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閑話3.隣国の王子目線2
しおりを挟む今日は、エルセ嬢に招かれてサハラーシャ侯爵家でお茶を楽しんでいる。
エルセ嬢は博識でどの話も興味深いし、こちらの話を聞くのも上手い。
人見知りで内気だった妹が、エルセ嬢とは心の底から楽しそうに話している。
妹のこんな笑顔を見たのは本当に久しぶりだ。
「エルセ様…!この茶葉はどちらのものですか…?私…こんなに美味しいお茶を頂くのは初めてですわ…!」
「お口にお合いして良かったですわ。これは、この地域の特産でして…わずかな期間しか栽培できない貴重なものにございます。」
「まぁ!そんな貴重なものをありがとうございます!エルセ様がつけているネックレスとイヤリングもとても可愛らしいですわね…!」
「まぁ、さすがスウィーティア様ですわ!我が侯爵家で手掛けております、ピンクパールですの!実は…これをご覧ください。」
そう言ってエルセ嬢が箱を取り出し、蓋を開けた。
「まぁっ!なんて素敵なネックレスとイヤリング…!!可愛らしいですねっ!!」
「スウィーティア様をイメージして作ってみましたの。このような物で先日の事を許して貰おうだなんて虫の良い事を思っている訳ではありませんが…、せめてもの気持ちです。どうか受け取ってください。」
「まぁ、エルセ様が私をイメージして…?私、本当に嬉しいです…!ありがとうございますエルセ様…。
そして、私先日の事は全く気にしていませんわ。それよりも、エルセ様とお友達になれた事の方がとっても嬉しいのです。ね、お兄様?」
急に話を振られて、狼狽てしまう。
「あ?あぁ!そうだな!」
「ふふっ!お兄様ったら焦ってしまって…。お兄様はエルセ様の前ではこうですけど、国ではいつも怖い顔をして誰も寄せ付けないのですよ。」
「まぁ、そうなのですね。オグラント国では我が国や周りの国と同盟を組む事に反対している貴族もいるとお聞きしました。きっと、隙を見せぬようにしていらっしゃるのですね。こんなに国想いで妹想いな優しくて強いお兄様を持って羨ましいですわ。」
オグラント国の事もよく分かっている…。
そうなのだ。オグラント国は元々、血気盛んな者が多く少しの隙や油断が命取りになる。
だから私の妻となる者は、私の後を三歩下がって歩くような女性ではなく、私と肩を並べて国を引っ張って行くような女性でなくてはならない。
エルセ嬢のような…。
サハラーシャ侯爵家を後にする。
馬車の中でスウィーティアが話し始める。
「ねぇ、お兄様。私オグラント国へ帰ってエルセ様に会えなくなるのは寂しいですわ…。エルセ様、美しく聡明な方ですわね?」
「そうだな。」
「私、エルセ様がお義姉様なら良いのに…。ねぇ、お兄様もそう思わないですか??」
「そうだな…。」
しかし、あのような男でも、一応王族だ。
無理やりエルセをオグラント国へ連れ帰れば大きな問題になるだろう。
「何か良い方法は無いだろうか…。」
そう考えるものの、良い方法は分からずもどかしい気持ちのまま母国へ戻ったが、一通の手紙によりチャンスが訪れるのだった。
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