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 一体何の感覚が自分を襲っているのかわからない。

 ちゅるり、と音が鳴って、澪は聞いたことのない鳴き声を耳にした。
 それが自分の口から発せられているとも思わず。

 息が荒くなる。それと並行して四ノ宮楓の舌が何度も澪の中で音をたてた。ぴちゃぴちゃと舌舐めずりするように、澪から溢れる花蜜かみつを四ノ宮が吸い尽くす。
 鳴り続けた音が止まって、澪は息も絶え絶えながら、口元を腕で拭う四ノ宮の顔を見上げた。

 身体は熱いのに、その熱がもっと欲しい。そんなことを考えるなんて変だ。
 足らなくなる。なぜかわからないがそう思った。
 足らない。それだけじゃ、足らない。
 四ノ宮はその言葉が聞こえたように、うっすらと口元に笑みを浮かべ、さっきまで澪の中にいた舌をもう一度澪の舌に絡ませた。
「んふ、ふあっ」
「いい顔をする」
 いい顔って、どんな顔だ。
 かすかにそう頭によぎったが、頭の中は霧がかかったようにぼうっとして、考えがまとまらなかった。
 ワンピースがシワになってるのが見えて、それだけが頭に残った。
 今日はフェミニンなスカートで、背が高くても映える形の…、
 そう考えた時に、つぷりと何かが入り込むのを感じた。
 それが何なのか、考えるより先に、四ノ宮が息を吹き込むように口付けた。
 舌を自分のそれと合わせた瞬間、澪の中に太く長いものがくさびのように突き上げられたのだ。

「んあっ、ああっ!」
 車の中で、澪の声とぐちゃりと溢れ出した花蜜の音が響いた。
 四ノ宮が身体を揺らせば、またぐちゃりと音が鳴る。音が鳴れば、澪の口からも鳴き声が漏れる。
 それを何度繰り返したのか、四ノ宮の太く長い楔は硬さを増し、隘路あいろを切り開くようにどんどん奥へと入り込んだ。
 露わになった澪の太ももに何かが溢れて濡れてくる。ぐちゅぐちゅと音を出しては、それが垂れて座席のシートを湿らせた。

 四ノ宮の動きと密閉された狭い空間で熱がこもり、汗が滲んできた。四ノ宮も、真夏の昼間のように汗をかいているのに、それを拭うこともなく澪の中に激しく突き出す。
 澪の鳴き声が口から溢れると、四ノ宮はそれを塞ぐように口付けた。
 どれだけ舌を絡めただろうか。澪の中で何度も突いて、それと合わせるように舌を絡めるものだから、ヒリヒリして熱で溶けそうになる気がした。

 おかしくなる。もうおかしくなってしまった。

 揺らされる身体に合わせて、澪も身体を揺らした。四ノ宮の熱が喜悦きえつへと変わっていく。気持ちが良すぎて、もっと続けて欲しいとしか思えない。
 どれくらい澪の中に入っているのだろう。とうとう奥の奥に入りこみ、内壁へそれを突き出した時、澪は信じられない鳴き声を発した。

「ひああん、ああんっ!」

 卑猥な声音に自分の声とは思えなかった。けれど鳴き声は止まらず、その声を笑うように四ノ宮が口端を上げる。
 淫らに開いた股に四ノ宮のそれが打ち付けられ、びちゃり、と花蜜が跳ねた。それを拭うように四ノ宮は滑った小さな花芽をこねる。
 衝撃があったように、澪はびくりと身体を跳ねさせた。

「やあ、それ、やあんっ」
「嫌か?こんなに立っているのに?」
 言いながら、立ち上がった花芽をつまみ、嬲るようにわざといじってくる。
 高揚する感覚がそこから背筋へと繋がって、澪はがくがくと身震いした。
 熱に冒されたように開いた口からよだれが垂れ、突かれ続ける勢いで息もしづらく目の端に涙が溜まった。
 それを愉悦ゆえつしたかのように口端を上げた。四ノ宮は垂れたよだれを舌ですくう。そして口内でそれを戻すかのように、澪の舌に絡めた。

「んふっ、ふあ」
 息継ぎもままならない澪を嘲笑うかのように、そのまま耳へずれると、耳たぶを一噛みし、細かな凹凸に沿って舌を這わせる。そうして突然中へ入り込むと、外耳の奥で舌の先をかき混ぜた。
「はう、も、やめぇ」
 四ノ宮は澪の反応を楽しんでいた。腰を振りながら突起をいじり、胸の頂をもてあそぶ。耳の中を舌でかき混ぜ、いたぶるのだ。そうして耳元で囁く。
「イっていいぞ?」

 イくって何?そんな感覚わからない。
 いや、澪はそれを知っていた。前に四ノ宮に弄ばれ、激しく突かれて全身が痺れたあの感覚だ。
 あの感覚を思い出すと、澪から滑るような花蜜が溢れてきた。
 四ノ宮以外の誰かに秘所をいじられたことも、自分で触れたこともない。それなのに、大嫌いで腹の立つ男に、執拗にかき混ぜられ何度も突かれて、溢れる蜜を止めることができないのだ。
 それがわかっているのか、四ノ宮は止めようとしない。むしろ煽るように激しく突いて、澪の息さえ止める勢いだ。

「お前の中は最高だな。こんなに溢れさせて、いやらしい声で鳴く。さっきまでの威勢が嘘のようだな」
「やあ、うるさっ、やんっ」
 最後まで口にできずに、澪は喘ぎ声を漏らした。四ノ宮がわざと強く突いたからだ。
 なんて嫌な男なのだろう。自信満々で全てが自分の思い通りにいくと思っている。やすやすとその手で転がされている自分に腹が立つ。
 腹が立つのに、あらがうことができない。
 突かれるたびに何かが身体を駆け巡る。中でこすられていいところにかすると、腰が跳ねるように反応した。四ノ宮はそれがわかれば、攻撃するように同じ場所を狙う。

 四ノ宮の太く硬い楔が澪の中に道を作るように蹂躙し、四ノ宮の思い通りの形にしていく。花蜜はとめどもなく溢れ、びちゃびちゃと淫乱な音をたてた。

「もお、やああっ」
「ああ。今、イかせてやる、よ」
 言うと同時、四ノ宮は澪の感じた場所を、勢いよく突いた。
「ひあああっ!」
 ぐちゅりゅ、と激しく愛液が吹き出す淫猥な音がし、重なった肌からそれが弾けるように周りをぐっしょり濡らした。
 身体が麻痺したようにしびれ、ぴくぴくと痙攣した。息だけ荒く、とにかく新しい空気を吸おうと肺を上下させた。

 何と言う感覚なのだろう。これがイくと言うことなのか。四ノ宮に悦服し、絶頂へたどり着いた。
 そうであろう、四ノ宮が満足そうに澪の唇をぺろりと舐めた。
「いい子だ。うまく中でイけたな。あとでゆっくり復習してやろう」 
 刻まれたように首筋に残った印へさらに痕を残し、四ノ宮は含んだ笑みを讃えた。



「信じられない…」
 もう、呆然とするしかない。呆れてものが言えないどころか、魂が抜けるようだった。

 四ノ宮は弄ぶように澪の身体に触れ、舌で秘所をかき混ぜた。誰も入ったことのない場所を貫通させたのは前の時、それをまた四ノ宮にされるだなんて絶句した。
 入り込んで何度も行き来し、澪の中にその四ノ宮の硬く屹立きつりつしたくさびの形を覚えさせた。

 それを拒むことが、澪にはできなかった。
 嫌なのに、触られたくないのに、抗おうとしても力の差もあって、抵抗できなかった。
 それどころか、澪のいい所を突き止められ、そこばかり狙われ…。
 それが悦楽にひたらせ、快楽へとなったなど、絶対に言えない。言えないが四ノ宮はわかっているのだ。それが許せない。何も言わなくても、四ノ宮は澪の反応で全てを知っている。

 もっと欲しくなった。

 それすら気付かれていると思うと、正直死にたくなる。
 あの後、四ノ宮は澪を家まで送ったが、カメラがあるので部屋までは入ってこなかった。
 触れることもせず(触れられたら殺すかもしれない)、ただ澪を送っただけ。いつも通りの上辺だけの口上を述べて、家を後にした。

 冷たい水をかぶるように、澪は頭からシャワーを存分に浴びた。目を覚ますだけではない、あの男が触れた、舐めた全てを、嬲られた何もかもを、削るように消したかった。
 けれど、いつの間にかつけられた紫色の小さな痕が、澪の思いを邪魔して、今起きたことを忘れさせてくれない。
 首筋や胸元、ウエストや太ももに到るまで、転々と存在する、四ノ宮の痕。
 あの男の唇が、舌が、澪の身体を嬲り、溢れる花蜜を吸い、あまつ澪の中へ入り込んで快楽へと到達させたのだ。

 澪はそっとその軌跡をなぞる。
 首から下腹部にかけて指先は流れ、澪の大事な秘所へ触れた。
「ふ、あっ」
 四ノ宮の舌が、指が、そして太く長く硬いものが、この中に何度も入ったのだ。澪の指では届かない、遠い奥にまで。
「もっと欲しい、なんて…」
 どうして思うのだろう。

 痛みなどなかった。
 舌で濡らされたそこはぬめって、すべりやすかったのだろうか。
 くちゅくちゅと入り口で出し入れされ、さらに蜜が湧き出ていた。無理に入れたのではない。入りやすいようにほぐして、そこから奥へ突き進んだのだ。
 いいや、と澪はかぶりを振る。
 優しさなんてものはない。愛などないのだから、ただのクズが犯す行為だ。
 自分はあの男に犯された。同意などしていないし、行為そのものは犯罪である。
 なのに、
 あの男の思い通りにされて悔しいのに、もう一度欲しいと思ってしまっている。

「ふ、あ…」
 澪の届かない場所に、もう一度欲しい。あの太く硬いもので、突いて欲しい。
 そう思うなんておかしい。自分はあの男が嫌いで、腹が立つことばかりなのに。
 触れられて欲しくないくせに、中に入れて欲しいと思ってしまう。
 いやらしい声を上げて鳴いて、善がるだなんて。

 もうそんなことを思う時点で、自分があの男に負けたのだと、そう痛感した。
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