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第三章
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ネコが母屋に帰ってしまってからも、ヒツジの頭のなかは、ネコが言ったことでいっぱいでした。もしもこの体に重くのしかかっている毛を、ネコのためにとくべつなシーツに仕立てることができれば、ネコは死んでしまわずに、ずっとヒツジの目の前にいてくれるのです。どうにかして毛を刈って、シーツに仕立てられないかと、ヒツジは懸命に考えをめぐらせました。
そのとき、母屋の方から犬が一瞬鋭く吠える声が聞こえ、ヒツジは急に、ネコが以前、街にはなんでもあると言っていたことを思い出しました。思い出すと同時に、ヒツジのなかに、ある考えがひらめきました。街に行って、おじいさんがしてくれたように、毛を刈ってくれる人を見つければいいのだと思いついたのです。そうして、刈った毛を少し分けてもらい、今度はそれをシーツに仕立ててくれる人を探せばよいのです。簡単なことです。それはいい考えに思えました。
そこでヒツジはもぞもぞと体を動かし、毛むくじゃらの仲間たちでいっぱいの小屋のなかを歩き回って、外に出られる箇所がないか探しました。すると運よく、小屋のいちばん奥の壁の板木に、小さなひび割れが入っているのを見つけました。壁の板木は薄いものだったので、ここをなんとかすれば、外に出られるかもしれません。
ヒツジはあたりを見回して、仲間たちがぐっすりと眠っているのを確認すると、ごくりとつばを飲み込んで、思い切って壁の板木のひび割れに体当たりで突進しました。板木は長い年月ですっかり劣化していたので、思いのほか簡単に割れました。
ヒツジはもう一度仲間たちを振り返りましたが、誰もヒツジが壁を壊す音に目を覚ました様子はなく、皆静かに眠りこけていました。
ヒツジは壊れた板木の間から抜け出ると、ついに夜の農場に立ちました。ヒツジは夜風にさやさやと揺れる草原と、その頭上に広がる満天の星空を見上げました。久しぶりに見る大きな星空でした。しかしなつかしさに浸っているひまはありません。一刻も早く、ネコのためのシーツを作らなくてはならないのです。
ヒツジは一歩を踏み出しかけましたが、忍び足でこっそりと近づいていたにちがいない恐怖が、ヒツジのお腹の下あたりをキュッと噛みつけるのを感じました。
ヒツジは自分の足がすくむのを感じ、途方に暮れて星空を見あげました。しかし、そのときふと、自分のかたわらにおじいさんが立って、ヒツジを励ましてくれているような気がして、思いきってひづめで草地を蹴りました。
最初の一歩のあとは、足が勝手に動いてくれました。まるでヒツジの足の方で行き先を知っているかのように、どんどんと先を急ぐのでした。
農場は街のはずれの山の中腹あたりにあったので、ヒツジは山を一生懸命におりなければなりませんでした。山には木々が生い茂り、ごろごろとした大きな石などがあちこちにありました。どんなに急いでも、ヒツジの足では一晩で山を下りることはできませんでした。
山を流れる川で水を飲んだり、山道に生えている草を食べたり、疲れた足を休ませたりするために何度も立ち止まりながらも、二日目の晩に、ヒツジはとうとう街の入り口にたどり着きました。
そのとき、母屋の方から犬が一瞬鋭く吠える声が聞こえ、ヒツジは急に、ネコが以前、街にはなんでもあると言っていたことを思い出しました。思い出すと同時に、ヒツジのなかに、ある考えがひらめきました。街に行って、おじいさんがしてくれたように、毛を刈ってくれる人を見つければいいのだと思いついたのです。そうして、刈った毛を少し分けてもらい、今度はそれをシーツに仕立ててくれる人を探せばよいのです。簡単なことです。それはいい考えに思えました。
そこでヒツジはもぞもぞと体を動かし、毛むくじゃらの仲間たちでいっぱいの小屋のなかを歩き回って、外に出られる箇所がないか探しました。すると運よく、小屋のいちばん奥の壁の板木に、小さなひび割れが入っているのを見つけました。壁の板木は薄いものだったので、ここをなんとかすれば、外に出られるかもしれません。
ヒツジはあたりを見回して、仲間たちがぐっすりと眠っているのを確認すると、ごくりとつばを飲み込んで、思い切って壁の板木のひび割れに体当たりで突進しました。板木は長い年月ですっかり劣化していたので、思いのほか簡単に割れました。
ヒツジはもう一度仲間たちを振り返りましたが、誰もヒツジが壁を壊す音に目を覚ました様子はなく、皆静かに眠りこけていました。
ヒツジは壊れた板木の間から抜け出ると、ついに夜の農場に立ちました。ヒツジは夜風にさやさやと揺れる草原と、その頭上に広がる満天の星空を見上げました。久しぶりに見る大きな星空でした。しかしなつかしさに浸っているひまはありません。一刻も早く、ネコのためのシーツを作らなくてはならないのです。
ヒツジは一歩を踏み出しかけましたが、忍び足でこっそりと近づいていたにちがいない恐怖が、ヒツジのお腹の下あたりをキュッと噛みつけるのを感じました。
ヒツジは自分の足がすくむのを感じ、途方に暮れて星空を見あげました。しかし、そのときふと、自分のかたわらにおじいさんが立って、ヒツジを励ましてくれているような気がして、思いきってひづめで草地を蹴りました。
最初の一歩のあとは、足が勝手に動いてくれました。まるでヒツジの足の方で行き先を知っているかのように、どんどんと先を急ぐのでした。
農場は街のはずれの山の中腹あたりにあったので、ヒツジは山を一生懸命におりなければなりませんでした。山には木々が生い茂り、ごろごろとした大きな石などがあちこちにありました。どんなに急いでも、ヒツジの足では一晩で山を下りることはできませんでした。
山を流れる川で水を飲んだり、山道に生えている草を食べたり、疲れた足を休ませたりするために何度も立ち止まりながらも、二日目の晩に、ヒツジはとうとう街の入り口にたどり着きました。
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