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月にのぼった野ねずみの一家~シャルル・ド・ラングシリーズ2

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 ひとしきり泣いていくらか落ち着いてきた頃、それまでずっと静かに野ねずみの一家の様子を見守っていたシャルル・ド・ラングが、ゆっくりと四匹に歩み寄りました。
「野ねずみの一家の皆さん。わたしは今夜、実に素晴らしいものを見せて頂いた気分でいっぱいです。この世界で、愛すること以上に素晴らしいものはありません。互いを深く想い合い、強い愛で結ばれたあなた方は、ほんとうに素敵なご家族です」
 野ねずみの一家は顔を上げ、涙できらきら光る瞳を微笑ませました。
「シャルルさん、何もかも、みんなあなたのおかげですわ。こんな素敵なこと、夢でだって望めませんわ」
 コレットは涙を拭うと、満面に笑顔を花開かせて言いました。
「ほんとうにコレットの言う通りです。こんな素晴らしい経験をした野ねずみは、後にも先にも我々くらいのものでしょう。心からお礼を申し上げます。シャルルさん、ほんとうにありがとう」
 アルマンはしみじみとした口調でそう言うと、シャルル・ド・ラングに向かって深々と頭を下げました。他の三匹も、アルマンにならって頭を下げました。
「これはご丁寧に。お礼を申し上げたいのはわたしの方です」
 シャルルは頭にかぶったシルクハットを取り、野ねずみの一家に優雅なお辞儀を返しました。そしてシルクハットをきちんとかぶり直すと、にっこり笑って言いました。
「それでは皆さん、月でのティータイムなどはいかがです?」
 シャルルがパキンと指を鳴らすと、何もない空中に、あの素敵なヤマブドウ柄のティーカップとポット、それにバターの香りいっぱいのクッキーが出現しました。野ねずみの一家は驚きと喜びの声を上げ、シャルルのまわりに集まって来ました。



 シャルル・ド・ラングは、タキシードの胸からシュルシュルと滑らすように、赤いシルクのポケットチーフを取り出すと、パッと宙に投げました。するとポケットチーフは何倍もの大きさになって、ふわふわと踊るように、月の金色の大地に落ちて広がりました。
 皆はその布の上に座って、美味しいお茶とクッキーを堪能し、素晴らしい団らんの時を過ごしました。
 お腹がいっぱいになると、ジェラルドとギィは立ち上がり、じゃれ合いながら月の上を転げまわりました。そしてそれを大人たちはにこにこしながら見ていました。
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