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8.スベーディア伯爵の令息 リブライ
しおりを挟む初めの浮気発覚から5ヶ月が経とうとしていた。
相変わらず店の収益は合わないし、
ゲイトは毎日のようにどこかへ出歩いている。
ローランド商会はというと、私が手掛けた新商品が爆発的にヒットし大忙しだ。正直、ゲイトが盗んでいるであろうお金も店には大した痛手は無いし、ゲイトが触れる所に置いてあるお金は店にとったらほんの僅かで、殆どのお金はダイヤル付きの金庫に入っている。もちろんゲイトはその番号など知らない。
ある日、私と義父が新商品の改良について話している所に従業員が慌ただしく入ってきた。
「セ!セレーナ様!スベーディア伯爵の御令息である、リブライ様がいらっしゃいました!!」
「スベーディア伯爵の…!?わかりました!すぐに向かいます。」
「セレーナ、ゲイトはまたいないのか?まさかまた…」
「お義父様、それよりも今はリブライ様をお迎えしましょう!」
ゲイトは例の如く店にはいないので、お義父様と私でリブライ様をお迎えした。
「ようこそ、ローランド商会までご足労いただき光栄でございます。私、セレーナと申します。今日は如何様にございますか??」
「突然押しかけて申し訳ない。私はリブライ・スベーディア。今日は頼み事がありこちらに寄らせてもらいました。ローランド商会では、車椅子を取り扱っていますよね?聞いた話によると、こちらで開発された車椅子が素晴らしいとお聞きしたのですが…。開発されたのはご主人ですか?ご主人は出かけているのですか?」
(伯爵家の御令息なのに、なんて物腰柔らかで丁寧な方なんでしょう…。)
「我が商会の商品を褒めて頂き光栄です。主人は外出中ですが、開発したのは私なので大丈夫です。」
「貴女が開発者とは!発想が素晴らしいですね!」
「ありがとうございます。ご覧の通り、義父の足が不自由で車椅子を使用しています。従来の物は、自分で動かすのに力が必要でした。義父はいつも大変そうで…。少しでも軽い力で進む事ができればと考え開発しました。あと、長時間座る物なので、椅子の部分にも少し工夫して座り心地良くして…庶民でも手が届くよう安い木材を使用したり…。」
ついつい熱く語ってしまう。
「はっ、失礼しました。私ったら。」
「いえ、素晴らしい!!ここに来て良かった…。セレーナ殿。貴女を見込んでお願いしたい事があります。私の母が転んで怪我をしてしまい車椅子が必要になってしまったのですが…。母は小柄で力も無いので、今流通している車椅子は扱いにくいようなのです…。すっかり塞ぎ込んでしまって…。そんな母の為に合う車椅子を開発できないでしょうか…。」
(スベーディア伯爵夫人が乗られる⁉︎そんな大役できるかしら…。)
チラッとリブライ様を見る。
不慮の事故で足が不自由になってしまった母を本当に心配して、何か自分で出来ることは無いかとローランド商会まで来たのだろう…。心配そうに、まるで捨てられたワンコのような目で私を見るリブライ様…。
(放っておけない!)
「…わかりました!ローランド商会の名に掛けて!スベーディア伯爵夫人が喜ばれるような車椅子を開発してみせます!お義父様、良いですよね!?」
「あぁ、勿論だ!セレーナならそう言ってくれると思ったよ。従業員達も、名誉ある仕事を喜ぶだろう。」
「ありがとうございます!母も喜びます!では、また細かく打ち合わせをしましょう!また、来週来ます。」
(よーし!頑張るぞ!!)
私はスベーディア伯爵夫人の車椅子の案を書くため急いでペンと紙を用意するのだった。
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