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23.真の父親

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「子どもの父親だと!?ははっ!!はははは!!ニケ!お前は散々私を見下した癖に、その聖女もお前の子どもでは無いでは無いか!!!ははははは!!!」

狂ったように笑い出すゴードン。


「良いだろう。通せ。」
ゴードンには目も暮れず陛下が言った。

おずおずと入ってきたのはまだあどけなさの残る青年だった。

その青年を見て真っ先に声を挙げたのはマーガレットだった。

「デ、デニスッ!?」

デニスと呼ばれた青年はマーガレットに見向きもせず、陛下や神殿長の方を向き頭を下げる。


「発言を許可する。」
そう陛下が言うと、デニスが話し始める。


「はい。恐れ入ります。私はオレイン商会のデニスでございます。私共の商会は、ウォール男爵家とお取引させて頂いておりました。その時に、男爵令嬢のマーガレット様に声をかけられ、関係を持ちました。ある日、子どもができたと言われ、戸惑ったものの責任を取ろうと決意しました。取引先である男爵家の令嬢と関係を持ったなど、許される事ではありません。しかし、私は自分の父親を説得し、マーガレット様を迎える準備をしてウォール男爵家へ向かいました。」


「マーガレット…!やはり、お前は私以外とも関係を持っていたのか!」

「少なくともアンタとは関係を持っていないわよ!」


「意を決して男爵家へ向かうと、もうマーガレットは侯爵家へ嫁いで子どももできた。二度と娘と会うなと追い出されてしまいました。私の子どもかもしれないと思いつつも、侯爵家様の元へ嫁いだのであれば平民である私に出る幕は無いと思い身を引きました。しかし、ニケ様から連絡を頂き、今回の騒動を知り差し出がましいとは思ったのですが、私の子どもが窮地に立っているかもしれないと思ったら…。来てしまいました…。」


(ニケ様はノエルの父親を探してくださっていたのですね…。)


「はははは!!しかしデニスとやら!残念だったな!そこの子どもはお前の子でも無いようだ!見てみろ!髪の色も目の色もお前とは全く異なる!とんだアバズレ女め!」


確かに、デニスの髪色はゴードンの髪の色よりも暗い髪色ではあるが、金髪だ。


ゴードンが悪態をつくが、デニスは気に留める事なく、乳母のメラニーに抱かれている子どもに目を向ける。

「顔をよく見ても良いでしょうか。」

メラニーがコクンと頷き、デニスの元へノエルを連れて行く。

ノエルはキョトンとした顔でデニスを見つめる。

「ノエル様と名付けました。」

「あぁ、間違いなく私の子どもです…!!」

「なんだと!?よく見てみろ!髪の色も目の色もお前とは違うだろう!!」

「いえ、私の母の家系は皆黒髪なのです。私の兄と姉も黒髪です。瞳の色もこの子よりも薄いですが、私の幼い頃はもっとグレーがかっていたようです。」


「えっ!?嘘っ!?仮面舞踏会の人の子どもではなかったの~!?」

マーガレットがそう言って、ハッと口を押さえる。

「仮面舞踏会はいつ参加したのですか?」

初めてデニスがマーガレットを見る。

「う…。えーっと…クリスマスの時だったかな…。」

「……。まだこの子は1つにもなっていないのでしょう?クリスマスの時の子ならば、お腹の中に11ヶ月もいる事になるのであり得ませんよ。」


「そ、そっかぁ…。」


「"貴族の令嬢の誘いを断ったらどうなるか分かる?父親に言って二度と出入りできないようにしてやる。"と言われ、その時経営難だったオレイン商会のために、無理矢理持った関係ではありましたが、私は子どもができたマーガレット様と向き合い子どもを育てていくつもりでした。しかし…。これは、あまりにも冷酷です。」

デニスがため息をつく。
そして真っ直ぐニケ様を見てデニスが言った。


「サンダーム侯爵…。そしてニケ様。私はこの一年、心のモヤを払うかのようにがむしゃらに商会の仕事に勤しんで参りました。その成果もあり、経営は持ち直し拡大もしております。この子に絶対に苦労させません。どうか、どうか私に引き取らせていただけませんでしょうか…!!」






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