白の魔女の世界救済譚

月乃彰

文字の大きさ
上 下
299 / 338
第七章「暁に至る時」

第二百九十話 人間vs死神Ⅳ 〜瓦解する戦線〜

しおりを挟む
 雨のように降る無数の武器を掻い潜り、ヴェルムはサンタナとの距離を詰める。戦技〈天地葬灼刃〉を行使中は、ヴェルムの身体能力は急上昇する。その分、体に大きな負担を負わせる事になる。が、その前に決着させれば良いだけ。

(攻撃を見切ることはできる⋯⋯避けることも。しかし⋯⋯なんだ、この違和感)

 いくら何でも武器の弾幕が薄すぎる。それともこれが限界なのか。分からない。だが、こう言う時、ヴェルムはどうするか決めている。勘を信じるのだ。あれこれ考えるよりはよっぽど良い結果が出ていた。

「っ!」

 ヴェルムの射程距離にイーラが入った。そして斬り合いを始める。彼は自らの命を文字通り燃やし、全力で戦っているのに対してイーラは余裕のある態度を依然としている。

「⋯⋯人間としては素晴らしい。強いな」

 イーラは心の底から思ったことを素直に言った。セレナから聞いていたことは本当であったようだ。
 太刀筋、筋力、速度、何を取っても高水準である。例えそれが一時的であっても、賞賛に値する。

「そして」

 イーラは殺気を読み取り、真上からの魔法攻撃を察知した。

「〈爆風刃ブラスト・ブレード〉」

 風は不可視であり、それが斬属性を持って飛ばされる。そして対象にぶつかればそこで炸裂する魔法。
 単純だが故に殺傷力のある魔法だ。不可視、着弾までは無音であることが何よりも厄介な点である。だがイーラは正真正銘、化け物の感知能力で避けた。

「見事な連携だ」

 剣技も魔法も人間として見れば最高水準どころかそれを突破している。しかしそれで驕らず、連携を重視し、削り殺すことを狙った戦い方だ。

「お前たちより強い化け物は数多い。が、そういうのは簡単に殺せる。何故だと思う?」

 ヴェルムの剣戟もイーラには届かない。理由は酷く単純。基礎スペックが違うからだ。特に反射神経の差が、実力差に直結していた。

「さぁ。分からんな」

 イーラはアリサの魔法を正面から受ける。ヴェルムが作った隙に〈大嵐狂奔ストーム・ラッシュ〉を行使したのだ。
 両腕で上半身及び頭部を防御するも命中には変わらない。即死とまでは行かずとも、大ダメージは期待したいところだった。だが、現実は非情であった。

「今の、手応えあったんですけどね⋯⋯」

 吹き荒れていた風が収まる。それでもイーラはそこから一歩も動いていなかった。

「そう思うのも無理はないだろう。お前が見抜けることはないからな」

「それはどういう──」

「やはりか」

 ヴェルムが構えを解いた。灼熱の炎も消え去る。アリサは知っている、それが諦めでないことを。それが時間切れであることを。

「父様⋯⋯」

「違和感はあった。だが⋯⋯見抜けないと意味はなかったか」

「違和感に気づくだけでも誇れることだぞ。戦場で老いるだけはある」

 ここでようやくアリサは気がつくことができた。イーラは今まで本気を出していなかったのだ。
 覚える威圧感は今まで会ってきたどの『死神』よりも大きかった。つまり、彼女たちでは勝つことはおろか、時間稼ぎでさえ、こなせる実力には至っていなかったのだ。

「⋯⋯お前たちは自分の実力を正しく評価している。少なくとも過大評価はほとんどない。だからこそ、隙がない」

「それが手を抜いた訳か?」

「違うな。様子見だ。後は⋯⋯練習だ」

 イーラは両手に剣を持った。その姿はセレナに重なる。ヴェルムとアリサがここから生き残る方法は最早ないだろう。

「練習?」

 ヴェルムは生き残ることを諦めた。アリサもそれを感じ取ったらしく、杖を下ろした。彼は酷な選択を娘にさせたと申し訳なく思ったが、どうしようもない。

「ああ。俺だって最強ではない。奪われる立場に、何時なっても可笑しくない」

 イーラはゆっくりと歩きながらヴェルムに近づく。彼の顔には殺意も憎しみもない。あるとすればそれは憐れみだ


「そうか⋯⋯可笑しいと思ってたんだ」

 だが、ヴェルムは己の抱いていた違和感に気がつき、ようやく納得した。この侵攻が始まってから思っていた可笑しな点。

「なぜ、お前たちはこんなにも手間取ったのか。ずっと疑問だった」

「⋯⋯ほう」

 そこでイーラは足を止める。そしてヴェルムに話の続きを促す。

「お前たちは、国滅ぼしなど余裕にできる。しかししなかった。⋯⋯黒の魔女の復活、そして白の魔女の出現⋯⋯。その、理由は⋯⋯」

 ──瞬間、ヴェルムの胴体にばつ印の赤い傷が入る。

「────!」

 それは呆気なくヴェルムの命を奪った。アリサはこの結末を理解していた。分かっていた。だが、いざ目の前で行われれば思い知らされる、肉親を殺されることの恐怖を。

「父様⋯⋯っ!」

 そして湧き出る憎悪。アリサの腹の中から、煮えたぎった真っ黒な感情が現れる。

「⋯⋯やるのか。お前、ただ一人で。一度決めた死ぬ覚悟を撤回してまで」

「⋯⋯⋯⋯堪えられなかった。こんなにも⋯⋯こんなにも、抑えられないのね」

 アリサの魔力が急激に大きくなる。それは感じ取れる圧倒的なものであるということだ。

「これは、アイツと同格⋯⋯だな」

 イーラはフィルが本気で怒った時のことを思い出した。あの時、フィルは怒りで魔力制御が不安定になっていたから感じられたのである。大雑把にしか把握できないから多少の差はあるが、それでも大きな差はない。

「⋯⋯なるほど」

 アリサの体に起こっている変化にイーラは気がついた。
 それ即ちリミッターの解除──覚醒でも何でもなく、元々持っていた力を使うだけ。ただ、その行使のためにはあまりにも大きな代償を払うことになる。
 戦士も魔法使いも共通のことだが、人間より化物の方が強い。同じ鍛錬、同じ才能、同じ環境であれば、人間の方が優れていることは絶対にない。
 なぜか。単純な話だ。肉体が己の力に耐えきれず、崩れてしまうから。生命はそれを御するために、力を抑える。

「お前の母親は優れた魔法使いだったのだろうな。戦士の父親の才も受け継げば⋯⋯こうもなるか」

 普通の人間では第十階級は肉体スペックに対して強大すぎる力に当たる。無論、第十一階級は更に向こうの話だが、それを平然と使える者が、次に至るものは何か。

「単純だが故に脅威。⋯⋯魔力量、出力、効率、そして同時展開数の上昇か」

 アリサの才能に許された全出力。それは容易く彼女の肉体を崩すだろう。だが、

「⋯⋯許さない。許さない!」

 アリサの右手に赤い魔法陣が展開される。そこから斬撃を伴う風が吹き荒れた。
 恐ろしい威力だ。恐ろしい魔力だ。──しかし、

「未熟だ。そして、怒りに我を忘れたか。狙いが単調になったぞ」

 魔法を避けて、イーラはアリサの正面まで距離を詰めた。魔法使いにとって近接戦闘は不利も不利だ。イーラは人間であれば一撃で両断できる。手に持つ剣を振り下ろした。

「ほう。無詠唱にも行使速度には個人差があるが⋯⋯かなり速いな」

 イーラの剣は防御魔法によって防がれた。瞬間的な防御魔法の展開によって魔力消費を抑えている。
 嵐かのような斬撃と斬撃を有する嵐が交互に放たれる。イーラは全てを躱すなり弾くなり受け流すなりし、アリサは全てを防ぐ。

(⋯⋯攻めるに攻めれん。怒りで攻撃は直球だが、防御魔法は直感でやるからこそ正確だ)

 反応速度も人間の最高峰。イーラの斬撃を見切るだけはある。防御魔法の欠点でもある魔力消費量の多さ──防御壁を展開中は常に魔力を消費すること──は、瞬間的に展開することで克服している。

(だが、手数で攻めるしかない。防御壁を破壊するには隙を作ってしまう。相打ちでは意味がない)

 イーラがアリサの魔法で死ぬことはない。フィルと同格の魔力量と言っても、他の魔法能力は劣っているのだ。
 心臓を貫かれてもしばらく生き続けられるし、その間に止血する方法はいくらでもある。つまり今この瞬間にアリサを殺す方法はあるのだ。
 しかし、これは戦闘訓練の一環だ。ゴリ押し攻略など何の研鑽にもならない。

(⋯⋯隙を作ってしまう、か)

 アリサは防御魔法を、イーラの攻撃の予備動作の時点で展開している。判断方法が反射神経依存であり頭では一切考えていない。
 だから大きく振りかぶった攻撃には、それを何とかするために強力な防御壁を展開する。防御壁の強度も無意識に調整しているからだ。

(⋯⋯殺せるっ!)

 防御壁でイーラの剣戟を弾く。伴い、彼の体は大きく仰け反った。隙だ。隙ができた。中々できなかった、致命傷を叩き込める隙が作れたのだ。
 このチャンスを逃すわけには行かない。だからアリサは魔力を存分に練った。そして、

「〈荒れ狂う暴力テンペスト・ヴァイオレンス〉!」

 この瞬間、創り出した独自魔法オリジナル・マジック。〈暴風雨〉を元に創り出した魔法だ。その要素の殆どを破壊能力に注ぎ込んでいる。
 回転する風。斬撃と殴撃を持ち、触れたものを消し飛ばす超火力魔法。
 イーラの予想外の魔法だった。流石に全身を消し飛ばされては即死に至る。だが、

「────」

 魔法の射線からイーラが消えた。誘われていたのだ。隙を晒したのはこのためであった。
 今度こそ渾身の一撃を放つイーラ。無意識にアリサが展開した防御魔法も砕け、刃は彼女の首に向かう。
 そして、捉える。

 ◆◆◆

「でさ、それ、いつまで続けるわけ?」

 ウーテマはただひたすらにアヴァリティアの防御壁を斬っていた。しかし斬っても斬っても金属音が響くだけで、全く破壊されない。傷一つつかない。

「ね、分かったでしょ? 私と君じゃ次元が違う」

「ならどうしてさっさと私を殺さない?」

 剣戟を辞めたウーテマ。同時にアヴァリティアも防御魔法を解いた。

「なぜだろうね?」

「⋯⋯は?」

「君たちはいつでも殺せる。でも、そうしないのに大層な理由は必要なのかい? 君は、空腹だからご飯を食べるということにそれ以上の理由を求めるの? やりたいからやる。私は君たちを甚振りたいから甚振る。同じだよ。大した理由はない。だから君が求めるような理由はないね」

 アヴァリティアの感情は、台詞の後半につれて段々と強くなっていった。これまでの芝居がかっていた動作から一転、本心を顕にしたようだった。 
 
「私はね、魔法が大好きなんだ。魔法を知り、魔法を研究し、知識を満たすことに快感を覚える。でも、それは魔法だけに限られたものじゃない。例えば人間を知ることなんかまさにそうだ」

 アヴァリティアの展開した不明な魔法がウーテマの左腕を裂いた。切断まではいかなかったが、深く乱雑な切り傷だった。

「ぐっ⋯⋯!」

 血が流れる。モーリッツがすぐさま治癒魔法を行使するも、傷が傷だからか治るのが少し遅く、そして負担が大きかった。

「今みたいに、傷を負ったときの反応は皆違う。同じように人間の抱く感情とか。人生とか。どんな人が好きなのか、嫌いなのか。声はどんなのか。⋯⋯面白いとは思わない? コレクションしてるみたいでさ」

「⋯⋯⋯⋯」

「分からないって? そうだね。理解されなくても良いよ。私の人間研究の末に導き出した答えとして、化物私たち人間君たちは共存できないってのがあるんだ。そりゃ個人レベルならあり得るよ。でも、種族単位だと不可能だって分かるんだ。あまりにも精神構造が違い過ぎている。最早別の生物だ」

 ウーテマの関節という関節が曲がってはいけない方に曲がる。最早悲鳴を上げることさえできない激痛に彼女は襲われた。

「ウーテマさん! 〈ヒー──」

「鬱陶しいね」

 モーリッツの首が何周か回転し、ねじ切れた。骨は砕け、血肉がぶちまけられる。首なしの死体はそのまま倒れ、鈍い音を立てて頭が転がった。

「集団戦において、最も狙うべきは回復役ヒーラーだよ。これほど厄介なものは少ない。まあだから、私みたいな自前で治癒できる者の厄介さは他に替えられないだろうね」

 アヴァリティアの手の平に緑色の魔法陣が展開される。瞬間、ウーテマの体が癒えた。

「ほら、もう動けるでしょ? 雑にやったから立つのさえ結構苦労すると思うけど」

 彼女の言うとおり、ウーテマは立つのにもやっとなほど疲弊した。これでは戦いにすらならない。いや、その心配はいらない。最初からなっていないのだから。

「⋯⋯何のつもりだ」

「君さ、面白いんだよ。興味深い人間なんだよ、君」

 ウーテマは最早ナイフを握るのさえ苦痛だった。半ば諦めて得物を手放してしまうほどだった。彼女は自分の死を覚悟する。

「ほら、今だってそうだ。君は諦めている。死のうとしている。この私を殺したいと思っていたのに、すぐに心変わりした。どうしてそんなにすぐに、諦めるの?」

 ウーテマからすれば、『死神』の質問の意味がよく分からなかった。こんなに圧倒的な差を見せつけられて、誰が心変わりしないというのか。
 もう沢山頑張った。もうやれることはやった。その上でこんな結末なら、諦めるしかない。

「私たちはね、いや、特に私は諦めることが嫌いなんだ。諦めたらそこで終わり。掴めるものも掴めない。欲深い私にとって、諦めることは自己否定にも等しいのさ。⋯⋯そして私は満たされることがない。だから、いつまでも満たし続ける。つまりそれは、不可能なことだ」 

 終わりのないものに終わりを求めることは矛盾そのものだ。不可能なことを成すなど、無意味である。
 だが、それを諦めて良い理由ではないとアヴァリティアは言った。

「君たち人間には欠点がいくらでもある。力は貧弱だし、体は弱いし、才能もピンキリで、良くても化物と同等が関の山だ。けど、それらを覆せる方法がある。強くなるために必須な、たった一つの条件」

 アヴァリティアは魔法でウーテマに武器を作って、足元に投げた。そのナイフは機能美を求めたものであった。軽く、鋭く、殺すことに特化している、銀色に輝く刃物。

「それは──『強欲』であることさ」

 アヴァリティアのその言葉が、どういうわけかウーテマには良く響いた。化物が言うことなんか欺瞞だ。そう思っていたのに、不思議と納得できるものだった。
 今まで分からなかったものが分かったかのような、晴れ晴れとした気分となる。

「何をするにしても欲さないと始まらない。欲するからこそ、成長できる。欲深くないと何もが中途半端で良くなるのさ。欲深いことが、自らの可能性を引き出すのさ」

 ウーテマは無意識にナイフを取っていた。

「⋯⋯いいね。私が見たかったものだ、ここで、一歩進む人間は」

 体の疲弊はなくなっている。何も感じない。ただひたすら、このナイフで自分の全てを使いたい。全身全霊、この世界に存在していることを知らしめたい。

「──ッ!」

 過去のウーテマでは不可能だったスピードを引き出し、アヴァリティアの元に走り出す。ナイフの柄を握り潰すしかけるほどの握力をかけて、それを振りかぶった。

「君はやっぱり興味深かった。ありがとう、見せてくれて」

 だがナイフを振るより早く、ウーテマの首から上が弾けた。頭の中に魔法を展開し、内部から破壊したのだ。圧倒的な実力差と圧倒的な技術がなければ成しえない神業である。
 血飛沫は尽く防御魔法によって防がれ、アヴァリティアの衣装には血の一滴も付かなかった。

「存外楽しめたよ。⋯⋯さて、他の皆も人間は殺し終えただろうし、最後の仕事に行こうかな」

 アヴァリティアは──フィルは、遠くの破壊の連鎖が行われている場所を目指して歩き始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します

Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。 女性は従姉、男性は私の婚約者だった。 私は泣きながらその場を走り去った。 涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。 階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。 けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた! ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

王妃の手習い

桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。 真の婚約者は既に内定している。 近い将来、オフィーリアは候補から外される。 ❇妄想の産物につき史実と100%異なります。 ❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。 ❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。

処理中です...