たいせつなもの

なかた いゆ

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たいせつなもの

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 女の子はたくさんたくさん歩いてきました。
 女の子はとても急いで歩いてきました。
 急いでいるのであまり休憩もとれません。

 だけど女の子は疲れてしまいました。
 歩けないくらいに疲れてしまったのです。

 でも女の子は必死に歩こうとします。
 歩かなきゃ歩かなきゃ
 必死に足をあげようとします。
 でももう足は動いてくれません。
 言うことをきいてくれない足に
    女の子は悲しくなりました。
  
 どうして動いてくれないの
 女の子は涙を流します。

 女の子には一緒に歩き出したお友達がいました。
 けれど女の子の周りにはもうお友達はいません。
 お友達は歩くのがとても早かったのです。
 ゆっくりとしか歩けない女の子は
 お友達に置いていかれてしまいました。

 女の子は追いつきたいと
   できるだけ早く歩きました。
 少しでも追いつこうと
    休憩も少しだけしかとりませんでした。

 気づけば女の子の体は傷だらけ
 たくさん歩いて足もはれていました。

 もう立ち止まるしかありません。
 女の子は足が治るまで休むことにしました。

 気づけば星が女の子を照らしていました。
 そして月辺りに照らされたいちりんの花を
    みつけました。
 ちいさくてかわいいとても綺麗な花でした。

 女の子は考えました。
 どうしてこんなに急いでいたんだろう

 女の子は考えました。
 どこに向かって歩いていたんだろう

 そう、女の子はお友達を追いかけるのに
    必死になって
 どこに向かって歩いているのかも
    わからなくなっていたのです。

 女の子は急に寂しくなりました。
 一緒に歩き出したお友達はもういません。
 追いつけるかもわかりません。

 どうして私はゆっくりしか歩けないの?
 どうして私はひとりぼっちなの?
 女の子は涙がとまらなくなりました。

 女の子が泣いていると花がいいました。

 あなたはひとりぼっちじゃないわ
 周りをみてごらん
 わたしいがいの花もいるし虫もいる
 もっと遠くをみたら
    あなたと同じぐらいのこどももいるわ
 お友達は先に行ってしまったけれど
 あなたのまわりにはこんなにも
    たくさんのは花や虫、こどもがいるわ

 お友達に追いつくために
    必死に歩いていた女の子は
 前しかみてませんでした。
 でも辺りをみわたせば
    女の子はひとりぼっちなんかじゃ
 ありませんでした。
 女の子は寂しい気持ちが
    どこかへ飛んでいったような
 気持ちになりました。

 花は女の子にたずねます
 そんなに急いでどこへ向かっていたの?

 わからない 
 女の子は答えました。

 私はどこへ向かえばいいの?
 女の子は花にたずねます。

 花はこたえます
 あなたが行きたいところへ行けばいいのよ。
 あなたはどこへ行きたいの?

 女の子は少し考えて
 わからないと答えました。

 花はいいました。
 それならここでゆっくり休んで
    行きたい場所が決まったら
 また歩き出せばいいわ
  
 女の子は頷きました。

 とりあえず今日は休みましょう
 まだまだあなたは疲れているわ

 花の言うとおりに女の子は眠りました。

 目が覚めて朝がやってきました。
 小鳥が歌っています。
 虫は踊っています。
 花や木は風に揺られて笑っています。
 お日様はみんなを温かく照らしてくれます。

 小鳥が女の子にいいました。
 一緒に歌おう!
 女の子は歌なんて歌ったことないわ
 と言いました
 小鳥はいいます
 大丈夫
 ラララーラララー♪
 ほら!あなたも歌って
 女の子は顔を赤くして
 …ララ…ラララー
 とっても小さな声で歌いました。

 素敵な歌声!さあ一緒に歌いましょう !
 女の子は恥ずかしかったけど
    だんだん楽しくなってきました。
 ラララーララー
 女の子は小鳥と一緒に
    楽しそうに歌っています。

 すると虫が声をかけてきました。
 僕たちと一緒に踊ろうよ
 ラララーラララー
 歌声に合わせて虫はくるっと
    まわってみせました。
 ラララーラララー
 女の子は歌いながら
    スカートをひらりとさせました。

 女の子はとっても楽しくて
    にこにこ笑顔になっていました。
 小鳥と虫と歌って踊って
    楽しい時間はあっという間。
 気づけばお月様が顔を出して
    そろそろ眠る時間だよ
 と言いました。
 女の子はお月様のいうとおりに眠りました。

 お日様が顔をだすと女の子は
 すっかり元気になっていました。
 けれどどこへ向かうかまだ決まっていません。
 女の子は花の言葉を思いだして
 行きたい場所をもう一度考えました。

 もっと歌を歌いたい!
 踊りもおどりたいわ!
 女の子はいいました。

 それなら歌と踊りの島へ行くといいわ
 花がいいました。

 だけどここからだと少し遠いの
 花が心配そうに女の子にいいます。

 大丈夫
 女の子はいいました
 ゆっくり歩いていくわ
 今度はちゃんと休憩しながらね!

 花はニコッと笑って頷きました。

 僕らもついて行くよ
 小鳥と虫がいいました。

 うん!一緒にいこう!
 女の子は嬉しそうに言いました。

 女の子は一緒に過ごしたみんなに
 ありがとうといって
    スカートをひらりとさせました。

 女の子と小鳥と虫はゆっくりと歩きだしました。


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