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光の宮殿
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町の子供たちに手を引かれて入った宮殿の庭園には、もう春の訪れが新しい命の喜びを軽やかに躍らせていた。アデライデは光の庭園に満ちる甘い息吹を深く吸い込んだ。
季節の移ろいゆく様はいつも新鮮なときめきを与えてくれるものだが、この春は常になくアデライデをあたたかな幸福で包むようだった。
フロイントと共に迎える初めての春──それも愛してやまないラングリンドで、夫となったフロイント、そして父と共に新しい季節を迎えられる喜びが、アデライデの体の隅々にまで行き渡り、輝きを強めるようだった。
──今度のお休みに森の家に行くときは、お父さんの好きな木苺のケーキを焼いていこうかしら。このところフロイントも政務で忙しかったし、少しでもゆっくり休んでもらいたわ──。
アデライデはフロイントと共に父の小屋で過ごす楽しい一日を思い描き、知らず弾む胸に手を当てた。
「王妃様、見て! もうクロッカスが咲いてる!」
子ども達の跳ねるような声に、アデライデはたくさんの小さな指の一本一本が一斉に指し示す花壇の一角を覗き込んだ。
「まぁ、ほんとうね」
アデライデはやわらかな緑の草の間から、白や紫、黄色の可憐な花びらを覗かせるクロッカスに顔を輝かせた。歓声を上げて飛び跳ねるこども達を微笑んで眺めながら、アデライデの心の嬉しさも、だんだんと温もりを確かにしていくこの陽射しのように大きくなっていった。誰にとっても春の訪れは待ち遠しく、最初の春の便りには心躍るものだが、子ども達が抑えきれない命の輝きのままに喜びを表す姿は、このラングリンドの最も光に満ちた宮殿に居ながら、アデライデをさらに眩い世界へと連れて行くようだった。
ふと風に漂う光の気配が濃くなり、アデライデは嬉しさの予感を湧き立たせて振り返った。予期した通りに妖精女王が背中の光の翅を陽ざしにきらめかせて立っているのを見ると、俄かに瞳を輝かせて跪こうとした。女王はアデライデが跪く前にその腕に手を添えて立たせながら、頬を興奮に上気させて駆け寄って来た子ども達に微笑みかけた。
「子ども達、そろそろ家に帰る支度をする時間ですよ。お土産に、庭園の花をどれか一本選びなさい」
子ども達が歓喜の声を上げて花々の中に駆けて行くと、女王はアデライデの白くほっそりと柔らかな指を自分の手の中に取った。
「月に一度子ども達を城に招待するというあなたの考えは素晴らしいものでしたね」
アデライデは白い頬を染めて妖精女王の賛辞に控えめな喜びと感謝を表した。
「アデライデ、忙しい日々ですが、きちんと休息は取れていますか?」
「はい。今度の祝日にも、王と共に森の父の小屋に参ろうと思っています」
「そうですか」
女王はアデライデの美しい笑顔を慈しむように眺めた。
「幸福ですか、アデライデ?」
「はい、これ以上の幸せは望めないほどに」
アデライデは感謝を込めた青い瞳で頷いた。女王はそれを聞くとにっこりと微笑みながら、どこかいたずらを仕掛ける子どものような口調で言った。
「ほんとうにそうでしょうか、アデライデ?」
「え?」
アデライデは思わず小首を傾げて女王を見つめ返した。
季節の移ろいゆく様はいつも新鮮なときめきを与えてくれるものだが、この春は常になくアデライデをあたたかな幸福で包むようだった。
フロイントと共に迎える初めての春──それも愛してやまないラングリンドで、夫となったフロイント、そして父と共に新しい季節を迎えられる喜びが、アデライデの体の隅々にまで行き渡り、輝きを強めるようだった。
──今度のお休みに森の家に行くときは、お父さんの好きな木苺のケーキを焼いていこうかしら。このところフロイントも政務で忙しかったし、少しでもゆっくり休んでもらいたわ──。
アデライデはフロイントと共に父の小屋で過ごす楽しい一日を思い描き、知らず弾む胸に手を当てた。
「王妃様、見て! もうクロッカスが咲いてる!」
子ども達の跳ねるような声に、アデライデはたくさんの小さな指の一本一本が一斉に指し示す花壇の一角を覗き込んだ。
「まぁ、ほんとうね」
アデライデはやわらかな緑の草の間から、白や紫、黄色の可憐な花びらを覗かせるクロッカスに顔を輝かせた。歓声を上げて飛び跳ねるこども達を微笑んで眺めながら、アデライデの心の嬉しさも、だんだんと温もりを確かにしていくこの陽射しのように大きくなっていった。誰にとっても春の訪れは待ち遠しく、最初の春の便りには心躍るものだが、子ども達が抑えきれない命の輝きのままに喜びを表す姿は、このラングリンドの最も光に満ちた宮殿に居ながら、アデライデをさらに眩い世界へと連れて行くようだった。
ふと風に漂う光の気配が濃くなり、アデライデは嬉しさの予感を湧き立たせて振り返った。予期した通りに妖精女王が背中の光の翅を陽ざしにきらめかせて立っているのを見ると、俄かに瞳を輝かせて跪こうとした。女王はアデライデが跪く前にその腕に手を添えて立たせながら、頬を興奮に上気させて駆け寄って来た子ども達に微笑みかけた。
「子ども達、そろそろ家に帰る支度をする時間ですよ。お土産に、庭園の花をどれか一本選びなさい」
子ども達が歓喜の声を上げて花々の中に駆けて行くと、女王はアデライデの白くほっそりと柔らかな指を自分の手の中に取った。
「月に一度子ども達を城に招待するというあなたの考えは素晴らしいものでしたね」
アデライデは白い頬を染めて妖精女王の賛辞に控えめな喜びと感謝を表した。
「アデライデ、忙しい日々ですが、きちんと休息は取れていますか?」
「はい。今度の祝日にも、王と共に森の父の小屋に参ろうと思っています」
「そうですか」
女王はアデライデの美しい笑顔を慈しむように眺めた。
「幸福ですか、アデライデ?」
「はい、これ以上の幸せは望めないほどに」
アデライデは感謝を込めた青い瞳で頷いた。女王はそれを聞くとにっこりと微笑みながら、どこかいたずらを仕掛ける子どものような口調で言った。
「ほんとうにそうでしょうか、アデライデ?」
「え?」
アデライデは思わず小首を傾げて女王を見つめ返した。
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