上 下
1 / 27

しおりを挟む
 買ったばかりのワンピースが、シワになってしまう。

 ぼんやりとそう思いながら、火照った顔をゆるりと触れる指に、ぞくりと背筋を震わせた。
 ぺろりと口元を舐めて、ニヤリと笑む。その男の笑い方が無性に嫌いなのに、その舌がむさぼるのを止めることはできなかった。

 初めは舌を絡めるだけ。自分のそれに合わせて、巻き込んで、何度も解いては絡めてくる。首筋をつたい、愛撫し、するすると身体をずらしていくと、二つの膨らみに舌を這わせる。
 ちゅぱちゅぱと飴を舐めるような音をわざとたてて、今度は窪みに舌を這わせた。溢れた蜜をこぼさないように舐めては、蜜を溢れさすように舌でかき混ぜる。
 何度も出しては入れて、人の反応を楽しんでいるようだ。

 嫌なやつなのに、それを許したのはなぜなのだろう。
 舌よりもずっと大きなものが、隘路あいろを広げ自分の窪みに入り込んだ時、喜悦きえつする身体が、女である自分を思い出させた。

 自分の鳴き声に、男は舌舐めずりする。
 揺らされた身体が痙攣するようにびくびくと動いて、男のそれをもっと求めた。
 中に入ったものがどこにあるのか感じて、熱がこもった。入り込んだものをもっと欲しがって、鳴き声ばかりが大きくなる。
 とろとろに蜜が溢れた窪みに入り込みながら、目の前の小さな花芽を男はつまむ。びくりと身体をよじらせれば、面白そうに指でそれを嬲る。

「ここがいいのか?」
 そう言って、男は身体を突き出した。鳴き声が響けば男は嬉しそうに繰り返す。
 そうして言うのだ、お前は自分のものだと。淫らな自分を恥ずかしがることはないのだと。
 男の思うまま、ただ欲しくて、欲しすぎて、動く身体を止めることができなかった。男はそれを受け入れている。むしろそれを望んでいただろう。
 嫌いなのに、大嫌いなのに、男が何度も敏感なところに入って出してはを繰り返すのだから、それが快楽となるのは一瞬のことだった。




『布留川時生代議士と三ツ橋興業との癒着問題の発端は、裏帳簿の流出によるものではありますが、その流出が誰の手によって行われたものかは特定されていません。内部告発ではないかという噂もありますが、はっきりとした詳細はわからないようですね』
『事件が明るみに出たのは、テレビ局や新聞社にその情報が一斉にメール送信されたためです。送られてきたメールアドレスは三ツ橋興業社員のものでしたが、誰が送ったのか未だわかっていません。しかも帳簿だけでなく、布留川代議士と三ツ橋興業代表が、密談している写真まで送られてきた。内部告発以外にないと思いますがねえ』
『その密談が行われていた場所の特定までされていたとか。麻布にある高級クラブの…』

 ついていたテレビをリモコンで消すと、濡れた髪を無造作に拭った。
 襟足の髪がはねて逆立ったまま、頭にタオルを乗せてパソコンを立ち上げると、もう一度そのニュースをチェックする。ニュースはサイトの一番上の記事で、ランキングの上位に位置していた。旬のニュースである。
 しばらくはこの話で持ち切りだろう。ニュース番組でもコメンテーターが適当な会話を続けていた。ニュースサイトのコメント欄でも、新しいコメントが間をおかず投稿されてくる。
 それを眺める必要はないとブラウザを終了させた。メールを開いて新しいメッセージを確認する。
 暗号化された文章を自作のソフトで解読して内容を確認すると、冷蔵庫からビールを取り出した。冷えきったそれを口に含むと、喉が潤って気分が高揚する。

 椅子に足を乗せたまま座り込むと、それが楽だと背もたれに寄りかかった。乾ききっていない髪から雫が肩に垂れたのを気にせずに、キーボードを打ち始めた。
 打つたびに、その面白さに口端が上がってくる。
 一人で不気味に笑う姿はよそから見たら奇怪だろう。見る人間がいればだが。
 そんな者がいないとわかっているので、ニヤつく顔をやめたりはしない。
 流れるように溢れてくる文字を目で追って、音を立てながら指を動かしていく。その早さに息を飲むものもいるだろう。だが先ほど述べたようにこの部屋にいるのは一人だけで、見る者もいないので、感嘆する声もなかった。
 冷蔵庫と簡易ベッド、それからテレビとパソコン。殺風景な部屋にあるのは生活に必要な最低限の物だけだ。テレビはカードのポイントで手に入れた物で、必要と言うほどのものではなかったが、折角ポイントで手に入れられるのならばと部屋に入れた。
 小さなマンションの一室ではあるが、それなりに快適な空間だ。
 キーボードに打ち込む指先は止まることがない。
 しばらく打ち込んだ後、エンターを押して画面が文字の羅列を描いていくのを眺めると、もう一度ビールを口にした。



 例えば仮に、自分が急に死んだとして、家族も知り合いも皆それが本物なのか区別がつかない場合、どうやってそれが自分であると認識するのだろう。

「歯じゃね?」
 カフェテリアのど真ん中に位置する円卓で、スマートフォンを片手に一体誰に話しかけているでもなく呟いた言葉に、男が一人即答した。
「真面目かよ。身体的特徴じゃね?」
「指紋」
「燃えたらどうなんの?指紋取れんの?」
「知らね」
 円卓を囲んでいた数人の男たちが反応した。

 話を聞いている限りだと、携帯小説を読んで漠然と疑問に思ったらしい。
 内容は主人公のパーソナルデータが全て別の人間のものに修正されて、自分が自分である証明ができなくなってしまう。そんな一昔前のミステリー小説だそうだ。
 遥か昔にそんな映画があったよな。と、浅羽あさばみおは思った。
 そんなネタの映画は大量にある。小説で言えば、なお多そうだ。どこにでも転がっていそうな、らしい切り口である。
 映画の場合は大抵後の方で銃撃戦になって犯人を殺したり、犯人がAIであったりとパターン化している話だが、最近の小説ではどうなのだろう、と耳を傾ける。

「歯ってアナログで書かない?医者とかもカルテってパソコン?」
「俺、前医者行った時紙に書いてた」
「そーゆーのって実際無理ありそうだよな。データ改ざんするとしても一つ二つは漏らしそう」
「どうやったら身元がわからない死体が作れるかってこと考えてんの?」
「ちっげーし!カードとか使えなくなって、自分の存在を証明できなくなって、これじゃその辺でのたれ死んでも自分だってわかってもらえねえって、そーゆー話。そんな簡単にいくのかなって」
 小説はまだ読み始めで、ひょんなことから大きな犯罪組織の悪事を見てしまった主人公が、その犯罪組織に自分の身分的存在を消されたというところを読んで、まず疑問に思ったようである。
 まず問題定義がなっていないだろう、などと口を出したくなった。

 データ改竄を行いその本人の社会的存在を消すことは可能として、どこへ書類を求めに行ってもデータ改竄のために自身を証明できなくなることと、指紋や顔がわからず身元証明できるかどうかは話が別である。

 前者はアナログな保管さえしていなければ可能だろう。
 役所に保存されているデータを全て別人にすり替えるとして、修正すればできないことはない。とは言え役所だけではなく、その本人が使用していたカードやらショップやら何もかも別の名前に修正しなければならいわけだが。
 少しでも元の本人の情報が残っていれば、そこから情報改竄が行われた事実が解明されるきっかけになるかもしれない。
 情報が修正されても、例えば警察などが動いて調べた時に、アナログの物が残っていればそれは無理に近い。
 卒業アルバムが一番いい例だろう。
 別人に修正しても、逆にその別人の名前がアルバムに載っていないからだ。アナログがあればどうしても綻びが出てしまう。情報改竄を行うには全てがデジタルである必要性があるのだ。

 後者は身体的特徴を残さない殺し方である。データ改竄などは全く関係がなかった。
 データを改竄して誰だかわからない不明の人間としたい場合、身体的特徴などは全く無関係だ。別人として葬られるだけのことである。
 歯医者のカルテを使用し、この遺体が誰なのか確認してくれなければ別人になれない。そこで歯型をなくし身体的特徴もわからなくすれば、データを改竄する意味すらなくなるのだから。
 そんなことを、昼食を口にしながら、一人で心の中で突っ込んでいた。前の男が笑顔で話しているのを聞きながら。

「だから、みおちゃんも試験終わったら一緒に飲もうよ。次行くとこ食事うまいらしいし、飲みサーって言っても飲めない子も来てるからさ。みおちゃんの予定の合う日にするし」
「行きたいんだけど、ごめんね。家厳しくて門限もあるし、飲み会に行って飲めないのに早く帰るのも悪いから」
「気にしなくていいよ!食事だけでも楽しいと思うし、別に途中で帰っても誰も文句言わないから」
 暗に行きたくないと言っているのだが、前の男は気付いていない。
 その男の隣に座っている女はさも羨ましげに口を尖らせた。
「行けないんなら無理に誘っちゃかわいそうだよ。みおはさー、お嬢様だし家の人厳しいんだって。飲みサーとか許してもらえないよ、ねえ?」
 女は来なくていい。を全面に出してきたが、澪にとってはありがたいと小さく微笑む。
「誘ってくれてありがとう。でも、やっぱりやめておくね」
 こんな時、女性の援護射撃はありがたい。女は別の話をしようと会話を変えてくる。その様を笑顔だけで見守り、電話をしたいと言って席を立った。

 かかとの低いヒールで微かな音を立て、廊下の雑踏に紛れていく。
 人の多い廊下で澪はスマートフォンを取り出し、発信のあった相手にかけ直した。
 電話は三秒で切れている。大した用事でないことと、そこまで急な用事ではないことが伺えた。
 だが発信があったら必ず返すことに決まっている。相手もそれがわかっているので留守番電話にメッセージを入れることがない。
 元々メッセージが入ったことは一度もなかった。これからもないだろう。
 コール音が数回響いて、相手は無音の後静かに応えた。辺りには誰もいないらしい。
 物音一つしない中では、澪の周りの雑踏の音が響くことだろう。

「私」
 一言に相手は、ああ、と軽く返してくる。
『確認した』
「そう。それは良かった」
『試験に集中してくれ』
「ありがとう」
 何をとは言われずとも何だかわかっている。だから質問もない。
 通話を切って次の教室へと向かう。
 少し先で見知った男が手を振ってきた。さっきの男とは別の男だ。みおちゃん、と呼ばれてにこやかに笑顔を返す。
 近寄れば視線が同じくらいの身長だったが、別段男が小さすぎるわけではない。
 高いヒールを履けば澪の方が身長が高くなるが、それをやると大体の男が目線の高さを同じか下にしてしまうので、ヒールは低い物ばかりを選んでいた。
 高身長であることは自覚している。それを恥じているわけではない。
 ただ、あくまで今は、女の子らしい振る舞いに気を使っているだけである。
 大股で歩くことも大口を開けて笑うこともしない。仕草は優雅に嫌味もなく、媚びたものではいけない。高いヒールを履いて高圧的になってもいけない。
 長い髪はふんわりと編んで背中に流し、頰にかかればゆっくりと耳にかけた。
 誰かに見られれば小さく微笑む。それは男でも女でも同じにして、特別な相手を選ぶことはない。誰に対しても同じ対応、同じ態度。
 話す言葉は丁寧な女子のそれだ。間違っても汚らしい言葉使いはしない。

 今ここにいる澪を知っている人たちは、そんな澪しか知らない。
 それでいい。むしろそうでなくてはならなかった。
 それを孤独と言ってもいいし、滑稽と言ってもいい。
 ただ澪にとってそれは重要で大きな枠組みに入るもので、それこそが澪の全てと言っても過言ではない。それなりに装ってそれなりに着飾れば、大抵の人々から概ね好感を得る。それが何より大切なことだと自負している。

 ある意味の能面を持って、澪はそれを家にまで持って帰った。
 それこそが一番重要であるからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

らぶさばいばー

たみえ
恋愛
 私、シオン・ノヴァ=デルカンダシア辺境伯令嬢は日本からの転生者である。  そして転生した先は魔法も使えて妖精や精霊、神様さえ身近で当たり前のファンタジー世界。アラフォー目前で亡くなったとは思えないほど、それはもう大人気なく狂喜乱舞した。  ――だがちょっと待ってほしい。よくよく調べれば何処かで聞いたような歴史、国、人名。  ……もしかしてここ、『らぶさばいばー』の世界と似てない?  どうやら、寂しい独身貴族を貫いた前世でどハマりした学園系乙女ゲームの世界へ転生してしまったらしい、が――マズイ。非常にマズイ。  この世界は確か、攻略対象全員が理不尽級なヤンデレだったはず……あ、なんだ。よく考えたら私モブだから大丈夫だったわ。  この物語は、前世でプレイしていた乙女ゲーム世界へ転生し、無視しようとしてもなんやかんやで自ら関わって行ってしまう主人公が、最終的に世界を救うまでの苦労譚である。 ※他の作品優先なので更新頻度は遅くなります。 ※こっちのほうが感想貰いやすいかなと載っけてますので、たまに最初の誤字脱字のまま放置されてることもしばしば。 ※修正改稿なし。ほぼ原文ママ。

断頭台のロクサーナ

さくたろう
恋愛
 大陸の王国で巻き起こる、革命に至る物語。  ロクサーナことロキシーはある日突然、別の世界の自分を夢見た。自分が首を切られて死んだ女王だという夢を。  双子と信じていた妹のモニカこそが王家の血を引いているというのに、それに嫉妬し、彼女を憎み抜いて、出自を偽り女王となった。だが結局は愛する婚約者も王位も全て奪われ、呪いの言葉を吐きながら死んだ史上最低の悪女、ロクサーナこそが、自分なのだという忌まわしい記憶だ。  ロクサーナが死ぬのは17歳のはず。ロキシーは12歳。時間が戻ったとしか思えない。だが以前の世界と違うのは、ロキシーはすでに生まれた家を追い出されていて、厳しくも優しい養母と、慕ってくれる義理の弟がいることだ。  おまけに以前の世界では一方的に恋をして無理矢理婚約を結び、憎まれていたはずの婚約者は妙に優しい。  恋で人生狂ったかつての苦い思い出があるから、二度と恋なんてしたくないのに、怒涛の恋愛に巻き込まれていく。 ※ 以前公開していた「今世こそ負けませんわ!」という物語の再投稿です。主人公二人の名前を変えていますが、内容は概ね同じになっています。 ※小説家になろう様でも公開しています。

一国の姫として第二の生を受けたけど兄王様が暴君で困る

下菊みこと
恋愛
病気で短い人生に幕を下ろした天道凛音。なんの因果か、記憶を持ったまま異世界で第二の生を受ける。どうやら自分は大国の姫として生まれたらしい。しかし、その直後血飛沫と悲鳴が全てを塗り潰す。…腹違いの兄が、第一王子で王太子の兄と、父王と、正妃である母、姉姫二人を殺し回ったのだ。どうやら他の王族も同様に殺し回ったらしい。そうして無理矢理王位についた兄は、しかし私のことは殺さなかった。「気紛れだ。命は助けてやるよ。…その代わり、俺を楽しませろ」そう一言言って、優しく頭を撫でた後、どこかに行ってしまう兄。多分即位を宣言するのだろう。うわぁ。修羅場じゃん。ということで、生き残るために兄に媚を売りたいと思います。え?復讐?王位継承?なにそれおいしいの?私は兄王様に溺愛されてどこかいいところに嫁いで幸せになるのよ!目指せ兄王様攻略!小説家になろう様でも掲載されていただいております。

幸せを掴む勇気

恋愛
これはどん底の二人が、幸せを掴む物語 アシルス帝国の若き公爵アルセニー・クジーミチ・ユスポフは、皇帝を巻き込んだとある事故の責任を負う形で爵位を失った。 辛うじてユスポフ公爵家が保有する子爵位を名乗ることだけは許されたが、事故のせいでアルセニーは実質的に社交界を追放されてしまった。 それ以降、アルセニーは帝都郊外の小さな屋敷に引きこもって生活をしていた。 そんなある日、アルセニーの弟でユスポフ公爵家の当主となったマトフェイが現れる。 アルセニーとマトフェイはあまり仲が良くなかった。 マトフェイからの嫌がらせで、アルセニーは自殺未遂をしたという醜聞のあるキセリョフ伯爵家の令嬢タチアナ・ミローノヴナ・キセリョヴァと無理矢理結婚させられてしまう。 アルセニーとタチアナ。ボロボロな二人は不本意な形で結婚させられ、生活を共にすることになる。 しかし次第に二人は心を通わせ、幸せを掴む為に前を向いて行動を始めるのであった。 心に傷を負ったボロボロな二人は、周囲の目や邪魔立てしてくる者達に立ち向かう勇気を持ち、幸せを掴んでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 ※東欧、東スラヴ系の名前を採用しているので男女で苗字が違います。誤字ではありません。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

処理中です...