32 / 34
32.侯爵家のお茶会にて(ミレイユ視点)
しおりを挟む「あなたには一生かけて償って頂きますわ。そして少しでも反省の色が見えないような事があれば、すぐ様この侯爵家から貴方を追い出しクロードに跡を継がせますわね!」
侯爵夫人の声は穏やかで笑顔だが、目が笑っていない……。
「母上…。流石に当主である父上を追い出す事は不可能なのでは…。」
リュカ様がそう言うと、
「あら?可能ですわ。リュカも知っているでしょう?爵位が継承できるのは、爵位保持者が亡くなるか、失踪して見つからなかった時です。もし侯爵であるアナタが偶然失踪して見つからなかったらクロードが跡を継ぐしかありませんね。」
そう侯爵夫人が返すと、更に侯爵は青褪める。
「ふふ、冗談ですわ…。反省が見えなければの話ですから。ね、あなた?」
「………はい…。」
その場にいた全員が、
(絶対冗談じゃない…。この人にだけは逆らってはいけない…。)
そう思ったに違いなかった…。
「で…では私はハーブス伯爵家に送る書面を書いてこよう……。」
そそくさと侯爵が部屋から出て行った。
「ミレイユ、クロード、ごめんなさいね。あの人があのようになってしまったのは私の責任でもあるの。」
「どういう事ですか?」
「私達が学園に通っていた時、私は成績が常に首位だった。しかしそれをよく思わない公爵令嬢がいたの。取り巻きと一緒に覚えの無い罪をなすりつけて来て…。当時生徒の中ではその公爵令嬢が1番高位だった事もあり他の生徒は誰も庇ってくれなかったわ。でもあの人だけは私を信じて庇ってくれた。」
「父上らしいですね。」
「私は嬉しくて、"貴方が私を信じてくださり嬉しかった。その人を信じる強さが誰よりも素敵"とか何とか言ってしまったの…。それからどんどんレベルアップしてあのようになってしまったの…。」
「父上は母上の事を誰よりも愛していますからね…。」
「ふふ、どうかしら。さあ、あとは若い者で楽しみなさいな。久しぶりで積もる話もあるでしょうから。」
そう言って侯爵夫人が部屋から退出し、お茶を入れ直してもらい美味しいお茶菓子を頂き4人久しぶりの再会で積もる話に花を咲かせるのだった。
クロード様が、ふと思い出したように話始める。
「そういえば…。リリアンのその後は知っているかな…?」
「知りません。クロード様とリュカ様はご存知なのですか?」
父も私に気を遣ってなのか、それとも気にも留めていないのか誰も私に教えてくれなかった。
「私も知りませんわ。」
エミール様も同じようだ。
「母親と2人で城下町に罪状の書かれた札の前で1週間見せしめとして立たされ、ダーソン子爵家の爵位は返上となり財産は没収。そこから迷惑をかけた家への慰謝料は支払われたそうだ。」
「そうだったのですね…。」
子爵家は無くなり、財産も没収され元子爵夫人やリリアンだけではどうやってこの先生きていくのか…。
自業自得とはいえ、この先2人が幸せになる事は難しいだろう。
「そして…。リリアンは企み自体は恐ろしいものではあったものの、被害がそれ程大きくならなかった事もあり死刑は免れ国外追放となったようだ。その後は私達も知らない…。まあ、きっともう会う事は二度と無いだろう。」
「そうなのですね…。」
正直に言うと、勿論人を傷付ける事は良くないが、リリアンの行動力や人の懐へ入る巧みさは嫌いでは無かった。
しかも私もクロード様と出逢い人を愛する事を知った。
リリアンも初めは純粋にクロード様が好きで仕方なかったのだろう…。しかし、クロード様が私の事を慕ってくださっていた事を知り…リリアンはおかしくなってしまった。
私だってもしクロード様が他の令嬢の元へ行ってしまったら私もおかしくなってしまうかもしれない…。
それは、なってみないと分からない。
「ミレイユ嬢。」
名前を呼ばれハッとする。
「言わない方が良かったかな…?」
「いいえ。色々ありましたが、リリアン様には他国で自分の幸せを見つけて頑張って欲しいと思ったのです。」
「ミレイユ嬢は…強い女性だ。私もリリアンには感謝をしている部分があるんだ。ミレイユ嬢とこうして共にいる事ができるのだから…。」
私の髪を少しすくいあげ、髪の毛に優しくキスをするクロード様に頬を赤らめずにはいられない。
「兄様~。私たちの事忘れていませんか~?」
リュカ様がそう言って皆で笑い合うのだった。
次回リリアン視点予定です。
少し、閲覧注意かもしれません。
63
お気に入りに追加
4,662
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?
新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。
私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果
柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。
姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。
ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。
婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。
甘やかされすぎた妹には興味ないそうです
もるだ
恋愛
義理の妹スザンネは甘やかされて育ったせいで自分の思い通りにするためなら手段を選ばない。スザンネの婚約者を招いた食事会で、アーリアが大事にしている形見のネックレスをつけているスザンネを見つけた。我慢ならなくて問い詰めるもスザンネは知らない振りをするだけ。だが、婚約者は何か知っているようで──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる