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第三章「エルフの国」
第四十七話 売国奴
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『転移魔法を行使すると、即死する』という情報は、魔法に優れたエルフという種族にとっては重大なものであった。
王女の死亡から二時間後。エルフの国は混乱に見舞われていた。エルフたちは地下のシェルターなどに避難しており、地上、それも外に居るエルフは数少ない。
「キミたちはいざというときのためにここに居てもらうけど、戦闘には可能な限り参加しないで」
「それは⋯⋯どういう?」
王城にて。
国の近衛兵団団長とエストは会話していた。
「敵が強いからさ。キミたちじゃあ、足止めもできない。けど、何が起こるかも分からない⋯⋯例えば、ゾンビの軍団が来たり、もあり得るわけだ。そのときの雑魚処理を任せるってわけ」
「了解しました」
何が起こるか分からない。だが、それが碌でもないことは確実だろう。
それからいくらか時間が経過して、日が落ちる。その間もずっと周りを警戒していたが、何も起こらなかった。
「⋯⋯。ああ、クソッたれが。狙いはこれか」
「マサカズ? どうしたんだ、いきなり?」
常に緊張が張り詰めていた。食事も最低限度だけで、睡眠もそれほどしていない。
「疲弊させるのが相手の目的ってわけだ。現に、俺たちは今もこうやって警戒し続けなくちゃならないだろ?」
モートルを見せつけられれば、他の破戒魔獣も居るのではないかと思うのが道理だ。だが、それら全てをすぐに襲わせないことで、狙いが何なのかをボカす。『いつ、どこに居るのか分からない』と思わせることで、『下手に動けない』と考えさせる。そうすれば、必然的に、常に警戒心を抱かざるを得なくなる。
「まんまと相手の策に嵌ったわけだし、今更これに気づいたってもう遅い。オマケに転移魔法による逃亡も目の前で不可能だと見せつけられたんだ⋯⋯どこまで、計画済みだったんだ?」
あまりにも、手の込んだ計画だ。転移阻害の結界はまだ分かるにせよ、破戒魔獣を用意する意図が分からない。エルフたち程度なら、わざわざそんな回りくどいことをする必要はない。そんな力があるなら、単体でもエルフたち全員を相手にできるはずだ。
「まさか⋯⋯!」
「どうした?」
「考えてみろ、ナオト、このどう考えても必要以上だと分かる戦力を投入した理由を」
「⋯⋯っ! そんなことがあり得るのか⋯⋯?」
「ああ。そうとし考えられない。──知っていたんだ、エストたちが事前に来るのを」
「で、でも、招待が来たのは三日前だぞ?」
「そうだ。三日前だ。だが、それはあくまでドメイが屋敷に来た日だ」
エルフの国からウェレール王国までは丸一日かかる。そして、招待することに決定したのはもっと前だろう。少なくとも、招待することに決定したのは五日前。もっと前の可能性も勿論あり得る。
「事前に知れたということは、エルフの国には、敵との内通者が居るということ」
エストとレネという魔女を招待する。もし計画時期をずらせないとしたら、当然だが彼女らへの対策を行わなくてはならないことになる。そして、それを伝えられるのは、それを知っている者。
「その内通者は──ドメイ」
マサカズとナオトの声が重なる。
エストたちがエルフの国に来ることを事前に知れたのは王族だけ。そして、ドメイは調査隊として大樹の森に侵入したっきり、死体もなく行方不明となった。
なぜ、ドメイだけ死体がないのだろうか? なぜ、彼は行方不明となったのか? それは、計画──エルフの国の襲撃作戦の要となる内通者を殺すことはできないからだ。
ドメイがわざわざあの時迎えに来たのも、いち早くエストたちがエルフの国に訪れるかどうかを知りたかったから。知って、それを味方に伝えたかったから。
「ああ⋯⋯ドメイは俺たちはを、いや、俺たちだけでなく国も売った売国奴、ってわけだ」
理由は分からない。どうして協力するのかなんて。だが、それでも裏切ったことには変わりない。
「⋯⋯今、なんて」
「──エスト」
偶然、マサカズとナオトの話を、彼女は聞いていた。その表情は平然としているが、一ヶ月程度とはいえ共に暮らしてきたから、分かる。それは表面上のものでしかなく、本当はショックを受けていることに。
「⋯⋯俺は」
「分かってる。キミの言っていることは正しい。⋯⋯はは。そう、奴は⋯⋯私を殺そうと⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯ああ、今は冷静にならないと⋯⋯」
現実はいつも非情だ。他人は思い通りには動かない。例え信頼している人でも、裏切らないと思っている人でも、裏切ることがある。
「⋯⋯私を、仲間を、国を捨てて、一体何を願うのか。それを聞いてから殺してやる」
◆◆◆
夜が来た。
睡眠が必要な者が全員一斉に寝るわけにもいかないため、ローテーションで周囲の警戒をしつつ仮眠を取っていく。
「これ、食事です」
「ありがとうございます、ミントさん」
食事として出されたのは、ブロック状のクッキーのようなものだ。小麦に砂糖や食塩、卵、大豆などを混ぜたものであり、手軽に栄養が取れるという点ではカロリーメイトにも似ていると、ユナは思った。
ただ、時間だけが過ぎていく。一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、三時間が過ぎ──そして朝を迎える。そんな一連の経過を七度行った頃だった。
そんな時になると、疲労はかなり溜まっていた。
「⋯⋯そろそろ、眠らないと不味いね⋯⋯」
「そう、ですね⋯⋯皆さん、一時間ほど仮眠を取らせてください」
魔女とは言え、一週間も眠らないまま活動をし続けると身体に支障をきたし始める。一ヶ月ほどなら起きていられるだろうが、動くことさえ厳しくなるほどに体力が削られるだろう。
「ああ、分かった」
エストとレネの二人は横になり、瞳を閉じると、五分も経たないうちに眠る。
食料はかなりあり、まだまだ籠城は可能だ。だが、精神的疲労が少しずつ、少しずつ溜まっていく。
「外がどうなっているか分からないから、迂闊に動けない⋯⋯が、これがあと一週間これが続くなら、俺は死亡覚悟で外に出て逃げ出す算段を立てないとな」
「⋯⋯そうですね。苦しい思いをするかもしれませんが、お願いします」
『死に戻り』の力で偵察する。何かあれば死ねばいい。そうすれば、情報だけを持って帰ってこられる。
死の不快感を味わうという欠点さえ除けば完璧の能力で、その欠点があるから活用し辛い能力だ。
「⋯⋯?」
そんな時だった。あるエルフが、眠っているエストとレネに近寄る。彼の目には光がなく、動きもギクシャクとしている。まるで、マリオネットのようだ。
「──〈一閃〉ッ!」
マサカズは突如、聖剣を鞘から抜き出して戦技を行使し、剣を縦方向に振ることで、エルフの腕を斬り飛ばす。
彼の腕は血を撒き散らしながら空中を何回か回転し、床に落ちる。同時にその手に持っていたナイフもカランと音を立てる。当然、その断面からは今も血が流れており、常人には耐え難き痛みが走っていることだろう。だが、
「⋯⋯」
エルフは、腕を斬られたはずの彼は、顔色一つ変えなかった。まるで痛みを感じていないようだった。
マサカズは彼の頭部を鞘で殴ることで、彼の意識を飛ばす。
「マサカズさん!? どうして──」
「今彼が何をしようとしたか、見てた奴は居るか?」
誰もマサカズの問に答えない。返ってきたのは無言で、それはつまり、誰も『見ていなかった』ということだ。
「⋯⋯彼は操られていた。エストとレネを殺そうとしたんだ。そこに、ナイフがあるだろ?」
魔女は化物レベルの身体能力を持つ。とんでもない生命力も持つ。しかし、だからといって不死なわけではない。首が切断されれば当然、即死するだろう。
「彼に治癒魔法をかけて、拘束してくれ」
◆◆◆
エストとレネの二人を殺そうとしたエルフは調査隊の生き残りの一員だった。今はもう正気になっているが、ある問題があった。
「魔法による支配じゃない?」
「はい。調べたところ、彼には支配魔法がかけられておらず⋯⋯」
エルフの国の近衛兵団団長はそう伝える。
つまるところ、彼は正気のまま二人を殺そうとした、ドメイと同じ裏切り者ではないか、と団長は言いたいのだろう。
「⋯⋯いや、『能力』の可能性がある」
「能力⋯⋯?」
「ああ。魔法でも、加護でもない、また別の力だ」
以前、エストは彼女の能力で他者を支配できる、と言っていた。そして、能力と魔法よりも強い力であるため、魔法で対象が支配されているかどうかは判断できない。
もし、相手が『能力持ち』なら、支配に似たことができてもおかしくない。
「能力を持っていて、俺達に敵対しそうな奴は誰だ?」
マサカズは自身の記憶に探るが、それらしき人物は居なかった。
「⋯⋯マサカズさん、私に心当たりがあります」
そんな時、レイが話しかけてくる。
「レイ? 何か知ってるのか?」
「はい。おそらく、敵は──『大罪の魔人』です」
「大罪の魔人⋯⋯っていうと、魔王配下のか?」
「はい。『能力』を持っているのはエスト様たちのような魔女や他の極一部の特別な存在を除けば、大罪の魔人くらいです」
敵が魔女でないとしたら、大罪の魔人の可能性が高い。勿論、その他の存在である可能性もあるが、テルムのような存在がそう何人も居るとは思えないし、『能力持ち』だからと言って強者であるとは限らないのだ。
「でも、だとしたらなんでエルフの国を? 魔王軍の目的はあくまでエストを殺すこと。わざわざエルフの国を壊滅させる必要はないはずだ」
「⋯⋯マサカズさんは先程、大罪の魔人は魔王配下の魔人だと言いましたが、それは合っていて、また、間違ってもいます」
「⋯⋯は?」
「正確には、大罪の魔人のうちの七体が魔王の配下であり、残り二体は違うんです」
「大罪って、七つだけだろ? なんで二つ余分にあるんだ?」
マサカズが知る大罪と言えば、傲慢、嫉妬、怠惰、憤怒、強欲、暴食、色欲の、所謂『七つの大罪』だ。
「一般的には大罪の魔人は七体と知られていますが、実際はもう二体居ます。その二体の名前は──虚飾と憂鬱、です」
「虚飾と憂鬱⋯⋯」
「はい。その二体は魔王の配下ではなく、自由に活動しています。魔人は他者から魔力や生命力を喰らうことができるので、エルフの国を壊滅させるという思考に至ってもおかしくないかと」
「なら、尚更破戒魔獣にエルフの国を襲わせない理由が分からないぞ?」
目的がエルフの魔力や生命力なら、さっさと壊滅させるべきだ。エルフたちを殺すと同時に魔力や生命力を吸い上げればいいのに、なぜそれをしないのか。
「いえ、単純です。魔人は自身の手で殺さなければ、相手の魔力や生命力を喰らうことが難しいからです。魔力や生命力は持ち主が死亡した直後にすぐ消滅するので」
「⋯⋯ああ、なるほどな」
レイは大罪の魔人に匹敵すると言われている。つまり、大罪の魔人はレイと同程度であるということだ。
彼の言葉に、マサカズは納得しかけるが、またおかしいところが見つかる。
「⋯⋯いや待て。そうだとしてもおかしくないか? こういうのもあれだが、レイと同程度の魔人がモートルのような破戒魔獣を使役できるとは思えないんだが」
「⋯⋯そうですね、たしかに私は大罪の魔人に匹敵すると言われてますが、正直に言うと、全然そんなことないんです」
大罪の魔人とその他の魔人には、決定的な差がある。それは『能力』を持っているか持っていないかだ。
この世界における『能力』は最も強い力だ。『能力』には第十階級の魔法だろうと、加護だろうと対抗することはできない。それこそマサカズの『死に戻り』でも、『能力』でそれを無力化される可能性はあるわけだ。まあ、試す気にはなれないが。
「私は魔法能力や身体能力だけならば、大罪の魔人に匹敵すると言っても嘘ではありません。勿論、例外も居ますが。でも、『能力』を持っているからこそ、大罪の魔人はあのような怪物を使役できるのでしょう」
「そういうことか⋯⋯」
エルフの国を破戒魔獣に襲わせない理由が、これで分かったが、新たな問題が出てきた。それは、破戒魔獣を復活させ、エルフを操れる能力の正体だ。
「片方が対象を復活させることができる能力、もう片方が対象を操ることができる能力、安直に考えればこうだが⋯⋯まだ虚飾と憂鬱の二体が協力しているとは限らないから、一つの能力で二つの権能を持っている可能性も⋯⋯?」
四百年前に討伐された破戒魔獣を復活、それも全てをだ。復活条件なんてないのだろう。対象を操る方も、同じレベルと考えて良い。だとしたら、『能力持ち』でないエストとレネ以外は全員操られる可能性があるわけだ。無条件で操れるなら、今頃全員仲良く死んでるはずだから、一応の条件もあるだろうが、簡単に達成できるものだろう。例えば、対象とは接触する必要があるだとか。
「そうだとしたら、チートだぜ。ふざけんなよ」
普通、異世界ものと言えばチート能力を手にしてハーレム生活を送ると言ったものだ。傍から見れば面白くもない物語だが、本人からすればまさに天国、理想そのものだろう。
そんな、本来主人公が持つべきだろうチートを、どういうわけか敵が持っている。それが、マサカズが転移してきた世界であり、この世界の主人公の特別な力は楽できない力だ。
「⋯⋯全く。作者は何で俺に楽できるチートを授けなかったんだろうな?」
「⋯⋯何言ってるんですか、さっきから」
「独り言だ。気にしなくていいぜ」
「⋯⋯あ、はい。そうですか」
敵の正体については目星がついた。しかもその能力まで。
だが、結果はマサカズたちを更に絶望させるものだった。
「──さてと、今度はどうやって勝つかな」
試行回数が一体いくつになるのかは分からない。しかし、確実に言えるのは0ではないということだ。
「⋯⋯チートでも何でもかかってこい。全部、俺が先回りして潰してやる」
王女の死亡から二時間後。エルフの国は混乱に見舞われていた。エルフたちは地下のシェルターなどに避難しており、地上、それも外に居るエルフは数少ない。
「キミたちはいざというときのためにここに居てもらうけど、戦闘には可能な限り参加しないで」
「それは⋯⋯どういう?」
王城にて。
国の近衛兵団団長とエストは会話していた。
「敵が強いからさ。キミたちじゃあ、足止めもできない。けど、何が起こるかも分からない⋯⋯例えば、ゾンビの軍団が来たり、もあり得るわけだ。そのときの雑魚処理を任せるってわけ」
「了解しました」
何が起こるか分からない。だが、それが碌でもないことは確実だろう。
それからいくらか時間が経過して、日が落ちる。その間もずっと周りを警戒していたが、何も起こらなかった。
「⋯⋯。ああ、クソッたれが。狙いはこれか」
「マサカズ? どうしたんだ、いきなり?」
常に緊張が張り詰めていた。食事も最低限度だけで、睡眠もそれほどしていない。
「疲弊させるのが相手の目的ってわけだ。現に、俺たちは今もこうやって警戒し続けなくちゃならないだろ?」
モートルを見せつけられれば、他の破戒魔獣も居るのではないかと思うのが道理だ。だが、それら全てをすぐに襲わせないことで、狙いが何なのかをボカす。『いつ、どこに居るのか分からない』と思わせることで、『下手に動けない』と考えさせる。そうすれば、必然的に、常に警戒心を抱かざるを得なくなる。
「まんまと相手の策に嵌ったわけだし、今更これに気づいたってもう遅い。オマケに転移魔法による逃亡も目の前で不可能だと見せつけられたんだ⋯⋯どこまで、計画済みだったんだ?」
あまりにも、手の込んだ計画だ。転移阻害の結界はまだ分かるにせよ、破戒魔獣を用意する意図が分からない。エルフたち程度なら、わざわざそんな回りくどいことをする必要はない。そんな力があるなら、単体でもエルフたち全員を相手にできるはずだ。
「まさか⋯⋯!」
「どうした?」
「考えてみろ、ナオト、このどう考えても必要以上だと分かる戦力を投入した理由を」
「⋯⋯っ! そんなことがあり得るのか⋯⋯?」
「ああ。そうとし考えられない。──知っていたんだ、エストたちが事前に来るのを」
「で、でも、招待が来たのは三日前だぞ?」
「そうだ。三日前だ。だが、それはあくまでドメイが屋敷に来た日だ」
エルフの国からウェレール王国までは丸一日かかる。そして、招待することに決定したのはもっと前だろう。少なくとも、招待することに決定したのは五日前。もっと前の可能性も勿論あり得る。
「事前に知れたということは、エルフの国には、敵との内通者が居るということ」
エストとレネという魔女を招待する。もし計画時期をずらせないとしたら、当然だが彼女らへの対策を行わなくてはならないことになる。そして、それを伝えられるのは、それを知っている者。
「その内通者は──ドメイ」
マサカズとナオトの声が重なる。
エストたちがエルフの国に来ることを事前に知れたのは王族だけ。そして、ドメイは調査隊として大樹の森に侵入したっきり、死体もなく行方不明となった。
なぜ、ドメイだけ死体がないのだろうか? なぜ、彼は行方不明となったのか? それは、計画──エルフの国の襲撃作戦の要となる内通者を殺すことはできないからだ。
ドメイがわざわざあの時迎えに来たのも、いち早くエストたちがエルフの国に訪れるかどうかを知りたかったから。知って、それを味方に伝えたかったから。
「ああ⋯⋯ドメイは俺たちはを、いや、俺たちだけでなく国も売った売国奴、ってわけだ」
理由は分からない。どうして協力するのかなんて。だが、それでも裏切ったことには変わりない。
「⋯⋯今、なんて」
「──エスト」
偶然、マサカズとナオトの話を、彼女は聞いていた。その表情は平然としているが、一ヶ月程度とはいえ共に暮らしてきたから、分かる。それは表面上のものでしかなく、本当はショックを受けていることに。
「⋯⋯俺は」
「分かってる。キミの言っていることは正しい。⋯⋯はは。そう、奴は⋯⋯私を殺そうと⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯ああ、今は冷静にならないと⋯⋯」
現実はいつも非情だ。他人は思い通りには動かない。例え信頼している人でも、裏切らないと思っている人でも、裏切ることがある。
「⋯⋯私を、仲間を、国を捨てて、一体何を願うのか。それを聞いてから殺してやる」
◆◆◆
夜が来た。
睡眠が必要な者が全員一斉に寝るわけにもいかないため、ローテーションで周囲の警戒をしつつ仮眠を取っていく。
「これ、食事です」
「ありがとうございます、ミントさん」
食事として出されたのは、ブロック状のクッキーのようなものだ。小麦に砂糖や食塩、卵、大豆などを混ぜたものであり、手軽に栄養が取れるという点ではカロリーメイトにも似ていると、ユナは思った。
ただ、時間だけが過ぎていく。一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、三時間が過ぎ──そして朝を迎える。そんな一連の経過を七度行った頃だった。
そんな時になると、疲労はかなり溜まっていた。
「⋯⋯そろそろ、眠らないと不味いね⋯⋯」
「そう、ですね⋯⋯皆さん、一時間ほど仮眠を取らせてください」
魔女とは言え、一週間も眠らないまま活動をし続けると身体に支障をきたし始める。一ヶ月ほどなら起きていられるだろうが、動くことさえ厳しくなるほどに体力が削られるだろう。
「ああ、分かった」
エストとレネの二人は横になり、瞳を閉じると、五分も経たないうちに眠る。
食料はかなりあり、まだまだ籠城は可能だ。だが、精神的疲労が少しずつ、少しずつ溜まっていく。
「外がどうなっているか分からないから、迂闊に動けない⋯⋯が、これがあと一週間これが続くなら、俺は死亡覚悟で外に出て逃げ出す算段を立てないとな」
「⋯⋯そうですね。苦しい思いをするかもしれませんが、お願いします」
『死に戻り』の力で偵察する。何かあれば死ねばいい。そうすれば、情報だけを持って帰ってこられる。
死の不快感を味わうという欠点さえ除けば完璧の能力で、その欠点があるから活用し辛い能力だ。
「⋯⋯?」
そんな時だった。あるエルフが、眠っているエストとレネに近寄る。彼の目には光がなく、動きもギクシャクとしている。まるで、マリオネットのようだ。
「──〈一閃〉ッ!」
マサカズは突如、聖剣を鞘から抜き出して戦技を行使し、剣を縦方向に振ることで、エルフの腕を斬り飛ばす。
彼の腕は血を撒き散らしながら空中を何回か回転し、床に落ちる。同時にその手に持っていたナイフもカランと音を立てる。当然、その断面からは今も血が流れており、常人には耐え難き痛みが走っていることだろう。だが、
「⋯⋯」
エルフは、腕を斬られたはずの彼は、顔色一つ変えなかった。まるで痛みを感じていないようだった。
マサカズは彼の頭部を鞘で殴ることで、彼の意識を飛ばす。
「マサカズさん!? どうして──」
「今彼が何をしようとしたか、見てた奴は居るか?」
誰もマサカズの問に答えない。返ってきたのは無言で、それはつまり、誰も『見ていなかった』ということだ。
「⋯⋯彼は操られていた。エストとレネを殺そうとしたんだ。そこに、ナイフがあるだろ?」
魔女は化物レベルの身体能力を持つ。とんでもない生命力も持つ。しかし、だからといって不死なわけではない。首が切断されれば当然、即死するだろう。
「彼に治癒魔法をかけて、拘束してくれ」
◆◆◆
エストとレネの二人を殺そうとしたエルフは調査隊の生き残りの一員だった。今はもう正気になっているが、ある問題があった。
「魔法による支配じゃない?」
「はい。調べたところ、彼には支配魔法がかけられておらず⋯⋯」
エルフの国の近衛兵団団長はそう伝える。
つまるところ、彼は正気のまま二人を殺そうとした、ドメイと同じ裏切り者ではないか、と団長は言いたいのだろう。
「⋯⋯いや、『能力』の可能性がある」
「能力⋯⋯?」
「ああ。魔法でも、加護でもない、また別の力だ」
以前、エストは彼女の能力で他者を支配できる、と言っていた。そして、能力と魔法よりも強い力であるため、魔法で対象が支配されているかどうかは判断できない。
もし、相手が『能力持ち』なら、支配に似たことができてもおかしくない。
「能力を持っていて、俺達に敵対しそうな奴は誰だ?」
マサカズは自身の記憶に探るが、それらしき人物は居なかった。
「⋯⋯マサカズさん、私に心当たりがあります」
そんな時、レイが話しかけてくる。
「レイ? 何か知ってるのか?」
「はい。おそらく、敵は──『大罪の魔人』です」
「大罪の魔人⋯⋯っていうと、魔王配下のか?」
「はい。『能力』を持っているのはエスト様たちのような魔女や他の極一部の特別な存在を除けば、大罪の魔人くらいです」
敵が魔女でないとしたら、大罪の魔人の可能性が高い。勿論、その他の存在である可能性もあるが、テルムのような存在がそう何人も居るとは思えないし、『能力持ち』だからと言って強者であるとは限らないのだ。
「でも、だとしたらなんでエルフの国を? 魔王軍の目的はあくまでエストを殺すこと。わざわざエルフの国を壊滅させる必要はないはずだ」
「⋯⋯マサカズさんは先程、大罪の魔人は魔王配下の魔人だと言いましたが、それは合っていて、また、間違ってもいます」
「⋯⋯は?」
「正確には、大罪の魔人のうちの七体が魔王の配下であり、残り二体は違うんです」
「大罪って、七つだけだろ? なんで二つ余分にあるんだ?」
マサカズが知る大罪と言えば、傲慢、嫉妬、怠惰、憤怒、強欲、暴食、色欲の、所謂『七つの大罪』だ。
「一般的には大罪の魔人は七体と知られていますが、実際はもう二体居ます。その二体の名前は──虚飾と憂鬱、です」
「虚飾と憂鬱⋯⋯」
「はい。その二体は魔王の配下ではなく、自由に活動しています。魔人は他者から魔力や生命力を喰らうことができるので、エルフの国を壊滅させるという思考に至ってもおかしくないかと」
「なら、尚更破戒魔獣にエルフの国を襲わせない理由が分からないぞ?」
目的がエルフの魔力や生命力なら、さっさと壊滅させるべきだ。エルフたちを殺すと同時に魔力や生命力を吸い上げればいいのに、なぜそれをしないのか。
「いえ、単純です。魔人は自身の手で殺さなければ、相手の魔力や生命力を喰らうことが難しいからです。魔力や生命力は持ち主が死亡した直後にすぐ消滅するので」
「⋯⋯ああ、なるほどな」
レイは大罪の魔人に匹敵すると言われている。つまり、大罪の魔人はレイと同程度であるということだ。
彼の言葉に、マサカズは納得しかけるが、またおかしいところが見つかる。
「⋯⋯いや待て。そうだとしてもおかしくないか? こういうのもあれだが、レイと同程度の魔人がモートルのような破戒魔獣を使役できるとは思えないんだが」
「⋯⋯そうですね、たしかに私は大罪の魔人に匹敵すると言われてますが、正直に言うと、全然そんなことないんです」
大罪の魔人とその他の魔人には、決定的な差がある。それは『能力』を持っているか持っていないかだ。
この世界における『能力』は最も強い力だ。『能力』には第十階級の魔法だろうと、加護だろうと対抗することはできない。それこそマサカズの『死に戻り』でも、『能力』でそれを無力化される可能性はあるわけだ。まあ、試す気にはなれないが。
「私は魔法能力や身体能力だけならば、大罪の魔人に匹敵すると言っても嘘ではありません。勿論、例外も居ますが。でも、『能力』を持っているからこそ、大罪の魔人はあのような怪物を使役できるのでしょう」
「そういうことか⋯⋯」
エルフの国を破戒魔獣に襲わせない理由が、これで分かったが、新たな問題が出てきた。それは、破戒魔獣を復活させ、エルフを操れる能力の正体だ。
「片方が対象を復活させることができる能力、もう片方が対象を操ることができる能力、安直に考えればこうだが⋯⋯まだ虚飾と憂鬱の二体が協力しているとは限らないから、一つの能力で二つの権能を持っている可能性も⋯⋯?」
四百年前に討伐された破戒魔獣を復活、それも全てをだ。復活条件なんてないのだろう。対象を操る方も、同じレベルと考えて良い。だとしたら、『能力持ち』でないエストとレネ以外は全員操られる可能性があるわけだ。無条件で操れるなら、今頃全員仲良く死んでるはずだから、一応の条件もあるだろうが、簡単に達成できるものだろう。例えば、対象とは接触する必要があるだとか。
「そうだとしたら、チートだぜ。ふざけんなよ」
普通、異世界ものと言えばチート能力を手にしてハーレム生活を送ると言ったものだ。傍から見れば面白くもない物語だが、本人からすればまさに天国、理想そのものだろう。
そんな、本来主人公が持つべきだろうチートを、どういうわけか敵が持っている。それが、マサカズが転移してきた世界であり、この世界の主人公の特別な力は楽できない力だ。
「⋯⋯全く。作者は何で俺に楽できるチートを授けなかったんだろうな?」
「⋯⋯何言ってるんですか、さっきから」
「独り言だ。気にしなくていいぜ」
「⋯⋯あ、はい。そうですか」
敵の正体については目星がついた。しかもその能力まで。
だが、結果はマサカズたちを更に絶望させるものだった。
「──さてと、今度はどうやって勝つかな」
試行回数が一体いくつになるのかは分からない。しかし、確実に言えるのは0ではないということだ。
「⋯⋯チートでも何でもかかってこい。全部、俺が先回りして潰してやる」
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2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】公女が死んだ、その後のこと
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【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
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「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
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