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月にのぼった野ねずみの一家~シャルル・ド・ラングシリーズ2

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 ひとしきり泣いて泣き止んだとき、コレットは自分の心に、とても大きく、不思議にあたたかい何かが溢れていることに気がつきました。それはまるで長い冬の終わりに、待ち焦がれた早春の太陽の光が輝くのを全身で感じたときのように、コレットの心に眩しい希望と喜びを運んでくるのでした。そしてその想いはアルマンも同じのようでした。二匹は肩を寄せ合いながらシャルル・ド・ラングに向き直りました。
 アルマンは、微笑みを浮かべて自分たちを見守っていたシャルルの金の瞳を眩しく見上げると、
「シャルルさん、コレットだけではなく、我々は皆、先ほどシャルルさんがおっしゃったように、心にどうしてもふさがらない穴を抱えて今日までやって来ていたのです。しかし今日このときからは、我々は新しく一歩を踏み出せる。すべてあなたのおかげです。ほんとうになんとお礼を申し上げればよいのか……」
 シャルル・ド・ラングはにっこり笑いながら首を振りました。それから、まだスヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てているジェラルドの背中を、人差し指で優しくなぞるように撫でながら、
「わたしはほんの少し、お手伝いをしたに過ぎません。すべてはこのジェラルドの勇気ある告白が成し得た結果でしょう。ジェラルドは、小さな体にはあまりに大きすぎる秘密を抱え、さぞ苦しんだことでしょう。ジェラルドはあなた方が真実を知れば、自分への愛を失うのではないかという恐れを抱きながらも、ギィを想うあなた方のために、一緒に月まで行きました。ジェラルドは自分の恐怖よりも、あなた方と、そしてギィへの贖罪を優先したのです。そんなことは、とてもできるものではありません」
 アルマンとコレットの胸は、ジェラルドの可愛らしい寝顔を見ていっぱいになりました。それからおもむろに、アルマンは低い声で話し始めました。



「この子にはとりわけ申し訳ないことをしたと思っています。この子がギィの死の真相について、我々に嘘を言わなければならなかったことについても、わたしはわたし達に責任があったのだと思います。決してそんなことはないが、我々がギィの方をより愛していると、この子に思わせてしまったのだと思うのです。先ほどの月でのギィの話でも感じたことではありますが、親の想いがその通りに子どもに伝わっていると思うのは、我々親の側の思い上がりなのでしょう。我々こそジェラルドの心に、ヘビなどよりもずっと重篤な一生の傷を負わせてしまうところでした。ほんとうに恐ろしいことです。シャルルさん、今度のことでは、我々はすっかり学ばせて頂きました。ほんとうにありがとうございます」
 アルマンとコレットはシャルルに向き直って、深々とお辞儀をしました。シャルルはにっこり微笑むと、
「わたしの方こそ、素敵な夜をありがとうございます。さぁ、アルマン、コレット。この旅でさぞお疲れになったことでしょう。どうかもう少し、眠ってください」
 その言葉を聞くと、アルマンもコレットも不思議にまぶたが重くなってきました。強い眠気に誘われて、二匹は折り重なるようにしながら、穏やかな微笑を浮かべたシャルル・ド・ラングの膝の上で、再び心地よい眠りの世界に入っていきました。

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