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マル

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朝のほんのひととき

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 「間も無く一番線に列車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください。」ボヤッとした朝の頭に乾いたアナウンスが入ってくる。その声の主は運転手や車掌と同じユニフォームを纏い、やや老けた顔立ちだが、優しく、ときに厳しい顔でいつも現れる。今日もそれが朝の一つのルーティーンであるかのように右手に無線のようなものを持ち左手には白い手袋をつけて手をあっちへいったりこっちへいったりさせていた。毎朝この駅の守護神のように君臨しているこの人は一体何者なのだろうか。やや老けた顔立ちであることから昔は優秀な運転手であったが後輩を指導するような形でこの駅の駅員をやっているのか。それとも若い頃はバリバリのセールスマンで超一流企業を渡り歩いていたがそれがついに飽きてしまい幼い頃からの夢であった運転士になるために厳しい試験を乗り越え、尚電車を運転することを夢見てここで若い先輩たちのテクニックを学んでいるのだろうか。それがそのどちらであろうとも、どちらでもなかろうとも別に僕はどうでもいい気がした。現に今、あの人は楽しそうである。あなたの声で、動きで、考え方で、救われている人はたくさんいると思います、いつもありがとうございます。僕は心の中でそう呟き電車に乗り込んだ。
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