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月にのぼった野ねずみの一家~シャルル・ド・ラングシリーズ2
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するとそのとき、アルマンはコレットにきっぱりとした厳しい口調で言いました。
「コレット、もうよしなさい。これ以上は我々の気持ちの押しつけだ。子どもの幸せを優先させるのが、ほんとうの親というものだろう」
コレットはハッと泣き止んで、アルマンの顔を見上げました。アルマンはコレットの肩に手を置き、柔らかな語調に戻ると、諭すように言いました。
「この子がここで幸せだと言うなら、我々はそれを喜ぶべきじゃないか。そうだ、これはつまり、あれだよ。我々が思っていたのよりは少し早いが、ギィはもう立派に独立したのだと思おうじゃないか。それに、我々はジェラルドのことも、もっとよく考えてやらなければ」
アルマンの言葉に、ジェラルドは嬉しさのあまり全身の毛としっぽをピンと逆立て、目には涙をいっぱい溜めて両親を見ていました。そのいじらしい姿と、ギィの大人びた強い意思を宿した瞳を見ると、コレットはもう何も言えませんでした。
「ええ、そう、そうね……」
アルマンはコレットと二匹の子ども達を抱き寄せました。四匹はしっかりとお互いの体を抱き、別れを惜しんでいました。やがてギィがそっと顔をあげると、まだ涙に濡れているコレットを下から覗くように見上げました。
「お母さん、最後にひとつだけ。昔ぼく達によく歌ってくれた、あの子守唄が聞きたいんだ」
コレットの瞳からは、また一筋の涙が落ちましたが、すぐに手の甲で顔を拭き、精いっぱいの笑顔を作って見せました。そして野ねずみの一家は抱き合ったまま、コレットの歌う子守唄に耳を澄ませました。
良い子の野ねずみ おやすみなさい
また明日 また明日
素敵な夢見て お眠りなさい……
綺麗な歌声を聴いていると、アルマンもジェラルドも、とても気持ちよくなって、うとうとし始めました。そしてついにはカクンと眠りに落ちてしまいました。
コレットも子守唄を歌いながら、どんどん眠くなっていました。けれど、必死にまぶたをこじ開けて、自分をじっと見つめるギィの顔から目を離すまいとして、歌い続けました。でも、まぶたはどんどん重く垂れ下がってきます。そうしてとうとう、アルマンやジェラルドに重なるように眠りの中に吸い込まれていきました。
まぶたが完全に閉じてしまう最後の瞬間、ギィの深い愛情に彩られた目がゆっくりと微笑み、
「お母さん、ありがとう。大好きだよ」
と、囁く声が聞こえました。
「コレット、もうよしなさい。これ以上は我々の気持ちの押しつけだ。子どもの幸せを優先させるのが、ほんとうの親というものだろう」
コレットはハッと泣き止んで、アルマンの顔を見上げました。アルマンはコレットの肩に手を置き、柔らかな語調に戻ると、諭すように言いました。
「この子がここで幸せだと言うなら、我々はそれを喜ぶべきじゃないか。そうだ、これはつまり、あれだよ。我々が思っていたのよりは少し早いが、ギィはもう立派に独立したのだと思おうじゃないか。それに、我々はジェラルドのことも、もっとよく考えてやらなければ」
アルマンの言葉に、ジェラルドは嬉しさのあまり全身の毛としっぽをピンと逆立て、目には涙をいっぱい溜めて両親を見ていました。そのいじらしい姿と、ギィの大人びた強い意思を宿した瞳を見ると、コレットはもう何も言えませんでした。
「ええ、そう、そうね……」
アルマンはコレットと二匹の子ども達を抱き寄せました。四匹はしっかりとお互いの体を抱き、別れを惜しんでいました。やがてギィがそっと顔をあげると、まだ涙に濡れているコレットを下から覗くように見上げました。
「お母さん、最後にひとつだけ。昔ぼく達によく歌ってくれた、あの子守唄が聞きたいんだ」
コレットの瞳からは、また一筋の涙が落ちましたが、すぐに手の甲で顔を拭き、精いっぱいの笑顔を作って見せました。そして野ねずみの一家は抱き合ったまま、コレットの歌う子守唄に耳を澄ませました。
良い子の野ねずみ おやすみなさい
また明日 また明日
素敵な夢見て お眠りなさい……
綺麗な歌声を聴いていると、アルマンもジェラルドも、とても気持ちよくなって、うとうとし始めました。そしてついにはカクンと眠りに落ちてしまいました。
コレットも子守唄を歌いながら、どんどん眠くなっていました。けれど、必死にまぶたをこじ開けて、自分をじっと見つめるギィの顔から目を離すまいとして、歌い続けました。でも、まぶたはどんどん重く垂れ下がってきます。そうしてとうとう、アルマンやジェラルドに重なるように眠りの中に吸い込まれていきました。
まぶたが完全に閉じてしまう最後の瞬間、ギィの深い愛情に彩られた目がゆっくりと微笑み、
「お母さん、ありがとう。大好きだよ」
と、囁く声が聞こえました。
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