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20.直接対決

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意を決して家に入る。
無用心にも鍵は開いていた。

耳をすますと、上から何やら男女の声がする。

(やっぱり…。罠にかかったわね。ここまで思い通りだと、逆に笑ってしまうわ…。)

呆れて思わずため息が出てしまう。


「な、なんだこの声は…。ま、ま、まさか…。ゲイト…??」

義父が青ざめた顔で言う。

息子のこんな声を聞きたくないだろう。ましてやそのような姿なんて尚更だ。

幸か不幸か、現場は夫婦の寝室である2階のようだ。

「お義母様とお義父様はゆっくりあがってきてください。私は不審者かもしれせんので先に見てきますわ。」

「私も行こう。」
リブライ様と共に二階へ上がる。


行為は今し方終わったようだ。2人の話し声が聞こえる。



「はいっ!こんな不倫関係ではなくって、奥様と別れて私と結婚してくださるんですよね!?」

ーそんなに別れて欲しいなら別れてあげるわよ。全ての責任を負ってもらった上でね。


「もうっ!ゲイト様言ってたじゃないですかぁ!奥様を追い出して私と結婚したいってー!!」


ーへぇ。お店のお金を使いこみして、仕事を全て押し付けて、その上不倫して私を追い出すなんてねぇ…。


ーーふふ、上等じゃないの。

私は無意識の内に笑みを浮かべ、ドアノブに手をかけた。


「まぁ。私を追い出す…?そのような事を言っていたのですか??それならば喜んでゲイト様を差し上げますよ??」

そう言った時、ゲイトは目を見開き驚き、ダリアは何が起きたか理解できておらず裸のまま固まっている。



「せ!!!セレーナ!!?どうしてここに!?帰るのは夕方になると言っていたんじゃないのか!?」



「あら、そんな事言っていましたっけ?ここは私の家でもあります。いつ帰ってきても良いと思いますが。それよりも、その醜い光景をどうにかしてくださらない??」

義両親が来る前に、義両親の為に服を着て欲しい。


「そ、そ、そのこれは!!ま、まさかセレーナお前!嵌めたやがったな!?許さないぞ!!」

今更気付いただなんて、笑いが止まりませんわ。

「ははっ!許さないだって…?面白い事を言うね??」

隣にいたリブライ様が姿を見せる。


「おまっいや、あ、貴方は伯爵家の…!セレーナ!やっぱり今日も2人で会っていたのだな!!それなら!お互い様じゃないか!!」

この後に及んでまだ悪態をつくなんて…。

そうこうしている間に、義両親が二階に到着してしまった。

「何が…!!お互い様だ…!!!ゲイト…!お前には心底失望した…!!皆で伯爵家へ商品をお渡しに行っていたのだ…!!帰ってきたらなんだこれは…!!」


「ち、父上…!母上も!?ちがっ!そのこれは違うんです…!!」


「それよりも早く服を着たらどうだ?」

リブライ様が落ちていた服をまるで汚い物を触るかのように持ち上げ、ベッドに投げ渡す。


服を着て、ソワソワする2人に義父が床に座るように促した。

 

「ゲイト様…。残念です。浮気はしないとお約束して頂きましたが…。こうなってはもう言い逃れできませんね。」


「セレーナ!!違うんだ!!俺は今日、ダリアと別れようと思っていたんだ!本当だ!!信じてくれ!!」

家に浮気女を連れ込んでおいて何を言うのか…。

「ちょっと!え!?私と結婚しようって言ったのは!?」

今まで放心状態だったダリアがふと我に帰り、ゲイトに詰め寄る。


「別れようと思って…。家族が留守なのを良い事に浮気女を家に連れ込み、このような行為をするのですか??私には到底理解できません。」


「違うんだ!この女に誘われて…唆されて…!俺は本当に別れようと思っていたんだ!信じてくれ!!信じてくれよセレーナァ…!悪かった…!俺が悪かった!許してくれ!2度としない!!」


この様子だと、きっと本当なのだろう。ゲイトは嘘をつく事ができない。
しかし、これも計算内だ。
ゲイトが浮気をしてから、私はそれまで以上に家族や商会に尽くした。家事にも精を出し、いくら飲み歩こうが、石鹸の香りをさせながら帰ろうがゲイトを責めなかった。むしろ、怒る義両親をなだめたくらいだ。
これ以上に無いほど良い妻だろう。
いくら馬鹿なゲイトでもそれだけはわかっていたのだろう。
ただ浮気相手の元に逃げられるのでは面白くない。私の事を愛させておいて、こちらから捨てるのだ。



「いいえ。ゲイト様は前回もそう言っていました。しかしすぐにまた約束を破りました。2度としないと言って、何度もしたのです。もう何を言っても何も信じられません。離縁しましょう。これは決定事項です。」


「嫌だ!嫌だセレーナ!悪かった…!!この通りだ!!俺はお前を愛しているんだ!!心を入れ替えてお前とローランド商会に尽くしていこうと決意したんだよ!!」

ゲイトが足元に縋り付いてくる。蹴飛ばしてやりたい気持ちをグッと堪えて、ゲイトを上から見下す。


「ちょっと!ゲイト様っ!!私を愛しているって!!」

「うるさい!お前なんて愛しているわけ無いだろう!!」


「痴話喧嘩なら他所でしてくださいませんか…?もう、私には関係ありませんので…。」

痴話喧嘩を始めた2人に、あの時にサインさせた3枚の紙を渡した。






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