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見当違い
しおりを挟む「さて、朝食も食べ終わったことだし、今日何するか決めるか?」
「ツェリさん、あの……」
朝食を食べ終わって一心地ついた頃、ルキシエンスは酷く言いにくそうに口ごもりながらツェリに視線を送ってきた。
ツェリはさっきのいまので何だと思いつつ、
「何だ?」
と訊いてやった。
「へ、部屋に……戻りませんか」
「何故?」
ツェリは首を傾げた。
先程まで朝食を食べながらレイベルルにはこんな面白い店があるとか、市場には珍しいものがおいてあるとかという話で盛り上がっていたから、当然外に出るものだとツェリは楽しみにしていた。
なのに、彼は部屋に戻ろうと言う。全くもって不思議だった。
「あ、あの」
「うん」
口ごもるルキシエンスをよくよく見れば、薄っすらと彼の両耳は赤くなっていた。
ますます意味がわからない。
ツェリは食後の茶を啜りながらますます首を傾げた。
「皆さんが………」
「皆さん?」
予想外のワードが出てきた。
「ツェリさんのこと、凝視しているので」
それだけしどろもどろに言うと、ルキシエンスはかぁああっと赤くなってうつむいてしまった。
「ぎょうし」
もしかしてルースは赤面症なのかと見当違いな推測をしつつ、ツェリはカップをソーサーに戻すと、さり気なくあたりを見渡した。
………たしかに、視線はあたり一面から注がれている気がする。
「なにか問題があるのか? あ、逃走中の身では人の目が集まるのはよろしくないのか」
「え、あ……そ、そうですね! あんまりよろしくないですねっ! 部屋に戻ったら目くらましの術でもかけていいですか!?」
ツェリの言葉に、ルキシエンスは一瞬ぽかんとしたあと、妙に威勢よく早口でそうまくし立てた。
ツェリが目くらましの術の許可を出すと、ルキシエンスは滑稽なほど目に見えて安堵した様子だった。
そんなに人に見られることはまずかったのと、ツェリはやはりどこか的はずれな結論を出したのだった。
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