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19:ガイナル・バーキニリと依頼
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(ふぅん。あれが、ね)
バーキニリは、遠目から『ターゲット』を確認した。
彼は、人間の国―――の戦士だか何だか知らないが―――のお偉いさんの隣で、このパーティーに参加していた。といっても、彼は一人の人間を媒体にして自宅でパーティーの様子を観察しているにすぎないのだが。
何でも、パーティーの主役が依頼に出てきたの人物らしい。
主役が、パーティーに殺されるのか。
バーキニリは、「くくっ」と愉悦を隠しきれない笑い声を立てた。
(―――愉快)
あの小娘に命令されてやるのは少し癪に障ったが、今回の依頼、そう悪くはないかもしれない。
何せ、あの憎き存在の生国であるロンネーナの戦力に少なくない打撃を与える事ができる。腹いせくらいにはなろう。
しかも、
(あの者、奴に『気』が似ている――)
敵に見立てて別人を殺すのは何か違う気もするが、少しの憂さ晴らしくらいにはなるだろうか。
「バーキニリ。あれがお主の前任だ」
横に立っている、確か――『緑牙』の団長? だったか、がターゲットの方を指さした。
「だそうですね。ドルッセン様の後任になられるほどの実力の持ち主が、前任だというのはなかなかのプレッシャーですよ」
当たり障りのないように、直前に記憶した情報をもとに返答した。
「はっは。そうかだが、そうでもないぞ?」
「は?」
「むしろ、奴の部下だった者どもは、お主の事を満面の笑みで迎えるかもしれんて」
意味深に、この人間は言った。何か企んでいる顔だ。
それにしても……どういう事だろうか。実力の確かな上司を持つ事は、人間にとってありがたいのではなかったか。もしや、自分の記憶違いか? 人間とは不可思議な生き物だ。
(干渉してみるか)
バーキニリは、疑問符が浮かんだので謎の根源であるターゲット――ヴィアン・ソロディアの精神に干渉して記憶を覗いてみる事にした。
始末する前に、このくらいしても許されるだろう。どうせ殺すのだし、今のうちに記憶を覗いたって誰にばれるわけでもないし。
バーキニリは、人知れず精神干渉の手をヴィアンに伸ばした。
あと少しで『目標』に到達する、という距離でターゲット自身がこちらに気が付いた。
「―――っ!?」
ターゲットの瞳がこちらを向いた瞬間、馴染みのある酷く懐かしい『気』を感じた。
自分が、長年渇望していた、あの――――。
バーキニリは、思わず干渉の手を引っ込めてしまった。
(――チッ)
内心舌打ちした。あと、もうちょっとだったのに。かの『気』を感じたのは気のせいだったかもしれない。
髪が、どことなく彼女に似ていた。それだけだ。
それ以外、共通点も何もない―――はずだ。
(もう一度。今度こそは)
気を取り直して再度手を伸ばす。今度は成功した。
はずが――。
はじき返された。
体術で表すなら、何の予備動作もなしに。
(ありえない……!!)
この事実に、誰よりもバーキニリ自身が驚愕した。これまでどんな『人間』相手でも手玉に取って赤子同然に扱ってきた、自分が。自分の術が――っ!
(はじき返された?)
見間違いと思いたかったが、それを現実が否定している。
バーキニリは、半ば呆然としながらも、何とか体裁は取り繕った。これ以上人間ごときに失態をさらしてたまるか。
彼を驚愕させた張本人は、じっとこちらを見ていた。
バーキニリは、忌々し気にその様子を見返した。相手は少し怪訝そうにこちらを見返してきた。そして、ターゲットの隣で不敵に嗤っている存在に気が付いた。
(余裕顔か。忌々しい)
バーキニリは、心のうちで毒づいた。
だがほどなくして、彼は相手の異変に気が付く。
顔色が悪い、そう認識した頃には、相手は気を失っていた――。
バーキニリは、遠目から『ターゲット』を確認した。
彼は、人間の国―――の戦士だか何だか知らないが―――のお偉いさんの隣で、このパーティーに参加していた。といっても、彼は一人の人間を媒体にして自宅でパーティーの様子を観察しているにすぎないのだが。
何でも、パーティーの主役が依頼に出てきたの人物らしい。
主役が、パーティーに殺されるのか。
バーキニリは、「くくっ」と愉悦を隠しきれない笑い声を立てた。
(―――愉快)
あの小娘に命令されてやるのは少し癪に障ったが、今回の依頼、そう悪くはないかもしれない。
何せ、あの憎き存在の生国であるロンネーナの戦力に少なくない打撃を与える事ができる。腹いせくらいにはなろう。
しかも、
(あの者、奴に『気』が似ている――)
敵に見立てて別人を殺すのは何か違う気もするが、少しの憂さ晴らしくらいにはなるだろうか。
「バーキニリ。あれがお主の前任だ」
横に立っている、確か――『緑牙』の団長? だったか、がターゲットの方を指さした。
「だそうですね。ドルッセン様の後任になられるほどの実力の持ち主が、前任だというのはなかなかのプレッシャーですよ」
当たり障りのないように、直前に記憶した情報をもとに返答した。
「はっは。そうかだが、そうでもないぞ?」
「は?」
「むしろ、奴の部下だった者どもは、お主の事を満面の笑みで迎えるかもしれんて」
意味深に、この人間は言った。何か企んでいる顔だ。
それにしても……どういう事だろうか。実力の確かな上司を持つ事は、人間にとってありがたいのではなかったか。もしや、自分の記憶違いか? 人間とは不可思議な生き物だ。
(干渉してみるか)
バーキニリは、疑問符が浮かんだので謎の根源であるターゲット――ヴィアン・ソロディアの精神に干渉して記憶を覗いてみる事にした。
始末する前に、このくらいしても許されるだろう。どうせ殺すのだし、今のうちに記憶を覗いたって誰にばれるわけでもないし。
バーキニリは、人知れず精神干渉の手をヴィアンに伸ばした。
あと少しで『目標』に到達する、という距離でターゲット自身がこちらに気が付いた。
「―――っ!?」
ターゲットの瞳がこちらを向いた瞬間、馴染みのある酷く懐かしい『気』を感じた。
自分が、長年渇望していた、あの――――。
バーキニリは、思わず干渉の手を引っ込めてしまった。
(――チッ)
内心舌打ちした。あと、もうちょっとだったのに。かの『気』を感じたのは気のせいだったかもしれない。
髪が、どことなく彼女に似ていた。それだけだ。
それ以外、共通点も何もない―――はずだ。
(もう一度。今度こそは)
気を取り直して再度手を伸ばす。今度は成功した。
はずが――。
はじき返された。
体術で表すなら、何の予備動作もなしに。
(ありえない……!!)
この事実に、誰よりもバーキニリ自身が驚愕した。これまでどんな『人間』相手でも手玉に取って赤子同然に扱ってきた、自分が。自分の術が――っ!
(はじき返された?)
見間違いと思いたかったが、それを現実が否定している。
バーキニリは、半ば呆然としながらも、何とか体裁は取り繕った。これ以上人間ごときに失態をさらしてたまるか。
彼を驚愕させた張本人は、じっとこちらを見ていた。
バーキニリは、忌々し気にその様子を見返した。相手は少し怪訝そうにこちらを見返してきた。そして、ターゲットの隣で不敵に嗤っている存在に気が付いた。
(余裕顔か。忌々しい)
バーキニリは、心のうちで毒づいた。
だがほどなくして、彼は相手の異変に気が付く。
顔色が悪い、そう認識した頃には、相手は気を失っていた――。
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