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第五章「魔を統べる王」
第五章 エピローグ
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「──ふふ」
彼女は笑った。それは嘲笑うようでも、喜ぶようでもあった。しかしその実、彼女はその笑みにはもう一つ意味が含まれていた。それは、
「嗚呼、楽しみです」
真っ黒な髪は光を反射していないよう。真っ黒なドレスは暗闇のよう。真っ黒な瞳は無感情であるよう。
東洋人風の顔立ちは神が手心込めて造ったみたいに繊細で、豊満な胸にスレンダーな体。胸の一部や腰、背中が露出していることにより、彼女には妖艶な美があった。悩殺を実体化したみたいだ。
彼女が外を歩いたなら、世の男たちは魅了され、欲情し、性欲が強く自制心のない男なら、そこが町中であれ強姦しようとさえしただろう。しかし、それは愚かな行動と言える。
法律的な意味ではない。倫理的な意味ではない。単に、それをしたなら男は次の瞬間には全身がグチャグチャに、粘土みたいに練り捏ねられ、無残な肉塊になり──そしてそれで生かされている状態になる。
餓死することもできず、自害することもできず、同じ人間に処理されるまで、声を発することなく、発狂することもなく、気絶することもなく、死ぬまで痛み続けるだろう。
彼女は──黒の魔女。厄災の象徴。畏れられるべき者だ。
「楽しみ⋯⋯そうだとは思いませんか?」
黒の魔女は、そう問いかけた、目の前の、十体の化物たちに。
冒涜的で、常人なら見ただけで発狂するような化物たちを、ペットのように彼女は扱っている。しかしそれらの主人は彼女ではないため、それらは彼女に牙を向くが、
「──伏せなさい。さもなくばあなたたちを痛めつける必要がありますから」
一声。そう、たった一声で、破戒魔獣──単体で大陸を滅ぼせる化物共は、怒られた犬のように伏せた。
能力によって生み出された化物たちは、本来なら主人以外には従わないし、死ぬとしても、主人の最期の命令を守ろうとするだろう。ではなぜ、破戒魔獣たちは黒の魔女に従属したのか。
単純な理由だ。犬を躾けたならば、その犬に噛まれることはない。そしてその躾は、恐怖による支配だっただけ。
自分より上位者。それに従うのが獣としての本能だ。
「良い子ですね。⋯⋯命令です。これから来るであろう白の魔女、そしてその仲間たちを殺しなさい。ああ、できないと悟っても、逃げることは許しません。もしそうしたなら、彼らに殺されるより先に私が殺しますよ」
要は、敵を死ぬまで戦って殺せ、だ。相手の戦力についてなど不明だが、命令には従う義務がある。
「あ、そうそう。白の魔女からはとんでもない力が感じられると思いますが、それは彼女自身ではありません。なので警戒は必要ありませんよ。おそらく、それはあなたたちに力を振るうことはないでしょうから」
黒の魔女は再度、笑みを浮かべる。
「始祖、ですか。私と同じ⋯⋯ふふ、これは予想外です」
「そうですか、黒の魔女様」
突然、黒の魔女に話しかける者がいた。しかし彼女はそれに驚くことも、振り向くこともなく、答える。
「ダート、私に何か用ですか? あなたがすべき事はもうありません。この二ヶ月でケテル、ティファレト、コクマーの三人が死亡し、替えの魔王軍も寝返りました。しかし私がこうして、破戒魔獣を⋯⋯」
「──私共は、あなた様の手足であり、本来であれば何の疑問も抱かずにあなた様の命を執行するべき者たちです。しかし、それを承知で伺いたいことがあるのです」
ダート。白髪が混じった金の長髪に、黒のローブを着た背の低い老人。しかし彼もセフィロトの一人であり、そしてその統括者。
彼は己が主の為すことに、疑問を感じていた。
「あなた様の目標を阻止する者共を、どうして全力で向かい討たないのですか? 確かに、破戒魔獣であれば不可能ではない。しかし、確実でもありません。でしたら、あなた様の力を、許されなくても我々、セフィロト全員もその戦いに加えさせていただければ、確実な勝利になります。あなた様であればこの程度理解しきっているはず。なのに、どうしてそれを為さらないのですか?」
破戒魔獣十体に、セフィロト全員。そして黒の魔女も加われば、エストたちを殺し尽くすことは簡単だ。最初からやっていれば、計画は無事決行されたはずなのだ。
まさか、考えつかなかったなど有り得ない。であれば、どうしてわざわざ手を抜いたのか、それをダートは知りたがっていたのだ。
「⋯⋯ケテル、ティファレト、コクマー。三人の死には意味があったか、そう聞きたいのですか?」
「⋯⋯はい」
セフィロトたちは元々、全くの別人だ。中には別種族も居た。しかし、仲間となり、共通の人を崇拝することで、種族間も、人種間も超えた仲間意識。それが彼らには芽生えていた。彼らが死んだとしても涙は流さないが、悲しくないわけでは決してないのだ。
「ありましたよ。それが私の望んだことですから」
「⋯⋯」
「あなたたちは私の手であり、足。あなたたちの行いの意思は私の意思。ならば、私の望んだことはあなたたちのの欲望」
黒の魔女には目的があった。それは、これからやろうとしている世界を滅ぼすものとは他に──否、その計画にある。
「私は──殺し合いをしたいのです」
──黒の魔女は最強だ。故に、本気を出せたことがない。
人間最強など道端に並ぶ蟻の一匹と同等。亜人最強など海に泳ぐ小魚と同等。異形最強など狼と同等。
誰も彼女に本気を出させなかった。一番良くやったのはあの白の魔女、ルトアくらいだ。しかしルトアでさえ、彼女から本気を引き出せなかった。
「私は生まれてから最強の名を欲しいがままにしました。万能でした。私にできないことはない。⋯⋯しかし、それこそこの退屈の理由。万能ではありますが、全能ではありません。私は私に匹敵する者を見つけることはできませんでした。それが居なかったのです」
最強故の孤独。最強故の悩み。最強故の──。
「だから、私は⋯⋯エスト、あなたの可能性に賭けたのですよ」
一目見たときから、黒の魔女はエストに期待していた。ルトアも分かっていたのだろう。エストが、黒の魔女に似ていることが。
ただ決定的に違うのが、
「そう、可能性。私とあなたは似ている。最強という点で。しかし私たちは確定的な最強であるか、不確実的な最強であるか、という点で違っていたのです」
最初から最強。
至る可能性のある最強。
同じ最強ではあるが、全く違うのだ。
「強さとは所詮、相対的に変化するもの。最強も相対的なもの。だからこそ、私は可能性を求めたのです」
自分が、本気で戦える相手を。命を燃やす闘争の楽しさを。最高の、晩餐を。本気でなくては、それはお遊びだ。命のやり取りをすることこそ、本能が求める『欲望』であるのだと。
「私の『欲望』は──殺し、殺される戦いをすること。それが理由ですよ」
彼女は笑った。それは嘲笑うようでも、喜ぶようでもあった。しかしその実、彼女はその笑みにはもう一つ意味が含まれていた。それは、
「嗚呼、楽しみです」
真っ黒な髪は光を反射していないよう。真っ黒なドレスは暗闇のよう。真っ黒な瞳は無感情であるよう。
東洋人風の顔立ちは神が手心込めて造ったみたいに繊細で、豊満な胸にスレンダーな体。胸の一部や腰、背中が露出していることにより、彼女には妖艶な美があった。悩殺を実体化したみたいだ。
彼女が外を歩いたなら、世の男たちは魅了され、欲情し、性欲が強く自制心のない男なら、そこが町中であれ強姦しようとさえしただろう。しかし、それは愚かな行動と言える。
法律的な意味ではない。倫理的な意味ではない。単に、それをしたなら男は次の瞬間には全身がグチャグチャに、粘土みたいに練り捏ねられ、無残な肉塊になり──そしてそれで生かされている状態になる。
餓死することもできず、自害することもできず、同じ人間に処理されるまで、声を発することなく、発狂することもなく、気絶することもなく、死ぬまで痛み続けるだろう。
彼女は──黒の魔女。厄災の象徴。畏れられるべき者だ。
「楽しみ⋯⋯そうだとは思いませんか?」
黒の魔女は、そう問いかけた、目の前の、十体の化物たちに。
冒涜的で、常人なら見ただけで発狂するような化物たちを、ペットのように彼女は扱っている。しかしそれらの主人は彼女ではないため、それらは彼女に牙を向くが、
「──伏せなさい。さもなくばあなたたちを痛めつける必要がありますから」
一声。そう、たった一声で、破戒魔獣──単体で大陸を滅ぼせる化物共は、怒られた犬のように伏せた。
能力によって生み出された化物たちは、本来なら主人以外には従わないし、死ぬとしても、主人の最期の命令を守ろうとするだろう。ではなぜ、破戒魔獣たちは黒の魔女に従属したのか。
単純な理由だ。犬を躾けたならば、その犬に噛まれることはない。そしてその躾は、恐怖による支配だっただけ。
自分より上位者。それに従うのが獣としての本能だ。
「良い子ですね。⋯⋯命令です。これから来るであろう白の魔女、そしてその仲間たちを殺しなさい。ああ、できないと悟っても、逃げることは許しません。もしそうしたなら、彼らに殺されるより先に私が殺しますよ」
要は、敵を死ぬまで戦って殺せ、だ。相手の戦力についてなど不明だが、命令には従う義務がある。
「あ、そうそう。白の魔女からはとんでもない力が感じられると思いますが、それは彼女自身ではありません。なので警戒は必要ありませんよ。おそらく、それはあなたたちに力を振るうことはないでしょうから」
黒の魔女は再度、笑みを浮かべる。
「始祖、ですか。私と同じ⋯⋯ふふ、これは予想外です」
「そうですか、黒の魔女様」
突然、黒の魔女に話しかける者がいた。しかし彼女はそれに驚くことも、振り向くこともなく、答える。
「ダート、私に何か用ですか? あなたがすべき事はもうありません。この二ヶ月でケテル、ティファレト、コクマーの三人が死亡し、替えの魔王軍も寝返りました。しかし私がこうして、破戒魔獣を⋯⋯」
「──私共は、あなた様の手足であり、本来であれば何の疑問も抱かずにあなた様の命を執行するべき者たちです。しかし、それを承知で伺いたいことがあるのです」
ダート。白髪が混じった金の長髪に、黒のローブを着た背の低い老人。しかし彼もセフィロトの一人であり、そしてその統括者。
彼は己が主の為すことに、疑問を感じていた。
「あなた様の目標を阻止する者共を、どうして全力で向かい討たないのですか? 確かに、破戒魔獣であれば不可能ではない。しかし、確実でもありません。でしたら、あなた様の力を、許されなくても我々、セフィロト全員もその戦いに加えさせていただければ、確実な勝利になります。あなた様であればこの程度理解しきっているはず。なのに、どうしてそれを為さらないのですか?」
破戒魔獣十体に、セフィロト全員。そして黒の魔女も加われば、エストたちを殺し尽くすことは簡単だ。最初からやっていれば、計画は無事決行されたはずなのだ。
まさか、考えつかなかったなど有り得ない。であれば、どうしてわざわざ手を抜いたのか、それをダートは知りたがっていたのだ。
「⋯⋯ケテル、ティファレト、コクマー。三人の死には意味があったか、そう聞きたいのですか?」
「⋯⋯はい」
セフィロトたちは元々、全くの別人だ。中には別種族も居た。しかし、仲間となり、共通の人を崇拝することで、種族間も、人種間も超えた仲間意識。それが彼らには芽生えていた。彼らが死んだとしても涙は流さないが、悲しくないわけでは決してないのだ。
「ありましたよ。それが私の望んだことですから」
「⋯⋯」
「あなたたちは私の手であり、足。あなたたちの行いの意思は私の意思。ならば、私の望んだことはあなたたちのの欲望」
黒の魔女には目的があった。それは、これからやろうとしている世界を滅ぼすものとは他に──否、その計画にある。
「私は──殺し合いをしたいのです」
──黒の魔女は最強だ。故に、本気を出せたことがない。
人間最強など道端に並ぶ蟻の一匹と同等。亜人最強など海に泳ぐ小魚と同等。異形最強など狼と同等。
誰も彼女に本気を出させなかった。一番良くやったのはあの白の魔女、ルトアくらいだ。しかしルトアでさえ、彼女から本気を引き出せなかった。
「私は生まれてから最強の名を欲しいがままにしました。万能でした。私にできないことはない。⋯⋯しかし、それこそこの退屈の理由。万能ではありますが、全能ではありません。私は私に匹敵する者を見つけることはできませんでした。それが居なかったのです」
最強故の孤独。最強故の悩み。最強故の──。
「だから、私は⋯⋯エスト、あなたの可能性に賭けたのですよ」
一目見たときから、黒の魔女はエストに期待していた。ルトアも分かっていたのだろう。エストが、黒の魔女に似ていることが。
ただ決定的に違うのが、
「そう、可能性。私とあなたは似ている。最強という点で。しかし私たちは確定的な最強であるか、不確実的な最強であるか、という点で違っていたのです」
最初から最強。
至る可能性のある最強。
同じ最強ではあるが、全く違うのだ。
「強さとは所詮、相対的に変化するもの。最強も相対的なもの。だからこそ、私は可能性を求めたのです」
自分が、本気で戦える相手を。命を燃やす闘争の楽しさを。最高の、晩餐を。本気でなくては、それはお遊びだ。命のやり取りをすることこそ、本能が求める『欲望』であるのだと。
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