上 下
13 / 36

13.皆との別れ?

しおりを挟む


「さぁ!フレミア様!完璧ですわ!そろそろラウル様のお迎えも来る時間です。行きましょう」


そう言って、数名の侍女が私の荷物を持ちロビーへ向かう。

(あら…こんなに荷物って多かったかしら…)



ロビーへ行くと、義母と父と妹と使用人が集まっていた。

さすがに、伯爵家の迎えが来た時に誰も見送りがいないと体裁が悪いと分かっているのだろう。


「フレミア、その、なんかすまないな、身体には気をつけて…」

父は気まずいのか私の目を見ずに挨拶をする。

「はい、お父様こそ…」


「あぁやっとね!この日が待ち遠しかったわ!もう戻って来ないように」

義母はやけに上機嫌だ。
着ている物もいつもより華やかで、アクセサリーもとても良い物をつけている。

それを見て嫌な予感がする。

「お義母様…その宝石達はどうしたのでしょうか…」


「侯爵家を出て行く貴女には関係無いでしょう?っと…まあ、教えてあげても良いかしら…ねぇ、ジュリー?」


見ると、ジュリーも派手な装いをしている。

「アボン様が送ってくださったのよ!羨ましいでしょう?お姉様はこんな素敵な宝石なんて貰えないでしょうけど!!それと、私も帳簿を見たけれど、お姉様ったら経営がお下手だわ!もっと搾り取れる所はいっぱいありましてよ」


2人の言葉に思わず目眩がする。
ワルヤーク伯爵家は経営難だと聞いているのに、このような宝石を婚約者でもなんでも無い女性に簡単に送れるとは思わない。
それに……お金はどこから搾り取ったというのだろうか……。


その時、外から馬車の音が聞こえてきた。


「フレミア様、お迎えですわ」


いよいよ、ここを出る時が来た。
使用人の皆に別れを言わなければ…



ん?



別れを………??




言おうと思ったら、皆の立ち位置がおかしい。

見送りされる立場なら向かい合っているはずだが、皆私の隣に並んでいる。


私と向かい合って立っているのは、義母、父、妹とここ5年以内に義母が雇った数人の使用人と執事オディロンだけ。


その他大勢の使用人はこちら側に立っている。


私が困惑していると隣に立つリアーナが義母達に、深々と頭を下げた。

そして、

「それでは侯爵様、お世話になりました!私達は今日限りで退職させて頂きます」


そう挨拶をして、ゾロゾロと荷物を抱えて出て行こうとする。



「ま!待ちなさい貴女達!!!」


「何か」

リアーナが氷ほど冷たい目で義母を見る。


「勝手に辞めるなんて許しませんからね!!し、しかもこんな大人数でっっ」


興奮する義母とは反対にリアーナや使用人達はとても冷静だ。


「侯爵夫人。貴女が私達に辞めろと言ってきたのですよ?"給料が高すぎる!半分で良い!"とおっしゃって、私達がそれは酷いと訴えたら、"文句がある奴は辞めろ"とね」


(なんて事……!!
先程搾り取ったと言ったお金の出所の1つは使用人の給金だったなんて…)


「そっそれは…」

「元々は貴女も私達と一緒に働いていた使用人…。給金が半分になれば生活して行く事ができない者がいる事は知っているでしょう」


「しかし!それだけ大人数に辞められたら私達はどうすれば良いのよ!!」


「知らないわ。私達、文句があるので辞めます!では、ごきげんよう。」


オディロンは笑顔で辞めて行く使用人に手を振っている。


(オ、オディロン!?貴方は大丈夫なの!?)

「ま、まあ良いわ!!貴女達のような役立たずこちらからクビにしてやるわ!優秀なオディロンがいればこっちのものよ!ねえ、お母様!?」

「そ、そうね!!そうよね!貴女達出ていきたいなら出ていきなさい!!」

妹と義母がキャンキャン吠えている。


「そうですか、お望み通り出ていくわ。さぁフレミア様。伯爵家様がお待ちですよ」

そう言ってリアーナが私の荷物を持ち、私だけに聞こえる声で囁く。


「オディロンは大丈夫です。何も心配はいりません」


「えっ…でも…」


「しっ!」

心配になりオディロンを見るが、オディロンは変わらずニコニコと笑みを浮かべている。


心配ではあるものの、伯爵家の遣いを待たせる訳にはいかない…そう思い出発するのだった。


「えっ!?何ですの!?」



そして外に出てみると、驚きの光景が広がっていた。


しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。

冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。 本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。 ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。 隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。 「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」 どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?

わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。

しあ
恋愛
私の婚約者がパーティーで別の女性をパートナーに連れてきて、突然婚約破棄を宣言をし始めた。 わざわざここで始めなくてもいいものを…ですが、私も色々と用意してましたので、少しお話をして、私と魔道具研究所で共同開発を行った映像記録魔道具を見ていただくことにしました。 あら?映像をご覧になってから顔色が悪いですが、大丈夫でしょうか? もし大丈夫ではなくても止める気はありませんけどね?

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

双子の妹は私から全てを奪う予定でいたらしい

佐倉ミズキ
恋愛
双子の妹リリアナは小さい頃から私のものを奪っていった。 お人形に靴、ドレスにアクセサリー、そして婚約者の侯爵家のエリオットまで…。 しかし、私がやっと結婚を決めたとき、リリアナは激怒した。 「どういうことなのこれは!」 そう、私の新しい婚約者は……。

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。 真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

処理中です...