45 / 57
第45話 お家デート③
しおりを挟む控えめに言って、蟹鍋は最高であった。
蟹自体の美味しさは言わずもがな、その出汁が染み出た煮汁も堪らないモノだった。
シメの雑炊まで食べてしまい、お腹はパンパンである。
「ご馳走様です。本当に美味しかったです」
「お粗末さまです。年に何度か届きますので、その時はまたご馳走しますね」
こんな美味しい蟹が何度も届くなんて、羨ましいなぁ……
僕の家に届くのなんて、せいぜい果物くらいのものである。
それだって十分に嬉しいのだけど、蟹と比べると流石に少し劣ってしまう。
「さて、食事も終わったことですし今度は……」
伊万里先輩の言葉にビクリと反応してしまう。
やはりどうしても、さっきの「続きは、またあとで」という言葉を意識してしまうからだ。
「映画を見ましょうか」
「え、映画、ですか……」
先輩の言葉は、予想に反して普通の内容であった。
別に期待していたワケじゃないが、少し拍子抜けする。
「はい。この前見た映画と同じ監督が作った作品なんですけど、丁度安かったので買ってみたんです」
この前の映画というと、以前三人で見に行ったB級映画のことだろう。
あの時は、麻沙美先輩と伊万里先輩の二人に指を舐めしゃぶられるという、とんでもない状況に陥ったのを覚えている。お陰で、肝心の映画の内容はほとんど思い出せなかった。
(今度は落ち着いて見れるといいけど……)
………………………………
……………………
…………
やはり同じ監督ということもあり、この映画もB級の名に恥じぬ出来栄えであった。
主人公は休暇中の警官で、とある街に遊びに来たところトラブルに巻き込まれるという流れから物語は始まる。
そのトラブルというのが、新種の病原菌が原因で人が獣と化すというもので、獣化した住人は狂暴で主人公とヒロインを食べようと襲い掛かってくるのである。主人公とヒロインはなんとかその手から逃げ出すも、段々と逃げ場は失われ……
(そして濡れ場に突入するんだよなぁ……)
常識的に考えて、そんなことをしている場合じゃないと思うんだけど、何故かこの手の作品だとそういう流れになりやすいような気がしてならない。視聴者へのサービスシーンなのかもしれないが、もう少しやりようはないのだろうか……
『あぁ……、いいわ……』
映像では女優がお色気シーンを熱演している。
それに僕の体は……、残念ながら反応していた。
(だって、仕方ないじゃないか……)
映画やドラマのお色気シーンというのは、何故だか妙に興奮するものである。
終始アダルトな展開な映像作品よりも、こういったワンシーンで行われる性行為のほうが視聴者的には興奮度が高いのだ。
これは漫画や小説などにも当てはまる現象と言えるだろう。
『はぁ……、はぁ……』
「はぁ……、はぁ……」
映画の音声と重なるように、伊万里先輩の呼吸も荒くなっている。
最初は拳一つ分離れていた距離も、今では完全に密着状態であった。
「い、伊万里先輩……、その、近いですよ」
「はい……。近いですね」
そう言って、伊万里先輩は僕の顎の辺りをさわさわとくすぐってくる。
その手つきが妙にいやらしく、背筋にゾワゾワとした怖気が走った。
「……藤馬君。さっき言ったでしょう? 続きは、またあとでって」
「い、言ってましたけど、今は映画を見るんじゃ……」
「そのつもりでしたけど、アッチが盛り上がってるんですもの。私、もう我慢できません……」
アッチが盛り上がってるのはストーリー上の問題なので、感化される理由にはならないと思うんですけど!?
「藤馬君は、イヤですか?」
ズルイ質問が飛んでくる。
そんなの、イヤなワケないじゃないか……
「イヤでは、ありません。むしろ僕も興味はバリバリあるんです。ただ、それとは別に体の方がもたなそうで……」
「もたなくても、いいじゃありませんか。今日は誰もいませんし、私も受け止める覚悟はできていますよ」
「……っ!」
伊万里先輩の悪魔の誘惑が、僕の耳元で囁かれる。
そんなことを言われて我慢ができるほど、僕は子供でもないし、大人でもない。
「藤馬君……」
「伊万里先輩……」
僕はそのまま、まるで磁力にでも引かれるかのように、伊万里先輩の唇へと引き寄せられていった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる