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20.義母の過去1(義母視点)

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私はバラレンド侯爵夫人、ローズ。
私は今窮地に立たされている。


「奥様、使用人や領地の警護団へ払う給金が足りません」
「奥様、先月購入した高級ブティック店から催促の文が届いています」
「奥様、領民達がそんなに税を払えないと訴えています」


……どうしてなのっ!?

初めの1ヶ月くらいは税を引き上げた分や使用人が減った分、収入が増えた。

しかし料理をしたり洗濯する使用人がいない為毎日外食したり、ドレスも使い捨てをしていたらあっという間にお金は無くなってしまった。

しかも次の月には、身体を壊したやら税が高すぎて払えないやら騒ぐ領民が増え、税を引き上げたのにも関わらず収入が増えなかった。


それでもこんなにお金が無いのはおかしい…。
蓄えは元々それなりにあったはずだ。


もしかしてフレミアの奴、お金を持って逃げたのか…!?

「オディロン!フレミアが金を盗んでいないか調べなさい!!」

執事に叫ぶと、執事は

「フレミア様は1ダリーも持って行っていませんよ。奥様も見たでは無いですか、金庫にある紙幣の山を」


確かに、フレミアが出て行ってからすぐに持ち逃げされていないか金庫を確認した。


「では!!なぜこんなにも金が無いのだ!?」


「あれ?ご存知無かったのですか?ジュリー様ですよ。ジュリー様がアボン様に2500万ダリーを渡してしまったのです」


「にっ2500万ダリーッッ!?」


侯爵家の今ある全財産だ。
いつのまに……!?

「どっどっどういう事っっ!?いつそんな事を!!なぜオディロンはジュリーを止めなかったのだ!」


「奥様が了承していると思ったのですよ。確か1ヶ月程前だったと思います」


「もう良いわっっ!!ジュリーを呼びなさい!!」


「かしこまりました」

オディロンが礼をして出て行く。


……ここまで上手く行ってたのになぜこんな事になってしまったのだろうか……




ーーーーー約30年前




私は元々は今は無き貧乏男爵家の三女だった。

跡を継ぐ事も無ければ、今にも潰れかけの男爵家の三女を望む貴族はいなかった。


そんな私が生き残る為には、平民だが金持ちの商人の元へ嫁ぐか、貴族の屋敷へ奉公へ行くかのどちらかだった。


平民なんかに嫁ぎたくない。
高位貴族の家へ奉公へ行き、貴族との繋がりを広げそこで良い人と出逢おう。

産まれが良いと言うだけで苦労もしていない女達なんかに負けたく無い。


実家には使用人が少なかったので一通り家事はできたし、何かを暗記する事や読み書き計算も割と得意だったので、侯爵家の使用人として働く事が決まった。



"ここで何としてでも這い上がって見せる…!!"



そう決意して働き始めた。
侯爵は中々難しい人だったが、褒めたたえおだてて自分を卑下する様にしていたら気に入って貰え、ただの使用人から専属のメイドになった。

そして身体の関係も持つようになった。


(ふふ、侯爵夫人は目の前ね…手始めに息子を手玉に取っておこうかしら)


そう思い侯爵に坊っちゃまの教育係りになりたいとねだると、すんなりとなる事ができた。


10歳の少年を少しずつ少しずつ私色に染めるのは楽しかった。

「私だけが貴方の味方」
「貴方には私が必要」
「貴方は私がいないと何もできない」

毎日そう言って抱きしめていた。
父親である侯爵に暴言暴力を振るわれている傷付いた少年はすぐに私を心の拠り所としたものだ。


侯爵も、息子も私に夢中。
もうこの侯爵家は私のものだ。


そう思っていたが、ある女が来た事で全てが狂い始める。


坊ちゃまが結婚し屋敷に来た女だ。
前侯爵夫人は気が弱く、私と侯爵の関係に薄々気付きながら何も出来なかったが、この女は偉そうに何かと私と侯爵の関係を怪しんだ。


そんな中、私の妊娠が分かった。
勿論、侯爵との子どもだ。
坊っちゃまとは身体の関係は無かった。


私が侯爵家へ来てから侯爵と関係を持ち始めて約15年…。
今まで子どもは1度もできた事が無かったがまさか今妊娠するなんて…!!


しかしこれで侯爵夫人を追い出し、私が侯爵夫人…!?
そうなればついでに憎たらしい坊ちゃまの嫁も追い出してやるわ!!


ふふっ!侯爵もきっと大喜びされるわっ!!


そう思い嬉々として侯爵に妊娠を報告しに行くと、想像と違った答えが返ってきたのだった。






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