229 / 338
第七章「暁に至る時」
第二百二十話 リベンジ・マッチ
しおりを挟む
ロアは真っ先にマルクトを潰そうとしたが、ヴァシリーはそれを阻止するよう動いた。彼女の行使した防御魔法はロアの拳を受け止めるも、続く二撃、三撃目で障壁は叩き潰された。直後の無詠唱化された〈死神の鎌〉を避ける為にロアは跳躍せざるを得なかった。そしてヴァシリーは追い付いてきて、
「〈魔法三重強化・爆衝撃〉」
ロアは腕を交差させて防御したが、一発目で地面に叩きつけられ、二発目で防御を崩され、三発目はダメ押しと言わんばかりにロアの軽い体に鈍い痛みを走らせる。
魔法防御力が功を奏して、ロアはまだ動ける程度のダメージしか受けていないが、状況は芳しくなかった。
(⋯⋯痛いわね)
痛みに慣れていても、だからといって全てが無痛に感じるわけではない。痛いものは痛いし、それでへこたれなくなるだけだ。
だがロアが今受けたダメージは、体の内部に直接響いたような気がした。外部からの痛みならばともかく、それはロアが慣れていないタイプだった。
(それに、やっぱり前より強い。消耗していない今、ロアでも負ける可能性はあるわね。⋯⋯殆ど五分五分。少しロアのが強いってところかしら)
以前まであった圧倒的な差はもうない。が、未だロア優勢に傾いたままだ。油断すれば一気に負けるだろうが、彼女の辞典にその二文字はなかった。
勝利の方程式。どうやって戦っていくかを脳内で組み立てるのに、最早単位時間さえ必要なかった。なぜならば、その勝ち方はシンプルだったからだ。
ロアはヴァシリーとの距離を測る。目測およそ百メートル。自分の戦闘スタイルを考えると、下手に攻められない状態だ。ヴァシリーもそれを分かっていて、わざわざロアに接近するという危険を冒した、それもこれも、今を作る為に。
「さあ、来たらどう? その瞬間、あなたを八つ裂きにするけど」
見ればマルクトは何もロアにはして来ない。魔女同士の戦闘には力不足だと理解しているからこその行動選択だが、棒立ちというわけでもなかった。両目を閉じて、何かをしている。分からない。でもロアの直感は危険を訴えている。
何か、碌でもないことをしようとしているような気がした。
「この距離は走っても少しは時間がかかる。かと言って詰めなければお前から魔法が飛んでくる。なるほど、ロアの身体能力はもう把握され尽くしているというわけね?」
「⋯⋯一度負けたあの日から、私は魔法を毎日練習して、戦い方も学んで、そしてあなたのことを監視し続けた。矛も、盾も、情報も、今の私に揃っている。もう後は、全力を尽くすだけよ! 〈魔法三重強化・死の雨〉」
光を全て吸い込み、そして真っ黒となった雨が真横に降り注ぐ。知らない魔法。つまりは独自魔法。ロアの直感は命中を愚かな行為だと認識し、カウンターを考えず、回避することに専念した。
それは間違っていなかった。死の雨が降ったところは、原型が完全に崩れた。まるで強力な酸性液にでも溶かされたみたいに。でもそれは酸とは少し違っていた。文字通り、死んでいくような、そんな気がした。
(普通に突っ込むことは愚策も愚策ね。ま、予想はしていたけれど。だから、何も考える必要はないわ)
ロアが無詠唱行使した赤魔法の名は〈隆起する大地〉。大地を波のように引き上げたり、あるいはロアが企むように、長方形に突出させたりすることもできる。通常はそれで対象を叩き潰す魔法なのだが、彼女は少し違う使い方をした。
「はっ?」
速度とは、計算式ではv0+atで表される。簡単な物理学の話で、科学とは時代で大きく変わるものと言えど、これを疑う者はおそらく居ないだろう。
魔法学とは一種の物理法則と言って過言ではない。併せて魔法物理学だなんていう学問もあるぐらい、それらは密接に存在している。魔法学を修めるならば多少なりとも物理学、生物学、有機と無機化学、はたまた天文学などの理系科目にさえ手を出すこともあり、ロアもその口だ。
ならば、今のロアと同じ発想をした魔法使いは当然ながら存在する。しかし、実践に移したのはロアが初めてだろう。何せ、彼女ほど魔法が扱えて、かつ身体能力も高くなくては、ただの机上論でしかなかったのだから。そして同じことができるであろう人物は、大抵転移魔法が使えるからだった。
「ロア以外に、こんな馬鹿げたことをする奴は居ないわね」
内容は至って単純。魔法により大地から突出させた長方体を蹴り、加速する。ロアの加速力は言うまでもなく、突出の際の速度も、無視できるはずがない。それによってロアのスピードは大きくなった。ただそれだけだ。ただそれだけなのだが、ヴァシリーには予想外であったらしい。てっきり攻撃魔法を相殺用に使うのだと思っていたことも相まって、反応に遅れる。遅れずとも問題なかったが、これは嬉しい誤算だ。
「今度はこっちの番よ」
容赦なくロアはヴァシリーの綺麗な顔面に右ストレートを叩き込み、それをきっかけに腹部にラッシュを仕掛ける。腕が数本に増えたと誤解するほどのスピード。一発、一発は当然重く、魔法は行使されていないが、どちらにせよ対象に蓄積するダメージは大きかった。
並の相手ならばこのラッシュで沈むだろう。だが、ヴァシリーはそうではなかった。流石に詠唱できるはずがないから無詠唱化魔法ではあったが、彼女の足元の大地が隆起し、ロアを打ち上げた。
「〈魔法抵抗貫通・重力操作〉っ!」
ロアへの重力負荷が突然大きくなる。空中から地面への強烈な落下と、重力の大きさは地面が陥没するほどであり、彼女ほどの身体能力がなければ一瞬でグチャグチャのミンチになっていたことだろう。
体が重いなんてものじゃない。抵抗力が貫通されている今、対抗するには同じ魔法を行使するか、もしくは範囲外へ逃れるのがセオリーだ。
しかし、そんなセオリー通りに動いては負ける。ロアの研ぎ澄まされた直感はそう囁いたし、彼女も元々そうする気はなかった。
「──〈重力操作〉は本来、同格相手にそこまで有効的じゃない。何故ならよっぽど白魔法に高い適正がないと所詮足止めぐらいしかできないし、仮に抵抗を貫通したところで、今度はロアみたいに、脚力とか胆力で耐えられる。そして何より、重力の操作には脳のリソースを沢山割かないといけないはずよ」
確かにこの魔法は、近接戦闘を得意とする相手には特によく刺さる。ロア相手にこれを使うのも、何ら間違いではない。
「ロアは、お前より強くて性格悪くて厄介な白の魔女と戦ったわ。今更、これぐらいどうってことない。無意味かしら」
ヴァシリーはそのことをよく知っている。ロアに勝つために彼女をストーキングしていた時期があるのだ。その中で、白の魔女エストとの戦闘を見たことがあった。
──次元が一つ違った。それが当時の感想だ。自分に容易く勝ったロアと互角以上に渡り合い、戦闘開始から数分で決着がついた。エスト勝利という形で。
ヴァシリーはその時、獲物が奪われたような気分になった。そしてこうも思った、「最強の魔女の一角を打倒することも、悪くない」と。
その後にミカロナという魔女や、一度しか目にしていないはずなのに姿をはっきりと覚えていられるほど印象深かった黒の魔女と出会ってからは好き勝手に放浪することは辞めたが、それでも目的は変わっていない。何せ、黒の魔女への協力の対価は、自分に稽古をつけてもらうことだったからだ。
「⋯⋯だから何よ。それで何か変わるっていうの? 今のあなたは、そこで立っているのがやっとでしょ?」
これだけ重力が強いと、その中での魔法も直線には飛ばずに行使直後に地面に激突するだろう。
そのはずだ。魔法自体に抵抗力は存在しない。重力に押さえつけられている状況において、ほぼ全ての魔法は実質的に無力化される。対象はロアであるために、ロアから発せられたものも対象となっているからだ。
「それこそお前も同じ状況よね。お前だって、ロアには何もできない。分かっているんでしょう? 今の状態のロアにも、近づいてはいけないと。できる自信があるなら最初からそうしていたはずだし、現にロアはまだ潰されていない。⋯⋯この魔法はロアから距離を取るためのもの。でも一つ勘違いをしているわ──」
ロアはその重すぎる重力の中、走り出した。しかも速い。確かに彼女の全速力からは遅くなっているが、それでもヴァシリーが逃げられないほどだった。
(いや待て。いくら何でも速すぎる。何倍の重力にしたと思ってるの? ロアの身体能力だと本来はまともに動けない計算のはず⋯⋯)
そこには当然ながら、ロアの能力『無限魔力』による身体強化具合も含んでいる。それなのになぜ?
ふと、ヴァシリーはロアの台詞を思い出した。
(──勘違い。勘違いっ! 私の考えていたことは、間違っていた! ロアを重力操作なんかで、止められると思うこと、その前提からっ!)
──赤の魔女、ロアの能力である『無限魔力』には、一つだけどうしても制限ができるものがあった。それは、身体能力の向上だ。ある一定まで身体能力を引き上げてしまうと、それ以降は上昇させたところで無意味どころかむしろ足枷になってしまうライン、限界点があった。
ヴァシリーはこれをロアとの戦闘で学び、こう解釈していた。
──魔力による身体強化には限度がある。オーバーフローしてしまった肉体は発揮できるスペックを負荷という形で処理してしまう、と。
しかしそれは間違いであった。もっと単純だったのだ。
「魔力による身体強化に限度はない! 肉体はオーバーフローを起こさない! 理論上ではいくらでも強化できるけど、ただシンプルに、速すぎるスピードを扱いきれないだけ!」
そう、上昇幅はまさに無限大なのだ。どれだけ肉体を魔力で強化しても、肉体がそれに耐えきれずに崩壊することはない。負荷を受けることも決してない。『無限魔力』の権能の一つには、生物の保有限界魔力量がなくなるという効果があるからだ。
「正解。重力で抑えられた分、魔力で肉体強化して帳消しにした。まあ、魔力が有限である限り、ロア以外が同じことをしようものなら、皆、保有限界魔力量を超えて死ぬだろうから、ロア以外がその結論に至るのには頭を捻らないといけないわね」
現にエストだって最初は勘違いしていたのだ。その後すぐに気づいたものの、それにはロアが『無限魔力』の権能を隠そうとしなかった部分が大きい。
高位の魔女や魔法使いであればあるほど、こう言った初歩的な部分に気がつくのにはかなり考えないといけない。何せ、誤れば生命体が簡単に死ぬような法則に疑問を持つことを、常識人は中々しないものであるからだ。
一体誰が、魔法学の教科書の最初のページに記載されている「魔法は六色に大分される」という一文を疑うだろうか? もしかすれば紫色なんかがあると、誰が思うだろうか? 大抵はそんなものはないと言うだろう。魔力飽和による即死の法則も、それと同じぐらい彼らにおける前提であったのだ。
ロアはヴァシリーに何度目かになる右ストレートを叩き込むだろう。しかしある程度緩和されていると言っても、多少なりとも弱体化しているロアを迎撃する余裕くらいヴァシリーにはあった。
「〈魔法三重強化・死神の鎌〉」
ヴァシリー十八番の物理攻撃魔法がロアに飛んでいく。下手に避ければ他のに切り刻まれるような配置だ。跳躍して避けようにも、空中では身体能力は発揮されず、重力魔法がそのまま効果を表す。大きく避ければ、それはそれで最短距離から離せたということだ。しかしロアが取った行動は、避ける行為ではなかった。
ロアは魔力を纏わせた素手で鎌を弾いた。問答無用の接触ダメージは与えられただろうが、それもロアからすれば微々たるもの。距離は詰められる。ロアとは五十メートルも離れていない。この短距離では魔法詠唱時間さえ惜しい。無詠唱化魔法を、それも素手では弾けない魔法が必要だ。
〈蛇紫電〉──蛇のようにうねりながら空気中を走る紫色の電流は、避けることは難しく、また素手では弾けない魔法だ。魔法階級が第八であるため少しばかり威力が心許ないが、それでもロアの接近に牽制することはできるはずだ。ロアに対しての近接戦闘は、いくらあの人格であっても不可能。距離を詰められるということは相手にとって得しかないのだ。
魔力がなくなれば精霊術に移行できる。その場合火力は下がるものの、継戦能力は非常に高い。どれだけ魔法でロアにダメージを与えられるか。継戦能力が無限の相手に、どれだけ食いついていけるか。それがヴァシリーの勝利に繋がる重要な鍵になる。
ロアは流石にその魔法を受け流すことはできず、フルヒット。しかし彼女の魔法防御力は高く、致命的な一撃になることはなかった。しかしそれでも、彼女は走ることを少しも躊躇わない。
(は、何で。何で、そんな風に突っ走れるの!?)
何度か連続で同じ魔法を行使するか。ロアはそれを承知で受け止め、ヴァシリーに突っ込んでくる。
理解できなかった。いくら第八階級魔法でも、真正面から喰らっていては痛みも相当なはず。ダメージもそのはず。突っ込んで来られるわけがない。無効化もしていないのに。走れるわけがない。
(そんなまさか、有り得ない!)
そして両者の距離がゼロとなった時、ロアの加速した拳が、魔法が併用されたそれが迫ってくる。
「さっきまでのお返し。十分に味わうことよ!」
顔面ではなく、腹部でもなく、ロアが狙ったのは魔法を使う者にとってのある意味致命的になり得る部位。胸だ。もっと言えばそこにある肺を狙った。
まさかこの年齢にしては豊かな胸が、その緩衝材になるとは思わなかった。だから胸骨が折れて肺に突き刺さる最悪の事態は避けられたのだが、その衝撃により彼女は呼吸が困難になった。
ヴァシリーは家屋に突っ込む。そこで意識が朦朧となっていることに気がついた。
「⋯⋯あ、あぁ。これ⋯⋯重力魔法解除してしまったかな」
もう無意味だから使うことはない魔法だ。でもこれは自分から解除しようとして解除したものではないし、魔力消費量が大きい重力魔法を維持できるほどの魔力がなくなったわけでもない。自分の意識が一瞬飛んだのだろう。それが原因だ。だとすれば他の自己強化系魔法も解除されたか。それをもう一度掛け直す時間はないだろう。
「⋯⋯全く、どうして私はロアに追いつけないの。この世界に来て、私はもう二度とこんな思いしなくなったと思ってたのに」
どれだけ努力しても追い越せない天才。それはそれ以外に才能がなかったヴァシリーにとって──いや、彼女にとって、認めたくなかったことだ。
異世界に来たことで元の世界の苦悩を思い出すことはなかった。けれども、彼女は再びその苦しみを味わうことになっている。
この世界にも、自分では追い越せない天才が居るなんて、知りたくなかった。
「⋯⋯あーあ。五分五分だと思ったんだけどなぁ」
間違いなく、実力はそうだった。だが、それは戦闘が始まる前の話だった。
天才はいつもこうだ。こんな僅かな時間で格段に成長する。適応する。ヴァシリーが互角程度に強くなったから、ロアはそれを超えるために成長してしまった。ロアはヴァシリーの魔法をものともせず、そして打撃も、それに併用される魔法威力も上がっていたことが、何度か喰らったことのある彼女には理解できた。
「また生かされるのかな。それとも、今度は殺されるのかな。⋯⋯まあ、どっちでも良いか」
「〈魔法三重強化・爆衝撃〉」
ロアは腕を交差させて防御したが、一発目で地面に叩きつけられ、二発目で防御を崩され、三発目はダメ押しと言わんばかりにロアの軽い体に鈍い痛みを走らせる。
魔法防御力が功を奏して、ロアはまだ動ける程度のダメージしか受けていないが、状況は芳しくなかった。
(⋯⋯痛いわね)
痛みに慣れていても、だからといって全てが無痛に感じるわけではない。痛いものは痛いし、それでへこたれなくなるだけだ。
だがロアが今受けたダメージは、体の内部に直接響いたような気がした。外部からの痛みならばともかく、それはロアが慣れていないタイプだった。
(それに、やっぱり前より強い。消耗していない今、ロアでも負ける可能性はあるわね。⋯⋯殆ど五分五分。少しロアのが強いってところかしら)
以前まであった圧倒的な差はもうない。が、未だロア優勢に傾いたままだ。油断すれば一気に負けるだろうが、彼女の辞典にその二文字はなかった。
勝利の方程式。どうやって戦っていくかを脳内で組み立てるのに、最早単位時間さえ必要なかった。なぜならば、その勝ち方はシンプルだったからだ。
ロアはヴァシリーとの距離を測る。目測およそ百メートル。自分の戦闘スタイルを考えると、下手に攻められない状態だ。ヴァシリーもそれを分かっていて、わざわざロアに接近するという危険を冒した、それもこれも、今を作る為に。
「さあ、来たらどう? その瞬間、あなたを八つ裂きにするけど」
見ればマルクトは何もロアにはして来ない。魔女同士の戦闘には力不足だと理解しているからこその行動選択だが、棒立ちというわけでもなかった。両目を閉じて、何かをしている。分からない。でもロアの直感は危険を訴えている。
何か、碌でもないことをしようとしているような気がした。
「この距離は走っても少しは時間がかかる。かと言って詰めなければお前から魔法が飛んでくる。なるほど、ロアの身体能力はもう把握され尽くしているというわけね?」
「⋯⋯一度負けたあの日から、私は魔法を毎日練習して、戦い方も学んで、そしてあなたのことを監視し続けた。矛も、盾も、情報も、今の私に揃っている。もう後は、全力を尽くすだけよ! 〈魔法三重強化・死の雨〉」
光を全て吸い込み、そして真っ黒となった雨が真横に降り注ぐ。知らない魔法。つまりは独自魔法。ロアの直感は命中を愚かな行為だと認識し、カウンターを考えず、回避することに専念した。
それは間違っていなかった。死の雨が降ったところは、原型が完全に崩れた。まるで強力な酸性液にでも溶かされたみたいに。でもそれは酸とは少し違っていた。文字通り、死んでいくような、そんな気がした。
(普通に突っ込むことは愚策も愚策ね。ま、予想はしていたけれど。だから、何も考える必要はないわ)
ロアが無詠唱行使した赤魔法の名は〈隆起する大地〉。大地を波のように引き上げたり、あるいはロアが企むように、長方形に突出させたりすることもできる。通常はそれで対象を叩き潰す魔法なのだが、彼女は少し違う使い方をした。
「はっ?」
速度とは、計算式ではv0+atで表される。簡単な物理学の話で、科学とは時代で大きく変わるものと言えど、これを疑う者はおそらく居ないだろう。
魔法学とは一種の物理法則と言って過言ではない。併せて魔法物理学だなんていう学問もあるぐらい、それらは密接に存在している。魔法学を修めるならば多少なりとも物理学、生物学、有機と無機化学、はたまた天文学などの理系科目にさえ手を出すこともあり、ロアもその口だ。
ならば、今のロアと同じ発想をした魔法使いは当然ながら存在する。しかし、実践に移したのはロアが初めてだろう。何せ、彼女ほど魔法が扱えて、かつ身体能力も高くなくては、ただの机上論でしかなかったのだから。そして同じことができるであろう人物は、大抵転移魔法が使えるからだった。
「ロア以外に、こんな馬鹿げたことをする奴は居ないわね」
内容は至って単純。魔法により大地から突出させた長方体を蹴り、加速する。ロアの加速力は言うまでもなく、突出の際の速度も、無視できるはずがない。それによってロアのスピードは大きくなった。ただそれだけだ。ただそれだけなのだが、ヴァシリーには予想外であったらしい。てっきり攻撃魔法を相殺用に使うのだと思っていたことも相まって、反応に遅れる。遅れずとも問題なかったが、これは嬉しい誤算だ。
「今度はこっちの番よ」
容赦なくロアはヴァシリーの綺麗な顔面に右ストレートを叩き込み、それをきっかけに腹部にラッシュを仕掛ける。腕が数本に増えたと誤解するほどのスピード。一発、一発は当然重く、魔法は行使されていないが、どちらにせよ対象に蓄積するダメージは大きかった。
並の相手ならばこのラッシュで沈むだろう。だが、ヴァシリーはそうではなかった。流石に詠唱できるはずがないから無詠唱化魔法ではあったが、彼女の足元の大地が隆起し、ロアを打ち上げた。
「〈魔法抵抗貫通・重力操作〉っ!」
ロアへの重力負荷が突然大きくなる。空中から地面への強烈な落下と、重力の大きさは地面が陥没するほどであり、彼女ほどの身体能力がなければ一瞬でグチャグチャのミンチになっていたことだろう。
体が重いなんてものじゃない。抵抗力が貫通されている今、対抗するには同じ魔法を行使するか、もしくは範囲外へ逃れるのがセオリーだ。
しかし、そんなセオリー通りに動いては負ける。ロアの研ぎ澄まされた直感はそう囁いたし、彼女も元々そうする気はなかった。
「──〈重力操作〉は本来、同格相手にそこまで有効的じゃない。何故ならよっぽど白魔法に高い適正がないと所詮足止めぐらいしかできないし、仮に抵抗を貫通したところで、今度はロアみたいに、脚力とか胆力で耐えられる。そして何より、重力の操作には脳のリソースを沢山割かないといけないはずよ」
確かにこの魔法は、近接戦闘を得意とする相手には特によく刺さる。ロア相手にこれを使うのも、何ら間違いではない。
「ロアは、お前より強くて性格悪くて厄介な白の魔女と戦ったわ。今更、これぐらいどうってことない。無意味かしら」
ヴァシリーはそのことをよく知っている。ロアに勝つために彼女をストーキングしていた時期があるのだ。その中で、白の魔女エストとの戦闘を見たことがあった。
──次元が一つ違った。それが当時の感想だ。自分に容易く勝ったロアと互角以上に渡り合い、戦闘開始から数分で決着がついた。エスト勝利という形で。
ヴァシリーはその時、獲物が奪われたような気分になった。そしてこうも思った、「最強の魔女の一角を打倒することも、悪くない」と。
その後にミカロナという魔女や、一度しか目にしていないはずなのに姿をはっきりと覚えていられるほど印象深かった黒の魔女と出会ってからは好き勝手に放浪することは辞めたが、それでも目的は変わっていない。何せ、黒の魔女への協力の対価は、自分に稽古をつけてもらうことだったからだ。
「⋯⋯だから何よ。それで何か変わるっていうの? 今のあなたは、そこで立っているのがやっとでしょ?」
これだけ重力が強いと、その中での魔法も直線には飛ばずに行使直後に地面に激突するだろう。
そのはずだ。魔法自体に抵抗力は存在しない。重力に押さえつけられている状況において、ほぼ全ての魔法は実質的に無力化される。対象はロアであるために、ロアから発せられたものも対象となっているからだ。
「それこそお前も同じ状況よね。お前だって、ロアには何もできない。分かっているんでしょう? 今の状態のロアにも、近づいてはいけないと。できる自信があるなら最初からそうしていたはずだし、現にロアはまだ潰されていない。⋯⋯この魔法はロアから距離を取るためのもの。でも一つ勘違いをしているわ──」
ロアはその重すぎる重力の中、走り出した。しかも速い。確かに彼女の全速力からは遅くなっているが、それでもヴァシリーが逃げられないほどだった。
(いや待て。いくら何でも速すぎる。何倍の重力にしたと思ってるの? ロアの身体能力だと本来はまともに動けない計算のはず⋯⋯)
そこには当然ながら、ロアの能力『無限魔力』による身体強化具合も含んでいる。それなのになぜ?
ふと、ヴァシリーはロアの台詞を思い出した。
(──勘違い。勘違いっ! 私の考えていたことは、間違っていた! ロアを重力操作なんかで、止められると思うこと、その前提からっ!)
──赤の魔女、ロアの能力である『無限魔力』には、一つだけどうしても制限ができるものがあった。それは、身体能力の向上だ。ある一定まで身体能力を引き上げてしまうと、それ以降は上昇させたところで無意味どころかむしろ足枷になってしまうライン、限界点があった。
ヴァシリーはこれをロアとの戦闘で学び、こう解釈していた。
──魔力による身体強化には限度がある。オーバーフローしてしまった肉体は発揮できるスペックを負荷という形で処理してしまう、と。
しかしそれは間違いであった。もっと単純だったのだ。
「魔力による身体強化に限度はない! 肉体はオーバーフローを起こさない! 理論上ではいくらでも強化できるけど、ただシンプルに、速すぎるスピードを扱いきれないだけ!」
そう、上昇幅はまさに無限大なのだ。どれだけ肉体を魔力で強化しても、肉体がそれに耐えきれずに崩壊することはない。負荷を受けることも決してない。『無限魔力』の権能の一つには、生物の保有限界魔力量がなくなるという効果があるからだ。
「正解。重力で抑えられた分、魔力で肉体強化して帳消しにした。まあ、魔力が有限である限り、ロア以外が同じことをしようものなら、皆、保有限界魔力量を超えて死ぬだろうから、ロア以外がその結論に至るのには頭を捻らないといけないわね」
現にエストだって最初は勘違いしていたのだ。その後すぐに気づいたものの、それにはロアが『無限魔力』の権能を隠そうとしなかった部分が大きい。
高位の魔女や魔法使いであればあるほど、こう言った初歩的な部分に気がつくのにはかなり考えないといけない。何せ、誤れば生命体が簡単に死ぬような法則に疑問を持つことを、常識人は中々しないものであるからだ。
一体誰が、魔法学の教科書の最初のページに記載されている「魔法は六色に大分される」という一文を疑うだろうか? もしかすれば紫色なんかがあると、誰が思うだろうか? 大抵はそんなものはないと言うだろう。魔力飽和による即死の法則も、それと同じぐらい彼らにおける前提であったのだ。
ロアはヴァシリーに何度目かになる右ストレートを叩き込むだろう。しかしある程度緩和されていると言っても、多少なりとも弱体化しているロアを迎撃する余裕くらいヴァシリーにはあった。
「〈魔法三重強化・死神の鎌〉」
ヴァシリー十八番の物理攻撃魔法がロアに飛んでいく。下手に避ければ他のに切り刻まれるような配置だ。跳躍して避けようにも、空中では身体能力は発揮されず、重力魔法がそのまま効果を表す。大きく避ければ、それはそれで最短距離から離せたということだ。しかしロアが取った行動は、避ける行為ではなかった。
ロアは魔力を纏わせた素手で鎌を弾いた。問答無用の接触ダメージは与えられただろうが、それもロアからすれば微々たるもの。距離は詰められる。ロアとは五十メートルも離れていない。この短距離では魔法詠唱時間さえ惜しい。無詠唱化魔法を、それも素手では弾けない魔法が必要だ。
〈蛇紫電〉──蛇のようにうねりながら空気中を走る紫色の電流は、避けることは難しく、また素手では弾けない魔法だ。魔法階級が第八であるため少しばかり威力が心許ないが、それでもロアの接近に牽制することはできるはずだ。ロアに対しての近接戦闘は、いくらあの人格であっても不可能。距離を詰められるということは相手にとって得しかないのだ。
魔力がなくなれば精霊術に移行できる。その場合火力は下がるものの、継戦能力は非常に高い。どれだけ魔法でロアにダメージを与えられるか。継戦能力が無限の相手に、どれだけ食いついていけるか。それがヴァシリーの勝利に繋がる重要な鍵になる。
ロアは流石にその魔法を受け流すことはできず、フルヒット。しかし彼女の魔法防御力は高く、致命的な一撃になることはなかった。しかしそれでも、彼女は走ることを少しも躊躇わない。
(は、何で。何で、そんな風に突っ走れるの!?)
何度か連続で同じ魔法を行使するか。ロアはそれを承知で受け止め、ヴァシリーに突っ込んでくる。
理解できなかった。いくら第八階級魔法でも、真正面から喰らっていては痛みも相当なはず。ダメージもそのはず。突っ込んで来られるわけがない。無効化もしていないのに。走れるわけがない。
(そんなまさか、有り得ない!)
そして両者の距離がゼロとなった時、ロアの加速した拳が、魔法が併用されたそれが迫ってくる。
「さっきまでのお返し。十分に味わうことよ!」
顔面ではなく、腹部でもなく、ロアが狙ったのは魔法を使う者にとってのある意味致命的になり得る部位。胸だ。もっと言えばそこにある肺を狙った。
まさかこの年齢にしては豊かな胸が、その緩衝材になるとは思わなかった。だから胸骨が折れて肺に突き刺さる最悪の事態は避けられたのだが、その衝撃により彼女は呼吸が困難になった。
ヴァシリーは家屋に突っ込む。そこで意識が朦朧となっていることに気がついた。
「⋯⋯あ、あぁ。これ⋯⋯重力魔法解除してしまったかな」
もう無意味だから使うことはない魔法だ。でもこれは自分から解除しようとして解除したものではないし、魔力消費量が大きい重力魔法を維持できるほどの魔力がなくなったわけでもない。自分の意識が一瞬飛んだのだろう。それが原因だ。だとすれば他の自己強化系魔法も解除されたか。それをもう一度掛け直す時間はないだろう。
「⋯⋯全く、どうして私はロアに追いつけないの。この世界に来て、私はもう二度とこんな思いしなくなったと思ってたのに」
どれだけ努力しても追い越せない天才。それはそれ以外に才能がなかったヴァシリーにとって──いや、彼女にとって、認めたくなかったことだ。
異世界に来たことで元の世界の苦悩を思い出すことはなかった。けれども、彼女は再びその苦しみを味わうことになっている。
この世界にも、自分では追い越せない天才が居るなんて、知りたくなかった。
「⋯⋯あーあ。五分五分だと思ったんだけどなぁ」
間違いなく、実力はそうだった。だが、それは戦闘が始まる前の話だった。
天才はいつもこうだ。こんな僅かな時間で格段に成長する。適応する。ヴァシリーが互角程度に強くなったから、ロアはそれを超えるために成長してしまった。ロアはヴァシリーの魔法をものともせず、そして打撃も、それに併用される魔法威力も上がっていたことが、何度か喰らったことのある彼女には理解できた。
「また生かされるのかな。それとも、今度は殺されるのかな。⋯⋯まあ、どっちでも良いか」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる