上 下
16 / 17

閑話3.隣国の王子目線2

しおりを挟む

今日は、エルセ嬢に招かれてサハラーシャ侯爵家でお茶を楽しんでいる。

エルセ嬢は博識でどの話も興味深いし、こちらの話を聞くのも上手い。

人見知りで内気だった妹が、エルセ嬢とは心の底から楽しそうに話している。
妹のこんな笑顔を見たのは本当に久しぶりだ。


「エルセ様…!この茶葉はどちらのものですか…?私…こんなに美味しいお茶を頂くのは初めてですわ…!」

「お口にお合いして良かったですわ。これは、この地域の特産でして…わずかな期間しか栽培できない貴重なものにございます。」

「まぁ!そんな貴重なものをありがとうございます!エルセ様がつけているネックレスとイヤリングもとても可愛らしいですわね…!」


「まぁ、さすがスウィーティア様ですわ!我が侯爵家で手掛けております、ピンクパールですの!実は…これをご覧ください。」


そう言ってエルセ嬢が箱を取り出し、蓋を開けた。


「まぁっ!なんて素敵なネックレスとイヤリング…!!可愛らしいですねっ!!」

「スウィーティア様をイメージして作ってみましたの。このような物で先日の事を許して貰おうだなんて虫の良い事を思っている訳ではありませんが…、せめてもの気持ちです。どうか受け取ってください。」


「まぁ、エルセ様が私をイメージして…?私、本当に嬉しいです…!ありがとうございますエルセ様…。
 そして、私先日の事は全く気にしていませんわ。それよりも、エルセ様とお友達になれた事の方がとっても嬉しいのです。ね、お兄様?」


急に話を振られて、狼狽うろたえてしまう。

「あ?あぁ!そうだな!」

「ふふっ!お兄様ったら焦ってしまって…。お兄様はエルセ様の前ではこうですけど、国ではいつも怖い顔をして誰も寄せ付けないのですよ。」


「まぁ、そうなのですね。オグラント国では我が国や周りの国と同盟を組む事に反対している貴族もいるとお聞きしました。きっと、隙を見せぬようにしていらっしゃるのですね。こんなに国想いで妹想いな優しくて強いお兄様を持って羨ましいですわ。」


オグラント国の事もよく分かっている…。
そうなのだ。オグラント国は元々、血気盛んな者が多く少しの隙や油断が命取りになる。
だから私の妻となる者は、私の後を三歩下がって歩くような女性ではなく、私と肩を並べて国を引っ張って行くような女性でなくてはならない。

エルセ嬢のような…。



サハラーシャ侯爵家を後にする。

馬車の中でスウィーティアが話し始める。

「ねぇ、お兄様。私オグラント国へ帰ってエルセ様に会えなくなるのは寂しいですわ…。エルセ様、美しく聡明な方ですわね?」


「そうだな。」


「私、エルセ様がお義姉様なら良いのに…。ねぇ、お兄様もそう思わないですか??」


「そうだな…。」

しかし、あのような男グリアンドでも、一応王族だ。
無理やりエルセをオグラント国へ連れ帰れば大きな問題になるだろう。

「何か良い方法は無いだろうか…。」


そう考えるものの、良い方法は分からずもどかしい気持ちのまま母国へ戻ったが、一通の手紙によりチャンスが訪れるのだった。






しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました

チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」 私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

姉と婚約していた王太子が婚約破棄して私を王妃にすると叫んでいますが、私は姉が大好きなシスコンです

みやび
恋愛
そもそも誠意もデリカシーのない顔だけの奴はお断りですわ

とっても短い婚約破棄

桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。 「そもそも婚約ってなんのこと?」 ***タイトル通りとても短いです。 ※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。

まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。 私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。 お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。 けれど、彼に言われましたの。 「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」 そうですか。男に二言はありませんね? 読んでいただけたら嬉しいです。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

王子、婚約破棄してくださいね《完結》

アーエル
恋愛
望まぬ王子との婚約 色々と我慢してきたけどもはや限界です 「……何が理由だ。私が直せることなら」 まだやり直せると思っているのだろうか? 「王子。…………もう何もかも手遅れです」 7話完結 他社でも同時公開します

処理中です...