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ここだよ。
しおりを挟む第一章:消えた友人
友人の絵里が突然連絡を絶ったのは、ある週末のことだった。親友の舞は、何度も電話やメッセージを送ったが、返事は一切なかった。心配になった舞は、絵里の自宅に行くことに決めた。絵里のアパートは郊外にある古い建物で、日が落ちると周囲はすっかり暗くなる。
「大丈夫かな…?」
舞は一抹の不安を抱えながら、絵里の部屋のドアをノックした。しかし、中からは何の反応もない。インターホンも試したが、返事がなかった。
その時、ドアノブがゆっくりと動き、ドアがわずかに開いた。
「え…?」
誰かがいるはずなのに、廊下には静寂だけが広がっていた。舞はためらいつつも、ドアを少しだけ押し開け、中に入った。薄暗い部屋には誰もいないように見えたが、妙な寒気が舞を包んだ。
「絵里?いるの?」
返事はなかった。ただ、部屋の奥から微かな物音が聞こえた。
第二章:奇妙なメッセージ
舞が部屋を調べ始めると、机の上に絵里のスマホが置かれているのに気づいた。画面には未送信のメッセージが表示されていた。
「ここだよ。」
ただそれだけが、未送信の状態で残されていた。メッセージの宛先は舞自身だった。何かがおかしいと感じた舞は、胸騒ぎを覚えながらも、メッセージを送ることはできなかった。
そして、次の瞬間、背後でかすかな足音が聞こえた。
「カタ…カタ…」
振り返ると、部屋の隅に立つ影が見えた。しかし、そこには誰もいない。影だけが不自然に壁に映り、ゆっくりと舞に向かって近づいてくる。
「ここだよ…」
その囁き声が、耳元で響いた。
第三章:迫りくる影
舞は急いで部屋から飛び出し、廊下を駆け抜けた。逃げなければ、とにかくここを離れなければと思った。しかし、エレベーターは来ない。階段を下りようとした時、背後でまた足音が響き渡った。
「カタ…カタ…」
足音は徐々に近づいてくる。舞は一歩一歩、恐怖に駆られながら階段を駆け下りた。だが、足音は決して遠ざからない。まるで彼女のすぐ後ろに、何かがついてきているかのようだった。
ついに、建物の出口までたどり着いた。外に出て振り返ると、誰もいない。だが、確かに感じる——何かが彼女を追ってきたということを。
「ここだよ…」
再び、あの囁き声が響いた。舞は息をのんで、あたりを見回した。しかし、暗闇の中には何も見えない。ただ、その声だけがどこからか漂ってきた。
第四章:最後のメッセージ
舞は家に戻ると、すぐにドアの鍵をかけ、息を整えた。何が起こったのか整理できないまま、絵里の安否を確認しようと再び電話をかけた。
しかし、その瞬間、スマホにメッセージが届いた。発信者は、絵里だった。
「ここだよ。」
舞は震える手でメッセージを開いた。恐怖に駆られながら、メッセージを確認するが、それ以上の内容はなかった。ただ一言、「ここだよ」とだけ書かれている。
その瞬間、部屋の中で、微かな物音がした。振り返ると、そこには何もない。しかし、確かに感じる。誰かが、彼女のすぐそばにいることを。
「ここだよ…」
その声は今度こそ、すぐ背後から響いた。舞が恐る恐る振り返ると、鏡の中に映る自分の姿が見えた。しかし、その背後にはもう一人、ぼんやりと立つ影が映り込んでいた——それは、絵里だった。
第五章:消えた証拠
翌朝、舞の姿は消えていた。警察がアパートに到着し、現場を調べたが、異常は見つからなかった。絵里も、舞も、どこにもいなかった。
ただ、舞のスマホに未送信のメッセージが一つだけ残されていた。
「ここだよ。」
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