわ」
「そうかもしれませんね」
砂時計が丁度すべて落ち切る。日向はそれを確認すると紅茶を一口飲んだ。俺もそれに倣うかのように紅茶を一口飲む。美味しい。
「それで、宿題の件だけど話してもらえるかしら?」
「はい」
俺は、昨日あったことを全て話した。推しである璃桜にセフレを求められたこと。セフレとはいえ推しと繋がる機会と思って承諾したこと――日向にボロクソ言われてやけっぱちだったことは面倒くさいことになりそうなので口にしなかった――。キスするときの璃桜の目が過去の自分と同じで寂しくて悲しい目をしていたこと。璃桜を救うことで自分を救うことになるから救ってあげたいと思ったこと。…だから、璃桜から夜の営みが初めてと知られて断られても縋りついたこと。
長々と話してしまったけれども、日向は口を挟むことなく静かに聞いてくれていた。
「以上です」
「素晴らしいじゃない!」
日向は拍手するように手をパチパチと叩いて俺を褒めた。
「セフレになることが?」
「セフレになる理由がよ。それにセックスを結局してないのだから、それはどちらかというとセフレというよりソフレね」
「ソフレ?」
「添い寝フレンドの略よ。ってそんなことはどうでも良いの。昨日からまさかそこまで成長するなんて思っていなかったわ。これならすぐに三月君や湊君と同じ技術のレッスンまで辿り着けるかもね」
一人で盛り上がる日向についていけない。一体何をそんなに俺は褒められているのだろうか?
「そんなに褒めるところありました?」
「もちろん。自分を救いたいってことは自分を愛している証拠でしょう?昨日まで自分を愛することが出来なかったのに急にできるようになっちゃって。恋って偉大ね」
俺は盛大に紅茶を吹きそうになってむせる。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないれふ」
「あらあら」
あらあら、ではない。恋って。俺は彼を推しているだけであって断じて恋しているわけじゃない。
「恋じゃないです」
「でも、好きなんでしょう?」
「推しなんです」
「リアコだったのね」
「そんなはず…」
「あるでしょう。セフレ誘われて、のこのことついて行っているのだから」
「そういうものですか?」
「そういうものよ」
「ま、まあ仮にそうだとしても、俺は自分を本当に愛しているのでしょうか?同情では無くて?」
昨日は、自分を救うために璃桜を救いたいと思ったことを自分への愛だと思った。けれども、改めて考えてみると、それはただの同情なんじゃないかと思い始めてきた。自分と同じ目をした彼が可哀想で哀れみから来た同情。
「違うわね」
「どうしてそう言えるんですか?」
「だって、同じ目をしていたのでしょう?同じ立場の人間が同じ立場の人間を救おうとすることを同情とは言わないわ。同情って言うのはね、上の立場の人間が下の立場の人間にすることなのよ」
「そう…かもしれませんね」
確かに言われてみればそうな気がする。だから同情されると人間は腹立たしく思うのだ。
「まぁ、でも良かったわ。後は、これをアイドル活動に活かせると良いわね」
「アイドル活動に活かす?どうやって?」
「いい?アイドルわね、愛される存在じゃなくて愛す存在なの」
「はぁ」
「海斗君は自分と同じで寂しくて悲しい目をしているのは璃桜君がはじめて、みたいなことを言っていたけれどそうじゃない。アイドルのファンの子はほとんどそうよ。皆、愛されたいからアイドルを推すの。それを、愛してあげるのが貴方たちアイドルの仕事なの」
「そう…ですか?そうは、見えなかったですけど」
「それは、海斗君がファンの子達をちゃんと見ていないからよ」
「確かに、そうかもしれません」
アイドルとして舞台に立って愛されることに必死でファンの子達を見てはいなかった。だってアイドルは見られるものであって見るものではないと思っていたから。
「悲しい目をしている人を救うことで自分を救いたいと思えたのなら、もう大丈夫。璃桜君だけじゃなくてファンの子達にもそう思えるはずよ。海斗君が寂しさや悲しみから救われるために、寂しい、悲しいと訴えるファンの子達を寂しさや悲しみから救ってあげて」
「俺に出来るかは、まだ分からないけど、ライブでちゃんとファンの子達を見るようにしたいと思います」
「うん。そうね。そうしてあげて」
「それは、それとして、セフレになったことに対して軽蔑とかしないんですね」
口に含んだ紅茶を吹きだす勢いで日向は笑う。
「そんなことを気にしていたの?愛のカタチなんて人それぞれじゃない。恋人もセフレもそこに愛があるのなら名前が違うだけの同じものよ。…それに、私と海斗君は出会って二日目よ?例え海斗君が愛のないセフレをしていようとも止める権利も義務も私には無いわ。まぁ、有り体に言えばご勝手にどうぞってところかしら?」
――雰囲気に似合わず寛容な人なんだな。
てっきり、そういうことに対して潔癖なタイプかと思っていたのに。というか、一般的に多くの人はセフレと聞くと反対するので特別潔癖とは言わないか。どちらかというと、日向が特別寛容なのだろう。
「随分と寛容ですね」
「そう?まぁ、経験値の差かしらね。…じゃ、話も終わったことだし、そろそろレッスン室に戻りましょうか。海斗君も今日からボイスレッスンの方に参加して。偶に、歌声に揺らぎがあるからそれを直していきましょう」
「え…。良いんですか?」
「もちろん。だって、愛についてはもう私が教えることなど何もないもの。次は技術の方を教えるわ」
「ありがとうございます」
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