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一つ、また一つと、靄のかかった脳内に言いたい言葉が浮かんでは消える。だらしなく開かれた口からは、歳不相応にぐずるような嬌声が絶えず漏れた。
たいせぇ、と溶け切った声で彼の名前を呼ぶと「ん?」と柔らかい響きの声が返ってきて、身体の芯から沸騰した体温がさらに上がる。全ての腸壁を引っ掻きながら蠢く彼自身をギュウっと締め付けると、不思議と異物感は快楽へと成り代わった。
「……っは、しっかり咥えるね」
「ゔぁ…、おなかっ……」
「気持ちい?」
ゔ~っと唸る声がシーツに包まれ、籠り、彼の耳に届いているのかどうか不安になる。それを知ってか知らずか背筋にゾワゾワとした感覚が走った後、肩甲骨の辺りにジュッとリップ音が響いた。
「…これキツい?」
そう聞かれると同時に、臍下の柔らかい部分へ彼の固い指先がグッと沈む。「ゔっ」と押し出されるまま、どちらともつかない声を上げると「ははは」と掠れた笑い声が聞こえた。それじゃ気持ち良いのかわかんないでしょ、と続く彼の声が遥か遠くに感じる。
「あ、ぁ……ぐる、じ」
「苦しい?」
耳朶へかかる吐息に擽られ身を捩ると、逃げるなと言わんばかりに更に腰が密着した。抽挿はされず、ただ繋がっていることだけを確認するように熱い掌が腹の皮膚を摩る。体内に埋まる彼自身が時間が経つ毎に溶け、俺の内臓と同化していくような感覚に堪らず内腿が痙攣した。
「あれ、またイった?」
「……ぅあ……」
「えっちだね、中だけでイけるんだ」
そうさせたのはお前だろう、と悪態の一つや二つ吐いてやりたかったが、疲弊しきった喉は惨めにひゅうひゅうと音を鳴らすことしか出来ない。ボヤけた視界でなんとか彼の姿を捉え、詰めるように睨むと、右腕を粗雑に引っ張られて唇に湿った感触が当たった。
「んん、ゔっ……」
下唇に鉄の味が滲む。彼に噛まれたものではなく、快楽を逃す為に自分自身で傷つけたものだった。唇の端から溢れる唾液と共に口を塞がれ、僅かな隙間から薄い舌が押し入ってくる。身体の至る所から彼の存在を感じて、溺れてしまいそうだった。
「らしくないことしないの。」と浅い傷口の上を彼の指先が滑る。
「太晴が……ずっと擦っ、てくるから」
「……我慢出来なくなった?」
憎たらしい余裕を滲ませ、軽い笑みを貼り付けた端正な面に思わず見惚れる。キュウっと自身の腸が収縮するのを感じた瞬間、彼の左眉がクッと上がった。
「……上手だね」
(……じょうず?)
熱に浮かされ、鈍り切った頭では、その言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かった。
そうだね、確かに俺はセックスが上手い方だとは思うけど。だけど、それもお前を目の前にすると形無しだ。くだらない思考に気を取られている間に腕を引かれ、気づけば彼と向かい合うような体勢になっている。
無い胸の上、ピンと存在を主張している桃色の飾りへ彼の指先が触れた。ゆるゆると始まる律動に意識が遠のいていく。ピリリとした痛みと、皮膚を震わせる衝撃が意識を繋ぎ止める唯一の糸だった。
「ぁゔ、ん…あっ」
「今日は無口な日なの?珍しい」
そう言う彼の掌は執拗に俺自身を擦り、何度目かの絶頂へと追い詰めていく。犬の様に切れ切れに吐き出す息とベッドの軋む音が重なり、その乾いた音色すらも鼓膜の奥を刺激した。
喋らせる気なんて、毛頭ないじゃないか。
「んゔ……あっ、や…っで、る、やば」
口をついて出た無意識の合図に、擦る掌の動きが更に激しくなる。
「だめ、だめっ……だっで…ゔ、ぁ」
「いいよ、イけ」
やけに明瞭に聞こえる彼の低い声に呼応するように下腹部が引き攣り、ベッドのシーツを巻き込んでつま先に力が入る。プシッという水音と共に、眼下には自身から溢れ出る透明の液体が見えた。浮いた腰を抑えつけられて、ずりずりと奥に侵入しては引き返す熱。暫くすると、堰き止められた吐息と共に、二人を隔てる薄い膜へと欲が吐き出される気配を感じた。
「う……まって、やばい」
「いっぱい出たね」
尚も自身の先端を虐めようとしてくる彼の掌を払い、重い身体を引き摺って逃げようとするも簡単に腕の中に閉じ込められてしまった。
「ね、ほんと、に……むり、だって」
「ごめんごめん」
割と本気で抵抗の意を示したはずがあっけらかんと口角を上げて、全く反省の色が見えないどこまでも適当な男。事後の一番疲れた時にそんな表情をされても、彼のことを憎めない自分自身が憎い。
ちゅっと口の端にキスをされた後、耳元に近づいて来る彼の唇。春人、と囁くように名前を呼ばれたので「ん?」と返すと、こっちが恥ずかしくなってくるほど甘い声でこう言うのだ。
「大好き。」
はぁ、負け。負けました、俺の負けです。
たいせぇ、と溶け切った声で彼の名前を呼ぶと「ん?」と柔らかい響きの声が返ってきて、身体の芯から沸騰した体温がさらに上がる。全ての腸壁を引っ掻きながら蠢く彼自身をギュウっと締め付けると、不思議と異物感は快楽へと成り代わった。
「……っは、しっかり咥えるね」
「ゔぁ…、おなかっ……」
「気持ちい?」
ゔ~っと唸る声がシーツに包まれ、籠り、彼の耳に届いているのかどうか不安になる。それを知ってか知らずか背筋にゾワゾワとした感覚が走った後、肩甲骨の辺りにジュッとリップ音が響いた。
「…これキツい?」
そう聞かれると同時に、臍下の柔らかい部分へ彼の固い指先がグッと沈む。「ゔっ」と押し出されるまま、どちらともつかない声を上げると「ははは」と掠れた笑い声が聞こえた。それじゃ気持ち良いのかわかんないでしょ、と続く彼の声が遥か遠くに感じる。
「あ、ぁ……ぐる、じ」
「苦しい?」
耳朶へかかる吐息に擽られ身を捩ると、逃げるなと言わんばかりに更に腰が密着した。抽挿はされず、ただ繋がっていることだけを確認するように熱い掌が腹の皮膚を摩る。体内に埋まる彼自身が時間が経つ毎に溶け、俺の内臓と同化していくような感覚に堪らず内腿が痙攣した。
「あれ、またイった?」
「……ぅあ……」
「えっちだね、中だけでイけるんだ」
そうさせたのはお前だろう、と悪態の一つや二つ吐いてやりたかったが、疲弊しきった喉は惨めにひゅうひゅうと音を鳴らすことしか出来ない。ボヤけた視界でなんとか彼の姿を捉え、詰めるように睨むと、右腕を粗雑に引っ張られて唇に湿った感触が当たった。
「んん、ゔっ……」
下唇に鉄の味が滲む。彼に噛まれたものではなく、快楽を逃す為に自分自身で傷つけたものだった。唇の端から溢れる唾液と共に口を塞がれ、僅かな隙間から薄い舌が押し入ってくる。身体の至る所から彼の存在を感じて、溺れてしまいそうだった。
「らしくないことしないの。」と浅い傷口の上を彼の指先が滑る。
「太晴が……ずっと擦っ、てくるから」
「……我慢出来なくなった?」
憎たらしい余裕を滲ませ、軽い笑みを貼り付けた端正な面に思わず見惚れる。キュウっと自身の腸が収縮するのを感じた瞬間、彼の左眉がクッと上がった。
「……上手だね」
(……じょうず?)
熱に浮かされ、鈍り切った頭では、その言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かった。
そうだね、確かに俺はセックスが上手い方だとは思うけど。だけど、それもお前を目の前にすると形無しだ。くだらない思考に気を取られている間に腕を引かれ、気づけば彼と向かい合うような体勢になっている。
無い胸の上、ピンと存在を主張している桃色の飾りへ彼の指先が触れた。ゆるゆると始まる律動に意識が遠のいていく。ピリリとした痛みと、皮膚を震わせる衝撃が意識を繋ぎ止める唯一の糸だった。
「ぁゔ、ん…あっ」
「今日は無口な日なの?珍しい」
そう言う彼の掌は執拗に俺自身を擦り、何度目かの絶頂へと追い詰めていく。犬の様に切れ切れに吐き出す息とベッドの軋む音が重なり、その乾いた音色すらも鼓膜の奥を刺激した。
喋らせる気なんて、毛頭ないじゃないか。
「んゔ……あっ、や…っで、る、やば」
口をついて出た無意識の合図に、擦る掌の動きが更に激しくなる。
「だめ、だめっ……だっで…ゔ、ぁ」
「いいよ、イけ」
やけに明瞭に聞こえる彼の低い声に呼応するように下腹部が引き攣り、ベッドのシーツを巻き込んでつま先に力が入る。プシッという水音と共に、眼下には自身から溢れ出る透明の液体が見えた。浮いた腰を抑えつけられて、ずりずりと奥に侵入しては引き返す熱。暫くすると、堰き止められた吐息と共に、二人を隔てる薄い膜へと欲が吐き出される気配を感じた。
「う……まって、やばい」
「いっぱい出たね」
尚も自身の先端を虐めようとしてくる彼の掌を払い、重い身体を引き摺って逃げようとするも簡単に腕の中に閉じ込められてしまった。
「ね、ほんと、に……むり、だって」
「ごめんごめん」
割と本気で抵抗の意を示したはずがあっけらかんと口角を上げて、全く反省の色が見えないどこまでも適当な男。事後の一番疲れた時にそんな表情をされても、彼のことを憎めない自分自身が憎い。
ちゅっと口の端にキスをされた後、耳元に近づいて来る彼の唇。春人、と囁くように名前を呼ばれたので「ん?」と返すと、こっちが恥ずかしくなってくるほど甘い声でこう言うのだ。
「大好き。」
はぁ、負け。負けました、俺の負けです。
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