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光の宮殿
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フロイントを支え、日々王妃としての務めをも果たしながら、まだなお可憐な少女さながらの素直なあどけなさを見せるアデライデの手を愛おしく包み、女王は祝福を授けるような口調で言った。
「この半年、あなたが心にあたためていた願いが現実のものとなれば、今以上の幸福があなたに訪れるのではありませんか? そしてそれはまたあなただけの幸福ではなく、この王国中にも幸福をもたらすものとなるのです。とりわけ、あなたの夫へのこの上ない贈り物となるでしょう。──アデライデ、あなたの願いはもうじき結実しますよ」
「えっ」
アデライデは頬をぱっと紅潮させ大きく目を見開くと、その青い瞳を湧き起こる驚喜にきらめかせながら、思わず下腹に手を当てた。
妖精女王は慈愛のこもった微笑みで頷きかけた後、春の美しい陽射しの中、溶けてしまいそうなほどの幸福に酔いしれているようなアデライデを見つめ、その頬にそっと光る手を添えた。
「アデライデ、あなたは素晴らしい母となるでしょう。このラングリンドにとっても、あなたは愛にあふれた慈悲深い母です。あなたとフロイントは、この新しいラングリンドの父と母として、より良い世界のために貢献するでしょう。けれどアデライデ、わたくしはあなたがいつでも幸福であることを望みます。それはすなわち、このラングリンドの──わたくしの幸福でもあるのですよ」
アデライデはその言葉の響きに感じるものがあった。思わず笑顔を引いて女王を見つめた。
「女王様……」
妖精女王はふと遠くを見るように目を細めた。
「そう呼ばれるのもこれが最後でしょうね」
アデライデは自分の予感が正しかったことを知り、妖精女王の手をそっと握った。
「……行ってしまわれるのですね……」
悲しみに沈む声で寂しげにつぶやいたアデライデを、女王は大いなる愛情のこもった瞳で包み込んで言った。
「可愛いアデライデ。ラングリンドの民は残らずわたくしの子どもではありますが、あなたのことはいつも特別に想っていました。もしもわたくしに子どもがあったなら、それはあなたへのこの気持ちのようなものなのかもしれません──」
アデライデは思わず涙をこぼした。女王は早春の陽ざしにきらめくアデライデの涙を光る指で拭いながら、
「どうか笑顔で見送ってください。どこにいても、わたくしはあなたを──あなた達を見守っていますよ」
アデライデは涙に濡れた瞳で女王を仰ぎ見た。早くに母を亡くし、母というもののぬくもりをほとんど憶えていないアデライデにとっても、女王はいつもその深い愛情でもって、あたたかく包み守ってくれる母のような存在だった。今や女王の愛はアデライデの心に確かな礎を築き、どんなときにも自分自身を支える強さと自信を生み出す源となっていた。
アデライデは込み上げる涙を堪え、あふれる想いと共に精いっぱいの笑顔を見せた。
小首を傾げて自分を見上げるアデライデの、その痛みに懸命に耐えようとする幼子のような泣き笑いの顔を切なく光る瞳で見つめ、妖精女王はアデライデをやさしく腕に抱きしめた。ついに堪えきれず嗚咽を漏らし始めたアデライデの髪を、女王は静かにそっと撫で続けた。
「この半年、あなたが心にあたためていた願いが現実のものとなれば、今以上の幸福があなたに訪れるのではありませんか? そしてそれはまたあなただけの幸福ではなく、この王国中にも幸福をもたらすものとなるのです。とりわけ、あなたの夫へのこの上ない贈り物となるでしょう。──アデライデ、あなたの願いはもうじき結実しますよ」
「えっ」
アデライデは頬をぱっと紅潮させ大きく目を見開くと、その青い瞳を湧き起こる驚喜にきらめかせながら、思わず下腹に手を当てた。
妖精女王は慈愛のこもった微笑みで頷きかけた後、春の美しい陽射しの中、溶けてしまいそうなほどの幸福に酔いしれているようなアデライデを見つめ、その頬にそっと光る手を添えた。
「アデライデ、あなたは素晴らしい母となるでしょう。このラングリンドにとっても、あなたは愛にあふれた慈悲深い母です。あなたとフロイントは、この新しいラングリンドの父と母として、より良い世界のために貢献するでしょう。けれどアデライデ、わたくしはあなたがいつでも幸福であることを望みます。それはすなわち、このラングリンドの──わたくしの幸福でもあるのですよ」
アデライデはその言葉の響きに感じるものがあった。思わず笑顔を引いて女王を見つめた。
「女王様……」
妖精女王はふと遠くを見るように目を細めた。
「そう呼ばれるのもこれが最後でしょうね」
アデライデは自分の予感が正しかったことを知り、妖精女王の手をそっと握った。
「……行ってしまわれるのですね……」
悲しみに沈む声で寂しげにつぶやいたアデライデを、女王は大いなる愛情のこもった瞳で包み込んで言った。
「可愛いアデライデ。ラングリンドの民は残らずわたくしの子どもではありますが、あなたのことはいつも特別に想っていました。もしもわたくしに子どもがあったなら、それはあなたへのこの気持ちのようなものなのかもしれません──」
アデライデは思わず涙をこぼした。女王は早春の陽ざしにきらめくアデライデの涙を光る指で拭いながら、
「どうか笑顔で見送ってください。どこにいても、わたくしはあなたを──あなた達を見守っていますよ」
アデライデは涙に濡れた瞳で女王を仰ぎ見た。早くに母を亡くし、母というもののぬくもりをほとんど憶えていないアデライデにとっても、女王はいつもその深い愛情でもって、あたたかく包み守ってくれる母のような存在だった。今や女王の愛はアデライデの心に確かな礎を築き、どんなときにも自分自身を支える強さと自信を生み出す源となっていた。
アデライデは込み上げる涙を堪え、あふれる想いと共に精いっぱいの笑顔を見せた。
小首を傾げて自分を見上げるアデライデの、その痛みに懸命に耐えようとする幼子のような泣き笑いの顔を切なく光る瞳で見つめ、妖精女王はアデライデをやさしく腕に抱きしめた。ついに堪えきれず嗚咽を漏らし始めたアデライデの髪を、女王は静かにそっと撫で続けた。
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