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24.卒業式5(クロード視点)

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会場の入り口に向かい合図を送る。


「リリアンよ。この者たちに見覚えは無いか?」

5人の男たちが甲冑姿の騎士達に拘束されながら会場に入る。


「な!!なんで!!確かに始末をさせたはずなのにっっ!!なんでっっ!!」


そう言って、ハッと口を押さえるリリアン。

この世には存在するはずが無い人物がここにいる事に驚きを隠せないのだろう。

「そしてリリアン。この顔にも見覚えがあるはずだ。」

合図と共に甲冑を取る5人。


「!!!ごろつきの始末を依頼した……!!」


再びハッと口を押さえるリリアン。


「ダーソン子爵が私とリリアンの婚約を願い出た時から怪しいと思い、リリアンを見張らせていたのだ。城下町の路地裏で何かを探している様子を見たと聞いてピンと来たのだ。足がつくのを恐れたリリアンが、父を襲った者たちを始末できそうな人物を探していると。」

リリアンはその日、目ぼしい人物は見つからなかったようで帰っていったのだった。


「くっ……。」


「そしてまたリリアンが城下町へ繰り出しそうな日に侯爵家の衛兵達にごろつきのフリをさせ罠を仕掛けたのだ。見事引っかかってくれて助かった。」


父を襲った者たちを始末させる為には、それなりに手練れを選ばなければいけなかっただろう。

もし失敗してしまえば、逆上した父を襲った者たちが罰を与えられる覚悟で侯爵家に密告してしまうかもしれない。
それはリリアンも分かっていたようだ。


侯爵家の衛兵達は鍛錬を積んだ者達だ。
そこら辺のごろつき達とはオーラが違ったのだろう。


衛兵達に襲った者達を捕らえさせた。彼らを尋問するとすぐにリリアンの存在を話した。しかし、どこの誰かは知らなかったようだ。

ここで証拠として突き出しても良いが、襲った者達の戯言と言われたらこの者たちを処分して終わりだった。


「しかしっ!!その者達はきっと罪から逃れる為に嘘をついてるかもしれません!!そして、その指示をした者は私だと言う証拠もありません!!」


ここにきてまだシラを切るのか…。

「証拠…?」

気付いていないのか…。

「ええ!証拠です!!」

証拠が無いと思い少し安堵しているようだ。


「証拠ならあるさ。先程リリアン自身が言ったでは無いか。"ごろつきを始末させた、確かに始末させたのに"と。」


「そ、そんな事言いましたか…?聞き間違いですわ…。」


「聞き間違い…?少なくともこの会場の皆様は聞いたと思うが…。」

周りを見渡すと、皆が深くうなずいている。

「私もこの耳で聞いたぞ。」

学園長までもが証人だ。


「そ、そんな、でも…それだけでは…。」

リリアンが青褪め震えている。何が何でも認めないようだ。

しかし、万が一自白しない事も考えて手は打っておいた。


「一連の出来事がリリアンの謀略であった事の証人がもう1人いる。」


「えっ!?」


「ダーソン子爵だ。ここにダーソン子爵直筆の文面がある。血判付きだ。」


「アイツっいえ、お父様が!?」

リリアンがあたりを見渡しダーソン子爵を探す。

しかしそこにはダーソン子爵はいない。


「ダーソン子爵は全てを話してくれた。リリアンの陰謀、断ったが弱みを握られていて娘に逆らえなかった事、子爵家ではいつも虐げられていること。泣きながら謝罪があった。」


「そ、そんなっ!!」

下唇を噛み締め悔しがるリリアン。

「悪いのはリリアンだけです!!私は止めました!!しかし、父親と結束してこんな恐ろしい事件を起こしてしまったのです!!そもそもアイツっいやダーソン子爵はどこに行ったのです!!」


護衛騎士がダーソン子爵夫人を捕らえると罪を娘になすりつけ暴れる子爵夫人。


「お、お母様!!」


「ダーソン子爵はもうこの国にはいない。1日に少量の食べ物しか与えられず、使用人や妻や娘には虐げられ、身体は痩せ細り更に傷だらけであった。娘を止められず陰謀に乗ってしまったことは勿論重罪に当たる。しかし、今までの生活が罰を受ける以上の屈辱であったと考え、本人の希望もあり国外追放で手を打った。」

背中には無数の鞭の跡、肋骨は浮き出る程痩せ細っていた。
充分罰を受けたようなものだろう。


「そ、父を虐げていたのはお母様でっ!そうよ!!実は今回の事もお母様が言い出した事なのよ!!侯爵家に私を嫁がせたいって言って!!だからしょうがなく私…。」

「何言ってるのよ!アンタでしょ!どうしてもクロード様と結婚したい!って言って!」

醜い2人の言い合いが始まった。


「静まれっっ!!」

学園長の一声に2人が黙った。




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