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第二章

その8

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 村では毎日やることがたくさんあり、忙しく仕事に明け暮れていました。そうした生活を続けるうちに、仕事にも慣れて来て、心や肉体に余裕が出て来ると、周りの景色などをしみじみと眺めることもしました。そうすると、空は一日として同じ日はなく、草花は日ごとに移ろい、動物や虫たちまでもが自分たちの命の営みに懸命で、世界は驚嘆すべき光景に満ちていることがわかりました。ミシオン王子はそうした事柄に触れるたびに、心に大変な感動を覚えました。
 そんな風に村での暮らしを楽しみながら毎日を過ごすうちに、すっかり村での生活にもなじみ、王子はひとりの健康的な逞しい青年になっていました。村の青年たちとの遊びの中でも、王子が彼らに勝ることもしばしば出て来るようになっていました。
 村人たちも、今ではもうミシオン王子を村の若者のひとりとみなして、親しく接するようになっていました。王子もそういう風に扱われることを好み、収穫を祝う秋の祭りでは皆と一緒に歌ったり、踊ったりして楽しみました。

 ヴォロンテーヌとも、手をつないで踊りました。もともとの美しさに加え、今や逞しさを得たミシオン王子と、輝くばかりに美しく聡明なヴォロンテーヌは、誰の目にもお似合いの男女に映りましたが、王子はヴォロンテーヌに想いを伝えられずにいました。それと言うのも、ヴォロンテーヌはリーデルと、とても親しくしていたからです。
 ヴォロンテーヌが親しみを込めた瞳でリーデルに笑いかけたり、リーデルが野で見つけた花を摘んで、ヴォロンテーヌの豊かな髪に挿してやったりしているのなどを見ると、王子の心臓は悲しみのために、鼓動を打つことを止めるのではないかと思うほどでした。
 ヴォロンテーヌへの愛と、リーデルへの友情の間で王子は苦しみました。それは今まで避けてきた痛みの中でも、最も辛く過酷なものに感じました。ミシオン王子は、毎日それを真正面から受け止めなければなりませんでした。
 美しい季節が過ぎ、厳しい冬を迎えるために、ミシオン王子は村の男たちと共に家畜を選別し、その命の恵みにあずかるという経験もしました。ミシオン王子にとって、宮殿で当たり前のように食べていた物は、どれもみな尊い命であることをまざまざと実感し、王子の心に深い感謝と感慨を覚えさせました。そうしてヴォロンテーヌがあの牧草地で言ったことが、しみじみとミシオン王子の胸に迫るにつけても、心は愛の苦しみで圧し潰されそうになるのでした。
 冬は外での仕事も少なく、ルーメンの小さな小屋の中に、ルーメンとヴォロンテーヌと三人でいることが増えると、王子の切なさは小屋の外を埋め尽くす雪のごとく降り積もりましたが、一方で三人で手仕事などをしながら会話をすることは、冬の厳しさの中の大切な楽しみとなり、またミシオン王子の心を高めてくれる得難い時間ともなりました。そして長い冬の間じゅう苦しんだ挙げ句に、王子は自分の愛する人たちが幸福であることこそが、自分の何よりの幸せだという結論を出しました。
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