白の魔女の世界救済譚

月乃彰

文字の大きさ
上 下
193 / 338
第七章「暁に至る時」

第百八十四話 雪兎人

しおりを挟む
 『大雪原』に住まう獣人、雪兎人。彼らは真っ白な毛並みを持った兎の獣人であり、高い身体能力を有する。特に聴力が優れており、個体差もあるが可聴域は平均的な人間の二十五倍であり、また、半径五百メートル程度の範囲ならば会話することも可能だ。
 更に跳躍力にも優れており、平均しての直上であれば凡そ五十メートル。前方に跳ぼうものなら二百メートルほど移動できるだろう。

「⋯⋯凄いナ。この武器ハ」

 雪兎人族随一の鍛冶師、ヴァルクは、自分に渡された刃物を眺めてそう言った。
 刀身は薄く、決して重いとは言えない刃物。従来の両手剣とは異なり、叩き斬るような使い方ではなく、純粋な切断力のみで相手を殺す武器なのだろう。軽さに反して剛性もしっかりしており、技術があるものがこれを使えば厄介極まりないだろう。鍛冶師である彼でも、戦士として戦えそうなのだから。

「どこから盗ってきタ?」

 ヴァルクは自身の娘、ネイアに訊く。彼女は両手を後ろに回し、嬉しそうな顔で、

「ララギアの獣人! 凄い強そうだったかラ、それだけ奪ってきたノ!」

「そうカ。⋯⋯これハお前が持っておくと良イ。戦士の中で最もそれを使えるのはお前だろウ」

「うン。ちょっと試しに使ってきてみル」

 ネイアはヴァルクからそれを受け取って、工場兼自宅である、村の中でも数少ない石造の家から出ていく。
 雪兎人は数が少なく、複数の村があるというわけではない。ここにある一つだけだ。
 村の総人口は百十六名。全員が知り合いであり、家族でもある。助け、助けられ、この過酷な雪原で生き抜く。子供が生まれれば村で一丸となり祝福するものだ。
 齢十五、今年で成人となるネイアは、幾人かの村人で編成される戦士隊の副隊長だ。勿論、その地位に見合うだけの実力も持っている、若い戦士だ。

「──軽イ。振り易イ。それでいて斬れ味も凄イ!」

 ネイアは刃物──彼女らは知らないが、刀と呼ばれる──を何度も素振りする。それから振り方を変えてみたり、体術を入れこんだりして実戦で使えるようにイメージしていく。
 使い勝手は両手剣に近いが、軽さはそうとは思えない。特に彼女のような筋力がそこまで高いわけではない者には非常に扱いやすく、そしてスピードがあるなら尚更だ。
 
「よウ、ネイア。どうしたんダ、その武器?」

 ネイアが刀を振り回していると、声をかけられた。彼はドルマン。彼も戦士隊に所属しており、また年齢が近いこともありよく話す相手だし、婚約まで入っていないが付き合っている。

「ドルマン。偶々見かけたララギアの獣人から奪ったノ。凄いでしョ? 持ってみル?」

「いヤ、遠慮すル。オレには合わなさそうダ。⋯⋯ガ、お前にはピッタリだナ」

 ヴァルクもドルマンも、初めて見た武器だというのにどうしてそんなにも簡単に、そして的確に武器の性質を見破れるのだろうか。
 剣を握ってまだ一月もしていないネイアは、おそらくは経験やそれに基づく勘なのだろう、と思った。
 まだまだ自分には足りないものがある。そう気づかせてくれるから、発見とは喜ばしいものだ。

「にしてモ、ドルマン、何か用?」

 まさかガールフレンドに会いに来たわけではないだろう。彼の服装は戦士隊の制服──青色を貴重とした、雪兎人には珍しい全身を覆う服装──を着ているのだから。

「あア、ヴァルクさんに頼んでいた剣を取りに来たんダ。そろそろだったロ?」

 そういえば、とネイアは思い出す。確か工場には真新しい重厚な、ネイアにはきっと持つことさえ難しいだろう両手剣があったはずだ。

「あったネ。あんなのブンブン振り回せるだなんテ、私にはできないヨ」

 そう。周りの皆は凄いのだ。誰もが何か得意なものを持っている。自分だってそうだし、ドルマンだってそうだ。父のヴァルクも、戦士である自分たちとは切っても切り離せないほどお世話になっている。

「じゃア。鍛錬のし過ぎも体に悪いかラ、程々にしておくんだゾ」

「うン。分かってル」

 そう言ってから、ドルマンはヴァルクの工場に入っていく。このあとは武器を持ってみて、最終的な調整に入るから、一時間ぐらいは出てこないし、ネイアもそれを邪魔する気はない。

「皆に自慢してこヨ~」

 ドルマンの忠告通り、ネイアは稽古もほどほどに切り上げてから、手に持つ刀を彼女の友人たちに見せつけるため、その場から走り出した。

 ◆◆◆

 数日後。ネイアは戦士隊に同行し、村から出ていっていた。
 目的は周辺で確認された大型の魔物の討伐だ。既に数人の同士がおそらくその魔物に殺害されており、戦士隊が派遣されたというわけだ。
 ネイアが知る限り、大型の魔物はそんなに珍しいわけではない。だが雪兎人族が、例え戦士でないにしても殺されることはこれまでなかった。
 新種の可能性もあるが、有り得そうなのは──『無数の亡国』からの『襲来者』、という線だ。
 『無数の亡国』と『大雪原』は隣接しており、故に極まれにそこから『大雪原』に現れる魔物が存在する。理屈はわからないが、『襲来者』は桁外れな魔力及び身体能力、知能を持っていて、雪兎人を容易く殺害できる。──先代の戦士隊隊長が死亡したのも、『襲来者』によって殺されたからだった。そしてその『襲来者』は未だあれ以降、見つかっていない。
 
「怖いネ。逃げる算段も考えておかないト」

「だナ」

 雪兎人にとって、戦闘で死ぬことは何よりも愚かだとされる。大切なのは生き残ることであり、その為ならば逃げることは勇敢なこととされる。最終的に地に足をつけて立っていた者こそ勝者であり、勇者なのだ。
 現在、彼らは『襲来者』の目撃地点周辺に居た。目撃は前日のもので、つまりは最新情報だ。遭遇するとすればもうそろそろであり、部隊は緊張に包まれていた。
 戦士隊は計十五名であり、即壊滅はないだろう。しかし油断もできない。何せ相手は正真正銘の化物なのだから、あり得ないことがあり得る可能性も表れてくる。

「──ネイア!」

 雪兎人は聴覚に優れている。故に危機に察知しやすい。だからこそ、ドルマンは彼女の名を叫んだ。おそらくそれに彼女も気がついていただろうが、それでも、だ。

「っう!?」

 ネイアは咄嗟に刀で防御した。軽いこの武器には相応しくない使い方だったかもしれないが、刃こぼれしないのはこの武器の性能を物語っていた。
 しかし彼女には、それに感動しているような暇は与えられなかった。続く二度目の攻撃が迫る。
 ネイアはまたしても何とか防御することには成功した。しかし刀は弾かれた。
 どうやら襲撃者はネイアを殺すつもりはないようだ。彼女の首元に剣を突きつけ、見下す。が、襲撃者の周りを弓を持った戦士が囲み、残りの戦士も臨戦態勢に入っていた。反撃しないのは、ネイアを人質に取られているからだ。
 襲撃者は青年だった。そして何よりも驚くべき特徴は、彼が人間であったことだ。しかも『大雪原』に来たとは思えない薄着であり、なぜ凍えていないのか、不思議であるほどだった。

「よう、獣人のお嬢さん。その刀──剣、渡してくれるか?」

 青年はそう言う。この刀は非常に優れた武器であり、手放すのは惜しい。
 青年とたった二回であるが斬り合って分かったことがある。確かに彼は強い。ネイアが真正面から戦ったとしても勝てるとは思えない。おそらく村の中で最も強い戦士でも、結果は同じだろう。だがそれは一対一の場合だ。
 戦士隊全員で挑めば、問題なくこの青年は始末できる。

「嫌だ、と言ったラ?」

 挑発気味にネイアは言葉を返し、全力で青年から離れた。そしてそれを皮切りに、戦士たちは青年を襲い始める。

「──残念だ」

 だが、襲撃者を一人だと、目の前の青年だけであると勘違いしたのが運の尽きだったのだ。

「穏便に済ませようなんて考えるべきじゃなかったね」

 マサカズがこうして話し合いに持っていこうとしたのは、彼の良心からだった。どうもグレイは他者を殺すことに著しく興味がないらしく、即ち全員殺す気であったのだ。何故ならばそっちの方が楽だから。そんな相手に剣なんて貸す気にはなれなかった。
 グレイは戦士のうち、最も屈強そうな雪兎人──彼は戦士隊の隊長だ──を不意打ちで飛び蹴りを打ち込み、彼をノックアウトする。幸いにも死んでは居ないようだ。殺す気ではあったが。

「おっと、意外に固い。破裂して汚れたくなかったから手加減したけど、死なないのは予想外だなぁ」

 ネイアは彼を見て、戦慄する。何せ彼は刀を奪ってやった張本人。そして刀だけ奪ったのは彼の強者のオーラーを感じたからだ。

「はあ⋯⋯全く。もう普通の奴は殺しはしたくないんだが」

 更に、マサカズの気配も変わった。殺意が篭ったのだ。そして気が付け出した。先程の剣戟は小手調べでさえ無かったのだと。
 見えないスピード。見えない剣戟。予想を遥かに上回る実力。微塵も感じられない躊躇。彼らは正しく殺戮者側の存在だ。
 逃げようにも彼らのスピードにはすぐに追いつかれる。スタミナ勝負にさえならない。かと言ってこうして防戦したって、いつかは殺される。

「ごめんなさイ! 武器は返すかラ!」

「もうマサカズが言ったと思うんだけど? 残念だ、って。君らは生き残れる唯一のチャンスを失った。殺せるなら君たちは殺す気だった。だって、害虫は駆除しておくものだもん」

 グレイはララギアの最強の戦士だ。当然、それだけ獣人などを殺したということでもある。
 殺し慣れれば、殺すことに躊躇はなくなるか、あるいはできるだけ殺したくないな、と思うようになる。だが殺すようになればどちらも唐突に殺人鬼に成れる。
 グレイはそのうち前者であったということだ。呼吸をするように、食事をするように、睡眠を取るように、他者を殺す。雪兎人の悪行は──例えそれが彼らが生きるためであっても、その理由となる。

「──っ」

 部隊の半数は既に倒れている。死者は居なさそうだが、重傷者は多いし、全員無力化されれば一人ずつ息の根を止められていきそうだ。
 無論、ネイアだって例外にはなれない。

「すまないな、嬢ちゃん。だがこれも自然の摂理、って奴だ。俺も普段は殺される側なんだがな。今回ばかりは違ったようだ」

 意味不明なことを言ってから、マサカズはネイアに向かって剣を振りかぶる。疲弊したネイアに彼の剣を防ぐ力はなく、首を飛ばされてそのまま即死だろう。
 これまでの彼女の記憶が脳内に流れてくる。走馬灯、というものだ。嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、怖かったこと、大好きな父親のことを思い出したが、生き抜ける術はそこになかった。
 死を覚悟したネイアだった──だが、それは訪れなかった。なぜならば、マサカズは次の瞬間には後に跳んでいたからだ。ネイアもそうだった。
 彼ら二人を狙って、拳を叩き込む存在がいたのだ。武器でも何でもなく、拳を振り下ろしただけでそこにクレーターが出来上がった。

「⋯⋯気配を直前まで感じなかった、だと」

 マサカズは『襲来者』を見てそう口を零した。
 体長は目算三メートル。腕はその体長よりも長く、地面を引きずっている。体はやけに細い。骨が浮き出ていて、腕も皮と骨しかなさそうだが、クレーターを作るような筋力は十二分にあるらしい。
 体色はアルビノのような白さではなく、青が僅かに混じったような白で、不健康そうな印象を受ける。シルエットは人間だが、それは全裸で生殖器はおろか、毛の一本も生えていない。
 特に不気味なのは顔面だった。単眼であったが、真ん中に眼が付いているわけではなかった。正常な人間の片目をくり抜いて、そこにパテでも塗りつけたようだった。
 口は裂けており、鋭利な歯は殆ど全て露出している。
 一目で、それは常軌を逸した存在であると証明してくれている親切な怪物だ。

「わあ⋯⋯何あれ」

 グレイもその見た目に、更に強さにも驚愕する。
 彼は自分が最強の戦士であると自覚していたのだが、そんな自分でさえもこの怪物に勝てると断言できないでいたのだ。つまり、この怪物はグレイに匹敵、もしくは上回る存在であるということ。負けるとも言えないが、戦うことはリスクが大きい。
 だからと言って逃してくれるわけでもないようだ。グレイは一目散に逃げようとしたのだが、怪物はそんなグレイの目の前に移動した。それもかなりのスピードと反射神経で。それらにおいては、グレイは怪物に負けるらしい。
 怪物の拳を受けて、グレイは吹き飛ぶ。受け身を取ったから彼はそこまでダメージを受けることはなかったが、

「⋯⋯まっずいなぁ」

 鼻血を拭う。
 怪物はグレイたち全員を逃がす気はないようだ。そして、グレイは肉弾戦では勝ち目がなさそうだ、とも確信した。単純な筋力だけならグレイもそこまで引けはないが、何せあの長い腕のリーチが厄介だ。

「ねぇ、さっさと刀返して。さっきのは撤回。そんで僕らと協力して。もう一度チャンスあげる」

「ハ、はイ!」

 殺してでも奪い返したいところだが、そんなことをしている暇がない。
 ネイアは一度は刀を返そうとしたのだ。だから今度は素直に彼に刀を返す。そうしなければ彼に殺されるより先に、あの怪物に殺されるだろうから。
 グレイは刀を受け取る。

「マサカズ、僕に合わせてくれ」

「え、俺も戦うのか? あれと?」

 エストがそうであったように、マサカズは彼らの戦いに介入できる実力はない。グレイも分かっているはずなのだが、

「ああ。サポート程度なら死にはしないさ。魔物狩りは得意だよね?」

 だがあくまで正面切っての戦いが無理なだけである。グレイが攻撃を捌いてくれれば、マサカズはアタッカーとして十分に機能する。そしてマサカズは魔物特攻の『神聖之加護』持ちだ。

「⋯⋯そういうことか。なら任せろ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します

Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。 女性は従姉、男性は私の婚約者だった。 私は泣きながらその場を走り去った。 涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。 階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。 けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた! ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...