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第七章「暁に至る時」
第百八十四話 雪兎人
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『大雪原』に住まう獣人、雪兎人。彼らは真っ白な毛並みを持った兎の獣人であり、高い身体能力を有する。特に聴力が優れており、個体差もあるが可聴域は平均的な人間の二十五倍であり、また、半径五百メートル程度の範囲ならば会話することも可能だ。
更に跳躍力にも優れており、平均しての直上であれば凡そ五十メートル。前方に跳ぼうものなら二百メートルほど移動できるだろう。
「⋯⋯凄いナ。この武器ハ」
雪兎人族随一の鍛冶師、ヴァルクは、自分に渡された刃物を眺めてそう言った。
刀身は薄く、決して重いとは言えない刃物。従来の両手剣とは異なり、叩き斬るような使い方ではなく、純粋な切断力のみで相手を殺す武器なのだろう。軽さに反して剛性もしっかりしており、技術があるものがこれを使えば厄介極まりないだろう。鍛冶師である彼でも、戦士として戦えそうなのだから。
「どこから盗ってきタ?」
ヴァルクは自身の娘、ネイアに訊く。彼女は両手を後ろに回し、嬉しそうな顔で、
「ララギアの獣人! 凄い強そうだったかラ、それだけ奪ってきたノ!」
「そうカ。⋯⋯これハお前が持っておくと良イ。戦士の中で最もそれを使えるのはお前だろウ」
「うン。ちょっと試しに使ってきてみル」
ネイアはヴァルクからそれを受け取って、工場兼自宅である、村の中でも数少ない石造の家から出ていく。
雪兎人は数が少なく、複数の村があるというわけではない。ここにある一つだけだ。
村の総人口は百十六名。全員が知り合いであり、家族でもある。助け、助けられ、この過酷な雪原で生き抜く。子供が生まれれば村で一丸となり祝福するものだ。
齢十五、今年で成人となるネイアは、幾人かの村人で編成される戦士隊の副隊長だ。勿論、その地位に見合うだけの実力も持っている、若い戦士だ。
「──軽イ。振り易イ。それでいて斬れ味も凄イ!」
ネイアは刃物──彼女らは知らないが、刀と呼ばれる──を何度も素振りする。それから振り方を変えてみたり、体術を入れこんだりして実戦で使えるようにイメージしていく。
使い勝手は両手剣に近いが、軽さはそうとは思えない。特に彼女のような筋力がそこまで高いわけではない者には非常に扱いやすく、そしてスピードがあるなら尚更だ。
「よウ、ネイア。どうしたんダ、その武器?」
ネイアが刀を振り回していると、声をかけられた。彼はドルマン。彼も戦士隊に所属しており、また年齢が近いこともありよく話す相手だし、婚約まで入っていないが付き合っている。
「ドルマン。偶々見かけたララギアの獣人から奪ったノ。凄いでしョ? 持ってみル?」
「いヤ、遠慮すル。オレには合わなさそうダ。⋯⋯ガ、お前にはピッタリだナ」
ヴァルクもドルマンも、初めて見た武器だというのにどうしてそんなにも簡単に、そして的確に武器の性質を見破れるのだろうか。
剣を握ってまだ一月もしていないネイアは、おそらくは経験やそれに基づく勘なのだろう、と思った。
まだまだ自分には足りないものがある。そう気づかせてくれるから、発見とは喜ばしいものだ。
「にしてモ、ドルマン、何か用?」
まさかガールフレンドに会いに来たわけではないだろう。彼の服装は戦士隊の制服──青色を貴重とした、雪兎人には珍しい全身を覆う服装──を着ているのだから。
「あア、ヴァルクさんに頼んでいた剣を取りに来たんダ。そろそろだったロ?」
そういえば、とネイアは思い出す。確か工場には真新しい重厚な、ネイアにはきっと持つことさえ難しいだろう両手剣があったはずだ。
「あったネ。あんなのブンブン振り回せるだなんテ、私にはできないヨ」
そう。周りの皆は凄いのだ。誰もが何か得意なものを持っている。自分だってそうだし、ドルマンだってそうだ。父のヴァルクも、戦士である自分たちとは切っても切り離せないほどお世話になっている。
「じゃア。鍛錬のし過ぎも体に悪いかラ、程々にしておくんだゾ」
「うン。分かってル」
そう言ってから、ドルマンはヴァルクの工場に入っていく。このあとは武器を持ってみて、最終的な調整に入るから、一時間ぐらいは出てこないし、ネイアもそれを邪魔する気はない。
「皆に自慢してこヨ~」
ドルマンの忠告通り、ネイアは稽古もほどほどに切り上げてから、手に持つ刀を彼女の友人たちに見せつけるため、その場から走り出した。
◆◆◆
数日後。ネイアは戦士隊に同行し、村から出ていっていた。
目的は周辺で確認された大型の魔物の討伐だ。既に数人の同士がおそらくその魔物に殺害されており、戦士隊が派遣されたというわけだ。
ネイアが知る限り、大型の魔物はそんなに珍しいわけではない。だが雪兎人族が、例え戦士でないにしても殺されることはこれまでなかった。
新種の可能性もあるが、有り得そうなのは──『無数の亡国』からの『襲来者』、という線だ。
『無数の亡国』と『大雪原』は隣接しており、故に極まれにそこから『大雪原』に現れる魔物が存在する。理屈はわからないが、『襲来者』は桁外れな魔力及び身体能力、知能を持っていて、雪兎人を容易く殺害できる。──先代の戦士隊隊長が死亡したのも、『襲来者』によって殺されたからだった。そしてその『襲来者』は未だあれ以降、見つかっていない。
「怖いネ。逃げる算段も考えておかないト」
「だナ」
雪兎人にとって、戦闘で死ぬことは何よりも愚かだとされる。大切なのは生き残ることであり、その為ならば逃げることは勇敢なこととされる。最終的に地に足をつけて立っていた者こそ勝者であり、勇者なのだ。
現在、彼らは『襲来者』の目撃地点周辺に居た。目撃は前日のもので、つまりは最新情報だ。遭遇するとすればもうそろそろであり、部隊は緊張に包まれていた。
戦士隊は計十五名であり、即壊滅はないだろう。しかし油断もできない。何せ相手は正真正銘の化物なのだから、あり得ないことがあり得る可能性も表れてくる。
「──ネイア!」
雪兎人は聴覚に優れている。故に危機に察知しやすい。だからこそ、ドルマンは彼女の名を叫んだ。おそらくそれに彼女も気がついていただろうが、それでも、だ。
「っう!?」
ネイアは咄嗟に刀で防御した。軽いこの武器には相応しくない使い方だったかもしれないが、刃こぼれしないのはこの武器の性能を物語っていた。
しかし彼女には、それに感動しているような暇は与えられなかった。続く二度目の攻撃が迫る。
ネイアはまたしても何とか防御することには成功した。しかし刀は弾かれた。
どうやら襲撃者はネイアを殺すつもりはないようだ。彼女の首元に剣を突きつけ、見下す。が、襲撃者の周りを弓を持った戦士が囲み、残りの戦士も臨戦態勢に入っていた。反撃しないのは、ネイアを人質に取られているからだ。
襲撃者は青年だった。そして何よりも驚くべき特徴は、彼が人間であったことだ。しかも『大雪原』に来たとは思えない薄着であり、なぜ凍えていないのか、不思議であるほどだった。
「よう、獣人のお嬢さん。その刀──剣、渡してくれるか?」
青年はそう言う。この刀は非常に優れた武器であり、手放すのは惜しい。
青年とたった二回であるが斬り合って分かったことがある。確かに彼は強い。ネイアが真正面から戦ったとしても勝てるとは思えない。おそらく村の中で最も強い戦士でも、結果は同じだろう。だがそれは一対一の場合だ。
戦士隊全員で挑めば、問題なくこの青年は始末できる。
「嫌だ、と言ったラ?」
挑発気味にネイアは言葉を返し、全力で青年から離れた。そしてそれを皮切りに、戦士たちは青年を襲い始める。
「──残念だ」
だが、襲撃者を一人だと、目の前の青年だけであると勘違いしたのが運の尽きだったのだ。
「穏便に済ませようなんて考えるべきじゃなかったね」
マサカズがこうして話し合いに持っていこうとしたのは、彼の良心からだった。どうもグレイは他者を殺すことに著しく興味がないらしく、即ち全員殺す気であったのだ。何故ならばそっちの方が楽だから。そんな相手に剣なんて貸す気にはなれなかった。
グレイは戦士のうち、最も屈強そうな雪兎人──彼は戦士隊の隊長だ──を不意打ちで飛び蹴りを打ち込み、彼をノックアウトする。幸いにも死んでは居ないようだ。殺す気ではあったが。
「おっと、意外に固い。破裂して汚れたくなかったから手加減したけど、死なないのは予想外だなぁ」
ネイアは彼を見て、戦慄する。何せ彼は刀を奪ってやった張本人。そして刀だけ奪ったのは彼の強者のオーラーを感じたからだ。
「はあ⋯⋯全く。もう普通の奴は殺しはしたくないんだが」
更に、マサカズの気配も変わった。殺意が篭ったのだ。そして気が付け出した。先程の剣戟は小手調べでさえ無かったのだと。
見えないスピード。見えない剣戟。予想を遥かに上回る実力。微塵も感じられない躊躇。彼らは正しく殺戮者側の存在だ。
逃げようにも彼らのスピードにはすぐに追いつかれる。スタミナ勝負にさえならない。かと言ってこうして防戦したって、いつかは殺される。
「ごめんなさイ! 武器は返すかラ!」
「もうマサカズが言ったと思うんだけど? 残念だ、って。君らは生き残れる唯一のチャンスを失った。殺せるなら君たちは殺す気だった。だって、害虫は駆除しておくものだもん」
グレイはララギアの最強の戦士だ。当然、それだけ獣人などを殺したということでもある。
殺し慣れれば、殺すことに躊躇はなくなるか、あるいはできるだけ殺したくないな、と思うようになる。だが殺すようになればどちらも唐突に殺人鬼に成れる。
グレイはそのうち前者であったということだ。呼吸をするように、食事をするように、睡眠を取るように、他者を殺す。雪兎人の悪行は──例えそれが彼らが生きるためであっても、その理由となる。
「──っ」
部隊の半数は既に倒れている。死者は居なさそうだが、重傷者は多いし、全員無力化されれば一人ずつ息の根を止められていきそうだ。
無論、ネイアだって例外にはなれない。
「すまないな、嬢ちゃん。だがこれも自然の摂理、って奴だ。俺も普段は殺される側なんだがな。今回ばかりは違ったようだ」
意味不明なことを言ってから、マサカズはネイアに向かって剣を振りかぶる。疲弊したネイアに彼の剣を防ぐ力はなく、首を飛ばされてそのまま即死だろう。
これまでの彼女の記憶が脳内に流れてくる。走馬灯、というものだ。嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、怖かったこと、大好きな父親のことを思い出したが、生き抜ける術はそこになかった。
死を覚悟したネイアだった──だが、それは訪れなかった。なぜならば、マサカズは次の瞬間には後に跳んでいたからだ。ネイアもそうだった。
彼ら二人を狙って、拳を叩き込む存在がいたのだ。武器でも何でもなく、拳を振り下ろしただけでそこにクレーターが出来上がった。
「⋯⋯気配を直前まで感じなかった、だと」
マサカズは『襲来者』を見てそう口を零した。
体長は目算三メートル。腕はその体長よりも長く、地面を引きずっている。体はやけに細い。骨が浮き出ていて、腕も皮と骨しかなさそうだが、クレーターを作るような筋力は十二分にあるらしい。
体色はアルビノのような白さではなく、青が僅かに混じったような白で、不健康そうな印象を受ける。シルエットは人間だが、それは全裸で生殖器はおろか、毛の一本も生えていない。
特に不気味なのは顔面だった。単眼であったが、真ん中に眼が付いているわけではなかった。正常な人間の片目をくり抜いて、そこにパテでも塗りつけたようだった。
口は裂けており、鋭利な歯は殆ど全て露出している。
一目で、それは常軌を逸した存在であると証明してくれている親切な怪物だ。
「わあ⋯⋯何あれ」
グレイもその見た目に、更に強さにも驚愕する。
彼は自分が最強の戦士であると自覚していたのだが、そんな自分でさえもこの怪物に勝てると断言できないでいたのだ。つまり、この怪物はグレイに匹敵、もしくは上回る存在であるということ。負けるとも言えないが、戦うことはリスクが大きい。
だからと言って逃してくれるわけでもないようだ。グレイは一目散に逃げようとしたのだが、怪物はそんなグレイの目の前に移動した。それもかなりのスピードと反射神経で。それらにおいては、グレイは怪物に負けるらしい。
怪物の拳を受けて、グレイは吹き飛ぶ。受け身を取ったから彼はそこまでダメージを受けることはなかったが、
「⋯⋯まっずいなぁ」
鼻血を拭う。
怪物はグレイたち全員を逃がす気はないようだ。そして、グレイは肉弾戦では勝ち目がなさそうだ、とも確信した。単純な筋力だけならグレイもそこまで引けはないが、何せあの長い腕のリーチが厄介だ。
「ねぇ、さっさと刀返して。さっきのは撤回。そんで僕らと協力して。もう一度チャンスあげる」
「ハ、はイ!」
殺してでも奪い返したいところだが、そんなことをしている暇がない。
ネイアは一度は刀を返そうとしたのだ。だから今度は素直に彼に刀を返す。そうしなければ彼に殺されるより先に、あの怪物に殺されるだろうから。
グレイは刀を受け取る。
「マサカズ、僕に合わせてくれ」
「え、俺も戦うのか? あれと?」
エストがそうであったように、マサカズは彼らの戦いに介入できる実力はない。グレイも分かっているはずなのだが、
「ああ。サポート程度なら死にはしないさ。魔物狩りは得意だよね?」
だがあくまで正面切っての戦いが無理なだけである。グレイが攻撃を捌いてくれれば、マサカズはアタッカーとして十分に機能する。そしてマサカズは魔物特攻の『神聖之加護』持ちだ。
「⋯⋯そういうことか。なら任せろ」
更に跳躍力にも優れており、平均しての直上であれば凡そ五十メートル。前方に跳ぼうものなら二百メートルほど移動できるだろう。
「⋯⋯凄いナ。この武器ハ」
雪兎人族随一の鍛冶師、ヴァルクは、自分に渡された刃物を眺めてそう言った。
刀身は薄く、決して重いとは言えない刃物。従来の両手剣とは異なり、叩き斬るような使い方ではなく、純粋な切断力のみで相手を殺す武器なのだろう。軽さに反して剛性もしっかりしており、技術があるものがこれを使えば厄介極まりないだろう。鍛冶師である彼でも、戦士として戦えそうなのだから。
「どこから盗ってきタ?」
ヴァルクは自身の娘、ネイアに訊く。彼女は両手を後ろに回し、嬉しそうな顔で、
「ララギアの獣人! 凄い強そうだったかラ、それだけ奪ってきたノ!」
「そうカ。⋯⋯これハお前が持っておくと良イ。戦士の中で最もそれを使えるのはお前だろウ」
「うン。ちょっと試しに使ってきてみル」
ネイアはヴァルクからそれを受け取って、工場兼自宅である、村の中でも数少ない石造の家から出ていく。
雪兎人は数が少なく、複数の村があるというわけではない。ここにある一つだけだ。
村の総人口は百十六名。全員が知り合いであり、家族でもある。助け、助けられ、この過酷な雪原で生き抜く。子供が生まれれば村で一丸となり祝福するものだ。
齢十五、今年で成人となるネイアは、幾人かの村人で編成される戦士隊の副隊長だ。勿論、その地位に見合うだけの実力も持っている、若い戦士だ。
「──軽イ。振り易イ。それでいて斬れ味も凄イ!」
ネイアは刃物──彼女らは知らないが、刀と呼ばれる──を何度も素振りする。それから振り方を変えてみたり、体術を入れこんだりして実戦で使えるようにイメージしていく。
使い勝手は両手剣に近いが、軽さはそうとは思えない。特に彼女のような筋力がそこまで高いわけではない者には非常に扱いやすく、そしてスピードがあるなら尚更だ。
「よウ、ネイア。どうしたんダ、その武器?」
ネイアが刀を振り回していると、声をかけられた。彼はドルマン。彼も戦士隊に所属しており、また年齢が近いこともありよく話す相手だし、婚約まで入っていないが付き合っている。
「ドルマン。偶々見かけたララギアの獣人から奪ったノ。凄いでしョ? 持ってみル?」
「いヤ、遠慮すル。オレには合わなさそうダ。⋯⋯ガ、お前にはピッタリだナ」
ヴァルクもドルマンも、初めて見た武器だというのにどうしてそんなにも簡単に、そして的確に武器の性質を見破れるのだろうか。
剣を握ってまだ一月もしていないネイアは、おそらくは経験やそれに基づく勘なのだろう、と思った。
まだまだ自分には足りないものがある。そう気づかせてくれるから、発見とは喜ばしいものだ。
「にしてモ、ドルマン、何か用?」
まさかガールフレンドに会いに来たわけではないだろう。彼の服装は戦士隊の制服──青色を貴重とした、雪兎人には珍しい全身を覆う服装──を着ているのだから。
「あア、ヴァルクさんに頼んでいた剣を取りに来たんダ。そろそろだったロ?」
そういえば、とネイアは思い出す。確か工場には真新しい重厚な、ネイアにはきっと持つことさえ難しいだろう両手剣があったはずだ。
「あったネ。あんなのブンブン振り回せるだなんテ、私にはできないヨ」
そう。周りの皆は凄いのだ。誰もが何か得意なものを持っている。自分だってそうだし、ドルマンだってそうだ。父のヴァルクも、戦士である自分たちとは切っても切り離せないほどお世話になっている。
「じゃア。鍛錬のし過ぎも体に悪いかラ、程々にしておくんだゾ」
「うン。分かってル」
そう言ってから、ドルマンはヴァルクの工場に入っていく。このあとは武器を持ってみて、最終的な調整に入るから、一時間ぐらいは出てこないし、ネイアもそれを邪魔する気はない。
「皆に自慢してこヨ~」
ドルマンの忠告通り、ネイアは稽古もほどほどに切り上げてから、手に持つ刀を彼女の友人たちに見せつけるため、その場から走り出した。
◆◆◆
数日後。ネイアは戦士隊に同行し、村から出ていっていた。
目的は周辺で確認された大型の魔物の討伐だ。既に数人の同士がおそらくその魔物に殺害されており、戦士隊が派遣されたというわけだ。
ネイアが知る限り、大型の魔物はそんなに珍しいわけではない。だが雪兎人族が、例え戦士でないにしても殺されることはこれまでなかった。
新種の可能性もあるが、有り得そうなのは──『無数の亡国』からの『襲来者』、という線だ。
『無数の亡国』と『大雪原』は隣接しており、故に極まれにそこから『大雪原』に現れる魔物が存在する。理屈はわからないが、『襲来者』は桁外れな魔力及び身体能力、知能を持っていて、雪兎人を容易く殺害できる。──先代の戦士隊隊長が死亡したのも、『襲来者』によって殺されたからだった。そしてその『襲来者』は未だあれ以降、見つかっていない。
「怖いネ。逃げる算段も考えておかないト」
「だナ」
雪兎人にとって、戦闘で死ぬことは何よりも愚かだとされる。大切なのは生き残ることであり、その為ならば逃げることは勇敢なこととされる。最終的に地に足をつけて立っていた者こそ勝者であり、勇者なのだ。
現在、彼らは『襲来者』の目撃地点周辺に居た。目撃は前日のもので、つまりは最新情報だ。遭遇するとすればもうそろそろであり、部隊は緊張に包まれていた。
戦士隊は計十五名であり、即壊滅はないだろう。しかし油断もできない。何せ相手は正真正銘の化物なのだから、あり得ないことがあり得る可能性も表れてくる。
「──ネイア!」
雪兎人は聴覚に優れている。故に危機に察知しやすい。だからこそ、ドルマンは彼女の名を叫んだ。おそらくそれに彼女も気がついていただろうが、それでも、だ。
「っう!?」
ネイアは咄嗟に刀で防御した。軽いこの武器には相応しくない使い方だったかもしれないが、刃こぼれしないのはこの武器の性能を物語っていた。
しかし彼女には、それに感動しているような暇は与えられなかった。続く二度目の攻撃が迫る。
ネイアはまたしても何とか防御することには成功した。しかし刀は弾かれた。
どうやら襲撃者はネイアを殺すつもりはないようだ。彼女の首元に剣を突きつけ、見下す。が、襲撃者の周りを弓を持った戦士が囲み、残りの戦士も臨戦態勢に入っていた。反撃しないのは、ネイアを人質に取られているからだ。
襲撃者は青年だった。そして何よりも驚くべき特徴は、彼が人間であったことだ。しかも『大雪原』に来たとは思えない薄着であり、なぜ凍えていないのか、不思議であるほどだった。
「よう、獣人のお嬢さん。その刀──剣、渡してくれるか?」
青年はそう言う。この刀は非常に優れた武器であり、手放すのは惜しい。
青年とたった二回であるが斬り合って分かったことがある。確かに彼は強い。ネイアが真正面から戦ったとしても勝てるとは思えない。おそらく村の中で最も強い戦士でも、結果は同じだろう。だがそれは一対一の場合だ。
戦士隊全員で挑めば、問題なくこの青年は始末できる。
「嫌だ、と言ったラ?」
挑発気味にネイアは言葉を返し、全力で青年から離れた。そしてそれを皮切りに、戦士たちは青年を襲い始める。
「──残念だ」
だが、襲撃者を一人だと、目の前の青年だけであると勘違いしたのが運の尽きだったのだ。
「穏便に済ませようなんて考えるべきじゃなかったね」
マサカズがこうして話し合いに持っていこうとしたのは、彼の良心からだった。どうもグレイは他者を殺すことに著しく興味がないらしく、即ち全員殺す気であったのだ。何故ならばそっちの方が楽だから。そんな相手に剣なんて貸す気にはなれなかった。
グレイは戦士のうち、最も屈強そうな雪兎人──彼は戦士隊の隊長だ──を不意打ちで飛び蹴りを打ち込み、彼をノックアウトする。幸いにも死んでは居ないようだ。殺す気ではあったが。
「おっと、意外に固い。破裂して汚れたくなかったから手加減したけど、死なないのは予想外だなぁ」
ネイアは彼を見て、戦慄する。何せ彼は刀を奪ってやった張本人。そして刀だけ奪ったのは彼の強者のオーラーを感じたからだ。
「はあ⋯⋯全く。もう普通の奴は殺しはしたくないんだが」
更に、マサカズの気配も変わった。殺意が篭ったのだ。そして気が付け出した。先程の剣戟は小手調べでさえ無かったのだと。
見えないスピード。見えない剣戟。予想を遥かに上回る実力。微塵も感じられない躊躇。彼らは正しく殺戮者側の存在だ。
逃げようにも彼らのスピードにはすぐに追いつかれる。スタミナ勝負にさえならない。かと言ってこうして防戦したって、いつかは殺される。
「ごめんなさイ! 武器は返すかラ!」
「もうマサカズが言ったと思うんだけど? 残念だ、って。君らは生き残れる唯一のチャンスを失った。殺せるなら君たちは殺す気だった。だって、害虫は駆除しておくものだもん」
グレイはララギアの最強の戦士だ。当然、それだけ獣人などを殺したということでもある。
殺し慣れれば、殺すことに躊躇はなくなるか、あるいはできるだけ殺したくないな、と思うようになる。だが殺すようになればどちらも唐突に殺人鬼に成れる。
グレイはそのうち前者であったということだ。呼吸をするように、食事をするように、睡眠を取るように、他者を殺す。雪兎人の悪行は──例えそれが彼らが生きるためであっても、その理由となる。
「──っ」
部隊の半数は既に倒れている。死者は居なさそうだが、重傷者は多いし、全員無力化されれば一人ずつ息の根を止められていきそうだ。
無論、ネイアだって例外にはなれない。
「すまないな、嬢ちゃん。だがこれも自然の摂理、って奴だ。俺も普段は殺される側なんだがな。今回ばかりは違ったようだ」
意味不明なことを言ってから、マサカズはネイアに向かって剣を振りかぶる。疲弊したネイアに彼の剣を防ぐ力はなく、首を飛ばされてそのまま即死だろう。
これまでの彼女の記憶が脳内に流れてくる。走馬灯、というものだ。嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、怖かったこと、大好きな父親のことを思い出したが、生き抜ける術はそこになかった。
死を覚悟したネイアだった──だが、それは訪れなかった。なぜならば、マサカズは次の瞬間には後に跳んでいたからだ。ネイアもそうだった。
彼ら二人を狙って、拳を叩き込む存在がいたのだ。武器でも何でもなく、拳を振り下ろしただけでそこにクレーターが出来上がった。
「⋯⋯気配を直前まで感じなかった、だと」
マサカズは『襲来者』を見てそう口を零した。
体長は目算三メートル。腕はその体長よりも長く、地面を引きずっている。体はやけに細い。骨が浮き出ていて、腕も皮と骨しかなさそうだが、クレーターを作るような筋力は十二分にあるらしい。
体色はアルビノのような白さではなく、青が僅かに混じったような白で、不健康そうな印象を受ける。シルエットは人間だが、それは全裸で生殖器はおろか、毛の一本も生えていない。
特に不気味なのは顔面だった。単眼であったが、真ん中に眼が付いているわけではなかった。正常な人間の片目をくり抜いて、そこにパテでも塗りつけたようだった。
口は裂けており、鋭利な歯は殆ど全て露出している。
一目で、それは常軌を逸した存在であると証明してくれている親切な怪物だ。
「わあ⋯⋯何あれ」
グレイもその見た目に、更に強さにも驚愕する。
彼は自分が最強の戦士であると自覚していたのだが、そんな自分でさえもこの怪物に勝てると断言できないでいたのだ。つまり、この怪物はグレイに匹敵、もしくは上回る存在であるということ。負けるとも言えないが、戦うことはリスクが大きい。
だからと言って逃してくれるわけでもないようだ。グレイは一目散に逃げようとしたのだが、怪物はそんなグレイの目の前に移動した。それもかなりのスピードと反射神経で。それらにおいては、グレイは怪物に負けるらしい。
怪物の拳を受けて、グレイは吹き飛ぶ。受け身を取ったから彼はそこまでダメージを受けることはなかったが、
「⋯⋯まっずいなぁ」
鼻血を拭う。
怪物はグレイたち全員を逃がす気はないようだ。そして、グレイは肉弾戦では勝ち目がなさそうだ、とも確信した。単純な筋力だけならグレイもそこまで引けはないが、何せあの長い腕のリーチが厄介だ。
「ねぇ、さっさと刀返して。さっきのは撤回。そんで僕らと協力して。もう一度チャンスあげる」
「ハ、はイ!」
殺してでも奪い返したいところだが、そんなことをしている暇がない。
ネイアは一度は刀を返そうとしたのだ。だから今度は素直に彼に刀を返す。そうしなければ彼に殺されるより先に、あの怪物に殺されるだろうから。
グレイは刀を受け取る。
「マサカズ、僕に合わせてくれ」
「え、俺も戦うのか? あれと?」
エストがそうであったように、マサカズは彼らの戦いに介入できる実力はない。グレイも分かっているはずなのだが、
「ああ。サポート程度なら死にはしないさ。魔物狩りは得意だよね?」
だがあくまで正面切っての戦いが無理なだけである。グレイが攻撃を捌いてくれれば、マサカズはアタッカーとして十分に機能する。そしてマサカズは魔物特攻の『神聖之加護』持ちだ。
「⋯⋯そういうことか。なら任せろ」
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私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
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【完結】公女が死んだ、その後のこと
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無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
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注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
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