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2.バラレンド侯爵家

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「フレミアお姉様が代わりにラウル様の婚約者になれば良いのよ!」


妹が閃いたように私に向かって目を輝かせて言った。


世間知らずな妹だと言うことは知っていたが、まさかここまでとは…。
妹の言葉に驚きを隠せなかった。


「な、何を言っているの…?ラウル様は貴女の婚約者でしょう?そんなに簡単な事では無いの。ラウル様も納得されないわ。それに私はこの侯爵家の長女で婿をとらねばならないのよ。ラウル様の元へは嫁ぐ事はできないわ。」



犬や猫でもあるまいし、妹がダメなら姉をどうぞなんて、さすがに妹に甘い両親も許すわけが無い。


そう思ったが、……甘かった。



「まあ!ジュリー!貴女はなんて賢いのでしょう!それが良いわ!可愛いジュリーをあんな醜い悪魔の元へ行かせる事なんてできないもの!フレミアが行けば慰謝料も払わなくて良いし、世間の目も気にする事は無いわ!その上、ジュリーが婿を貰ってこの侯爵家を継いでくれたら最高よ!」


義母が妹の手を取り喜び合う。


父の方をチラリと見やると目が合ったがすぐに逸らされ、ゴホンと咳払いして言った。


「そ、そうだな…。お前とジュリーがそう…言うなら……。」

チラリチラリと私の顔色を伺う父。


……呆れた……。
元々父は気の弱い人だったが、私の実の母、つまり前妻が献身的に支えてこの侯爵家は成り立ってきた。


しかし、5年前に母が病に倒れ亡くなった。数日後に、愛人であった今の義母と妹を家に連れてきたのだった。



義母は元々父の家庭教師兼使用人であり10も年上だった。
父との関係が発覚してすぐに侯爵家を追い出されたが、その際に妊娠していたようだった。


年上で元家庭教師の義母に、父は頭が上がらないのだろう。


父も義母も妹も侯爵家としての公務を碌にしてきていない。


母が亡くなった5年前から、私が優秀な執事や数名の使用人と力を合わせて何とか今日まで侯爵家を存続させてきた。




しかし、その事にすらこの人達は気付いていないのだろう。




母が守ろうとしたこの侯爵家を見捨てる事に罪悪感はあったものの、私の手に負えない事を感じた私はこう答えるのだった。





「………分かりました。アイロワニー伯爵家のラウル様の元へ嫁ぎます。もちろん、伯爵やラウル様が了承をしてくださればの話ですが…」




少しため息をついてそう言うと、妹と義母は喜び、父は心から安堵した表情をした。




(お母様……。ごめんなさい……)



心の中で亡くなった母に謝るのだった。





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